「共同参画」2011年 11月号

「共同参画」2011年 11月号

連載 その4

「国際平和協力と女性の活躍」
~PKOと『女性、平和、安全保障』~

内閣府国際平和協力本部事務局(PKO)

国際平和のため日本も積極的に参加している国連平和維持活動(PKO)。このPKOにおいて、近年ジェンダーの視点を踏まえた活動や、女性の活躍が広がっています。今月からこのPKOの現状や活動に関し、5回にわたってご紹介します。

国連平和維持活動(PKO)とは

国連平和維持活動(United Nations Peacekeeping Operations:以下PKO)は、紛争を経験した当事国が、停戦合意、和平合意を締結した後の停戦・軍事監視や、治安維持及び和平合意促進のために当事国で国連が行う活動です。

1948年に最初のPKOである国連休戦監視機構(UNTSO)が設立されて以来、合計65件のPKOが設立され、現在、世界において15のPKOが展開しています。その多くは途上国にあり、半数はアフリカ諸国です。2011年10月現在、日本からもUNDOF(ゴラン高原)、MINUSTAH(ハイチ)、UNMIT(東ティモール)の3つのPKOミッションに計367名を派遣しています。

また、PKOに対して世界平和への貢献が認められ、1988年にはノーベル平和賞が授与されました。

図表1 UNDOF(ゴラン高原)で活動する司令部要員
図表1 UNDOF(ゴラン高原)で活動する司令部要員

図表2 UNMIT(東ティモール)で聞き取りをする女性の軍事連絡要員
図表2 UNMIT(東ティモール)で聞き取りをする女性の軍事連絡要員

図表3 MINUSTAH(ハイチ)の部隊の活動の様子
図表3 MINUSTAH(ハイチ)の部隊の活動の様子

変化してきたPKO活動

PKOの業務は、停戦・軍事監視が伝統的ですが、冷戦の終結とともに国際情勢が一変し、PKOも変化してきました。従来は国対国の国際紛争が主でしたが、冷戦後は、同じ国内での民族間や政治勢力間、独裁制権と民主主義など、国内で二つ以上の勢力による内戦へと変わってきたため、国際社会及びPKOに求められる役割も、複雑化、多様化してきたのです。その任務内容は当事国の状況に合わせて安保理決議によって決定されます。最近ではより良い活動を行うため、PKOが展開される前から当時国で活動しているWFPやUNICEF、UNDPなどの国連のカントリーチームの共同作業を含む「統合ミッション」が主流となりつつあり、平和定着、開発までを想定した活動にシフトしつつあります。この近年のPKOには、軍人以外に警察、文民専門家も含まれ、軍や警察の改革・再構築、選挙支援、復興・開発、組織・制度改革・構築を含む行政支援活動も行われることが多くなっています。

女性の参画を言及した最重要決議

2000年10月に採択された「国連安保理決議1325、女性、平和、安全保障」は、安保理決議史上初めて安全保障において、ジェンダー主流化を盛り込んだ歴史的な決議です。この決議では、女性は平和と安全保障の対等な担い手として、全てのレベルに等しく十全に参画させ、実際に活用することが加盟国の責務である、とあります。また、紛争下での男女へのインパクトの違いにも言及しており、紛争時に起きる性暴力やDV、人身取引等を認識した上で支援を行うことや、支援する側の軍人、警察、文民、人道支援者、政府関係者すべてに対し、派遣前にジェンダーの研修を受けることを要請する、等が盛り込まれています。

女性たちは、紛争下ではその性ゆえに特化した性暴力被害を受ける可能性が高い脆弱な存在ではありますが、同時に、平和の対等な担い手であるという安保理決議の認識に基づき、PKOには各国から女性の軍人、警察、文民専門家の登用を積極的に行っており、合わせて受入国の制度改革の際などのジェンダー配慮を提案し、促進しています。紛争を繰り返さず、恒久平和の基礎を築くため、PKO活動にも、ジェンダー視点が極めて重要です。

(内閣府国際平和協力本部事務局

国際平和協力研究員 与那嶺 涼子)