「共同参画」2008年 10月号

「共同参画」2008年 10月号

リレーコラム/男女共同参画のこれまでとこれから 6

ディーセントワーク(尊厳ある労働)の中心に男女平等参画 男女共同参画会議議員 自治労副中央執行委員長 植本 眞砂子

99年男女共同参画社会基本法成立時、私は法制化議論と第一次「行動計画」策定議論を大阪の一組合の役員として「職場と社会を変える武器」にできるものにしたいと、熱い期待を込めて見守っていた。呼応する動きとして均等法が改正され、セクシュアルハラスメント配慮義務やポジティヴアクションなどが明記された。さらに介護・育児休業法の改正(2001年施行)児童買春・ポルノ禁止法も成立した。この10年間、私達は、「武器」を有効に「活用」出来ただろうか?

男女平等は一定進んできたともいわれるが、「ジェンダー主流化」即ち、あらゆる政策、活動がジェンダーの視点で提起されている状況にはなっていない。日本が「女性差別撤廃条約」批准に要した月日、議論の中味・男女雇用機会均等法制定の経緯を思い起こせば、日本社会における固定的男女役割分担意識の解消と経済・雇用政策のありようは密接不可分である。高度成長から低成長に変わり、片働きでは家計の維持が難しい世帯が増え共働きが増加し、非正規労働者(8割が女性)が増えてきたが、男女共同参画を意識した法整備や意識改革は状況の変化に追いついていない実情である。

それは、政府が進める審議会の委員の参画率30%は達成できたが、労働の場(雇用労働のみならず農林水産・商業分野でも)や政治(国会議員、自治体議員)の場では、遅々とした歩みであることが物語っている。地域社会で男女共同参画を進めていくためのツールとして「基本法」に基づく、「条例」「行動計画」づくりは、町村レベルでは進んでいない。

国連の女性指標(国連人間開発報告書)では2007年統計(2005年時)で、HDI(人間開発指数)8位、GDI(ジェンダー開発指数)13位、GEM(ジェンダー・エンパワーメント指数)54位の状況であり、『名誉ある地位』には程遠い現状である。

ILOは、2004年6月第92回ILO総会で「ジェンダー平等、賃金の平等、及び母性保護の促進に関する決議」を採択し、雇用問題のあらゆる側面に依然、男女平等の浸透が不十分であり、大部分の国で無給労働者、非典型労働者、求職意欲を失ってしまった失意の労働者の大半が女性であることを改めて指摘し、ディーセントワーク(尊厳ある労働)課題の4つの戦略目標(権利、雇用、社会的保護、社会対話)を貫くのはジェンダー平等と確認した。このことを日本でどう具現化するかということが問われている。

一方、少子化対策として「次世代育成支援推進法」の実効性を確保し、ワーク・ライフ・バランス憲章・行動指針を具体化するためにも働き方改革が大きな課題であり、その道筋の先にディーセントワークがある。

連合が提起している「労働を中心とした福祉型社会」は、男女がともに働き、ともに社会を支える税・社会保険料を負担し、そのことで福祉が向上し安心して働きつづけられる、働くことに希望が持てる社会、即ち男女共同参画社会である。その具体的実現に向けて、税・社会保障の分野での自立を促し、性に中立的な制度改革や、保育・介護・医療の現場実態の改善、同一価値労働同一賃金の確立、公契約におけるポジティヴアクションの導入の促進などスピード感を持って改革していく必要がある。私もその一翼を担いたい。

植本 眞砂子
うえもと・まさこ/関西大学第二文学部卒業。1967年大阪府庁入庁。自治労大阪府職書記長・同副委員長。大阪府労連書記長。自治労大阪府本部書記次長。自治労副中央執行委員長・同書記長、連合副会長などを経て、自治労副中央執行委員長。男女共同参画会議議員。国土審議会委員。日本水フォーラム評議員。編著「女性と労働組合」(明石書店)