「共同参画」2012年 1月号

「共同参画」2012年 1月号

連載 その3 女性首長から

女性の強いつながりは 格差を変える
茨城県常総市長 長谷川 典子

私は1995年北京で開催された世界女性会議に出席し、世界各国から集まった女性たちのパワーに興奮と感動を覚え、今でも忘れることができません。

あれから17年が経ちました。女性の社会進出が大きく増えた現状にはありますが、男女間の格差は歴然としております。特に「男は仕事、女は家庭」という意識は、未だ高い割合を占めています。

常総市は、東京から50km圏内に位置し、自然豊かな環境にあります。江戸時代には鬼怒川を船が往来し、江戸へ米や野菜などを運び、人の交流も盛んでした。古くから文化と歴史を育んできた街で、商業も発展しました。大店の子女と一緒に、丁稚や子守の女性が寺子屋で読み書きそろばんを学んだという文献が残っております。当時、教育熱心なことや男女の格差無く教育を受けたことを大変誇りにしています。

当市は交通の便もよく、主として常磐自動車道と国道294号線が中心になりますが、今後、圏央道が完成することで利便性がさらに増し、現在の4つの工業団地がさらに発展すると期待しているところです。また、行政から意識改革をすべきであるとの観点から、行財政改革に努力しているところですが、現実は東日本大震災の復旧等もあり、大変厳しい行政運営のなかで悪戦苦闘の毎日です。

市長に就任して3年半が経ちました。生活に密着した施策を進めるという考え方に立ち、前半の2年間は子供の医療費の無料化や中核病院における小児科の常設、市内全域での公立学童クラブの無料化、中学校女子生徒を対象とした子宮頸がん予防ワクチンの接種などに取り組み、女性が働き易い環境づくり、そして子育てしやすい環境づくりに努めました。子育て家庭が、市有地を購入した場合に補助をする制度もユニークだったと思います。これは、住宅建築には市内の業者に依頼する条件ですので、市内業者の育成にもなりました。

一方、審議会・委員会等での女性の登用と管理職の女性の割合増加にも取り組んでまいりました。女性の占める割合の目標を30%に掲げていますが、まだ満足の数値には遠いようです。その理由は、審議会等ではあて職が多く、政策的なところは男性が占めていることなどが考えられます。しかし、2年前と比べると審議会では20.8%から23.9%に、市の管理職では6.5%から10%になりました。また、昨年の統一地方選挙で、当市でも4人の女性議員が誕生しました。

私は、女性市長だからという気負いは無くてよいと、この頃思うようになりました。子どもから高齢者まで住みやすい環境の創出に取り組み、安全で安心した生活の実現を目指すことが、女性の地位向上に繋がると思うからです。もちろん、市長として女性の感覚を発信しなければなりません。来年度は、DV被害と子どもの虐待に関する学習や0歳児保育の拡充を考えています。

昨年は、とてもうれしいことに3人の女性がノーベル平和賞を受賞し、世界中の女性に勇気を与えてくれました。世界中の女性がつながりを持つことこそが、格差を乗り越える大きな力になると思います。

茨城県常総市長 長谷川 典子
長谷川 典子/はせがわ・のりこ 昭和18年(1943)6月19日生まれ。東京家政大学家政学部児童学科卒業(昭和41年3月20日) 昭和41年(1966)4月より水海道幼稚園副園長、平成元年(1989)4月より岩井幼稚園園長を務め、現在に至る。平成3年(1991)5月から平成14年(2002)9月まで、水海道市議会議員(3期)。平成15年(2003)1月から平成20年(2008)7月まで、茨城県議会議員(2期)。平成20年8月(2008年)、常総市長に就任。趣味は旅行。