「共同参画」2012年 9月号

「共同参画」2012年 9月号

寄稿

女性たちの望む未来─リオ+20からのメッセージ
北九州サスティナビリティ研究所主席研究員 織田 由紀子

リオ+20とは、2012年6月20-22日、リオデジャネイロで開催された「国連持続可能な開発に関する会議」及び前後して行われた関連イベントの略称です。20年前に同じリオデジャネイロで開催された「地球サミット」から20年後に開かれたので+20といいます。

リオ+20の成果文書は「我々が欲する未来」です。この文書では、持続可能な開発を進めるに当たりジェンダー平等と女性のエンパワメントが重要であること、女性の平等な権利、参加、経済、社会、政治的決定におけるリーダーシップを進めるべきことが再確認されました。

また、成果文書の第V章行動とフォローアップの26のテーマ別分野と横断的事項の1つに「ジェンダー平等と女性のエンパワメント」という項が入りました。ここではさらに詳しく、北京行動綱領、女性差別撤廃条約、国際人口開発会議の成果およびその後のフォローアップの実施を一層進めること、指導的地位にある女性の数を増やすための数値目標の有効性、女性の進出の障害となる法律や慣習を改めること、性別データを収集すること、教育、健康、就業機会へのアクセスを保障することなどに言及されました。

重要分野には他に貧困、食料、水、都市、気候変動などがありますが、26のうち13分野ではジェンダー平等や女性の役割に触れています。例えばエネルギーへのアクセスにおけるジェンダー平等や海洋における漁業女性への言及は特筆すべき成果といえます。特に防災の項にジェンダー視点という文言を入れるに当っては、日本政府が大きな役割を果たしました。交渉の途中までは全くジェンダーに触れられていなかったのですが、日本政府の提案により入ったのです。東日本大震災の経験を踏まえての日本の貢献と言えるでしょう。

しかし課題もいくつかあります。成果文書ではリプロダクティブ・ライツという文言がすべて削られてしまいました。人権の保障やリプロダクティブ・ヘルスについては書かれたのですが、すでに国際会議合意されていたリプロダクティブ・ライツという文言が再交渉され、入らなかったことは問題でした。これに対して女性メジャーグループは抗議の示威行動を呼びかけました。採決に当たり遺憾の意を表した国もあったそうです。

他に、気候変動や鉱山など女性の健康や環境に大きな影響を及ぼすにもかかわらず、女性・ジェンダーに触れられなかった分野が多くあったことも問題です。全ての行動分野におけるジェンダー視点の主流化は今後の課題です。

今回の会議の最大の成果は、持続可能な開発目標(SDGs)の設定が合意されたことです。その内容、誰が決めるのかも含めて詳細の決定はこれからですが、現在進行中のポストMDGsの議論との整合性もあわせて今後注目すべき点です。

UN Womenはバチェレ事務局長の主導のもと、世界の女性リーダーによる「女性たちの望む未来─女性リーダーのフォーラム」というサイドイベントを開き、女性の意見を結集する役割を果たしました。そこでは持続可能な開発の生みの親であるブルントラント元ノルウェー首相など世界の女性リーダーが、ジェンダー平等と女性のエンパワメントの達成は持続可能な開発の核心であると力強く訴えました。


UN Womenのフォーラムの様子


抗議デモの様子


女性メジャーグループで活動した人たち(最終日に)

おだ・ゆきこ/JAWW(日本女性監視機構)副代表。北九州サスティナビリティ研究所 主席研究員。リオ+20国内準備委員会委員。女性グループ代表として成果文書へのインプットに貢献、政府代表団顧問。(財)アジア女性交流・研究フォーラム主席研究員、日本赤十字九州国際看護大学教授、JICAタイ国人身取引被害者保護・自立支援促進プロジェクトチーフアドバイザーを経て、2011年7月より現職。専門分野はジェンダーと開発、環境。