「共同参画」2009年 7月号

「共同参画」2009年 7月号

スペシャル・インタビュー

母親目線で開発したメール配信システムが大ヒット

今回は、女性起業家として活躍されている佐宗美智代さんにお話を伺いました。

SOHOから始まり全国展開企業へ

─ 携帯電話を使って学校行事などの連絡事項をやりとりするシステムが好評と伺いましたが、どのような特長があるのか教えてください。

佐宗 携帯へメールを配信するシステムは沢山ありますが、他社システムと大きく違うのは、PTA役員の立場、及び受け手の保護者の立場に立ってシステム作りをしたということです。これは、私自身が母親として、あるいはPTA役員をしていた経験より、自分自身が使いやすい機能を追求したからです。具体的には、メールを学校の先生が送ることのみ考え、学校のパソコンから送ることを主眼にするのではなく、当システムはパソコンを日頃使わない主婦でも、PTAの役員の方が容易に送れるように、携帯のメールだけでできます。しかも、携帯のサイトに接続しなくても、メールを送受信する機能だけで使えるというようにしたのが特長です。

また、保護者はメールを待っているだけではなく、まだかしらと催促して、欲しい情報を取りに行くことができます。運動会の朝には雨が降りそうでもお弁当の準備が待ちきれませんから。

更には、使いやすさだけでなく、セキュリティも考慮し、メール送受信だけで実現するために必要な認証方法にはオリジナルな手法を考案しました。その手法は特許も取得したんですよ。非常にしっかりしたシステムだと思います。これでも、元は大型コンピュータのOS開発に携わった技術者ですから。

システムのセキュリティがしっかりしていて、しかも、女性の視点から生まれた使いやすいシステムと好評で、最近では、全国の学校だけでなく、官公庁や企業にも利用されております。お蔭様でいつの間にか契約団体は500団体、利用者も16万人になり、ますます規模を拡大しています。

─ アイデアを具体化したのは、どのようなきっかけだったのですか。

佐宗 平成15年、全国的に冷夏で宮城県では梅雨明け宣言がなかったという異常な年でした。子どもが小学生でPTAの地区委員長をしており、地域の家に電話で連絡する係でした。夏休みの公立小学校のプール開放において、今日はプールが休みという電話連絡をしなければいけません。これが本当に大変でした。

夏休みが終わった後、PTAの常任委員会でそれが問題になりまして、携帯のサイトで見るとか、携帯で空メールを送ったら自動応答で今日はプールがあるのか分かるとか、そういう携帯電話のシステムを使ったらどうかということを私が提案し、システムをボランティアで提供した次第です。

─ 在宅勤務から起業に至った理由を教えてください。

佐宗 大学卒業後、富士通の関連会社に勤めていました。子どもの出産を機に退職しましたが、上司からお声掛け頂き、子どもが生まれて1年半くらい在宅勤務をしていました。ところが夫が転勤することになり、それも辞めてしまいました。

その後ずっと専業主婦をしていましたが、地域に新しく文化会館ができるというので、市民から評議員の募集があり、それに応募しまして評議員になりました。当時、文化会館のホームページがあったのですが、担当者の方が忙しくなり更新が止まってしまい、では私がやりましょうかと、それも最初はボランティアで引き受けたのです。

そして、文化会館ができたら今度は観光協会もつくるとか、いろんなサイトを作ることになり、個人事業主として開業しました。徐々に会社化したというのが実情ですね。

─ 子どもさんが小さい頃は、仕事と家庭の両立についてはどんな工夫をされていたのですか。

佐宗 子どもが小さくて在宅で仕事をしていた時は、とにかく子どもが寝ている時にしか仕事ができないので、子どもを遊ばせて、疲れさせて、こてっと昼寝をさせましたね。大きくなってきたら、本を与えるとかいろいろと。それと私は常に何かしらやっていたので、子どもが慣れていたのかもしれません。仕事をしている時は触れてはいけないと感じるみたいです。そのかわり、夕食の時間など、会話の時間は大事にしています。又、学校から帰ってきて子供が話したいと分かる時は仕事の手を休めて話を聞くようにしています。家庭内のコミュニケーションはもっとも大事だと思います。

─ ご家族の協力はいかがでしたか。

佐宗 最初から理解してくれる男性はそういないですよね。私の仕事が忙しく、夜も遅くまでやる日が続くと、夫もストレスがたまってくるのです。そうすると家庭内もぎくしゃくしてしまう。私の方でもストレスがたまって、仕事が忙しいのに夫が何もやってくれないと実家の母に相談したことがあるんです。そうしたら、「あなた、全部自分でやろうとするからいけない。お願いしたらどうなの。」と言われて、やるだけやってみるかと思い、頼んでみると結構やってくれるのです。ありがとうと言うのはもちろんですが、褒めるということも大事なことで、今は家族全員、褒めあって感謝しあいながら、頑張っています。

─ 最後になりますが、これから起業を目指す女性にメッセージをお願いします。

佐宗 メールシステムもそうですが、女性の視点で商品を開発するということが重要だと思います。家から会社に行って帰ってくるというだけの生活では、男性と同じ視点になってしまうので、子育てしながらとか、地域の活動に入ったりとか、地域で女性の意見も聞きながらとか、女性の中にも入っていかないと女性の意見は得られないのではないかと思います。そういう視点で商品開発をしたり、起業したりすれば良いのではないかなと思います。

─ 本日はお忙しいところありがとうございました。


株式会社アットシステム
代表取締役
佐宗 美智代

さそう・みちよ/1989年、富士通関連会社を出産退職、その後、在宅勤務、専門学校講師などを経て、1998年自宅でホームページ制作業開始。2000年会社設立、ホームページ制作とシステム開発を手掛ける。2004年母親目線で開発したメール配信システムが2007年よりヒット。2009年プライバシーマーク取得、特許取得。