「共同参画」2010年 12月号

「共同参画」2010年 12月号

特集

APEC 女性と経済活動(4)
内閣府男女共同参画局総務課

学生ボランティア

女性が仕事を通してキャリアを積んでいくことに関心・意欲がある学生から選ばれた学生ボランティアは、基調講演・パネルディスカッション・分科会のスピーカーのサポート、これらのセッション運営、展示の案内・通訳、事務局の補助等の業務に、熱心に取り組みました。

HPを通して6月に応募した147人の学生(短期大学生・大学院生を含む)の中から、応募動機等をもとにした書類審査、語学・意見交換による面接審査(東京・大阪)を経て、首都圏を中心に、北海道や関西の大学も含めて、64人(男性2人・女性62人)が選ばれました。

スピーカーのサポートを主に担当した学生は、スピーカー1人ずつに配置されました。受付で、担当スピーカーと会い、3日間のスケジュールを確認し、各プログラム会場への誘導、担当スピーカーが登壇する分科会等の運営に関わるだけでなく、資料を修正したい、別のスピーカーとすぐに打合せをしたい等の直前の要望を、事務局へ確実に伝達し、迅速に対処しました。

事務局の補助を主に担当した学生は、ブース展示・販売展示にかかる案内・通訳、分科会等で同時通訳レシーバーや資料の配付、繁忙状況に応じて受付や開会式等の来場者誘導・座席案内のみならず、インフォメーションボードの伝達事項作成、スタッフの弁当配付、文化イベント団体が使用するハサミ等の危険物管理等に、率先して携わりました。

また、2日目夕方のエクスカーションでは、学生の希望をふまえ、9つのコースに12人の学生が同行し、過半数を占める海外の参加者を主な対象として、通訳を含めた案内に加わりました。

さらに、一部の学生は、2日目夕方から夜にかけて開催された提言起草委員会に向けた準備、提言案のコピー・配付等、同委員会の円滑な運営に協力しました。

加えて、各々の業務の合間を活用して、セッションにおける各エコノミーのスピーカーによる活発な議論に、参加することができました。

本会合に出席したAPECエコノミーの女性リーダーと直に接し、そのパワーを目の当たりにしたことで、「3日間が刺激的であり、将来を考える上で視野が広がった」「自分を見つめ直す最高の機会」等、将来を担う学生らしい感想が寄せられました。下記は、3人の学生からの感想です。

閉会式後に会場で撮影された集合写真
閉会式後に会場で撮影された集合写真
(左下はスピーカーの1人:アメロウ・ベニテス・レイエス氏)

大河原 里絵さん(早稲田大学)

私は、スピーカーの1人であるチリのエリザベス ボン・ブランド氏を3日間サポートし、2日目の夕方は、東京女子医大へのエクスカーションに引率しました。

WLNに学生ボランティアとして参加したことにより、経済・女性・将来という3つのキーワードを改めて考えさせられました。

まず、高校生の時にチリに留学した経験を持つ私は、同氏との会話の中で、日本とは比べ物にならない格差社会を目の当たりにしたことを思い出しました。それと同時に、安定した経済が社会の基盤作りに必要不可欠であり、チリの今後の発展を垣間見た気がしました。

次に、基調講演、パネルディスカッションや分科会にも一部参加でき、まだまだ男性中心社会である日本を含めたAPECエコノミーにおいて、女性が経済活動に参画し、起業やキャリア形成への意識を高めていくことは、全世界に共通する重要課題であると考えるようになりました。

また、世界をリードしている女性達が集ったWLNにて、自分が将来自立した女性として、どのような形で社会に貢献していけるかを念頭に置きながら、さまざまな方の考え方、生き方から良い刺激を受けました。

大学に入学し、勉学に励む以外の自由な時間を如何に過ごすかを模索していた私にとって、WLNでの経験は実際に将来社会で活躍する一女性として、経済とどう関わっていくかを考える絶好の機会となりました。

岡田 加奈子さん(関西外国語大学)

私は、学生ボランティアとして、WLNに2日間参加しました。私の仕事は、主に事務局補助であり、会場内の案内・誘導や通訳などでした。また、東京電力のショールームへのエクスカーションに同行し、海外からの参加者に対する通訳等も担当しました。

私がWLNに参加しようと思ったきっかけは、海外で活躍されている女性リーダーや、他大学の学生と関わることに興味を持ち、もっと社会のことも知りたいと思ったからです。

そんな中、WLNへの参加に向けて「女性と経済」について調査・準備していくうちに、他国と比べて日本ではまだまだ女性が経済活動において活躍しにくい状況があることを知りました。

何事においても、意識を変えるには時間がかかると思いますが、まずは女性自身が行動を起こさなくてはならないと思います。今回参加された各国・各地域の女性リーダーたちはさまざまな分野で活発に活動されているパワフルな方々で、積極的にネットワーク作りをされていた姿に大変刺激を受けました。私も将来はこれらの方々に続き、経済活動に積極的に参加し、社会や人々にいい影響を与えられるようになりたいと思いました。

女性にとって活動しやすい社会=男性が活動しやすい社会だと思うので、女性が活躍できる社会にするためには何が求められているのか、などの知識を増やしていきたいと思います。今回のWLN参加は私にとって大変貴重な経験になりました。

棚田 壮太さん(横浜市立大学)

私は、今年2月にシアトルへ留学した際、米国APEC本部(NCAPEC)で6ヶ月間のインターンを経験しました。NCAPECは、民間企業、米国政府とAPECとの懸け橋となりアジア太平洋地域における経済関連問題を扱っています。係った全ての業務を通じAPECの影響力、重要性を強く感じていたところ、WLN会合と出会う機会にも恵まれました。

今回の会合では、私は米国代表であるパトリシア・フォレイ・ハイネン氏のサポートをしました。同氏は貧困者向けの融資であるマイクロファイナンスの専門家として世界中を飛び回り、社会的地位や信用度の低さから融資を受けられず苦しむ女性達にビジネスチャンスを与える活動を続けています。

3日間を通して、時間の許す限り、自らの経験を参加者と共有、共感する同氏のバイタリティに圧倒されました。パネルディスカッションでは、男尊女卑が強く残る途上国でも輝き活躍する女性たちの話を、同氏が紹介し参加者に大きな勇気を与えたと思います。また、提言起草の議論では、自らのビジネス経験を活かし、実現性の高い提言へ大きく貢献し、そのスマートな論理展開に感銘を受けました。

今回の会合に係られた多くの素晴らしい方々がいる限り、女性を取り巻く環境は今後も更に改善されていくと確信しています。この経験を活かし、同氏のように、自分という存在が社会や人々に良い影響を与えられる人間になれるよう、今後も努力していきたいと思います。