「共同参画」2009年 3月号

「共同参画」2009年 3月号

スペシャル・インタビュー

パート社員からの再チャレンジ~挑戦し続けることが道を作るのだと思います~ Yokoi Chikako

今回は、女性の再チャレンジについて、横井千香子さんにお話を伺いました。

パート社員でも目標を持って仕事をする。それは生産性を上げることでもあり、自分で自分の仕事を見直すことでもありました。

─ 専業主婦から転身され、現在の会社にお勤めになられたきっかけをお聞かせ下さい。

横井 母が亡くなったことですね。母は田舎では珍しく師範学校出身の小学校の教師でした。外地で直接戦争を経験して大変苦労をした為に、戦後復興は女性の自立と子供の教育にかかっている。女性もいつでも、働けるように、勉強して準備しておくように、と日ごろ話していた母が事故で突然亡くなりました。私が39歳の時でした。どのような形であれ、社会の中で自立して自分らしく生きることが大切、そして社会に役立つ子供をしっかり育てるという母の姿が遺言のように思えて、仕事をしよう、再チャレンジしようと思ったことがきっかけですね。

─ 最初はパート社員で入られて、ご苦労されたことがあればお聞かせ下さい。

横井 子供が小学3年生と5年生でしたので、フルタイムで仕事をする自信がありませんでした。ブランクが長いですし。でも実際に苦労と思ったことは特にないですね。むしろ家族や周りの人、上司の方々に感謝することが多かったですね。私の職場はほとんどが女性のパート社員でした。会社では表彰制度がありまして、入社して半年後に、私はチーム別で3位に表彰されました。その時、社長や役員が来てくれて、「よく、頑張ったね、握手」なんて声をかけてもらい「みんな誇りに思っているよ」と言ってもらえて、すごく喜んだものでした。やはりそういう姿というのは、私達のモチベーションを上げましたし、私には新鮮でしたね。私達の上司であるスーパーバイザーは5人いましたが、皆さん優秀でした。知識が豊富で思いやりを持っていて、その上勤勉で対応能力も秀でていました。部長、課長も良くできた方で、私はそうした方々からいろいろなことで、マネジメントの基礎をしっかり教わったと思います。当時パート社員は早く辞めてしまう人が多かったのですが、私のグループは全然辞めませんでした。グループ内で知識を共有するとか、困ったことがあれば助け合って一丸となって、目標に向かっていくといった姿勢が評価されて、私をスーパーバイザーにと推薦されました。それがきっかけで「頑張るぞ」と思ったわけです。

─ 女性が活躍するためのサポート体制については、どのようにお考えでしょうか。

横井 私が入社した、1986年にはすでに正社員に準じた、メイト制度(パートの方をメイトと呼んでおります)があったのです。すごく進んでいると感心しました。経営陣なり人事担当者の考えがしっかりしていたのだと思います。それと同時に、労働組合でも、正社員もパート社員も一緒に活動する、そんな会社の姿勢が気に入ったことがクレディセゾンで長く働くことになったのだと思います。

先程上司に恵まれたと申しましたが、その時の上司はパートだからただ働けばいい、ということではない、自分を活かすための努力をして精一杯働くことが大切として、正社員と差別せずにパート社員にも目標を持たせてくれました。それは生産性を上げることであり、自分で自分の仕事を見直すことであり、私には、とても大切な教えの1つだったと思っています。

また当時、制度化されてはいませんでしたが、今でいうメンタルヘルス対応が上手でした。メンバーが元気のない時、お客様対応や社員同士の関係がうまくいってない時、係長や課長は、「仕事はいいからちょっと話そう」と面談の時間をとって気分転換を図ってくれていました。上司が部下の状況をよく把握し適切な指導をしてくれたことは、今思えばとても重要でした。働くことをサポートする制度が整ってきたことはとてもいいことですが、自分でも予防しようとする気持を持つことも大切かと思いますね。

─ 女性の再チャレンジについては、どのようにお考えでしょうか。

横井 今は家庭と仕事の両立がしやすいように、短時間労働制度などの育児支援制度も充実してきました。お子さんがいる人でも、仕事を続けやすくなってきています。お子さんがいても、いなくても、可能な限り働くということ、自分流の生き方ができる時代になり、女性の意識次第で働くことへの選択範囲が広がったと思います。話が飛びますが、私は働いて得た収入に応じた税金を払い、税金の使い方に物申すような自立した生き方をしたいと思っていますし、社会全体で支えあうことで全ての人が可能な限り働き続けられることが、私の理想なんですけどね。

それから、私が23年間会社を辞めないでこられたもう1つの理由は、私の娘が大病を患って入院していた時、会社を辞めて看病に専念しようと思ったのですが、娘は「私のことはお医者さんに任せて、お母さんは自分の仕事をしてちょうだい。どんな時もしっかり働いていないと女性の地位やパートの地位も上がらないよ」と言われたことがいつも頭に残っています。

─ 最後にこれから再チャレンジを考えている女性へアドバイスをお願いします。

横井 まずは自分でやれることを一生懸命、真心をこめてすることで、人に「ありがとう」と言ってもらえるような仕事をすることが第一点。

2点目は、社内外のネットワークを広げて、皆で助け合う姿勢が大切だと思います。そして、3点目は、自分が輝けるように、自分が少しでも美しく、というと何ですが磨きをかけていくこと、付加価値をつけるためにも、自分で意識していろいろなことに挑戦していくが大切ですね。チャレンジする機会は平等にあると思いますから。

最後に若い人が希望と夢を持って生きるためにも、小さい時から生きるということ、働くということを話し合うような家庭教育・学校教育であってほしいなというのが私の望みですね。

─ 本日はお忙しい中、ありがとうございました。

株式会社クレディセゾン取締役 横井 千香子
株式会社クレディセゾン取締役
横井 千香子

よこい・ちかこ/昭和女子大学文学部英米文学科卒。旅行代理店国際部勤務、その後、結婚し退職。1986年(株)クレディセゾン入社。2006年取締役に就任、現在に至る。2004年立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科卒。