「共同参画」2011年 9月号
行政施策トピックス
政治分野、行政分野、雇用分野及び科学技術・学術分野における
ポジティブ・アクションの推進方策について(中間報告)
内閣府男女共同参画局推進課
1.はじめに
本年3月に、男女共同参画会議 基本問題・影響調査専門調査会の下にポジティブ・アクション ワーキング・グループを設置し、政治分野、行政分野、雇用分野及び科学技術・学術分野に重点を置いて、ポジティブ・アクションの具体的な方策を検討してまいりました。本年7月20日に開催した第2回基本問題・影響調査専門調査会において、中間報告を取りまとめましたので、ポイントをご紹介します。
2.ポジティブ・アクションの必要性
我が国における女性の参画は徐々に増加しているものの、他の先進諸国と比べて低い水準であり、その格差は拡大しています。これは、我が国では、固定的性別役割分担意識や女性の能力に関する偏見が根強く、男女の置かれた社会的状況において個人の能力・努力に寄らない格差があることに起因すると考えられます。
女性の参画が進んでいないという現状について、危機感を社会全体で共有しつつ、暫定的に必要な範囲において、女性の積極的な機会を提供するポジティブ・アクションを進めていくことが必要です。
3.ポジティブ・アクションの考え方
ポジティブ・アクションを一義的に定義することは困難ですが、一般的には、社会的・構造的な差別によって不利益を被っている者に対して、一定の範囲で特別の機会を提供することなどにより、実質的な機会均等の実現を目的として講じる暫定的な措置のことをいいます。
ポジティブ・アクションには、多種多様な手法があります。例えば、(1)一定の人数や割合を割り当てることによって実現するクオータ制、能力が同等である場合に一方を優先的に取り扱うことによって実現するプラス・ファクター方式など、指導的地位に就く女性等の数値に関する枠などの設定により、その実現を確保する方式、(2)指導的地位に就く女性等の数値に関して、達成すべき目標と達成までの期間の目安を示し、その実現に向けて努力するゴール・アンド・タイムテーブル方式、(3)研修の機会の充実、仕事と生活の調和など基盤整備を推進する方式、などがあります。
こうした各機関・団体の取組を推進するための国の方策についても、取組の義務付けや、政策的に誘導するインセンティブ付与、自主的な取組の要請など、働きかけの程度に応じて様々なレベルがあります。こうしたバリエーションの中から、各団体の特性に応じて最も効果的な方法を選択することが重要です。
また、企業、大学などにおける採用・登用はいわゆる「能力主義」の下で行われるのが一般的ですが、能力の評価基準が必ずしも客観的とは限らないことや、評価基準が男女で同様に適用されない場合などもあり、採用・登用の際には、女性に対する機会の平等を実質的に担保するポジティブ・アクションの検討も有効です。
さらに、ポジティブ・アクションは、女性本人だけでなく、社会全体にとってもメリットがあり、女性にとっても男性にとっても生きやすい社会である男女共同参画社会を実現する最も効果的な施策の一つであることのアピールが必要です。
4.各分野におけるポジティブ・アクションの推進方策
中間報告では、各分野についての検討を行い、以下のとおり具体的な推進方策を盛り込んでいます。
(1)政治分野
○女性の政治参画に関する社会的気運の醸成
・我が国と世界の状況を本年度白書の特集等を活用し、広く周知
・政党に対し女性候補者の増加とポジティブ・アクションの導入の検討を更に働きかけ
○クオータ制等の検討に資する具体的事例の提示
・政党関係者の間で具体的な議論が喚起されるよう、87か国で導入されているクオータ制の取組等の中から、我が国の参考になりうる事例等を更に検討・分かりやすく提示
○選挙制度と女性の政治参画
・小・中・大選挙区制比例代表制、更には定員・区割りといった選挙制度は女性議員の選出されやすさに大きく影響。選挙制度等の在り方の検討の際には、女性の政治参画を重要な論点として考慮することが必要。
(2)行政分野
○女性国家公務員の採用・登用の促進
・各府省における「女性職員の採用・登用拡大計画」の着実な実施
・第3次男女共同参画基本計画の成果目標の確実な達成
○国のあらゆる施策における男女共同参画の視点の反映
・私的懇談会等における女性の参画の拡大
○国家公務員制度改革の推進
・採用から幹部登用までの各段階に応じた人事制度改革において、女性登用の促進のための官民人材交流、職員公募の一層の推進
(3)雇用分野
○具体的な目標の設定の促進等
・ゴール・アンド・タイムテーブル方式等を取り入れた企業の具体例・成功例の公表、情報共有
・ポジティブ・アクションに取り組む企業を表彰等により積極的に評価
○公共契約を通じた推進方策の検討
・男女共同参画に関連する調査等の事業について、男女共同参画等に積極的な企業を評価
・上記以外の事業においても、男女共同参画に積極的な企業を評価するための具体的方策の検討
○補助金等における推進方策の積極的な活用
・先進的な事例としての男女共同参画を要件とするクロスコンプライアンスの積極的な活用の検討・推進
(4)科学技術・学術分野
○具体的な目標の設定の促進
・ゴール・アンド・タイムテーブル方式やプラス・ファクター方式等に取り組む研究機関等の具体例・成功例の公表、情報共有
○女性研究者の参画の拡大に向けた環境づくり
・コーディネーターの配置、出産・子育て期間中の研究活動を支える研究・実験補助者等の雇用の支援など、環境整備の取組の支援
・研究費の申請等に際し、出産・育児を考慮した年齢制限の緩和や業績評価、任期等の弾力化などの研究を続けやすい環境整備の充実・促進
・日本学術会議に対して、科学者コミュニティにおける女性の参画を拡大する方策についての検討を要請
※中間報告の詳細はHPをご覧下さい。
http://www.gender.go.jp/danjo-kaigi/kihon/kihon_eikyou/index.html