「共同参画」2010年 2月号

「共同参画」2010年 2月号

行政施策トピックス

若年層を対象とした女性に対する暴力の予防啓発教材の作成について
内閣府男女共同参画局推進課

内閣府では、現在、若年層を対象とした女性に対する暴力の予防啓発プログラム(以下、予防啓発プログラム)の開発と予防啓発教材(以下、教材)の作成を行っています。その概要をご紹介します。

1.若年層を対象とした女性に対する暴力の予防啓発事業について

内閣府では、女性に対する暴力について、若年層が加害者及び被害者となることを防止する観点からの予防啓発プログラムを開発するため、平成18年度及び19年度に地方公共団体に委嘱し、調査研究を行いました。これらの調査研究の成果を踏まえ、現在、有識者及び関係省庁担当者を集めた「若年層を対象とした女性に対する暴力の予防啓発教材検討会」(以下、検討会)を立ち上げ、教材の内容等について検討を重ねているところです。

今年度は、9月から11月にかけて、教材(中間案)を用いた試行授業を、高等学校・大学で実施しました。現在、教材を用いた参加型授業の様子をわかりやすく紹介した映像資料(以下、DVD)及びこれらの使い方を解説した「指導者用手引き」(以下、手引き)を併せて作成しているところです。

2.10歳代、20歳代の頃の交際相手からの暴力被害について

内閣府が行った「男女間における暴力に関する調査」(平成20年度)では、10歳代から20歳代の頃の交際相手(後の配偶者以外)からの被害について聞いています。「身体に対する暴行」「精神的な嫌がらせや恐怖を感じるような脅迫」「性的な行為の強要」のいずれかをされたことがあったという人は、女性で13.6%、男性4.3%であり、被害経験が少なくないことがわかります(調査の概要とデータは、図参照)。また、交際相手から被害を受けたときの相談先について聞いたところ、「友人・知人に相談した」が53.1%、「家族や親戚に相談した」が24.2%で、身近な人に相談している人が多いことがわかります。しかし、「どこ(だれ)にも相談しなかった」人も34.4%おり、誰にも相談できずにいる人も多いのが現状です。

交際相手からの暴力の問題が起こった場合には、一人で抱えずに相談することで解決方法が見つかることが多いということを若年層に知らせていくことが重要だと思われます。また、友人・知人から相談された場合には、暴力の問題に対する適切な知識を持っているかどうかが、周囲からの二次的被害を与えない上で大切なこととなり、被害者を孤立させないことにもつながります。

図 10歳代から20歳代の頃の交際相手(後の配偶者以外)からの被害

交際相手からの暴力を未然に防止していくことが重要ですが、もし問題が起こったとしても、深刻化する前に支援を求められるよう専門の相談窓口を周知していくことも求められています。教材には、相談窓口についても必要な知識を得ることができるよう、相談機関の情報も載せる予定です。

3.教材の活用について

教材は、若年層に受け入れられやすくするためいくつかの工夫をしています。たとえば、若年層にとって身近なツールである携帯電話にかかわるケースや、性的暴力につながる可能性もあるケースを取り上げ、それらのケースに登場する男女二人の気持ちを考えさせたりグループで話し合わせたりするなど、こうした問題に直面した若年層が、深刻な問題に発展する前に立ち止まって考えてもらえる内容としています。また、ケース紹介の部分は、マンガを使うことで、若年層の皆さんが、自分たちの生活の中で直面しうる問題であることを容易にイメージしていただけるようにする予定です(イラスト参照)。

若年層の中には、交際相手がいる人もいた人も、交際したことのない人もいます。交際したことのない人にも、自分には関係のない話題だと感じさせることなく、むしろ、身近なこととして捉え、この教材の内容に関心を持って授業に臨んでもらえるような構成となるよう工夫しています。そこで、導入部分には、どのような人間関係においても、他の人とよりよい関係を作っていくことが人生を豊かなものにすることにつながり、大切だということも盛り込む予定です。交際相手のいる人の誰もが加害者や被害者になるわけではありませんが、暴力のない人間関係の築き方について学ぶことは、将来さまざまな人とのかかわりの中で生きていく上で大変重要です。教材では、この点を強調したいと考えています。

内閣府では、DVDの完成後、手引きを作成し、教材、DVD、手引きの三点をセットとして、来年度、高等学校等教育機関や男女共同参画センター等関係機関に配布を予定しています。すべての受講者にとって、この問題を身近に感じられる授業が展開されることを期待しています。ぜひ積極的にご活用いただければと思います。

(配布は終了しました。教材のダウンロードはこちら、DVDの貸し出しはこちら

「男女間における暴力に関する調査」(平成21年3月公表)について

調査の目的

男女間における暴力に関する実態把握のため、平成20年10月から11月にかけ、全国20歳以上の男女5,000人を対象に無作為抽出によるアンケート調査を実施。3,129人(女性1,675人、男性1,454人)から回答(有効回収率62.6%)

調査項目

  • 配偶者暴力防止法についての認知
  • 夫婦間の行為における暴力としての認識
  • 配偶者からの被害経験
  • 交際相手からの被害経験
  • 異性から無理やりに性交された経験(女性のみ)
  • 男女間の暴力を防止するために必要なこと
  • 政府による広報の周知

ケース1