「共同参画」2008年 11月号

「共同参画」2008年 11月号

連載/その2  DVに対する取組事例5

ウィメンズネット・マサカーネのDVを生きのびた子どもと女性のためのデイサービス事業 内閣府男女共同参画局推進課

NPO法人ウィメンズネット・マサカーネは、北海道室蘭市で、相談やシェルター、自立支援等を行っています。「マサカーネ」とは、アフリカ・ズールー語で「みんなで力を合わせよう」という意味です。DVを受け、悩み抜き、苦しみ続けてきた女性たちが、本当の自分らしさを取り戻し、自信を回復し、再出発できるよう、「みんなで力を合わせて」問題を解決していくことを目指しています。

1997年から活動を開始し、2005年にNPO法人となりました。2005年から子どものサポートグループを開始し、2008年から、(独)福祉医療機構の助成金を得て、「DVを生きのびた子どもと女性のためのデイサービス事業」を始めました。デイサービスでは、法人が所有している一軒家を活用し、1階を子どものスペース、2階を女性のスペースにし、シェルター退所後の母子を対象とした様々なプログラムを実施しています。

子どものプログラム

子どものサポートグループは、DV家庭に育った子どもたちに、「子どもらしく」遊ぶことができる安全で安心な場と機会を提供し、ボランティアスタッフに尊重される経験を積むことで、子どもの回復を支援することを目的としています。

週1回、2時間程度開設し、1か月ごとの利用申請で、ボランティアによる送迎を行っています。子どもたちはその時間、粘土や工作、おもちゃ、絵本、楽器、大型遊具など、自分がしたい遊びをすることができます。

子どもと一緒に遊ぶのはボランティアで、行政と協働して開催している養成講座の修了生や、看護学校の学生などが活動にかかわっています。

子どもは、自分のような経験をしたのは自分だけだと感じ、孤立しがちです。シェルター退所後の子どもにとって、周囲の大人からの支援だけでなく、同じ境遇にある子どもたちとの出会いは、大きな力になっていると感じています。

大人のプログラム

子どものサポートグループの活動を行う中で、子どもの支援のためには、母親の回復を支援する必要があることに気づきました。DVなど、長期に暴力の被害を受けてきた女性の場合、心身の状態が優れず、すぐに就労することは容易ではありません。就労していないと、地域での生活を始めても、社会との接点が持ちにくく、外出せずに家で過ごすことが多くなります。また、家事や子育てに困難を抱えていることもあります。子どもの回復のためには、現状では母親の役割が大きく、母子の関係性を保ちながら、両者を支援する仕組みが必要だと考えました。

大人のプログラムは2008年より開始し、平日の昼間に、料理、お茶、トールペインティング、陶芸、織物・染色、ステンドグラス、パソコン、自己尊重トレーニングなどのプログラムを用意しています。被害当事者は、自分の好きなプログラムに登録して参加します。これにより、定期的に外出する習慣がつき、家事技術の取得、コミュニケーションスキルの向上、手仕事を介しての楽しみや仲間作りが図られます。

デイサービスへの参加を継続することで、その家庭が孤立したり、密室になることを防ぐことができ、児童虐待の防止につながると考えています。また、継続的なかかわりの中で、子どもや母親から困りごとの相談を受けることも多く、デイサービスの重要性を実感しています。

  • 子どものスペース「おもちゃで遊ぶ部屋」子どもに選択肢を与えることが重要と考え、おもちゃは豊富に揃えている。
    子どものスペース「おもちゃで遊ぶ部屋」子どもに選択肢を与えることが重要と考え、おもちゃは豊富に揃えている。
  • 子どものスペース「元気いっぱい体を動かす部屋」アメリカのダギーセンター(死別を体験した子どものための施設)を参考に8つのルールを決め、各部屋に貼っている。
    子どものスペース「元気いっぱい体を動かす部屋」アメリカのダギーセンター(死別を体験した子どものための施設)を参考に8つのルールを決め、各部屋に貼っている。
  • 女性のスペース「織物の作業部屋」外部の専門家による講習を実施している。
    女性のスペース「織物の作業部屋」外部の専門家による講習を実施している。

(問合せ先)NPO法人 ウィメンズネット・マサカーネ
電話:0143-23-4443