「共同参画」2008年 7月号

「共同参画」2008年 7月号

特集1

平成20年版男女共同参画白書地域における女性の活躍 ―実践的活動から進化する男女共同参画―  内閣府男女共同参画局推進課

去る6月13日に、平成20年版男女共同参画白書を公表しました。男女共同参画白書は、男女共同参画社会基本法に基づいて毎年国会に提出するもので、今年で9回目になります。今回は、「地域における女性の活躍」を特集として取り上げており、加えて男女共同参画社会の形成の状況や施策について記述しています。

ここでは、特集編の内容についてご紹介します。

1.地域における女性の活動・参画の現状

人々にとって最も身近な暮らしの場として、地域は家庭とともに重要です。そして、地域の様々な活動に対する女性の意欲は高まっており、地域活動の担い手としての女性に大きな期待が寄せられています。また、実際に、地域を活性化する女性の活躍は全国各地にみられます。しかし、女性が地域のリーダーとして活躍する機会は少なく、女性の力が十分に活かされていないという現状があります。

(地域活動への参加意欲の高まり)

地域のつながりが薄れる一方で、社会への貢献意欲や地域が元気になる活動への参加意欲は高まっています。

(ボランティア活動に意欲的に取り組む女性)

実際にボランティア活動を行っている人の割合をみると、女性は男性と比較して高齢者を除くほとんどの年代で高くなっています(図1)。

(図1)性別年年代別ボランティア行動者率

特に、行動者率で男性を大きく上回っている30歳代後半から40歳代にかけての女性は、子どもを対象とした活動、安全な生活のための活動について行動者率が高くなっており、この世代の女性は子育てや生活の安全への関心が高いことが分かります(図2)。

(図2)主なボランティア活動の行動者率

(少ない地域の女性リーダー)

しかし、一方で、地域においてリーダーとして活躍する女性は多くありません。例えば教育分野では、女性が大きな役割を担っているPTAも、その会長に占める女性の割合は全体で10.1%と低くなっています。また、市区町村議会議員(平成19年10.5%)や自治会長(同3.8%)など、分野横断的に活躍する地域リーダーについては、特に女性の参画が遅れているといえます(図3)。

(図3)地域において活躍する女性の割合

特定非営利活動法人の代表者に占める女性の割合をみると、全体では22.5%となっており、分野別では、「男女共同参画社会の形成の促進を図る活動」で女性が過半数を超えている以外は男性の方が多くなっています(図4)。

(図4)主たる活動分野別の特定非営利活動法人の代表者に占める女性の割合

2.女性が中心的役割を果たす活動事例

まちづくり・観光、環境、子育てなど、地域における女性の活動は、多岐にわたります。ここでは、そうした活動事例にみられる特徴を整理してご紹介します。

(身近なものを大切にする気持ちが原動力)

身近なものや人々を支え、育てていかなければならないという強い思いが原動力となっているケースが多くみられます。

地域の生活文化づくりという夢の共有が結実-特定非営利活動法人 納川の会(島根県)

石見地域の生活資源の魅力や豊かさを地元の住民や外部の人々に伝えたいという強い思いがきっかけとなり、女性のためのフォーラム開催、古民家の再生、地域の生活文化を活かした服飾ブランドや工芸品づくり、地域住民との触れ合い交流イベント等幅広い活動を実施。

(地域や生活に密着した視点と柔軟な発想)

生活者・消費者の視点、そして、既成概念やこれまでのやり方を変える柔軟な発想において優れている活動が多くなっています。

自立した女性たちの職業意識が地域ブランドを確立-ウージ染め協働組合(沖縄県豊見城市)

地元の特産物であるサトウキビの茎や葉、穂を原料として抽出された色素を染料(ウージ染め)として利用し、各種の商品開発を実施。

(緩やかなつながりによる活動)

「連携・協働型」のリーダーシップを発揮しながら、多様な主体と緩やかなつながりを保ちながら活動を展開していることが多いという特徴があります。

多様な主体との連携により火災ゼロを維持-大利根町婦人防火クラブ(埼玉県大利根町)

防火訓練だけでなく、子どもへの防災教育等きめ細かな防火活動等を行うほか、家庭訪問と併せて一人暮らしの高齢者のケアなども実施。行政や地域内の住民との世代を超えた交流、他地域との交流を通じ、防火活動以外の美化活動等に発展している。

(意識・行動を変え、人を育てる活動)

人々の意識や行動を変え、また、女性自身の人材育成機能を果たしています。

女性の活躍が地域の農業のイメージを一変-女性農業機械オペレーターグループ「グリーンズ」(福岡県苅田町)

女性8名が、農耕用大型特殊免許や農業機械士の資格を取得し、農作業の受託や各種農産物の栽培等を実施。「男性が機械に乗って女性はその横で補助的な作業を行う」という従来の農業のイメージを変え、新たな農業の可能性を引き出した。

レンタル食器で住民の環境意識が向上-特定非営利活動法人 スペースふう(山梨県増穂町)

イベントの際に大量に出る使い捨て食器のごみの山に対する問題意識から、イベント等の飲食に使用される使い捨て食器の代わりとなるレンタル食器(リユース食器)を提供する環境コミュニティ・ビジネスの展開。活動を通じ、地元住民の環境意識や文化意識の向上に役立っている。また、活動のメンバーから、町議会議長や議員になる者を輩出している。

(積極的な評価による活動の持続・発展)

活動に対する外部からの積極的な評価が、活動を持続させ、活性化し、更なる発展をもたらしています。

町ぐるみの防犯活動で空き巣が激減―杉並区馬橋地区ご近所付き合い広目隊(東京都杉並区)

蛍光色の目立つユニフォームであいさつをしながら練り歩く「あいさつパトロール」などを行うほか、ごみ拾いなどの環境美化活動等を実施。地域の空き巣やひったくりが大幅に減少し、「空き巣に狙われた街」というイメージの払拭につながった。また、平成19年に警視総監賞を受賞したことも活動の推進力となった。

3.女性が中心的役割を果たす地域活動の重要性

経済的,社会的活力の低下や,地域におけるつながりが希薄化する中,1.地域の実情に合致した主体的な取組により,2.多様な主体や新しい視点を活かし,3.地域に波及・浸透効果をもたらすという意味で,女性が中心となって活躍する地域活動は,一層重要性を増しています。

これらの活動が、今後更に発展・進化していくために、様々な女性の活躍事例から抽出した、5つのポイントを以下に紹介します。

(女性が中心的役割を果たす地域活動が進化するための5つのポイント)

  1. 多様な主体の参画の確保と緩やかなネットワークの形成・持続
  2. コミュニケーション能力や調整能力に富んだ新しい「連携・協働」型のリーダーシップ
  3. 意識改革・行動改革
  4. 人材育成の好循環の創出
  5. 活動の成果や活動に対する積極的な評価

(行政に求められる様々な支援)

行政としても,情報提供や機会の付与等の支援や,積極的な評価を行っていくことが重要と考えています。加えて、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の推進等地域活動に参加しやすい環境づくりなどに努めていくこととしています。

(女性が中心となって展開する地域活動の今後の可能性)

女性が中心となって展開する地域活動は、地域の抱える様々な課題を解決する重要な鍵となり、人々の意識や行動を変え、人々の成長を促し、地域の新しい魅力を引き出すものであり、多くの可能性に満ちていると考えています。