「共同参画」2012年 1月号

「共同参画」2012年 1月号

行政施策トピックス

調査報告「北欧諸国における立法過程や予算策定過程等への男女共同参画視点の導入状況等に関する調査」
内閣府男女共同参画局調査課

調査の目的及び方法

1995年に開催された第4回世界女性会議(北京会議)では、ジェンダー主流化と、その概念を予算策定過程に反映させる、いわゆるジェンダー予算と呼ばれる考え方について合意されました。第3次男女共同参画基本計画(平成22年12月17日閣議決定)ではジェンダー予算の在り方等について、「各国の具体的な実施状況等を調査した上で、男女別等統計(ジェンダー統計)も踏まえ、我が国におけるジェンダー予算の在り方等について検討する」こととされました。同計画に基づき今般は、予算策定過程及び立法過程へのジェンダー視点の導入を図る北欧諸国の調査を行いましたのでご報告します。

ノルウェー、フィンランドの2か国については委託調査会社(みずほ情報総研株式会社)が平成23年2月に現地を訪問し、聞き取り調査と文献の収集・調査を行いました。

また検討会1を設置し、日本への示唆等について検討を行いました。

北欧におけるジェンダー予算導入・実践プロジェクト

1970年代以降、男女共同参画を積極的に推進してきた北欧諸国では、2000年代に入り政府予算への男女共同参画の視点の導入(ジェンダー予算)を進めています。2004~2007年に北欧理事会を通じて5カ国2共同プロジェクトを実施し各国のパイロットプロジェクトの経験の共有と、ツールの共同開発等を進め、その後各国で恒常的な実践に移行しています。

ジェンダー予算導入の趣旨等

北欧諸国では、「経済的自立」が重視されており、「男女が等しく経済的自立を獲得し得る環境の整備」が政策目標とされているという背景があります。

そのため経済的自立に大きく影響する公的予算の編成・執行等、その配分は男女に等しく行われるべきである、という考え方に基づき、ジェンダー予算が導入されています。そして経済的資源の実効的配分という目的のほか、各府省の予算に男女共同参画の視点を導入することで、政府全体の「男女共同参画」の意識の再活性化を図るということも非常に重要な目的とされています。

具体的な実践内容

ジェンダー予算の中心的な内容は、各省の施策担当者による「(事前)影響評価」の実施と、その内容の予算書(序文)への記載です。

施策の影響評価は各府省の男女共同参画主管部署が担当します。各省の評価対象施策の選定及び(事前)影響評価の実施とともに、各省持ち回りで、各省間の連携会議を開催し、影響評価のためのマニュアルやガイドラインの作成、各省の研修のサポート、モデルプロジェクトの共同実施等も行っています。そしてこれらの取組を進める上で重要なものとしては(1)政府上層部のコミットメント、(2)実効性あるジェンダー影響評価手法の開発と実践、(3)研修プログラムやサポート体制の構築が挙げられています。

日本への示唆

我が国では、政府の施策の影響調査は男女共同参画社会基本法に基づき男女共同参画会議が実施していますが、より一層の男女共同参画社会の推進の観点から、北欧の仕組みを参考に各施策の実施主体においても、それぞれの施策の実施に際して自ら男女共同参画の視点からの評価を行うような方策を検討していくことが必要ではないかと考えられます。

詳細は下記URLでご覧いただけます。

http://www.gender.go.jp/research/pdf/nordic_resarch_report.pdf


1 有識者3名(鹿嶋敬実践女子大学人間社会学部教授、田中由美子独立行政法人国際協力機構(JICA))国際協力専門員、藪長千乃文京学院大学人間学部准教授)から成る。

2 デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデン。