「共同参画」2008年 10月号

「共同参画」2008年 10月号

スペシャル・インタビュー

「人権をいかに大切にしていくか」~男女共同参画や福祉の基本的理念として~ NEMOTO TAKASHI

今回は、男女共同参画に積極的に取り組む千葉県野田市の根本崇市長にお話を伺いました。

「男女共同参画のメルクマールは『首長』のリーダーシップ」

─ 野田市長として17年目に入られたところですが、改めて市長としての抱負をお聞かせ下さい。

根本  私自身の行政運営のスタンスというのは、1つは憲法の理念を大切すること、つまり人権の問題です。人権をいかにして大切にしていくかという、憲法の理念をベースにして、男女共同参画も福祉部門の仕事もすべての施策を展開していこうということです。

もう一つは、自然との共生ということ。具体的に申し上げると、ビオトープを作り、そこで無農薬・有機のお米づくりをしていく中で、かつての里山を復活させていくという取組、更に有機栽培を進めていくために、堆肥づくりを市が組織的に行う、などという取組があります。これらはマニフェストにも書いているのですが、結果として非常にユニークなマニフェストになったのではないかと思います。

─ 男女共同参画についても熱心に取り組んでおられると伺っています。女性管理職の登用率の達成目標など、女性の活躍の促進についてはどのようにお考えですか。

根本 どこの市町村も、計画を作ると、例えば「審議会の登用率は何%にします」と書きます。野田市も40%と書いてあります。野田市は既に目標を超えましたが、これが他の地域でなかなか進まない。進まないのは

何かというと、トップが形だけつくって、それで済ませて、おしまいと思ってしまうかどうかだということだと思います。野田市もかつては、女性の登用率は低かったんです。

ですから、審議会で女性比率がどれだけになるのかということだけは全部チェックしています。私がOKを出さない限り任命行為が行われないという形にしていますから、基本的に40%以下であった場合には、その理由を求めて、納得できる理由がない限りは決裁しない。これですぐ実現できます。私はそれを首長さん全員がやるべきだと思います。下からの盛り上がりでやっていくというのは、どこかで止まってしまうというふうに思っています。

─ 野田市は、市として、全国に先駆けて配偶者暴力相談支援センターを設置し、配偶者からの暴力に関する基本計画の策定をされていますが、そのきっかけについてお聞かせ下さい。

根本 平成8年に初めて県の男女共同参画の審議会のメンバーになりました。色々な政策を勉強させて頂きましたが、ただ、そのメンバーの皆さん方からは、県レベルでの取組が進まないという不満が出ていたんですね。それならば、私どもでやれるだけのことをやってみようかということを考えまして、それで、平成14年に大綱を定めました。大綱を定めるまでが結構難しかったですが、ゴーサインを出したら、そこから先はすっと進んだんです。その大綱に沿った施策の延長線上にセンター、基本計画があったんです。

私は基本的には、自治体がこの話はやらなくちゃいけないと思っていましたから、ほかではまだやってないときに、動いたということです。

─ 被害者支援にあたって、警察やNPO法人などの地域の関係機関とどのように連携をとっておられますか。

根本 シェルターを作ったときの話から申し上げます。これをつくろうという話を考えたのは、野田市という千葉県内の最北端で、DV被害の女性をどこへといったら、千葉市にしかなかった。そうすると、時間もかかりますし、大変だし、それはやはり市町村がそういうものをつくるべきだろうということで、大綱の中に書きました。

そこではたと困ったのは、夜間でもいかなるときでも、休みの日でも対応しなくちゃいけないわけですね。そうすると、うちの男女共同参画課の職員だけでは無理で、やはり市民の皆さん方の御協力をいただかなければいけないなと。そのとき、それじゃあNPO法人をつくって、その運営を受けましょうという話をしてくれた方がいて、その皆さん方がNPO法人をつくってくれました。

我々はそれでは施設を用意しましょう。運営の方は、そのNPO法人と行政が連携プレーを取ってやっていきましょうとなりました。そうすると、夜間でも24時間でも対応できるような格好になります。ただしNPO法人もそこに常時、人を配置するというわけにはいきません。ですから、やはり連絡がうまく取れるような、行政とNPO法人のメンバーの方の連絡網をつくる。そんな形で夜でも対応できるようにしていく。当然、そのときには警察との連携プレーも取っていくという話になってくる。ドメスティック・バイオレンス対策連絡協議会というのをつくって、関係機関との間の連携プレーを取っています。

─ 最後に市長からのメッセージをお願いします。

根本 問題は、私どもの市としましても自分たちの市民が被害に遭ったときに、野田市のシェルターに置いておくよりはほかの自治体のシェルターの方がありがたいんです。それが県の施設だけではちょっとどうなのかな、少し足らないのではないかなと思っています。

ですから、できれば、それぞれの自治体が、これは一部事務組合でも結構ですから、ブロックごとにつくっておいてもらって、その被害者の希望に応じて、できるだけ地元でないところに行けるようにしていくというシステムがいいんだろうなと考えています。

そして、自立させるために住宅対策が一番大切だし、それともう一つはそこにおける生活保護の問題をどう整理するかということが大事だと思います。

─ 本日はお忙しい中ありがとうございました。

千葉県野田市長 根本 崇
千葉県野田市長
根本 崇

ねもと・たかし/東京大学法学部卒。建設省(現:国土交通省)入省、千葉県企画部水政課長、静岡県島田市助役、大臣官房政策企画官を経て、野田市助役に就任。1992年7月に野田市長として初当選、現在5期目。