「共同参画」2009年 3月号

「共同参画」2009年 3月号

リレーコラム/男女共同参画のこれまでとこれから 11

「全ての政策に男女共同参画の視点を -一方で効率優先の政策が続いていては」 全国地域婦人団体連絡協議会事務局長 男女共同参画会議議員 加藤 さゆり

本年は、男女共同参画社会基本法制定から10年を迎えます。この間、多くの社会分野で男女共同参画が進められてきたとはいえ、国連の女性指標である「ジェンダーエンパワーメント指数」は、依然として、先進国とは思えないような低い状態が続いています。このような状態を改善するためには、単に男女共同参画社会を進めるための政策だけではなく、国・地方における全ての政策において、男女共同参画の視点が必要になっています。

ところが現実には逆のことが起きています。最近で言えば、女性教育・男女共同参画教育の中心的機関である国立女性教育会館について、独立行政法人改革において、他組織との統合や業務縮小の議論が行われたり、男女差別やセクハラなどから働く女性の権利を守る組織である都道府県労働局雇用均等室について、地方分権改革において、都道府県単位からブロック単位にするという勧告が出されたりするなどです。

なぜこのようなことが起きるのでしょうか。独立行政法人改革や地方分権改革などの行政改革を議論する審議会は、経済効率優先の考え方だけで議論が進められます。それぞれの分野の政策の専門家や関係者が議論に参加することはほとんどありません。

その結果、同じ政府の中で、一方で男女共同参画社会を推進する政策を進めながら、一方で逆の方向の政策が進められるということが起こるのです。これでは、男女共同参画社会基本法制定から10年が経っても、「ジェンダーエンパワーメント指数」が低い状態が続くのは当然です。

それではこのようなことをなくすためにはどうすればよいのでしょうか。それには二つのことが必要です。まずは、これまでの経済効率優先の政策から一人一人の国民の暮らしを守るための政策(男女共同参画社会の推進も広い意味でこれに含まれるでしょう)へと転換することです。これまでの行政改革も、一度中断、その内容を見直して、縮小一本やりではなく伸ばすべき政策はないかをそれぞれの分野の政策の専門家や関係者が参加して議論すべきです。

もう一つは、全ての政策において男女共同参画の視点が盛り込まれるような仕組みを作ることです。例えば、現在においても、新しい規制を設ける際には、経済成長を阻害するかどうかの観点から、総務省や政府の規制改革会議でチェックが行われると言われていますが、それと同様に、男女共同参画の視点からも、それを阻害するかどうかの観点からチェックするような仕組みを作ることです。

同じ政府の中で、一方でアクセルを踏みながら、一方でブレーキをかける。そのようなことをなくすことが、基本法制定10周年を経て次の段階に進むにあたってまず必要なことであると言えるでしょう。

加藤 さゆり
かとう・さゆり/全国地域婦人団体連絡協議会事務局職員、東京都消費者月間実行委員会事務局長などを経て、2005年より全国地域婦人団体連絡協議会事務局長。2007年より男女共同参画会議議員。