「共同参画」2010年 12月号

「共同参画」2010年 12月号

特集

APEC 女性と経済活動(1)
内閣府男女共同参画局総務課

APECと女性

2010年は、日本がAPEC(1)議長を務める年です。APECというと各エコノミー(2)の大統領や首相が集まり、開催地の民族衣装を着て写真におさまるAPEC首脳会合をイメージされる方が多いかもしれません。実際は、議長エコノミーの各地で1年を通して様々なAPEC関連会合が開催されます。今年であれば、高級実務者会合(2月、広島市)を皮切りに、貿易(札幌市)、エネルギー(福井市)、観光(奈良市)、中小企業(岐阜市)、食料安全保障(新潟市)等日本各地でAPECの様々な課題を議論する大臣会合等が開催され、その議論の集大成が11月の首脳会合(横浜市)と位置づけられています。

APECにおいては、女性の経済活動を取り巻く課題も重要事項として議論されています。今年は、3つの女性関連会合が開催されました。女性リーダーズネットワーク(WLN)会合(9月19~21日、新宿)、男女共同参画担当者ネットワーク(GFPN)会合(9月23日、嵐山町)、女性起業家サミット(WES、10月1日、岐阜市)です。これらの女性関連会合は一連の流れとして開催されました。WLNで、民を中心とする女性リーダーが、女性の経済活動を取り巻く課題全般を議論し、GFPNは官の政策担当者がWLNでの議論も踏まえて取組を議論し、WESは特に女性の起業促進に注目した会合です。これらの会合のうち、大規模かつ最も歴史が長いWLNを中心に開催の模様を紹介します。

(1)Asia-Pacific Economic Cooperation:アジア太平洋経済協力

(2)21エコノミー:豪州、ブルネイ、カナダ、チリ、中国、中国香港、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、パプアニューギニア、ペルー、フィリピン、ロシア、シンガポール、チャイニーズ・タイペイ、タイ、米国、ベトナム

WLNの概要

WLNは、APEC参加21エコノミーの産業界、学界、行政、民間団体などの女性リーダーからなるネットワークで、男女共同参画社会の実現のために女性達が経済活動の発展に寄与することを目的としています。具体的には、APEC内における女性の経済活動を促進する施策を盛り込んだWLN提言をとりまとめたり、活躍する女性とWLN会合で身近に接することにより触発される機会を得たり、女性リーダー同士のネットワークを構築する貴重な機会となっています。

1996年にフィリピンで初めて開催されて以来毎年議長エコノミーで開催され、毎回300~500名が参加してきました。今年で15回目ですが、日本では今回が初開催で、APEC内の18エコノミーから約600名の参加者が集まりました。

岡崎大臣、内永委員長と各エコノミー代表
岡崎大臣、内永委員長と各エコノミー代表

ハイレベルからのメッセージ

開会式には、菅直人総理大臣、岡崎トミ子内閣府特命担当大臣(男女共同参画)、内永ゆか子WLN実行委員長が出席し、WLNに寄せる期待を述べました。

菅総理は、「経済成長に向けて、女性の力をいかに活かしていくのかが課題である。日本では、M字カーブが存在し、育児期の女性の能力を発揮しきれていない状況がある。年内に第3次男女共同参画基本計画を策定するが、潜在的な女性の力を活用できる基本計画を作りたい。WLNでの議論がAPEC各エコノミーの活力の源として、女性の活躍の機会拡大に大きな役割を果たすことを期待する」と述べました。

岡崎大臣は、「APEC地域は各エコノミーの連携により世界経済の発展に貢献してきたが、女性の活躍促進による成長の余地は大きく残されており、APEC成長戦略の重要な構成要素の一つである「あまねく広がる成長」実現のカギである」とWLNにおける議論の意義を述べました。

内永WLN実行委員長は、「ビジネスモデルの変化、人材等の多様化が求められる昨今において『女性による新たな経済活動の創造~人、自然、文化を生かす』というメインテーマのもとに、女性の組織におけるキャリア構築と女性の起業について議論する。建設的な議論を経て、参加者の皆さん自身が実りある成果を出してほしい」と会合への意気込みを述べました。


  •  
  • 菅内閣総理大臣
    菅内閣総理大臣
  • 岡崎内閣府特命担当大臣(男女共同参画)
    岡崎内閣府
  • 内永WLN実行委員長
    内永WLN実行

WLN会合の概要

今年のWLNでは、「女性による新たな経済活動の創造~人、自然、文化を生かす」というテーマを設け、1日目はWLNの役割を含む全般的課題、2日目は組織における女性、3日目は女性の起業をめぐる課題を中心に、議論が行われました。

具体的には、国際機関高官やAPECエコノミーから参加した女性CEOや女性起業家等による、3つの基調講演、3つのパネルディスカッション、6つの分科会において活発なディスカッションが行われました(「主な会合プログラム」参照)。また、こうした議論を踏まえて、WLNからAPEC首脳・閣僚に向けた提言が検討され、最終日に採択されました。

また、WLNは、参加者同士のネットワーク構築を目的の一つとしています。日本舞踊のイントロによる開会式で幕をあけましたが、歓迎レセプション、昼食会、夕食会、エクスカーション等での日本文化の紹介や懇談もあり、参加者が交流を深める場となりました。

「日舞扇乃会」による日本舞踊
「日舞扇乃会」による日本舞踊

参加型の会合運営

今回の日本開催では、実行委員会において会合の企画を進め、パネルディスカッション、分科会、展示、エクスカーション、文化イベント等の企画・運営等は女性団体等によって行われました。WLNの企画を通じて、これまでコンタクトのなかった海外の講演者と交流するなど、団体等自体のネットワーク構築を促進するメリットもあります。

また、学生ボランティアの活躍も今回のWLNの特徴です。女性リーダーに身近に接する機会を得て、触発された学生も多かったようです。

来年に向けて

来年のWLNは9月にサンフランシスコで開催予定です。閉会式では、クリントン米国国務長官より「WLNは女性同士をつなげ教訓を学びあうAPEC唯一の会合である。参加者の来年米国開催のAPECへも参加を期待する」旨のビデオメッセージが紹介され、WLN旗が米国代表に引き継がれました。また、内永委員長は、閉会挨拶において、WLNの恒常的な運営方法を提案するとともに、日本開催成功への関係者への謝意と来年の米国開催への期待を述べ、今回の会合は幕を閉じました。

また、WLN活動を効果的にAPECに反映させるため、11月にABAC(APECビジネス諮問会議)女性委員とWLN実行委員で今後の連携について意見交換し、来年の展開に繋げました。

主な会合プログラム

1日目(9月19日)

・開会式

・基調講演「2015年までのミレニアム開発目標の達成に不可欠な女性の経済的エンパワーメント」(モエズ・ドレイド氏)

・パネル「APECにおけるWLNの役割と今後の課題」

・歓迎レセプション

2日目(9月20日)

・基調講演「ハイヒールから安全靴まで」(ニコール・ホロウス氏)

・パネル「女性たちによる経済活動創造への挑戦」

・ネットワーキング昼食会

・分科会「組織における女性のキャリア構築」

女性の経営参加、人材育成・教育、科学・技術分野の各分科会

・エクスカーション

3日目(9月21日)

・基調講演「時代が求める女性の起業力」(今野由梨氏)

・パネル「各国にみる女性の起業力」

・ネットワーキング昼食会

・分科会「人、自然、文化を活かす女性の起業」

農山漁村、ニュービジネス、地域経済の各分科会

・各分科会成果発表、提言採択

・閉会式、夕食会

【WLN関連ホームページ】

http://www.apecwln2010.jp