「共同参画」2012年 10月号

「共同参画」2012年 10月号

特集1

男性にとっての男女共同参画について
内閣府男女共同参画局推進課

平成11年に男女共同参画社会基本法が制定されて13年が経過しました。我が国の男女共同参画社会の形成に係る取組は、男女共同参画社会基本法に基づき策定される男女共同参画基本計画を基に進められています。平成22年12月に閣議決定された現行の第3次男女共同参画基本計画においては、男女共同参画があらゆる人々の課題として認識されることが重要であるとの観点から、男性、子ども、貧困などの困難を抱える人々にも着目し、新たな重点分野として「男性、子どもにとっての男女共同参画」の分野を設け、男性への積極的なアプローチ等を図ることとしています。

1.男女共同参画を男性の視点から見ると

(1)「固定的性別役割分担意識」が男女共同参画の大きな障害

男女共同参画社会の実現に向けた大きな障害の一つとなっていること。それは、人々の意識の中に長い時間をかけて形づくられてきた性別に基づく「固定的性別役割分担意識」です。このような意識は、時代とともに変わりつつありますが、今も依然として根強く残っています。内閣府の実施した世論調査によると、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という「固定的性別役割分担意識」に関する質問に対して、平成21年調査では男性の45.9%、女性の37.3%が賛成と答え、男性により強く残っていることが分かります(図1)。

共働き世代が増加する中(図2)、性別で役割を固定的に考えるのではなく、仕事や家事、育児など、今まで以上に広い分野で、男性と女性が協力しあうことが必要な時代になってきているのではないでしょうか。

(図1)男性の固定的性別役割分担意識 ~「男は仕事、女は家庭」って本当?

(図2)仕事の担い手、家庭の担い手の変化 ~「女は家庭」なんて言っていられないのが現状?

(2)男女共同参画社会は男性にとっても生きやすい社会

一方、固定的性別役割分担意識は、男性自身にとっても重荷になっている、という意見もあります

例えば、一家を経済的に支えるのは男性の役割であると考える傾向が男女ともに高いことが指摘されています(図3)。また、結婚相手に求めるもので男女の差が大きい項目は、男性に対して「経済力」、女性に対して「容姿」との調査結果(図4)もあります。しかし、厳しい経済状況の中、男性の収入のみで家計を支えるという期待に応えることが難しくなってきています。

(図3)「男性は家族のために仕事」は男性も女性も肯定

(図4)結局、稼いでないと結婚できない?

また、男性の育児休業の取得率を見ると、平成23年度実績は2.63%と、女性に比べてはるかに低い数字に留まっていますが、実は男性の3割が育児休業など育児との両立支援制度の利用を希望していると言われています(図5)。

仕事ばかりではなく、家庭や地域活動などにもっと参画したいと考えている男性も多いのではないでしょうか。

このように、男女共同参画社会とは、女性にとっても、男性にとっても、より生きやすい社会を目指すものであるということを、多くの方に理解していただきたいと思います(図6)。

(図5)育児に参加したい男性は結構多い

(図6)男女共同参画社会は男女ともに生きやすい社会

2.内閣府男女共同参画局の取組

男女共同参画を男性の視点から進めていくための、内閣府男女共同参画局の取組をご紹介します。

(1)男性にとっての男女共同参画ホームページの開設

男女共同参画の意義について、男性の立場・視点から理解を深めることに役立つ情報を掲載し、男性にとっての男女共同参画に関する啓発を進めるため、平成24年3月に「男性にとっての男女共同参画局ホームページ」を立ち上げました(図7)。

現在は以下のコンテンツを掲載しており、今後さらなる拡充を図っていきます。

・基礎知識

(男女共同参画を男性の視点から捉えなおすための基礎的な知識)

・コラム

(日常生活など親しみやすい視点からの、男女共同参画の気づきやヒントになる話)

・シンポジウム、調査研究

(男性にとっての男女共同参画に関し、内閣府が実施したシンポジウムや調査研究)

・地方自治体取組紹介

(男性にとっての男女共同参画に関する地方自治体の取組紹介)

※地方自治体の取組については、ご紹介する取組を広く募集しておりますので、男女共同参画局推進課までご連絡ください。

(図7)

(2)「男性にとっての男女共同参画シンポジウム」の開催

男性の地域や家庭への参画等につなげるため、男性にとっての男女共同参画の意義を理解していただくことを目的に、なじみやすい、身近で具体的なテーマを設定し、多様な生き方を実践している男性に関する「生の声」の発信などを盛り込んだシンポジウムを、平成23年度に全国3か所で実施しました。

•第1回(平成23年12月15日 神奈川県横浜市)
「これからの組織・地域の経営に必要なこととは?」

•第2回(平成24年2月5日 福岡県福岡市)
「落語『百年目』と地域に必要とされるこれからの男性像」

•第3回(平成24年2月18日 滋賀県大津市)
「イクメンってどんな存在?~女子会トーク~」

※「男性にとっての男女共同参画ホームページ」(上述)に、各シンポジウムの報告を掲載しています。

(3)「男性にとっての男女共同参画に関する意識調査」の実施

男性の固定的性別役割分担意識に関して調査を行いました。男性の役割分担意識に関する意識を「5つの志向性」に分類したほか、(1)「5つの志向性」の度合い、(2)日常生活の行動等(夫婦の会話等)と志向性との関連性が明らかになりました。

※詳しくは、「共同参画 平成24年7月号」掲載の記事をご覧ください。

『行政施策トピックス1「男性にとっての男女共同参画」に関する意識調査報告書について』

(4)「男性の地域活動への参画 好事例集」の作成

仕事ばかりではなく、地域活動にも積極的に参画し、いきいきと活動している男性たちの事例をまとめました。活動のきっかけ、活動のやりがいなど、男性が地域活動に参画するヒントを掲載するとともに、読み物としても楽しんでいただけるように作成しています。

※詳しくは本号8ページ『「男性の地域活動への参画 好事例集」について』をご覧ください。

(5)男性に対する相談体制の整備

精神面で孤立しやすいと言われる男性向けの相談体制の確立を目指し、相談窓口の設置や相談員の育成に関するマニュアルの整備を行います。

3.地方自治体における取組紹介

地方自治体においても、工夫を凝らした様々な活動を展開しています。「男性にとっての男女共同参画ホームページ」に掲載している事例から、いくつかをご紹介します。

(1)男性のための参画プロジェクト~男性にとっての男女共同参画を考える~ -愛知県-

(1)活動の内容:

幅広い視点で男性にアプローチ

ア、イクメンスクール連続講座の開催(全3回:平成23年11月~12月)
イクメンの「心」、「技」、「体」を学ぶ講座を実施しました。

イ、実践事例の掘り起こし等(掲載事例数:39事例)
固定的性別役割分担意識の解消、男性の家庭生活や地域生活への参画を目指した取組みなど、地域の様々な実践事例の掘り起こし等を行い、結果を冊子にまとめました。

ウ、アンケートの実施
(平成23年11月実施)
企業等の協力を得て、働く男性の現状や考えを調査しました。

エ、フォーラムの開催
(平成24年1月29日)
イクメンスクール連続講座、アンケート、実践事例の掘り起こし等の活動の集大成として活動の成果を共有するともに、広く情報を発信するためフォーラムを実施しました。

オ、啓発用DVD「これからの男の生き方!イクメン・カジダン・共同メン」の作成
「男性にとっての男女共同参画」の啓発を図るDVDを作成しました。
※本編は「ネットあいち」の「インターネット情報局」よりご覧いただけます。

http://www.doga.pref.aichi.jp/ch3/kensei/index.html

(図3)「男性は家族のために仕事」は男性も女性も肯定

(2)活動のきっかけや目的:女性のためだけではなく、男性に関心をもってほしい

これまで、「男女共同参画」というと、女性のために女性が活躍するというイメージがあり、いかに男性に関心をもってもらうかが課題でした。

そこで、イクメン・カジダンを切り口に、男性に男女共同参画について考えてもらう事業を、地域で活動する女性団体の「地域開発みちの会」を中心に、国際交流団体、男性の育児を支援する団体や企業等と協働し、多様な視点・発想を取り入れながら実施しました。

(3)活動の成果や今後の展開:すそ野の広い活動を目指して

イクメンスクール連続講座では、参加者がイクメンを楽しむためのコツを楽しく学ぶとともに、パパ同士のつながりができ、これを機に地域で父親の子育て支援活動に関心を持つ人も出てきました。また、講演会やパネルディスカッションに夫婦で参加された人たちから、男女共同参画について夫の考えが変わったとの感想も寄せられました。

(2)クレオ大阪(大阪市立男女共同参画センター)の取組み -大阪府大阪市-

(1)活動の内容

男性の家庭生活・地域活動への参画につながる料理や手芸、子育て支援、自己発見・自己発信などの各種セミナーや、育児参加を応援する写真コンテストなどを実施しています。一方、長時間労働や地域での孤立など、男性が抱える悩みの相談対応も重要です。

また、平成16年度から実施している男性相談では、男性が男性の話を聴き、十分に受け止め、解決に向けて共に考えるというスタンスで、DV被害者支援の一環においてDV加害者にも対応しています。

(2)活動のきっかけや目的

男性は固定的性別役割分担意識や長時間労働により、家庭生活や地域活動に関わることが困難な場合があります。男性の日常生活における自立能力を高めること、男性の育児参加の機運醸成、男性対象セミナーへの参加のよびかけ、男性が地域活動に参画できる仕組みづくりなど、対象に応じて工夫をこらした事業を実施しています。

また、平成16年度から実施している男性相談では、男性が男性の話を聴き、十分に受け止め、解決に向けて共に考えるというスタンスで、DV被害者支援の一環においてDV加害者にも対応しています。

(3)活動の成果

セミナーをきっかけにクレオ大阪に初めて来られる方も多く、利用者の拡大につながっています。イクメン写真コンテストは、いくつかの政令指定都市の共同事業として実施しており、回を増すごとに応募者数が増えるなど(平成24年度92通)男性の育児参加の機運醸成に貢献しています。また、男性相談では7年間の実績をもとに、男性相談員の養成講座と男性相談員がファシリテーターを担当するグループワークにつながっています。

受講後のメーリングリストよる情報交換、グループ化支援など、自主的に家庭や地域に参画できる仕組みづくり、参加者同士の交流から地域活動への参画につながる働きかけが始まっています。

(4)活動のポイント

•料理初心者の講座では、土鍋一つ、調味料一つの簡単料理が好評。煮込んでいる間に地域参画などの講義を聞く時間を設け、時間の使い方も効率的に行いました。

•子どもと父親(祖父)二人一組の料理教室では、男性が参加しやすくなるほか、同時刻の別の場所で母親向けの事業を実施することで家族全員が参加できることが好評でした。

•グループワークで役割をお願いすることにより意欲的に参加していただけました。

•チラシやセミナーの名称を工夫し、女性に男性の集客の協力を依頼することも有効でした。

(参加者の声) ※一部をご紹介

•他のパパと話をする機会は少ないので、貴重な意見を聞けてよかった。

•普段料理はすべて妻にまかせてしまっていますが、自分でやってみて大変だとわかった。

•妻には働き続けてもらいたいし、自分自身も子どもにできるだけ積極的にかかわりたい。

•退職後の生き方を考えていたので、大変参考になった。

【自治体の取組写真】