「共同参画」2008年 11月号

「共同参画」2008年 11月号

特集1

女性に対する暴力をなくす運動について ~女性に対する暴力の現状と取組~ 内閣府男女共同参画局推進課

11月12日~25日は、「女性に対する暴力をなくす運動」の期間です。この期間を中心に、国、地方公共団体、女性団体など関係団体等が女性に対する暴力の根絶へ向けて、さまざまな取組を展開しています。女性に対する暴力について、現状と取組の概要をご紹介します。

女性に対する暴力の現状

配偶者等からの暴力、性犯罪、売買春・人身取引、セクシュアル・ハラスメント、ストーカー行為等の女性に対する暴力は、女性の人権を著しく侵害するものであり、男女共同参画社会を形成していく上で克服すべき重要な課題です。

(配偶者からの暴力についての被害経験)

内閣府が平成17年に実施した調査によると、これまでに結婚したことのある人のうち、配偶者から「身体的暴行」、「心理的攻撃」、「性的強要」のいずれかについて何度もあったと答えた人は、女性で10.6%、男性で2.6%となっています(図1)。

また、全国の配偶者暴力相談支援センターへの相談件数は年々増加し、平成19年度は6万件を超えており、警察に寄せられた配偶者からの暴力に関する相談等への対応件数も年々増加し、平成19年は2万件を超えているほか、保護命令の発令件数についても、ここ数年2千件規模で推移するなど、増加傾向にあります。

図1

(性犯罪の実態)

警察庁の統計によると、強姦の認知件数は、平成12年以降6年連続で2,000件を超えていましたが、16年から減少傾向に転じ、19年は1,766件で、前年に比べ182件(9.3%)減少しました。

強制わいせつの認知件数は、平成11年以降毎年増加していましたが、16年から減少し、19年では7,664件と、前年に比べ662件(8.0%)減少しています(図2)。

内閣府の「男女間における暴力に関する調査」(平成17年)において、女性(1,578人)に、これまでに異性から無理やりに性交された経験を聞いたところ、「1回あった」が4.0%、「2回以上あった」が3.2%で、被害経験がある女性は7.2%となっています。被害にあった時期としては、「20歳代」が36.8%で最も多く、次いで「中学卒業から19歳まで」(23.7%)となっています。また、「小学生のとき」(8.8%)、「小学校入学前」(5.3%)、「中学生のとき」(5.3%)など低年齢で被害を受けている人も2割程度います。

図2

(売買春の実態)

平成19年の売春関係事犯送致件数は2,490件となり、前年に比べ減少しました。また、要保護女子総数は3,247人で前年に比べ増加しましたが、未成年者が占める割合は18.3%で、前年に比べ24.5ポイント減少しています。

平成19年の児童買春事件の検挙件数は1,347件(前年比266件減)であり、このうち、出会い系サイトを利用したものが679件(50.4%)、テレホンクラブ営業に係るものは61件(4.5%)となっています。

(人身取引の実態)

警察庁の統計によると、平成19年における人身取引事犯の検挙件数は40件、検挙人員は41人で、検挙人員のうちブローカーが11人となっています。また、警察において確認した被害者の総数は43人と、前年に比べ15人(25.9%)減少しています。被害者の国籍は、フィリピン22人(51.2%)が最も多く、次いでインドネシア11人(25.6%)、韓国5人(11.6%)の順となっています。

(セクシュアル・ハラスメントの実態)

平成19年度に都道府県労働局雇用均等室に寄せられたセクシュアル・ハラスメントの相談件数は、15,799件となっており、男女雇用機会均等法の改正も受けて、ここ数年、急激に増加しています(図3)。

図3

(ストーカー行為の実態)

平成19年中に警察庁に報告のあったストーカー事案の認知件数は、13,463件で、前年に比べ962件(7.7%)増加しています。また、被害者の89.8%が女性で、行為者の89.8%が男性となっています。

平成19年のストーカー規制法に基づく警告は1,384件で、前年に比べ9件(0.7%)増加しています。警告に従わない者に対する禁止命令は17件発令されています。

また、ストーカー行為罪での検挙件数は240件で、前年に比べ62件増加しています。禁止命令違反での検挙件数は2件です。

平成19年中に、ストーカー規制法第7条に基づき、警察本部長等が援助を求められた件数は2,141件で、前年に比べ510件(31.3%)増加しています。援助の内容(複数計上)としては、被害を自ら防止するための措置の教示が885件(前年比215件増加)で最も多く、次いで防犯ブザー等の被害防止物品の教示又は貸出しが472件(前年比63件増加)となっています。

女性に対する暴力の根絶へ向けた取組

(女性に対する暴力をなくす運動)

11月12日~25日の「女性に対する暴力をなくす運動」の期間は、国、地方公共団体、女性団体その他の関係団体が、意識啓発、広報キャンペーン、講演会やセミナーの開催、被害者からの相談活動などを全国各地で展開します。

国、都道府県及び政令指定都市の取組は、内閣府男女共同参画局のホームページの「女性に対する暴力」のサイトでご覧いただけます。

(男女共同参画局HP http://www.gender.go.jp

この一環として、内閣府は、11月21日午前10時から翌22日午前10時まで、配偶者や恋人からの暴力の被害者が全国どこからでも無料で相談できる「24時間DVホットライン」を開設します。

(電話番号 0120-956-080)

また、11月18日には、都道府県・市町村の関係職員を対象に、内閣府が地方公共団体に委嘱して実施した「女性に対する暴力の予防啓発に関する調査研究」の報告会を開催します。

なお、若年層を対象とした、暴力的でない付き合い方や男女の平等なパートナーシップなど予防啓発に関する教材を作成する予定です。

(配偶者からの暴力対策)

昨年の配偶者暴力防止法改正や本年1月の基本方針の改定などを踏まえ、関係府省庁では、配偶者からの暴力対策の取組の充実強化を図っています。

[内閣府]

  • 官民の関係者等が一堂に会し支援についての情報を共有する「DV全国会議」を開催
  • 身近な相談窓口の連絡先を電話の自動音声で案内する「DV相談ナビ」(仮称)を平成20年度中に開始予定
  • 地域において生活している被害者の自立を支援するためのモデル事業を実施

[警察庁]

  • 被害者が相談・申告しやすい環境の整備(各都道府県警察の相談窓口の利便性の向上、被害者を夫・パートナーから引き離して別室での事情聴取)
[厚生労働省]
  • 婦人相談所において弁護士等により被害者へ離婚や在留資格等に関する法的な助言を実施
  • 婦人相談所一時保護所に被害者に同伴する児童の対応等を行う指導員を配置
  • 婦人保護施設の心理療法担当職員を常勤化
  • 婦人相談所における被害者に対する一時保護委託費の充実
  • 婦人保護施設、母子生活支援施設等の退所者支援の充実

(人身取引対策)

人身取引の防止・撲滅と被害者の保護に向け、政府は平成16年に「人身取引対策行動計画」を策定し、同行動計画に沿って取組を進めています。

[内閣府]

  • 人身取引の問題についての広報啓発を実施

[法務省]

  • 刑法に人身売買罪を創設等し、人身取引に係る行為に関する罰則を整備
  • 「興行」に係る上陸許可基準を見直し、人身取引事犯の取締りを強化
  • 被害者に対して,上陸又は在留を特別に許可できることとし,また,加害者である外国人を上陸拒否及び退去強制の対象とすることなどを内容とする法改正を実施
  • 地方入国管理官署に人身取引対策官を配置し,被害者の保護と帰国支援等を実施

[外務省]

  • 適正な査証審査を実施し、査証に係る偽変造対策を実施

[厚生労働省]

  • 婦人相談所において被害者を一時保護し、必要に応じ、民間シェルターへの一時保護委託、カウンセリング、法的な助言、医療支援を実施

DV全国会議の様子 DV全国会議の様子
DV全国会議の様子