「共同参画」2010年 9月号

「共同参画」2010年 9月号

連載 その3

広島大学における男女共同参画の取り組み
文部科学省

広島大学では、平成18年の男女共同参画宣言以来、学長のリーダーシップの下で様々な活動に取り組んできました。平成19年度には科学技術振興調整費「女性研究者支援モデル育成」として「リーダーシップを育む広大型女性研究者支援」が、平成22年度には「女性研究者養成システム改革加速」に「広大システム改革による女性研究者活躍促進」が採択されました。大学の独自経費で実施したものも含め、この間の主な取り組みについてご紹介します。

■リーダーシップを育む広大型女性研究者支援

このプロジェクトでは、両立支援のための環境形成と、女性研究者・女子学生のネットワークの活性化や各種セミナー等による意識改革を基盤として、広大独自の「リーダーシップを育む人材育成」を遂行することにより、女性研究者が能力を最大限に発揮し、教育・研究活動で著しい成果をあげることを目指しました。

まず、東広島キャンパス内に学内保育園(ひまわり保育園)を開園すると共に、有資格者の監督下で学生サポーターの協力を得ることにより、長期休暇期間に学童保育(小1~小6)を試行しました。また、女性研究者の両立支援を行う人材を確保するための「支援者バンク」を構築し、キャリア支援担当員が女性研究者の両立支援のための相談を受けるシステムを機能させました。

同時に、学生を対象に学内の女性研究者の研究支援実習を含む教養教育科目2単位分を開講し、修了生は「支援者バンク」に登録して支援者として貢献する道を開きました。平成22年度からは、この教養科目をより多くの学生が受講できる形に発展させています。また、女性研究者対象のリーダーシップ養成セミナーおよび女性研究者奨励賞を実施する一方で、教員人件費の全学調整分からの人員措置を受け、教員が不足している部局側のニーズと教務経験を積むことを求めている女性研究員の専門分野が一致している部局に、女性の研究員を助教として採用する「プロフェッサーシフト」と、女性の助教を准教授に昇格させる「ポストアップ」を実施しました。これらの取り組みを同時に進めることによって、学生には男女共同参画意識の醸成と研究者へのキャリアパスの促進を、女性研究者には教育・研究者としての資質向上を、実現することができました。

■広大システム改革へ

女性教員の採用数を増大させるため、平成19年度から教員公募文書にポジティブアクションを記載し、達成状況を四半期ごとに公表することとしていましたが、さらに、平成22年度からは、全学調整分人件費ポイントの約30%をシステム改革分として理工農学系女性教員採用のために確保し(今後5年間)、関係部局における採用計画を決定しました。今後5年間で19名以上の理工農学系の女性教員を採用すると共にポストアップを継続的に実施し、新任女性教員に対するメンタリングシステムとスキルアップ支援を充実させることで、女性研究者の一層の活躍を支援することとしています。平成27年度までには女性教員比率が14.0%になることを目指しています。

これらの取り組みを進めたことによって、理系女性研究者の科学研究費補助金の採択率が上がるなどの効果が見られると共に、全学レベルで男女共同参画を推進する体制が構築されました。優秀な女性研究者の人数が増えるというだけでなく、メンタリング活動を通じた研究者コミュニティ全体の資質向上と活性化が期待されます。

広島大学ひまわり保育園
広島大学ひまわり保育園