「共同参画」2009年 1月号

「共同参画」2009年 1月号

特集

UNIFEM「女性に対する暴力反対キャンペーン」について 内閣府男女共同参画局推進課

国連機関の一つである国連婦人開発基金(UNIFEM)では、2007年11月から2008年11月までの1年間「女性に対する暴力反対キャンペーン」を行いました。日本でも署名の促進に向けて取組みを展開しました。昨年12月5日、UNIFEMのアルベルディ事務局長が訪日し、小渕大臣を表敬訪問した機会を捉え、お話を伺いました。

「女性に対する暴力反対キャンペーン」への日本の取組

日本では、11月12日から25日まで、男女共同参画推進本部の主唱により「女性に対する暴力をなくす運動」を展開しています。

同運動とUNIFEMの「女性に対する暴力反対キャンペーン」(詳細はアルベルディ事務局長のインタビューで紹介)との連携を図るため、男女共同参画推進本部長である麻生総理大臣をはじめとして、本部員である全閣僚が同キャンペーンへの署名を行いました。

また、小渕大臣のブログや内閣府のホームページなどさまざまな手段で署名への協力を呼びかけたほか、インターネットでの署名が難しい方のため、ファクスで署名を受け付けるなど、キャンペーンへの協力を呼びかけました。

最終的にUNIFEMには、全世界から目標を大きく上回る500万人を超える署名が寄せられました。また、内閣府に寄せられたファクスでの署名も2,667名に上りました。

昨年12月5日にアルベルディUNIFEM事務局長が小渕大臣を表敬訪問された際に、大臣から全閣僚が署名した署名カードと内閣府へ寄せられたファクスでの署名を事務局長へ手渡しました。

小渕大臣からアルベルディUNIFEM 事務局長に、全閣僚からの署名カードを手渡しました。
小渕大臣からアルベルディUNIFEM 事務局長に、全閣僚からの署名カードを手渡しました。

アルベルディ事務局長へのインタビュー
~UNIFEMの役割と「女性に対する暴力反対キャンペーン」~

UNIFEMは、国連組織の中でジェンダー平等と女性のエンパワーメントを任務とする唯一の機関です。資金的な基盤は、主に先進国からの資金援助です。現在、途上国など60カ国以上で、様々なプロジェクトなどの活動を行っていますが、活動にあたり、4つの重点分野を設定しています。

まず第1に「貧困削減」です。女性の経済的な安定を強化することを目指します。

第2には「女性に対する暴力の根絶」です。具体的には、暴力の予防、暴力からの女性の保護を目的とし、シェルターの提供も行っています。さらに、法制面の整備にも力を入れており、女性に対する暴力に対する罰則を設けること、家族法の中での女性の権利確立を推進しています。

第3は、HIV/AIDS対策、特に少女や女児の感染の防止です。女性への感染は、暴力や女性の権利と関連していることが多く、早急な対策が必要です。また、女性患者に対するサポート、例えば労働機会の提供や家族と一緒に安心して住めるような環境の整備を行い、周囲からの偏見をなくすような取組を行っています。

第4は、ガバナンス(統治)の問題です。政治のあらゆる分野、中央や地方両方のレベルで女性の活動が促進されることを目標としています。この分野では、各国政府やNGOとも協力・連携しながら、行動計画を策定するとともに、クォータ制の推進にも取り組んでいます。さらには私企業の中の役員登用を促進するという活動も行い、女性の能力開発やリーダーシップを発揮するためのプログラムを実施し、ハイレベルから一般女性までの幅広い能力向上に努めています。詳細な活動は、UNIFEM年次報告をご覧頂ければと思います。

UNIFEMの活動は、国連のミレニアム開発目標の達成を推進するものです。8つの目標のうち、特に「極度の貧困と飢餓の撲滅」と「ジェンダー平等推進と女性の地位向上」の2つについて深く関わっていますが、当然これだけが女性が抱える問題ではないわけですから、実際には8つの目標全てに関わっていると言えます。そして、女性たちの能力開発というのは、すべての人たちの発展に繋がるものだと私は信じています。

さて、「女性に対する暴力反対キャンペーン(Say NO to Violence against Women)」については、パン・ギムン国連事務総長のイニシアチブにより、2007年11月25日に開始し、女性に対する暴力反対の輪を世界中に広めようと100万の方々から署名を集めることを目標としました。その結果、2008年11月25日の暴力撤廃国際日までの1年間で500万以上の署名を集めることができ、国際的なキャンペーンとして大きな成功を収めることができました。また、このキャンペーンには、UNIFEM親善大使の女優のニコール・キッドマンさんが協力してくださいました。

日本からも多くの方たちから署名を頂き、たいへん感謝しています。特に、麻生首相、小渕大臣をはじめ現閣僚の方全員が署名してくださったことは、UNIFEMへの協力というだけでなく、日本政府の女性に対する暴力根絶に向けての断固とした姿勢を示すものとして非常に重要だと考えています。

今回のキャンペーンを通じて、UNIFEMの重点分野である「暴力の根絶」に日本が真摯に取り組んでいることを確認でき、とても嬉しく思っています。

(談)

イネス・アルベルディ
Dr. Inés Alberdi

イネス・アルベルディ/ 2008年6月UNIFEM事務局長に就任。前職はコンプルテンセ大学(スペイン・マドリッド)教授(社会学)。25年間にわたりジェンダー問題に取り組んでおり、これまでジョージ・ワシントン大学客員研究員(88年~89年)、ジョージタウン大学客員教授(78年~79年)を務めたほか、欧州委員会、銀行、国連機関等においても女性に関する開発の専門家として活躍した。家族と女性の問題についての著書多数。