「共同参画」2012年 6月号

「共同参画」2012年 6月号

行政施策トピックス2

女性の経済的エンパワーメントに関する諸外国の主な取組(下)
内閣府男女共同参画局総務課

本号では、女性の経済的エンパワーメントを進める企業の取組を促進するための、政府による支援策をご紹介します。前号も併せてご覧ください。

補助金給付

女性のエンパワーメントに積極的に取り組む企業を、ますます奨励して、こうした企業の活動を促進するために、政府が企業に財政的な支援を行ったり、優遇策を講じてインセンティブを付与することがあります。例えば、企業内保育所の設置、コンサルティング、育児休業等を取得した従業員の代替要員の確保、出産等により離職した女性が復職するための支援等の費用について、政府が企業に補助金を支給しています。特に韓国では、様々な取組が行われています。2012年に、「女性に親和的な都市」をソウル市等の30カ所から40カ所の自治体に拡大して、国と自治体の双方で、女性が働きやすい社会づくりとエンパワーメントを推進しています。

税制上の優遇措置

従業員に対して育児費用の支給や企業内保育所を設置することによって、従業員の育児を支援する企業に対して、一定の条件のもとに、政府が税を控除したり、社会保険料を免除したりしています。

例えば、イギリスは、2005年に、託児費用の支払いに充当できる「育児バウチャー」の提供に対する国民保険料の免除措置と、従業員に対する所得税控除を導入しました。

育児バウチャーは、託児費用の支払いに用いることができる金券で、使用者が提携するバウチャー提供企業または使用者自身が発行します。条件を満たした場合、週55ポンド相当(月単位では243ポンド相当)まで、従業員の所得水準にかかわらず国民保険料が免除されます。また、従業員が提供を受ける育児費用の補助に関して、国民保険料の免除に加えて、所得税控除が導入され、同じく週55ポンド相当までの補助が控除対象となります。

ドイツは、企業が従業員に対して、賃金のほかに追加的な保育費用補助手当を支給する場合、次の条件を満たす手当にかかる部分が非課税になります(所得税法第3条第33号)。その条件は、(1)従業員の子どもに就学義務がない原則6歳未満で、(2)定期的に保育施設に通っており、(3)その保育費用の補てんのためにのみ使用される場合、の3点を満たす場合です。企業に対する社会保険料負担義務も免除されます。使用者は従業員との間で、給与を引き上げる代わりに保育費用補助手当を受けるように取り決めができます。これは、労使双方に社会保険料免除と非課税というメリットがあります。なお、従業員の子どもが就学義務年齢に達した場合は、企業の保育補助費用は課税され、社会保険料負担義務も生じますが、使用者はその全額と社会保険料を事業経費として計上できます。

公共調達

女性は企業を経営する際に、資本や市場へのアクセス等、いろいろな困難に直面するので、そうした困難を克服するために、様々な支援が必要とされています。また、女性の経営する企業の多くは零細企業であり、ビジネスの基盤が弱いので、政府の公共調達において一定の条件を満たす女性が経営する企業を支援するしくみもあります。アメリカは、このような、政府との契約、公共調達の仕組みを用いて、企業の取組を促進するようなインセンティブを付与する手法により、女性のエンパワーメントを推進していることが特徴です。

アメリカは、2000年の「大統領令13157女性が所有する小規模事業の機会拡大令」により、政府調達契約において、女性が経営する企業と契約する割合を5%に引き上げるという目標を示しました。しかし、ブッシュ政権下ではそれを達成することができず、3.4%にとどまりました。そこで、オバマ政権では、2010年に「女性契約促進規則」を制定し、女性が経営する零細企業との契約額が最も低い83業種に焦点を当てて、この目標をより実効的に進めようとしました。さらに、2011年2月に、女性が経営する小規模ビジネス連邦契約プログラムを導入しました。対象となる企業は、1人またはそれ以上の女性が経営権の少なくとも51%を持っている等の条件があります。

さらに、アメリカの金融規制当局は、2011年7月に、「マイノリティと女性に関するインクルージョン室(Office of Minority and Women Inclusion)」を設置し、管理、雇用、業務のあらゆる領域でのダイバーシティ推進を進めていかなければならないとされました(金融改革法(ドッド=フランク法)第342条)。各金融規制当局は、企業との契約締結においてダイバーシティを最大限かつ公正に推し進める基準を策定しなければなりません。すなわち、契約締結にあたっては、契約相手先のダイバーシティ推進への取組を考慮事項に含めることとされています。ダイバーシティ推進が十分でないと判断される場合、同室は金融規制当局長に契約の打ち切りを助言したり、連邦政府契約遵守監督局へ照会したり、その他適切な対応をとります。ダイバーシティの推進状況は、同室から連邦議会に年一回報告されます。

この他、韓国は、公共機関は物品調達の際に女性が経営する企業の製品を調達しなければならない等、公共調達を用いた手法により、女性が経営する企業のビジネスを促進しています。

おわりに

この他、国連でも、女性の経済的エンパワーメントを強く進めようとしています。潘基文事務総長は、2012年3月に国連グローバル・コンパクトとUN Womenが共催した「第4回女性のエンパワーメント原則会合」や同月8日の国際女性の日に、男女の賃金格差やビジネスの意思決定への女性の参画率の低さを解決するため、各国政府、市民社会及び民間企業に対し、ジェンダーの平等と女性のエンパワーメントに全力を注ぐよう求め、それは基本的人権であり、女性だけではなくすべての人の利益を促進する力である、と述べました。ミチェル・バチェレUN Women事務局長兼国連事務次長は、女性が経済的にエンパワーした効果や利益は、女性のみにもたらされるのではなくすべての人に、また、国だけではなく企業や地域社会にもたらされることを指摘しました。

諸外国では、以上のように、女性の経済的エンパワーメントを実効的に進めるために、様々な取組が行われています。各国の取組についてのより詳しい内容は、「平成23年度版男女共同参画白書」や当局のホームページをご覧ください。

http://www.gender.go.jp/renkei/ikenkoukan/50/pdf/ref13.pdf