「共同参画」2012年 8月号

「共同参画」2012年 8月号

連載 その2 女性首長から

ダイバーシティあふれる、チャレンジを応援するまち尼崎を目指して
尼崎市長 稲村 和美

大阪市の西隣、兵庫県の東端に位置する尼崎は、まさしくダイバーシティのまちです。その昔から、陸路、海路ともに西国から近畿圏への交通の要衝であり、ヒト・モノ・カネが集まる交流の地でありました。曾根崎心中などで有名な近松門左衛門は、その多くの代表作を尼崎の地でヒントを得て書き上げています。阪神工業地帯の中核を担っていた高度成長の時代には、製造業を中心にして、様々な地域から人の流入がありました。スーパーで買い物をしていると見ず知らずの人が思わず話しかけて来るような、人情にあふれ、人に優しいまちとしての包容力は、そんな所から生まれていると感じます。かくいう私は奈良育ちの人間ですが、政治に関わる人間としてのキャリアをこのまちに育んでいただきました。

市長に就任した時には保育所に通っていた娘も、今年から小学校に上がりました。新聞などでは「ママ市長」と報道されましたが、子育てをしながら仕事をしている人は私以外にもたくさんいらっしゃるし、自分だけが特別ではないと思っています。(自身のワークライフバランスの実現には、まだ少し苦戦中…。家は散らかってるわ、外食は増えるわ、土日もほとんど仕事の日々…。)実は、市長に就任する以前は、夫に対して「もう少し家事をしてくれてもいいのに」と思っていました。でも今となっては、子育て上手な夫さまさま!です。お互いに得意分野を分担するカタチが、我が家では定番になりつつあります。

現在、尼崎市では「成長から成熟へ」という大きな時代の変化への早急な対応が問われています。課題先進国日本の中の課題先進都市として、全国よりも少し早く訪れた人口減少と高齢化、財政難、市民協働分野の拡大など、様々な都市課題の解決に積極的に取り組んでいるところです。もちろん、男女共同参画分野にも昔から力を注いでいます。平成17年度には「尼崎市男女共同参画社会づくり条例」を制定し、昨年「第2次尼崎市男女共同参画計画」を策定しました。現在も高水準にある審議会等への女性委員の登用率(36.5%)については40%以上を目指し、一方、まだまだ十分とはいえない本市の女性管理職の割合は10%以上を目指しています。また、男女共同参画社会作りの推進及び活動の拠点としては、昭和49年に尼崎市立勤労婦人センターを設置し、平成5年には尼崎市立女性・勤労婦人センター(女性センター・トレピエ)として再整備しました。平成16年には全国でも早い時期に指定管理者制度を導入し、市民協働型の事業推進に積極的に取り組んでいます。

私たちの生き方も、家族のあり方も本当に多様になりました。性別にかかわりなくすべての人にとって生きやすい社会の実現を目指し、市民、事業者、行政等がそれぞれの持ち味を生かして、成熟社会にふさわしいまちづくりを進めていきたいと考えております。

折しもこの夏より、尼崎出身のお二人、F1レーサーの小林可夢偉さんと「落第忍者乱太郎」などの代表作のある漫画家の尼子騒兵衛さんに「チャレンジ!あまがさき夢大使」にご就任いただきました。自らが生まれ育ったまちを愛し、老若男女を問わず誰もが夢を育み、夢を実現するためのチャレンジを周りが応援する、そんな包容力と多様性に溢れた尼崎に、ぜひ一度、遊びに来てください。

尼崎市長 稲村 和美
いなむら・かずみ/1972年生まれ。92年神戸大学入学、95年阪神淡路大震災をきっかけに、神戸大学総合ボランティアセンターを設立し、初代代表に。そこで市民自治・政治と出会う。その後、神戸大学大学院を修了し、神栄石野証券(現SMBCフレンド証券)勤務。2003年より兵庫県議会議員2期を経て、2010年12月より現職。夫、娘の3人暮らし。