「共同参画」2008年 12月号

「共同参画」2008年 12月号

特集

地域における男女共同参画推進の今後のあり方について -2/2- 内閣府男女共同参画局推進課

地域における男女共同参画推進の今後のあり方について、この問題に関して審議を行った男女共同参画会議基本問題専門調査会の3人の委員の方から、メッセージをお寄せいただきました。

男女共同参画の第2ステージ

袖井 孝子(男女共同参画会議議員 基本問題専門調査会会長 お茶の水女子大学名誉教授)

欧米に比べてウーマンリブの運動が、今ひとつ盛り上がりに欠けた日本では、行政の主導によって男女共同参画が推進されてきた面が強い。男女共同参画社会基本法に基づいて策定された基本計画が、地方自治体、地域団体、企業などにおいて具体化されるという、いわば上から下へという流れがあった。

しかし、最近では、地域社会において住民を主体とする身近な課題の解決のための独自の取組や活動が増している。この報告書では、これまでの上意下達ではなく、このような草の根の男女共同参画が芽生え始めてきた状況を、男女共同参画の第2ステージとよんでいる。

長洲一二氏が神奈川県知事であった1970年代、「地方の時代」ということが提唱された。しかし、当時は中央政府の統制力が強く、大都市圏の自治体をのぞいては自治体にも住民自身にも自分たちの生活を自分たちで守るという考え方が乏しかった。

1995年に地方分権推進法が成立し、中央集権から地方分権への流れができたことに加えて、98年にNPO法(特定非営利活動促進法)が成立したことは、法人格の取得を容易にし、地域社会における住民の活動を活発にした。さらに、99年に男女共同参画社会基本法が成立したことは、女性たちの地域活動の背中を押し、「地域における女性の時代」の到来を可能にしたといえよう。

男性中心の社会制度が疲弊し、日本社会全体が危機的状況にある今日、地域における女性たちの活動が、地域を変え、日本社会全体を変える原動力となることが期待される。

地域の課題解決に男女共同参画の視点の横ぐしを

加藤 さゆり(男女共同参画会議議員 基本問題専門調査会委員 全国地域婦人団体連絡協議会事務局長)

2008年10月28日、総理官邸で開催された第30回男女共同参画会議において、2年近くにわたって調査審議してきた「地域における男女共同参画推進の今後のあり方について」基本問題専門調査会報告が行われ、会議の場で議論いたしました。

本調査会報告には、「多様な主体の連携・協働」ということばが各所に記されています。住民、企業、NPO、女性団体、議員、行政など、地域の多様な主体の連携・協働による様々な課題の解決の重要性を指摘しています。

具体的には、地域で女性たちがかかわっている、防災をはじめ、医療や介護、環境や消費者問題、地域の農林水産業、子どもたちの安全、地域の公共交通問題など、あらゆる分野に、男女共同参画の視点を横ぐしとして通し、地域における多様な主体が、水平的に連携・協働しあいながら課題解決策を導き出していくことが重要です。

人々のゆるやかなつながりづくりは、関わる人々をさらにエンパワーし、信頼に基づいた活力ある地域社会を形成するために欠かすことの出来ないものです。

このように、地域における課題解決に男女共同参画の視点を反映させることは、地域社会の活性化と一人一人の暮らしに安全・安心をもたらすとともに、ひいては、政治及び経済活動をはじめとする政策決定の場への女性の参加を高めるなど、我が国の男女共同参画推進の鍵を握っていると言えます。

また、国の政策や、さらには世界の動きも今日、すぐに地域に影響を及ぼします。政策の影響を男女共同参画の視点で、地域から評価し、政策の企画・立案に反映させていくことが重要です。

地域における男女共同参画推進の意義、役割は益々高まっています。

サポートする人をサポートする仕組みを

山田 昌弘(基本問題専門調査会委員 中央大学教授)

男女共同参画社会の実現のため、地域でも様々な活動が行われるようになっている。それも、単に啓発活動や教養講座といったものだけでなく、今まで女性であることで様々な不利益を被ってきた人々を直接支援する活動、例えば、DV被害者の相談活動、主婦の再就職を支援する活動が行われるようになった。それを行う主体も、行政だけでなく、NPOや企業など、様々な主体が連携して関わるようになってきた。地域に密着しながら、サポートが必要な人をエンパワーメントする仕組みが形成されつつあることが実感できる。

しかし、サポートをする側の人材育成はどうなっているだろうか。例えば、男女共同参画にかかわる地域活動の担い手の力量向上をめざして、専門知識の習得やリーダー養成の必要性が提言されている。もちろん、それは必要であるが、活動に関わるのは、安定した収入がある公務員だけではない。NPOの職員やボランティアで活動している人もいれば、企業の社員、行政の嘱託という名の非正規職員も増えている。すれば、それらの人々を「やる気」にさせる制度やシステムが整っているだろうか。そもそも自立可能な収入を得ているのだろうか。もし、夫に養われている女性だから低収入でも活動できるというのでは、「男女共同参画」の担い手が、そもそも男女の役割分業を前提とした生活しかできないというのでは、本末転倒ではないか。

今後、サポートする人をサポートしていく仕組みを作ることが求められている。

地域における男女共同参画推進の今後のあり方について