「共同参画」2012年 4・5月号

「共同参画」2012年 4・5月号

特集

第56回国連婦人の地位委員会の開催 内閣府男女共同参画局総務課

本年2月27日~3月9日に開催された第56回国連婦人の地位委員会の概要をご紹介します。

第56回国連婦人の地位委員会(CSW)が、2012年2月27日から3月9日まで(3月15日閉会式)国連本部(ニューヨーク)で開催され、日本からは橋本ヒロ子日本代表をはじめ、NGO代表、内閣府、農林水産省、文部科学省、厚生労働省、国連日本政府代表部、JICA、(独)国立女性教育会館からなる代表団が出席しました。

会合の様子
会合の様子

今回の国連婦人の地位委員会は、「農山漁村女性のエンパワーメント及び貧困・飢餓撲滅・開発・今日的課題における役割」を主要テーマに開催されました。

会合では、各国代表や国連機関、NGO代表等によるステートメントの実施、主要テーマに関するハイレベル円卓会合や対話型専門家パネル、各種テーマ(「ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための資金調達」及び「ジェンダー平等を進めるための若年女性、男性、女児及び男児の関与」)に関する対話型専門家パネルの開催、合意結論や決議についての協議等が行われました。

主要テーマに関するハイレベル円卓会合では、橋本代表より、我が国における農村女性のエンパワーメントに資する取組として「家族経営協定」(家族農業経営において、経営の方針や役割分担、労働条件等を家族間の話し合いにより取り決め、文書化するもの)を紹介しました。

ハイレベル円卓会合の様子
ハイレベル円卓会合の様子

対話型専門家パネルでは、農山漁村女性の経済的エンパワーメントを図るためのポイントとして、(1)経済政策におけるジェンダー視点に立った取組、(2)意思決定過程への参画促進(国、コミュニティ、家庭レベル)、(3)土地所有を含む生産性の高い資産、資金、技術、市場、適正な労働へのアクセスの確保が重要であることが述べられ、農山漁村女性の収入確保のため、土地の所有権等の権利、生産性向上につながる金融サービス、教育訓練、雇用機会確保等を中心に、各国の取組事例等の情報交換が行われました。さらに、農山漁村女性のエンパワーメントのためのジェンダーに配慮したガバナンス及び制度の役割について、それぞれの地域に住む人のニーズに合ったサービスを提供する必要があることが確認されました。例えば、モルドバ共和国における、行政サービス窓口を一元化してアクセスを容易にしつつ、ソーシャルカウンセラーを配置して、女性に対してもより充実したサービス提供を行う取組等が紹介され、好事例の共有が図られました。さらに、主に、調査やモニタリングの必要性、女性リーダーの育成、教育訓練、意思決定過程への女性の参画促進、女性の権利確立等について、各国の状況や取組が紹介されました。

我が国は、3月2日に、橋本代表よりステートメントを実施しました。

ステートメントは、東日本大震災に際し、世界各国から寄せられた支援に謝意を述べた後、農山漁村女性の現状と施策、国際協調に重点を置いた内容となりました。具体的には、(1)第3次男女共同参画基本計画において「活力ある農山漁村の実現に向けた男女共同参画の推進」を重点分野として掲げていると同時に食料・農業・農村基本法においても女性の参画の促進が明記されていること、(2)農水省は、方針決定過程への女性の参画の促進、女性の経済的地位の向上、家族経営協定の推進を通じた女性が働きやすい環境づくりに取り組んでいること、(3)新たな取組として、地域農業のあり方を定めるプランづくりの検討メンバーに女性が概ね3割以上参画することの要件化や「6次産業化」の推進にあたり女性の一層の能力発揮が重要との認識から事業予算額の1割程度を女性が優先的に利用できる「女性起業家枠」とするなど、女性の活躍に向けた支援策を24年度から充実強化すること等を述べました。また、国際機関との連携によるジェンダー主流化への支援策も重視し、UN Womenの活動に対し、積極的に貢献していく考えを表明しました。

今回の委員会の主な成果として、決議等が7本採択されました。うち「自然災害におけるジェンダー平等と女性のエンパワーメント」決議(日本提案、日本を含む50か国が共同提案国)は、自然災害と女性に関する様々な課題について、東日本大震災の経験や教訓を各国と共有し、国際社会の理解を深めるとともに、より女性に配慮した災害への取組を促進することをめざし、我が国として今回初めて提出したものであり、女性及び子ども、高齢者、障害者等の脆弱な人々への配慮の必要性とともに、それらの人々が参画することで包摂型の社会づくりを行うことの重要性を強調しつつ、(1)女性や子育て家庭の視点やニーズへの配慮、ジェンダーに配慮した復興プロジェクトの策定・実施、(2)女性に対する暴力への特別な配慮と人身取引を含む搾取の予防、暴力被害者の保護、法的その他のサービスの提供、(3)性別や年齢別のデータを整備し、ジェンダーの視点から災害救援を記録し、好事例を共有するとともに、防災計画等に活用、(4)女性ニーズに配慮するための女性ボランティアの役割の重要性の認識・奨励等を各国等に求めています。

ステートメントを実施する橋本日本代表
ステートメントを実施する橋本日本代表

また、この他の決議等としては、「女性性器切除(FGM)の撲滅」、「パレスチナ女性の状況及びその支援」、「紛争下で捕虜とされた女性・児童及び拘置された者の釈放」、「女性のエンパワーメントを通した妊産婦死亡・疾病の撲滅」、「先住民女性:貧困及び飢餓撲滅のための重要なアクター」、「女性、女児とHIV及びAIDS」が採択されました。

なお、主要テーマに関する合意結論は、ジェンダーに配慮した政策環境の強化、貧困・飢餓の撲滅のため農山漁村の持続可能な開発に向けた投資の促進や、市場、土地、資産、雇用、公共サービスへのアクセスの促進・拡大、意思決定過程への参画とリーダーシップの強化等について、合意に向け協議が行われましたが、一部につき各国間の意見の相違が埋まらず合意に至らなかったため、今会期の合意結論は不採択となりました。

今回のCSWにおいても、各国、国連機関、NGO等により様々なサイドイベント及びパラレルイベントが開催され、我が国のNGOも積極的に参加しました。国際婦人年連絡会、国連NGO国内婦人委員会、日本女性監視機構主催、国連日本政府代表部後援で、3月1日、「災害・復興とジェンダー平等─東日本大震災と津波」と題するサイドイベントが開催され、また、(社)農山漁村女性・生活活動支援協会主催で、3月1日、「食料の安全保障と持続的な発展における女性の役割:農村と都市の協力」と題するパラレルイベント、(財)アジア女性交流・研究フォーラム主催で、3月2日、「日本の農村女性のエンパワーメント─経済のグローバル化と東日本大震災の影響下で─」と題するパラレルイベント、及び特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ、日本弁護士連合会主催で、3月7日、「3.11から1年 東日本大震災と原子力発電所事故の影響を受けた地方女性たちの現状」と題するパラレルイベントがそれぞれ開催され、発表者及び参加者との間で活発な議論が行われました。

NGOサイドイベントの様子
NGOサイドイベントの様子

3月30日には、男女共同参画推進連携会議企画委員会主催の「第56回国連婦人の地位委員会(CSW)等について聞く会」が開催されました。橋本代表をはじめ、NGO代表の田中氏、山崎氏及びサイド・パラレルイベントを主催した各NGOの代表の方々から成果等について報告が行われた後、会場と質疑応答が行われました。

来年の第57回国連婦人の地位委員会は、2013年3月4日(月)~15日(金)の日程で、「女性及び女児に対するあらゆる形態の暴力の撤廃及び予防」を主要テーマに開催される予定です。

第56回国連婦人の地位委員会HP:

http://www.un.org/womenwatch/daw/csw/56sess.htm

内閣府男女局HP:

http://www.gender.go.jp/international/int_kaigi_int_csw/chii56-g.html