「共同参画」2011年 3月号

「共同参画」2011年 3月号

スペシャル・インタビュー

明るく、楽しく、元気よく!!
新ふくしま農業協同組合 代表理事組合長 吾妻 雄二

今回は、女性の参画に積極的に取り組まれている、新ふくしま農業協同組合の代表理事組合長の吾妻雄二さんにお話を伺いました。

女性の感性でレベルアップ

― はじめに、JA新ふくしまの基本理念などについてお聞かせください。

吾妻  福島は、農業国でして、ご存じのように果樹栽培が多いところです。私どものJAは、新たな創造に挑戦するということで、基本理念に「創造と挑戦」を掲げ、地域の皆さんの暮らしの豊かさと安心を支援しながら、地域の皆さんと一緒になって発展していき、認めていただけるような組織を目指しています。そして、福島の良い自然条件の中で農業をさせていただいていますから、しっかりと振興をして、後継者がやってみたいという農業のお手伝いをしたいと考えています。

― 主な活動とその特徴についてお話ください。

吾妻 「安心して暮らせる豊かな地域社会の実現と地域への貢献」ということで、農業の楽しさを感じてもらうことだけでなく、食育という観点から、学校教育支援事業を長年やっております。特に果物地帯ですから、例えばリンゴ、桃などの花粉交配から収穫まで子どもたちが体験します。今の子どもたちは農業体験コースよりも食体験コース、例えば、出来た果物でジャムづくりをすることなどに興味があるようですね。

― JA新ふくしまは、県内で女性役員や女性総代が最も多いということですが、女性の参画に関するお考えをお聞かせください。

吾妻 今、38名の理事のうち、女性が8名となっていますが、特に農業の場合は女性が主なんですね。私は家を空けることが多い酪農の仕事に就いていましたが、妻がいなかったら牛なんか飼うこともできなかったでしょう。農業の現場そのものは女性が大変な活躍をしているのに、農協という組織に入ってくると、女性の役員はいないし、発言の場が非常に少ない。全体の運営や方向性を決めるときに女性の声が届かない。

いろいろな本を読み、女性の考え方がこれからの農協には必要じゃないかと思いました。今までのように伸びているときならいいのですが、こういう経済状況、環境の中ではと思ったのです。ちょっと違った目線で見ないと、これからの農協は生き残っていけないと思ったのです。

特に、私どもは、直売所を7店舗で展開しているのですが、利用していただく方は、ほとんどが女性なんですね。ですから、当然女性の目線でものを作ったり、女性の意見を取り上げ尊重しながらやっていかないと、経営もうまくいかないのではと考えたんですね。

― 女性の参画により変化は見られましたか。

吾妻 理事会に女性が入ってくることによって、男性の理事のレベルアップにもなりましたね。建設的で経営的な発言が多くなりました。女性の発想によって、男性がスキルアップしました。

それから、今の理事会の前身の経営管理委員会のときは、女性部代表ということで女性だけ会議に5人並んでいたのですが、今は地区代表という形なので、男性の中にポンポンと入っているんです。地区代表ですから、女性部だけの考えではなくて、農業協同組合全体の運営をどうするかといったことまで関与するようになってきますから、非常にいい傾向だと思います。

― 女性の参画に関してご苦労された点などについてお話ください。

吾妻 農村社会の女性の場合は、もう少し働く場といいますか、活躍する場があってもいいし、本人もやってもいいと思っているんですけれども、それは周りである程度セッティングをしてやらないとなかなか難しいと思います。「私、やります」と言ってもなかなかできないから、こちらでそういう活躍の場をもっと提供して、出てもらうことが必要だと思います。最近の女性は積極的ですので、いろいろなところに出て、意見を出してもらう仕組みやシステムづくりを、農協としてやらなくてはと思っています。

今、介護事業や、直売、教育文化活動等、女性の力がないとできない事業が増えてきているんですよ。

そういった意味でも、近い将来、女性の組合長さんが誕生するんじゃないでしょうか。だから、早い時期に女性の活躍の場をもっと広げることが必要だと思います。

それから、どうしてもJAの場合は、他の分野に比べると管理職の登用が遅れています。もっと積極的に女性に活躍の場を提供する必要があるんじゃないでしょうか。

― 農業の分野でも高齢化の問題が深刻だと思いますが。

吾妻 実は、技術ばかりじゃなくて、いろいろな経営の指導とか、今、農協では農業生産法人を立ち上げたんですけれども、その中で先生役をお願いしているんですよ。営農指導員とか若くなってきているものですから、どうしても経験が浅い。ですから高齢者の方に営農指導員を育ててもらうためのアドバイザー的な形でお願いしています。

それから、後継者というか若い人たちに対する工夫として、青年農業経営塾というものを立ち上げまして、今までは技術指導が多かったのですが、いろいろな観点からものを見れるような、販売、管理などの指導も。

― 最後に、全国の農業に従事する女性にメッセージを。

吾妻 農業に携わる女性の場合は、まだまだ男性に頼っている部分がありますので、もう少し自立といいますか、自分で判断しながら、自分の足できっちりと進んでいけるような女性が、農業の中で育っていただければありがたいなと思います。例えば商店主だったりすると、夫が入院したりしても、その店を妻が続けたりしてますけど、農業の場合は、夫がちょっと入院したとか、ちょっと具合が悪いというと、桃の木を切ってしまわなくちゃならないとか。そういうことじゃなくて、経営者というのは、どこか欠けてもきっちりそれを維持していくというのが経営者なので、そういう経営者的な発想に女性もなっていただきたいというのが一番ですね。単なる農業のお手伝いではなくて、本当に経営者になって、マネジメントを自分がやるよ、くらいになってもらえれば、日本の農業も少し変わっていくのかなと考えています。

― 本日は、お忙しい中、ありがとうございました。

吾妻 雄二 新ふくしま農業協同組合 代表理事組合長
吾妻 雄二
新ふくしま農業協同組合 代表理事組合長

あづま・ゆうじ/
昭和22年 福島市生まれ
昭和40年 自家農業に就農(酪農)
昭和60年 信夫地方開拓農業協同組合代表理事組合長
平成10年 しゃくなげ酪農業協同組合代表理事組合長
平成16年 新ふくしま農業協同組合理事
平成19年 新ふくしま農業協同組合経営管理委員会会長
平成22年 新ふくしま農業協同組合代表理事組合長