「共同参画」2011年 12月号

「共同参画」2011年 12月号

連載 その3 女性首長から

日本一幸せなまち魚沼をめざして
新潟県魚沼市長 大平 悦子

魚沼市は尾瀬・奥只見を有し、周囲を越後駒ケ岳をはじめとする山々に囲まれ水と緑に恵まれたまちです。

市の面積の8割以上を占める森林は私たちの貴重な資源であり財産です。この森林を守り育てる取り組みを地域の活性化と結び付け、6次産業化につなげる挑戦を始めています。

21世紀は女性の時代といわれていますが、いつの時代においても家庭や地域社会を裏で支えてきたのは女性でした。ようやく女性が社会の表舞台に立つことを認められた時代になったということでしょう。表舞台・裏舞台の違いはあるにしても、女性が経済社会に大きく影響を与えてきたことは今も昔も変わりません。無理に女性が背伸びをする必要もなく、自然体で地域社会に関わって行けば良いのではないかと思っています。むしろ私たち女性がどれだけ経済や地域社会に大きく影響を与えているのか、正しく認識する必要があるかもしれません。

人が健やかに、幸せに、暮らせる家庭こそが全ての基本であり、その実現を目指し家庭を支えるのが行政の仕事と考えています。

「市民の健康は地域の活力」と考え、市長就任後、魚沼市は全国に先駆けて子宮頸がんワクチン接種の公費助成を表明し、実施しました。助成表明の当初から接種に向けて地元医師会と連携した保護者への説明会をはじめ、保健師、教育関係者らを対象としたワークショップ、PTA総会に出向いての説明会、市民公開講座の開催など積極的に啓発活動に努めました。その結果、高い接種率を得ることができました。この取組みは全国的にも注目を集め、その後全国市長会が予防接種等について国へ提言を行うなど、国による子宮頸がんをはじめ3種のワクチン接種助成事業に繋がりました。魚沼市から始まった動きが、ついには国を動かすまでに至ったことに驚いています。

一方、現在魚沼地域は深刻な医師不足と公立病院の再編に直面しています。この医師不足に対応するため、医療体制の整備を地元医師会とともに取り組み、本年度から医師会・医療機関と連携した地域医療魚沼学校を開校しました。「住民こそが医療資源、PPK(ピンピンコロリ)88魚沼」を合言葉に、住民自身がより健康意識を持ち健康管理を行えば、それは貴重な医療資源となり、不足している医療スタッフの一役になりうるという考えです。地元の医療関係者が地域指導者を育てる手助けを行い、地域や学校に出向いて講座を開催するなど、様々なプログラムを実行し、互いに勉強し合うといった全国初の試みも行っています。

子どもの頃から健康な生活習慣を身につけることは、将来にわたり地域の健康につながり、同時に医療負担を大きく軽減することにもなります。自分、家族、仲間、或いは地域の健康を守る方法を学ぶことで、住民自身が医療資源になることを目指しているのです。

また、市民起点による魅力あるまちづくりとして「パートナーシップで創る参画と自立のまちづくり」を掲げ、コミュニティの構築と協働のまちづくりを進めています。

今、魚沼市は様々な面で転機を迎えています。私は女性の持つ感性・特性を活かしながら、共に幸せなまちづくりを進めていきたいと考えています。

新潟県魚沼市長 大平 悦子
おおだいら・えつこ 1956年生まれ。富士短期大経済学部卒。99年小出町教育委員、2001年民生委員、03年小出町議を経て、町村合併により04年、魚沼市議。08年12月魚沼市長に就任。現在1期目。5人の子どもの母であり新潟県内で初となる女性首長。