「共同参画」2011年 2月号

「共同参画」2011年 2月号

特集

子ども・若者白書(旧青少年白書)
内閣府政策統括官(共生社会政策担当)

内閣府政策統括官(共生社会政策担当)では,平成22年12月3日(金)に,平成22年版子ども・若者白書を公表しました。ここでは,そのポイントを簡単に紹介します。

1 はじめに

平成22年は、4月に「子ども・若者育成支援推進法」(平21法71)(以下、「推進法」という。)が施行され、7月には、推進法に基づく子ども・若者育成支援推進大綱である「子ども・若者ビジョン」(平成22年7月23日子ども・若者育成支援推進本部決定)(以下、「ビジョン」という。)が策定される等大きな節目の年でした。

ここでは、推進法を受けて、12月に、新たに法定白書として国会に提出された「子ども・若者白書」について、簡単に紹介します。

2 推進法から白書まで

(1)子ども・若者育成支援推進法

有害情報の氾濫等子ども・若者をめぐる環境の悪化やニート、ひきこもり、不登校等子ども・若者の抱える問題の複雑化、さらには、従来の個別分野における縦割り的な対応では限界が生じていることを背景として、

(1) 国の本部組織、子ども・若者育成支援のための大綱(子ども・若者育成支援推進大綱)、地域における計画、ワンストップ相談窓口等子ども・若者育成支援施策の総合的推進のための枠組み整備

(2) 社会生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者を支援するための地域ネットワーク整備

を主な内容とする推進法が平成21年7月に成立し、平成22年4月1日に施行されました。

(2)子ども・若者ビジョン

推進法の施行後、速やかに子ども・若者育成支援推進大綱を策定するため、平成22年1月から政務三役及び有識者からなる「子ども・若者育成支援に関するワーキングチーム」において検討を開始しました。

また、その過程では、内閣府特命担当大臣と子ども・若者との対話集会を開催しました。

その後、4月1日の推進法の施行に伴い、内閣府に、特別の機関として「子ども・若者育成支援推進本部」(以下、「本部」という。)を設置しました。

推進法では、本部の所掌事務は、

(1) 子ども・若者育成支援推進大綱を作成し、その実施を推進すること

(2) 子ども・若者育成支援に関する重要な事項について審議すること

等としており、また、本部の本部長は内閣総理大臣、副本部長は内閣官房長官及び青少年育成を担当する内閣府特命担当大臣、本部員は国家公安委員会委員長、総務大臣、法務大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、経済産業大臣、その他本部長及び副本部長以外の国務大臣のうちから内閣総理大臣が指定する者とされ、推進法に規定する以外の全国務大臣が、内閣総理大臣により指定されました(本部の設置に合わせ、従来の「青少年育成推進本部」は廃止されました。)。

さらに、4月2日には、第1回の本部を開催し、「子ども・若者育成支援推進大綱の作成方針」を決定しました。

そして、国民や地方公共団体からの意見募集等を行った上で、7月に、推進法に基づく子ども・若者育成支援推進大綱としてビジョンを策定しました。

なお、ビジョンの策定に合わせ、従来の「青少年育成施策大綱」(平成20年大綱)は廃止されました。

(3)子ども・若者白書

昭和31年から、青少年の現状と青少年に関する施策を広く国民に紹介し、その理解を得るため、「青少年白書」(非法定白書)が作成されていました。

そして、推進法において、「政府は、毎年、国会に、我が国における子ども・若者の状況及び政府が講じた子ども・若者育成支援施策の実施の状況に関する報告を提出するとともに、これを公表しなければならない。」(同法6条)と定められたことを受け、平成22年12月に、新たに法定白書として、「子ども・若者白書」を作成し、国会に提出しました。

「子ども・若者白書」は、「青少年白書」の構成を基本的に踏襲しており、「第1部 子ども・若者の現状」、「特集」及び「第2部 子ども・若者に関する国の施策」から構成されています。

また、第2部の各章立て等については、「子ども・若者ビジョン」の構成を踏まえ、新しく整理しています。

以下、2つの部及び特集に分けて、「子ども・若者白書」のポイントを簡単に紹介します。

3 子ども・若者の現状

第1部の「子ども・若者の現状」では、子ども・若者関連の各種データに基づき、子ども・若者の現状について紹介しています。 主なポイントとしては、以下のようなものがあります。 (1)子ども・若者人口 子ども・若者(0歳~29歳)人口は、3750万5000人(総人口の29.4%)であり、子ども・若者人口及び総人口に占めるその割合は、昭和50年以降ほぼ一貫して減少しています(図表1参照)。

図表1 子ども・若者人口及び総人口に占める子ども・若者人口の割合の推移
図表1 子ども・若者人口及び総人口に占める子ども・若者人口の割合の推移

(2)出生数・合計特殊出生率

出生数は、平成21年は減少し107万35人となりました。

合計特殊出生率は、平成17年に最低の1.26となりましたが、その後は上昇し、平成21年は前年と同率の1.37となっています(図表2参照)。

図表2 出生数及び合計特殊出生率の年次推移
図表2 出生数及び合計特殊出生率の年次推移

(3)正規の職員・従業員以外の雇用者比率(在学者を除く)

若者について、正規の職員・従業員以外の雇用者(在学者を除く)の比率をみると、15~19歳では40.2%と、20~24歳の32.5%や25~29歳の27.5%と比較して高い水準にあります(図表3参照)。

図表3 正規の職員・従業員を除いた雇用者(在学者を除く)の比較の推移
図表3 正規の職員・従業員を除いた雇用者(在学者を除く)の比較の推移

(4)若者の失業状況

若者失業率は、景気後退の影響から上昇しており、全年齢計との比較では、常に高い状態が続いています(全年齢計5.1%に対し、15~19歳9.6%、20~24歳9.0%、25~29歳7.1%)(図表4参照)。

図表4 若者失業率の推移
図表4 若者失業率の推移

(5)ひきこもりの状況(内閣府調査)

内閣府で実施した調査によると、狭義のひきこもり(ふだんは家にいるが、近所のコンビニなどには出かける、自室からは出るが、家からは出ない、自室からほとんど出ない)は、推計23.6万人、準ひきこもり(ふだんは家にいるが、自分の趣味に関する用事の時だけ外出する)は、推計46.0万人となり、これらを合わせた広義のひきこもりは、推計69.6万人となっています(図表5参照)。

図表5 ひきこもり群の定義
図表5 ひきこもり群の定義

(6)児童虐待の状況

全国の児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数は増加を続け、平成21年度には4万4211件(前年度比3.6%増)となっています(図表6参照)。

図表6 児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数の推移
図表6 児童相談所における児童虐待に関する相談対応件数の推移

4 子ども・若者ビジョン~先進的な取組事例の紹介~

特集では、毎回トピックス等を設定し、紹介しています。

今回の特集では、ビジョンの理念や重点課題を踏まえ、実際に行われている先進的な取組事例を紹介しました。

具体的には、神奈川県のシチズンシップ教育、川崎市の子どもの権利条例、滋賀県の子ども県議会、新潟県三条市の子ども・若者総合サポートシステム、薬物依存者やその家族に対する立ち直り支援活動等について、各自治体及び団体の方に執筆いただいた文章を掲載しています。

5 子ども・若者に関する国の施策

第2部では、ビジョンの構成に沿って、平成21~22年度前半に行われた子ども・若者に関する各府省の政策を中心に紹介しています。

その章立ては、以下のようになっています。

第1章 子ども・若者育成支援施策の総合的・計画的な推進

第2章 すべての子ども・若者の健やかな成長の支援

第3章 困難を有する子ども・若者やその家族の支援

第4章 子ども・若者の健やかな成長を社会全体で支えるための環境整備

第5章 今後の施策の推進体制等

特に、第5章第4節では、内閣府において、平成21年度から実施している「青少年目安箱事業」について紹介しています。

同事業は、青少年から直接声を聞く仕組みを整備するため、子ども・若者を対象として、「ユース特命報告員」を公募し、その意見等をEメールにより報告してもらうものです。

6 今後の予定

次回の「子ども・若者白書」は、平成23年度前半を目途に作成される予定です。