「共同参画」2010年 10月号

「共同参画」2010年 10月号

行政施策トピックス 2

スウェーデン・スペイン・アメリカにおける男女共同参画について
内閣府男女共同参画局推進課

内閣府では、諸外国における女性の参画に関する調査を行っています。

今回はその中からスウェーデン、スペイン及びアメリカの取組と最近の女性の参画の状況を紹介します。

スウェーデン・政治分野への女性の参画 ~政党によるクオータ制~

スウェーデンは2009年のジェンダーエンパワーメント指数ランキングで1位を獲得しています。特に、女性国会議員比率は同ランキングで比較可能な109か国の中では最も高く、46.4%となっています。

政治分野において法律による強制的なポジティブ・アクションは取られておらず、政党等による自発的な取組が中心となっています。1972年に自由党が党執行部において男女ともに40%以上とする割当制を導入し、1990年には左党が選挙される組織の代表及び任命職の50%以上を女性とする割当制を党規定に定め、1993年には社会民主党が党内役員における割当制を導入しました。1990年代には社会民主党、左党、環境党等が国政選挙についてジッパー制(男女交互候補者名簿)等の選挙名簿についての割当制を導入しています。1985年には初めて女性党首が誕生し、1994年には史上初めて男女同数の内閣を形成しました。

また、スウェーデン議会では、議員の代理人制度が導入されており、議員が育児休暇を取得する際などでも、代理人がその議員の代理として活動することができ、仕事と家庭の両立を支援する仕組みとなっています。

◆スウェーデンの国会議員に占める女性割合
◆スウェーデンの国会議員に占める女性割合

スウェーデン・雇用分野への女性の参画 ~両立支援の充実~

スウェーデンでは1970年代に女性の職場進出が進み、労働力率を見ると、1980年の時点でM字カーブの底を解消し、80年代には逆U字カーブを形成しています。

女性就労率が突出して高くなっている背景には、充実した出産・育児休暇制度や休暇中の所得保障、公的保育園の保育サービスなどがあります。

スウェーデンでは育児休暇法により、子どもが8歳又は義務教育第一学年終了まで両親あわせて480労働日の休暇を取得することができます。うち60日ずつ120日は配偶者に譲ることのできない休日(「パパ・クォータ」、「ママ・クォータ」)とされています。育児休暇取得者の44%が男性であり、男性の取得率は2005年で75%を超えています。出産・育児にかかる給付には妊娠手当、育児休業期間について480日間の両親手当、子の看護のための休業期間のために120日間の一時的手当があります。

スウェーデンでは保育サービスを地方自治体が提供することが一般的であり、保育所を利用している1歳から6歳までの児童の86%が地方自治体の運営する保育施設を利用しています。また、2001年から失業家庭の児童に対して最低1日3時間あるいは1週間15時間の保育サービスの提供、親が育児休業中の児童に対しても同水準の保育サービスの確保を行っています。また、保育サービスの自己負担額についても上限額を設定しています。

スペイン・政治分野でのクオータ制

スペインでは、2007年3月に男女共同参画の基本法として実質的男女平等法が制定されました。

同法は、政策・意思決定過程への女性の参画を盛り込んでおり、これを受けて選挙法が改正された結果、全ての選挙において各政党の候補者リストの40%以上60%以下を女性にすることが定められました。

2010年7月末時点で、スペインの国会議員に占める女性割合は、上院30.8%、下院36.6%となっており、国際的に見ても高い割合となっています。

◆スペインの国会議員に占める女性割合
◆スペインの国会議員に占める女性割合

スペイン・各分野の女性の参画状況 ~雇用、医療、研究~

(1) 雇用分野

スペインの女性就業者に占める非正規の割合は80%と高くなっています。女性の場合、非正規雇用を選ぶ理由として育児・介護を挙げる割合が男性よりも高く、また、女性の非労働力人口のうち、就業していない理由として育児・介護等の家庭の事情を挙げる女性の割合が高いことから、「男性は仕事、女性は家庭」という固定的性別役割分担意識の影響があるものと考えられます。

実践的男女平等法は、仕事と家庭生活の両立を可能にするため、従業員250名以上の企業に対し、労働条件の男女不均衡是正のための計画作成を義務付けています(なお、従業員250名未満の企業対しても義務付けはないものの、不均衡是正の推進が求められています)。

また、同法が育児休暇の取得を男性固有の権利として認めた結果、2009年には80%の男性が育児休暇を取得しています。

(2) 医療分野

スペインでは伝統的に「医療・介護は女性の仕事」という意識が社会に根付いていたこともあり、医師に占める女性割合は43%と高く、10年前と比較しても約10ポイント増加しています。歯科医師、薬剤師等その他の医療従事者についても、それぞれ40%、70%と女性割合は比較的高く、近年増加傾向にあります。また、医学部の学生に占める女性割合は約80%にもなっています。

しかし、医学部の学生やキャリアの中間段階までの医師に占める女性割合は高いものの、子育て期を迎える30歳代以降では女性割合は減少していきます。

そこで、実践的男女平等法に基づき策定された男女平等戦略的計画では、医療分野における男女格差の改善を目標に掲げるとともに、それに向けた様々な具体的取組を定めています。

(3) 研究分野

スペインの大学生に占める女性比率は54%と過半数を超えていますが、専攻分野については「保健」は70%が女性であるのに対し「工学」は30%にとどまっているなど、男女の不均衡が見られます。

同様に専攻分野別の女性教授割合についても分野による偏りが見られ、最も割合の高い「人文」の21%に対し、「工学」では5.4%となっています。

研究分野についても、上記(2)の男女平等戦略的計画において女性の参画拡大に向けた目標と、それに向けた具体的な取組が定められています。

アメリカ・政治分野への女性の参画 ~民間団体による取組~

アメリカ合衆国では、国家レベルでの政治分野への女性の参画を促進するための選挙制度や法制度はありません。政党によっては、例えば民主党が党大会に出席する代議員の50%以上を女性にするという規則を採用していますが、選挙における立候補者選びに際してこのような取組は実施されていません。

アメリカ合衆国における政治分野への女性の参画促進の取組は、政治活動委員会(PAC)と総称される民間の選挙支援組織のうち、女性候補者の支援を目的とする「女性PAC(Women’s PAC)」が主体となって行っています。女性PACには、その応援する候補者の政党や主張によって、「エミリーズ・リスト」、「ウィッシュ・リスト」、「全国女性政治コーカス」など、全国レベルのものが15、州及び地方レベルのものが33あるとされています(2009年現在。ラトガース大学アメリカ女性と政治センター調べ)。こうした女性PACでは、支援する候補者の資金面や選挙キャンペーンの援助を提供しているほか、女性候補者を今後増やしていくために大学生等若い世代を対象として、政治や政策決定活動に関わる女性リーダーの育成を目的としたプログラムを実施している女性PACもあります。

なお、2010年8月末現在の連邦議会における女性議員の割合は、上院で17.0%、下院で16.8%となっており、下院議長の職には女性が就いています。

◆アメリカの国会議員に占める女性割合
◆アメリカの国会議員に占める女性割合

アメリカ・公契約におけるアファーマティブ・アクション

アメリカ合衆国において、国家レベルで実施しているポジティブ・アクション(アファーマティブ・アクション)としては、女性や民族的少数者等を対象とした政府調達等における取組が挙げられます。1965年にジョンソン大統領(当時)によって制定された大統領令11246は、政府調達の契約者・下請契約者、連邦助成金による建設事業の契約者・下請契約者(連邦政府から年間1万ドル以上の委託を受けている事業者)に対し、人種、皮膚の色、宗教、性別及び出身国による雇用差別を禁じています。

また、政府調達の契約者・下請契約者に対し、雇用機会均等を遵守するために、従業員数が50人以上かつ5万ドル以上の政府委託事業を受託している企業を対象にアファーマティブ・アクション・プログラム(AAP)を作成することを義務付けています。AAPは、当該企業において女性や民族的少数派の参画を阻害する要因を分析するのに貢献していると考えられており、仮にAAP策定の段階で何らかの課題が明らかになった場合は、プランの中でそれらの阻害要因への対応策の詳細を規定することとなっています。AAPには、女性や民族的少数派の雇用促進、トレーニング等が含まれており、他の従業員と同等の環境で働くことが出来るような配慮を取り入れることが求められています。

アファーマティブ・アクションが適切に実施されているかの評価は、労働省の連邦政府契約遵守プログラム室(OFCCP)が実施しています。