「共同参画」2009年 8・9月号

「共同参画」2009年 8・9月号

特集

男女共同参加週間の主要行事について 

Part 1 「平成21年度男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」について
~キックオフ!これからの10年~
内閣府男女共同参画局総務課

男女共同参画週間の中央行事として、6月26日(金)、日本青年館(東京都新宿区)において、「平成21年度男女共同参画社会づくりに向けての全国会議」(シンポジウム)が開催され、ホームページ等を通じて応募された約900名の方々が出席されました。今年は、男女共同参画社会基本法制定10年にあたり、新たなステージを向かえるため、テーマを「~キックオフ!これからの10年~」としました。

1 小渕大臣の開会挨拶

開会にあたり、小渕優子内閣府特命担当大臣(少子化対策、男女共同参画)は、本会議のテーマの「キックオフ!これからの10年」に触れ、「平成11年に男女共同参画社会基本法が制定されてからちょうど10年を迎えるに当たり、これからの未来に向けて、今、私たちは何をしていかなければならないのか、私たちの社会は今後どう進んでいくべきか改めて皆様と一緒に考えていきたい」との挨拶を行いました。

小渕大臣

2 男女共同参画シンボルマーク、男女共同参画週間の標語の表彰・各種受賞者紹介

基本法制定10年を記念し、選定された男女共同参画のシンボルマークの最優秀賞受賞者の堀由佳里氏へ、小渕大臣から賞状が授与されました。また、今年度の男女共同参画週間の標語の最優秀賞に選定された「共同参画 新たな社会の パスワード」が紹介され、最優秀賞受賞者の和田勉氏へ、板東久美子内閣府男女共同参画局長から賞状が授与されました。

また同日午前中に、麻生太郎内閣総理大臣より表彰状を授与された「男女共同参画社会づくり功労者内閣総理大臣表彰」、小渕大臣から表彰状を授与された「女性のチャレンジ賞」等の受賞者が紹介されました。(各受賞者については、6~13ページをご参照下さい。)

3 岩男壽美子氏の来賓挨拶

10周年を記念して、男女共同参画社会基本法の制定にご尽力のあった慶應義塾大学名誉教授・男女共同参画審議会初代会長の岩男壽美子氏より、基本法制定の際のエピソードを交え、「基本法は人を得て誕生したということを私たちはかみしめて、男女共同参画社会実現に向けて次の10年、心を新たにして、ぜひ力を合わせて頑張りたい」というご挨拶をいただきました。

4 鼎談(ていだん)「これからの男女共同参画社会への展望と期待」

日本アイ・ビー・エム(株)最高顧問の北城恪太郎氏、長崎国際大学学長の潮谷義子氏、コーディネーターとして京都大学大学院文学研究科教授の伊藤公雄氏の3名による鼎談が行われました。

冒頭に、「日本の男女共同参画その現在・過去・未来」として、伊藤氏にこれまでの10年を振り返っていただき、その後、北城氏、潮谷氏にご自身の経験を踏まえてこの10年間についてお話しいただいた上で、今後、誰もが能力を発揮できる社会づくりに向けてどう進めていくべきか語っていただきました。

伊藤 日本は国際的レベルでは女性の社会参加が出遅れている。一方、配偶者暴力防止法の制定(01年)や、男女共同参画基本計画(第2次)(05年)、仕事と生活の調和憲章(07年)、女性の参画加速プログラム(08年)などが実施され、次のステップへと向かっている。

男女共同参画とワーク・ライフ・バランスは21世紀の日本社会のキーワードである。

北城 日本アイ・ビー・エムでは、ダイバーシティ(多様性)の推進に取り組んでおり、中でも女性の登用を推進するために98年ウィメンズ・カウンシルを立ち上げた。ここでは、女性のキャリアアップを阻害する要因として、将来像が見えない、仕事と家庭とのバランスが取りにくい、オールド・ボーイズ・ネットワーク(昔から培ってきた男性中心社会の男性独特の文化)などが挙げられ、これらを解消するために、時間や空間のフレキシビリティーを高め、女性のネットワーキング化等を進めてきた。女性の登用というのは福祉的視点よりも、会社の競争力を高めるという経営戦略として位置づけるという意識を企業や団体のトップが持つことが重要である。

潮谷 人権と平等、ワーク・ライフ・バランスの2つをキーワードとして考えている。37年間福祉に関わる中で、疾病や貧困等の問題に性役割分担意識が加わると、問題が複雑化してくると感じてきた。副知事・知事の9年間、「ともに生きる、社会参画できる熊本県づくりを」ということでユニバーサルデザインを県政の大きな柱とした。

熊本県での男女共同参画では、県職員の旧姓使用や男女共同参画推進に関する条例、小学校からのDV予防教育、農山漁村男女共同参画社会プランIIなど様々な施策に取り組んだ。また、高齢化は、過疎地だけでなく都会でも問題である。後期高齢者が今後増えるとともに、彼らの生活保障が重要になってくる。ILOが提唱する「ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)・フォー・オール」が必要である。

伊藤 北城さんには、女性たちが壁を乗り越えるための環境整備をどのようにしてきたかということを伺いたい。

北城 女性たちには、「まず会社の方針として女性の登用に力を入れるけれど、それを受けてチャンスを活かすのは女性の側の責任だと。だから挑戦して欲しい。」といっている。その挑戦する中で、先ほど述べたようなネットワークや相談できる仕組みを作っている。

伊藤 今、学長をなさっている潮谷さんには、大学における男女共同参画についてお聞きしたい。

潮谷 理系分野の女性の教授が少ないし、理系分野に進学する女性比率が低い。学生たちが理系に関心をもってもらえるような人材育成が大切だ。

伊藤 私は女性の潜在的能力は高いと考えているが、北城さんには、その潜在能力を可視化するにはどうすればよいのか、潮谷さんには、“肥後もっこす”といわれるような地域の文化といった縛りをどのように克服していったのかをそれぞれ伺いたい。

北城 職場に女性より男性が配属されることを希望する人は、確かにいる。それは、女性が産休などで抜けるとその穴を埋めるのが大変だからだ。一番大事なのは、社長や部門長などの組織のトップが、女性の登用が経営戦略上必要であり、そのほうが会社は成長し、社会からも好ましい会社と思われるなどプラスであると示すこと。若い人は女性管理職に対して抵抗が少ないが、問題は女性管理職に対して抵抗感のある中間管理職以上の意識改革をどう進めるかということだ。さらに企業のトップに男女共同参画をどのようにしたら理解してもらえるかということに取り組んでいく必要がある。

潮谷 現状では、県民の7割は「男性が優遇されている」と答える。行政の中でも、女性を高い地位につけると「失敗すると『やっぱり女性はだめだ』と言われてしまいますよ」と進言してくる男性がいる。そういう人には、「男性が失敗しても『やっぱり男性はだめだ』とは言わないでしょ」と言う。あらゆる領域に女性が貼り付いてがんばっていくことが大切だ。

伊藤 お二人がおっしゃったワーク・ライフ・バランス、ディーセント・ワークというのが男女共同参画社会づくりの基盤には何よりも必要であろう。地域や職域の違いなどによって男女共同参画への取り組みは多様であるが、その多様性の中で様々なコミュニケーションと協働を男女共同参画の中で進めていく必要があるだろう。

鼎談

5 パネルディスカッション「チェンジ!チャレンジ!共同参画!-新たな時代・生き方に向けて-」

コーディネーターとしてシンクタンク・ソフィアバンク副代表の藤沢久美氏、パネリストとして有限会社オズ代表取締役の江崎貴久氏、株式会社ウイル代表取締役の奥山睦氏、そして、株式会社ニッセイ基礎研究所主任研究員の土堤内昭雄氏の3名をお迎えし、ご自身の活動の紹介が行われた後、活発な意見交換が行われました。

パネルディスカッション

藤沢 基本法制定から10年たったが、次の10年に向けて、私たちは何をすべきだろうか。そのロールモデルとなるであろう3名にきていただいた。まずは、みなさんの活動について紹介を。

江崎 三重県の鳥羽で、旅館の女将をしながら、「エコツアーガイド」というものをしている。「エコツーリズム」とはお客様や住民も楽しみながら、地域にある自然や文化を大事にして使っていこうという観光のこと。漁業と観光を結び、学校と連携するなど、多くの人に協力してもらい9年目を迎えた。地域に頼ったからこそ、地域に必要とされる存在となれた。

奥山 会社員時代は、ハードな毎日で、働き方を考え直すようになった。起業後、結婚・出産をしたが、それまでのペースでは働けなくなり、仕事が半減。大田区の小規模事業主向け融資制度に助けられた。そんな中、子育てと両立して仕事を続けようと考えたとき、地域に目を向けるようになり、93年に「大田ワーキングウーマンネットワーク」を設立した。さらに97年には、「大田女性企業家ネットワークTES(テス)」を立ち上げた。

土堤内 19年前に離婚し、2歳と3歳の息子を育てることになった。子育ては仕事にも大きな影響を与える。子育て中は膨大な家事を要領よくこなさなければならないため、タイムマネジメントの力が必要。また、子育ては何が起こるかわからないので、リスクマネジメントの力も求められる。やがて子育てを通じて、柔軟に物事を考え、社会の出来事をいろいろな角度から捉えられるようになった。

藤沢 江崎さん、観光業という男性中心の社会で苦労はなかったか。

江崎 23歳で東京からきて、つぶれた旅館を再建しに来たのが始まりだったので、「出る杭」とも思われなかったし、期待もされず、気にされなかったのだと思う。

新しいことを始める時、皆が私の味方だと思えばやりやすい。新しい一歩を踏み出せるのは、おばちゃん達の励ましのおかげだ。

藤沢 奥山さんは、手に職があるので、起業もしやすかったのではないか。

奥山 働き方の選択肢として起業もあるなと。起業してからは大変だった。女性経営者は少なかったが、先輩の女性にはたくさん助けてもらった。誰も1人でやっていけるわけではない。今の私も夫がいなければやっていけない。夫婦で出張の予定を調整するなど、子どもを一人で置いていかないように気をつけている。

藤沢 3人とも、与えられた試練を乗り越えたという印象がある。与えられた試練だったからこそ、強くなれたのか。

土堤内 状況は変えられないこともあるし、それを受け入れてベスト・ソリューションを探すことが大切。また、子育てを当たり前のことではなく、素晴らしいことだと家族・社会が認め合うことが重要だ。

藤沢 地方では、男尊女卑の文化が根強そうだが、そのあたりは?

江崎 私もかつて、女性であるがゆえに「看板」のように扱われてきたように感じる。男性の中に一人女性がいても話を聞いてもらえなかった。しかし、それは実績がなかったためであって、今は話を聞いてくれる人がたくさんいる。やはり積み重ねが大切だ。

藤沢 基本法制定以前より活躍してきた奥山さんから見て、この10年で社会は変わったか。これからどうしたいと思うか。

奥山 自分にとって、仕事は食事のようなものだ。大田区は圧倒的な男性社会で、女性としては数が少ないのが難点だ。政策的に女性を登用することやロールモデルを提示することも大切だ。ただ、政策は行政だけが担うのではなく、民の力で変えていくという意識が必要。次の世代に伝えるためには、ロジックをしっかりさせて、きちんとした戦略が必要だ。

藤沢 土堤内さんは、女性の中で男性一人という経験をしたが、男性の中に一人いる女性のイメージはどうか。

土堤内 男性はマジョリティの経験しか持たない場合が多いが、マイノリティ体験をすることで、それまで見えなかった差別、障壁に気がつく。男女共同参画を考えるとき、男性側は「やってあげる」という感覚ではなく、「一緒に歩く」という当事者意識を持つことが大切。

また、ワーク・ライフ・バランスは女性の問題として語られがちだが、男性にも重要なこと。人生は「好い加減」(グッド・ライフ・バランス)が大切であり、仕事だけではない人生を考えるべきだ。

藤沢 江崎さんも「好い加減」を考えてきたか。

江崎 最初は別々に始まったことでも、まったく関係がないことはなく、つながっている。自分の場合、ワークとライフの境目がなく、全て楽・嫌の区別しかない。「こうじゃなきゃダメ」というものはないと思う。働くことが楽しいと思えれば良く、お母さんも活き活きし、周りも協力してくれるようになるだろう。

藤沢 「楽しく、一生懸命」が、いろいろな人たちのネットワークを生むのか。

江崎 一人ひとりの個性があるので、良いところをほめることが大切。難しいところをフォローすることを考えるのがチームワーク作りだと思う。

藤沢 男女共同参画の今後に向けてアドバイスを。

奥山 一人ひとりの個性を重んじる必要がある。マイノリティを恐れずに楽しむべきだ。人と違う自分を楽しんだり、そこから可能性を見つけること、また自分と違う人と一緒に何かをやっていく方法を考えることが大切だ。

江崎 自分の個性を大事にしてほしい。互いに個性を大事にしあうことがうまくいくコツだ。線を引かず、前に出て行くことだ。

土堤内 ワーク・ライフ・バランスの「ワーク」とは、賃金労働だけではなく、ボランティア活動、家事、育児も「ワーク」だ。これまでは、主に男性がお金を稼ぐ「ワーク」、女性が貨幣価値に還元されないような「ワーク」を担ってきたが、これからは、男女ともに2つの「ワーク」のワーク・ライフ・バランスをとっていくことが、幸せになる一つの方法では。

藤沢 貨幣に換算しない労働にも報酬がある。貨幣でない報酬をどれだけ渡しあえるかが重要だ。相手を認め、個性を認める、一歩進んで感謝する、ほめあう。それでも社会に入れない弱者に対策をとっていくことだ。一人ひとりが動き始め、言葉を発し始めるだけでも新しい10年は変わってくるのでは。

6 パネル展示

ロビーでは、基本法制定10周年を記念して、各地域・団体、関係省庁等の男女共同参画推進の取組に関するパネル展示が行われました。

パネル展示