「共同参画」2009年 3月号

「共同参画」2009年 3月号

特集3

日本・スウェーデン男女共同参画ジョイントセミナーの開催 内閣府男女共同参画局総務課

平成21年1月、東京及び広島において、女性に対する暴力の防止と根絶をテーマに、「日本・スウェーデン男女共同参画ジョイントセミナー」が開催されました。

内閣府男女共同参画局、スウェーデン文化交流協会及び駐日スウェーデン大使館は、日本における男女共同参画社会の実現に向け、男女共同参画の先進国として知られているスウェーデンにおける取組を紹介し、日本・スウェーデンの経験と施策を議論・共有するために、1月29日に東京、30日に広島において、「日本・スウェーデン男女共同参画ジョイントセミナー:女性に対する暴力の防止と根絶のために-新しい官民の取り組み事例をもとに-」を開催しました。

セミナー関連資料は、内閣府男女共同参画局ホームページ(http://www.gender.go.jp/)に掲載しています。

【東京】

女性と仕事の未来館にて開催されたセミナーでは、まず、板東久美子男女共同参画局長及びステファン・ノレーン駐日スウェーデン大使による開会の挨拶の後、ニャムコ・サブニ統合融和・男女共同参画担当大臣(スウェーデン)のビデオ講演がありました。

講演の中で、サブニ大臣は、女性に対する暴力の根絶はスウェーデンにおいて最も優先的な課題であり、女性に対する男性の暴力、同性間での暴力等を主な柱にしたアクションプランを2007年に策定し、女性に対する暴力の根絶に向け、加害者対策を含む様々な取組を実施していること、暴力の根絶に向けた国際的な協力等が不可欠であることを述べました。

次に、両国からの報告として、グン・ヘイメルウプサラ大学教授・女性に対する暴力に関する知識国立センター(NCK)所長が、NCKが実施している、暴力を受けた女性のための24時間対応の無料女性専用全国電話相談及び性的暴行被害者を受け入れ、ケアを行う医療サービスの指針の作成・導入について報告を行いました。

続いて、クラース・ボリィストロム前機会均等オンブズマン代表・弁護士・男女平等問題専門家が、女性に対する男性の暴力は、社会における男女不平等の構造にその根源があり、社会全体として取組んでいくべき課題であると述べました。

板東局長は、日本における女性に対する配偶者からの暴力等に関する現状や、女性に対する暴力防止と根絶に向けた日本政府の取組について報告しました。

最後に、近藤恵子NPO法人女のスペース・おん代表理事から、1992年の全国実態調査以降、2001年の「配偶者暴力防止法」施行までの、女性に対する配偶者からの暴力に関する社会的動き、民間シェルターの活動、DV被害の深刻化と加害者処罰に対しての配偶者暴力防止法の限界について報告が行われました。

その後行われたパネルディスカッションでは、後藤弘子千葉大学大学院教授をコーディネーターに、4名の報告者がパネリストとして議論を行い、会場から出された質問に対して回答しました。

板東局長からは、加害者に対する教育のあり方や更正の方法についてはまだ課題があり、外国の取組等の調査研究を行う、予防啓発については、大学や高校を対象にした教材の開発を進めているとの発言がありました。

また、近藤代表理事からは、加害者への教育等の対策や被害者支援活動に対する公的財政支援の必要性について意見が出されました。

会場から出された質問に関し、ヘイメル教授からは、加害者更正プログラムの必要性、NCKで行っている、暴力を受けた女性のための専門家によるクリニックや暴力を受けた女性に接する裁判官や警察官等への研修について説明がありました。

また、ボリィストロム氏は、スウェーデンでは暴力を受けた外国人女性の相談には12ヶ国語の通訳が行われていること、女性への暴力を防ぐには幼少期からの教育が必要であることを述べました。

パネルディスカッション(東京)
パネルディスカッション(東京)

【広島】

広島県及び財団法人広島県女性会議の協力の下、エソール広島で開催されたセミナーでは、増原義剛内閣府副大臣(科学技術政策、食品安全、少子化対策、男女共同参画)、ノレーン大使及びセシリア・レイメルス スウェーデン文化交流協会プロジェクト統括責任者による開会の挨拶、サブニ大臣のビデオ講演に続き、ヘイメル教授、ボリィストロム氏及び板東局長から、東京会場と同様の報告がありました。

また、高東幸子NPO法人ネットワーク虹理事長から、22団体で行っている、通話料無料の「全国共通DVホットライン」、資金不足や人手不足という、民間支援団体が抱える問題点、社会全体での、“DVは犯罪である”という認識の低さ、女性に対する暴力防止のための企業やメディアの協力の必要性について報告が行われました。

その後のパネルディスカッションでは、後藤教授をコーディネーターに、4名の報告者がパネリストとして参加し、参加者からの質問を基に議論を行いました。

ヘイメル教授は、電話相談にについて、電話をかけてくる被害者は精神的ダメージを受けているケースが多いため、NCKでは病院と連携していること、相談員である看護師やソーシャルワーカーでの精神的ケアのために週一度グループワークを実施していること、女性に対する暴力についての一般の人々への啓蒙のためには、専門家、医師、ソーシャルワーカーへの教育が更に必要であることを述べました。

ボリィストロム氏は、電話相談では、警察等との協力が大事である、男性の意識を変えていくには、学校や職場等で男女共同参画について働きかけていくことが大切である、男女共同参画社会の実現には政治的意思が不可欠であると述べました。

板東局長は、暴力を受けた女性のための相談機能強化のために本年1月にDV相談ナビを開始したこと、配偶者暴力の被害者の中には、子どもの頃虐待や性暴力を受けた者も少なくなく、女性に対する暴力に取組んでいくためには、点ではなく女性の生涯を通じた問題として捉えて見ていく必要があることを述べました。

高東氏は、女性に対する暴力に取組んでいくには、官民の連携が大切である、電話相談をする暴力被害者には精神的疾患を抱えている女性が増えてきているため、精神的なケアを行う専門家との連携が必要である、最近は、「自分の行った行為が暴力であると知った。どうしたらよいか分からない」といった男性からの電話相談が増えてきているため、加害者対策として男性のための相談窓口が必要であると述べました。

挨拶を述べる増原副大臣(広島)
挨拶を述べる増原副大臣(広島)