「共同参画」2012年 8月号

「共同参画」2012年 8月号

特集1

「平成24年度男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」について
~男女共同参画による日本再生~
内閣府男女共同参画局総務課

男女共同参画週間の中央行事として、6月22日(金)、メルパルクホール東京(東京都港区)において、「平成24年度男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」(シンポジウム)が開催され、約620名の方々が出席されました。

男女共同参画に関する国民の理解を深めることを目的として、男女共同参画週間の中央行事である、「男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」を開催しました。

今年は、「男女共同参画による日本再生」をテーマに開催しました。

また、開会前や休憩時間にロビーにおいて、男女共同参画社会づくり功労者内閣総理大臣表彰及び女性のチャレンジ賞・支援賞・特別部門賞、男女共同参画週間キャッチフレーズの各受賞者を映像にて紹介いたしました。

1 中川大臣の開会挨拶

開会にあたり、中川正春内閣府男女共同参画担当大臣から、「国においては、日本再生戦略に盛り込むべき重要課題につき議論している。女性と男性が手を携えて、元気な日本をもう一度取り戻したい」旨の挨拶がありました。

中川正春内閣府男女共同参画担当大臣
中川正春内閣府男女共同参画担当大臣

2 男女共同参画施策の動き

内閣府男女共同参画局長より、「男女共同参画施策の動き」と題して、現在の男女共同参画の情勢に関し、(1)東日本大震災-男女共同参画と防災・復興-、(2)女性の参画の推進、(3)女性の活躍と経済の活性化について説明がされました。

岡島敦子内閣府男女共同参画局長
岡島敦子内閣府男女共同参画局長

3 基調講演

「男女共同参画は日本の希望」

中央大学文学部教授の山田昌弘先生により、経済活性化のための女性の活躍できる男女共同参画社会づくりについて、講演が行われました。

【概要】

我が国の現状として、(1)専業主婦率が高い、(2)非正規雇用女性が多い、(3)若い女性の専業主婦希望が増えている。日本社会では、特に経済、政治分野の女性の活躍は、女性のためだけでなく、男性や企業、日本経済・社会、少子高齢化対策等、幅広いメリットがある。女性の活躍により、経済・社会・家族にとって、より豊かな生活が可能となる。しかしながら現実は、男女共同参画はなかなか進んでいない。経済・社会の構造転換期以降、家族形成力の低下、少子化の理由として未婚率の上昇が挙げられるが、「性別役割分業家族」を未だ望む現状や、低調な男女交際、男性の自信喪失なども影響している。さらに女性の経済的活躍を阻むものとしては、古くからの労働慣行が挙げられ、そこからはみ出す雇用形態、家族のサポートがないことは大きな問題である。

こうした日本の女性差別的慣行に嫌気がさした女性たちは海外へ、特に欧米やアジア新興国に活躍の拠点を移し、日本人以外の男性と結婚する女性が増加している。

女性の活躍できる環境を作り出すことこそ日本社会の喫緊の課題であり、日本経済にも財政にも寄与するものである。皆さまと一緒に男女共同参画を広めていくことにより、日本社会を明るく希望があるものにしていくことを願っている。

中央大学教授 山田昌弘先生
中央大学教授 山田昌弘先生

4 パネルディスカッション

「女性の活躍による震災復興と経済活性化について」

コーディネーターとして、シンクタンク・ソフィアバンク 副代表 藤沢久美氏、パネリストとして、旅館 宝来館(岩手県釜石市)経営 岩崎昭子氏、株式会社長岡塗装店 常務取締役 古志野純子氏、株式会社髙島屋 人事部人事政策担当次長 中川荘一郎氏の3名をお迎えし、パネルディスカッションが行われました。

パネルディスカッションでは、最初に3人のパネリストから自己紹介を兼ねて活動紹介をしていただいた後、会場の皆さんからの質問に対する回答を交え、活発な意見交換が行われました。

【概要】

主な意見として、「若者の採用で特徴的なことは、非常に女性が優秀であること。しかし、30歳が1つの転機になってくる。会社側の意識改革とも併せて人事では管理職等への指導をしている。自分の価値観と違う若者が入社してくることはしっかり受け止めている。

一人一人のライフスタイルに柔軟に対応することが、働きやすい職場、男女共同参画が進み、ワークライフバランスが実現できる環境づくりになる。今後は、なぜ男女共同参画社会を目指さなければいけないかということを、さらに広く周知をする必要はある。

日本のこの難局を乗り切っていくためには、やはり男性、女性それぞれの属性の中で働き続けられる、働きがいを持って能力が発揮できる環境が必要だと思う。これは各企業だけではなくて、みんなで頑張っていかなければいけない(中川氏)。」、「若者は、入社した時には制度の必要性に気付いていないが、結婚し子どもができれば、制度のありがたさを実感できる。それまでは見守り、やがて育っていくことに期待している。会社は、ワークライフバランスなどの制度を作ることは経費がかかりマイナスというイメージを、きっぱり取り払ってもらいたい。力の付いた社員から仕事で戻してもらう。小さな投資で大きく会社に還元されているというイメージ。若い人も年齢の高い人も、男性も、女性も、自分以外の相手の立場を考えながら進んでいけば、会社は悪くならない(古志野氏)。」、「ふるさとのことを思う復興の意欲に燃えた若者が戻ってきて、私たちのほうが若者に育ててもらっている。被災地では、生きるということ、人のためになり必要とされることに気付き、自ら行動することで『確かに自分は人のために役立っている』という喜びを実感できる。

被災当時、一番力になったのは、お母さん方の笑顔。その日1日生き抜くのにやはりご飯を食べさせなくてはいけなくて、女性の力が一番必要だった。被災地の復興には、コンクリートで作るまちづくりと同時に、男女共同参画の視点、弱い人の立場に立った福祉の考え方を一番の根底として復興を進めることが大事だと思う(岩崎氏)。」、「ワークライフバランスは、『自分たちの生活がもっと良くなればいい』から、『次世代のためによりよい生活をどう準備できるか』ということに変わってきた。復興に必要なのは、人でできたまちづくりであり、男女共同参画やワークライフバランスは、人を育て、お互いに育っていくということ。一番身近な人間同士で理解し合い、お互いに自分が自分のため、そして誰かのために働く喜びを実感できるような環境、人作りをどう進めるのか、『生きていて良かった』と思える人間になり合えることが、男女共同参画、不安のない社会への第一歩と思う(藤沢氏)。」

パネリストの岩崎昭子氏、古志野純子氏、中川荘一郎氏、コーディネーターの藤沢久美氏(向かって右から)
パネリストの岩崎昭子氏、古志野純子氏、中川荘一郎氏、コーディネーターの藤沢久美氏(向かって右から)