「共同参画」2008年 6月号

「共同参画」2008年 6月号

特集1

女性の参画加速プログラムについて~「2020年30%」を目指して~  内閣府男女共同参画局推進課

本年4月、男女共同参画推進本部において、女性の参画加速に向けた取組を戦略的に行っていくため、平成22年度までに実施すべき具体的な取組内容について記述した「女性の参画加速プログラム」を策定しました。先月号ではプログラムの概要をご紹介しましたが、今月号では、より具体的な現状と施策の内容についてご紹介します。

女性の力を活かすことは、活力ある社会を築くための大きな鍵となっています。特に、様々な意思決定の場面への女性の参画は、多様な視点を導入し、新たな発想を取り入れていく上で大変重要です。実際に、新たな課題に対応した政策立案、企業における生活者の視点に立った商品開発、地域における多様な活動の展開など、多くの分野で女性の参画が、経済・社会の活性化に役立っています。

こうしたことから、政府では、「社会のあらゆる分野において、2020年までに、指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度になるよう期待」という目標を決定し、平成17年12月に閣議決定した男女共同参画基本計画(第2次)にも明記して取組を進めています。

しかし、図1をみると、現在、この目標を達成している分野は少ないことが分かります。

また、女性の割合自体は高くなってきていても、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現が難しく、女性が力を発揮しにくい分野も数多くあります。

こうした状況を打開するため、プログラムでは、1.仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現、2.女性の能力開発・能力発揮に対する支援の充実、3.意識の改革の3つを基本的な方向とし、あらゆる分野における女性の参画加速のための基盤整備と、活躍が期待されながら女性の参画が進んでいない分野についての重点的取組を進めていくこととしています。

(図1)各分野における「指導的地位」に女性が占める割合 「2020年までに指導的地位に女性が占める割合が少なくとも30%程度となるよう期待」

1.基盤整備の充実

あらゆる分野において女性の活躍を促進するために、例えば以下のような取組を行います。

・各界トップ層等への戦略的な働きかけ

女性の登用や活躍しやすい環境づくりには、各組織のトップ層の意識や取組姿勢が大きな鍵となるため、各界トップ層等への戦略的な働きかけを進めます。

具体的取組例 男女共同参画担当大臣によるトップ訪問

「職場を変えよう!キャラバン」として、男女共同参画担当大臣が各種団体のトップと対話を行い、このプログラムの内容や女性の登用の意義等をご理解いただくよう、現在率先して働きかけているところです。(P18参照)

・女性の人材育成、能力開発・発揮

地域によっては、女性の身近なロールモデルが不足していたり、能力発揮の場が少ないことから、情報交換や自己研鑽のためのネットワーク作りや実践活動を通じた人材育成推進、メンター育成などを進めます。

具体的取組例 企業内女性メンター育成事業

女性労働者が企業内で困難に遭遇した際に適切なアドバイスをするメンターとしての役割を担えるよう、管理職就任前後の女性を対象に研修等を実施します。

・積極的な取組に対する評価・好事例の提供等

女性の活躍やそれを支援する取組に対して光を当て、好事例を普及することは、女性の意欲向上や各組織での取組につながります。

具体的取組例 表彰制度の充実

これまで内閣府で行ってきた「男女共同参画社会づくり功労者の内閣官房長官表彰」も今年度から総理大臣表彰に充実・強化することとしています。

2.重点分野に ついての取組

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)が実現しにくく、活躍が期待されながら女性の参画が進んでいない医師、研究者、公務員について重点的に取組を行い、その成果を他分野に波及させます。

(1)医師 - 医療体制の充実へ -

女性の割合をみると、他の分野に比べて少なくありません。しかし、医師をとりまく状況をみると、多くの女性医師は、慢性的な長時間労働、不規則な勤務形態により育児、介護等と仕事との両立が難しく、長期休業や、勤務形態の変更を迫られています。また、特に、医師不足が社会問題となっている産婦人科医、小児科医については、女性医師の割合が、新規に医師になる者の多い20代でそれぞれ73.1%、50.1%(平成18年)となっていることから(図2)、こうした状況を放置すると一層深刻な問題となるおそれがあります。

(図2)年齢別産婦人科医師数、小児科医師数男女比

このため、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の推進や女性が能力を発揮しやすい環境の整備を積極的に進めることが必要です。

具体的には、例えば次のような取組を行います。

・勤務体制の見直し

各医療機関の勤務体制を見直すことにより、仕事と生活の両立を支援します。

具体的取組例 正規雇用短時間勤務医制の普及

フルタイムより所定労働時間が短く基本的に残業がない勤務で、就業時間に比例した待遇を受け、社会保険が適用される働き方を医師が選択できるようにします。

・継続的な就業の支援

医師は、勤務形態に応じ保育ニーズも多様であるため、きめ細かく対応する必要があります。

具体的取組例 病院内保育所運営事業

子どもを持つ看護職員・女性医師をはじめとする医療従事者の離職防止及び再就業を促進するため、医療機関に勤務する職員の乳幼児の保育を行う事業や院内保育所を新たに開設する場合、その経費の一部に補助を行います。

・離職後の復帰支援

出産・育児、介護等により離職せざるを得なかった女性医師が第一線に戻って活躍するためには、医療技術の進歩へのキャッチアップを可能とする研修の実施、相談体制の充実など、きめ細やかな復帰支援が必要になります。

具体的取組例 女性医師バンクにおける相談体制の強化

女性医師バンクによる再就業支援事業を早期に全国展開するため、求人者と求職者の立場で様々な事情及び要望に対し、きめ細かな就業相談に応じることができるコーディネーターの養成研修・配置等を行います。

(2)研究者 - 科学技術に新たな地平を -

女性研究者の活躍は、今後、我が国が科学技術の分野において国際競争力を維持・強化する上でも、また、多様な視点・発想を取り入れた研究活動を活性化させる上でも重要です。しかし、我が国の研究者に占める女性の割合は、12.4%(平成19年)と他の先進国と比べて2分の1から3分の1の水準となっています。(図3)

(図3)研究者に占める女性割合の国際比較

この背景としては、女性研究者は、出産・育児、介護等との両立が難しく、その間に研究業績が十分に上げられないこと等により、キャリア形成や研究現場への復帰が難しい状況となっていることがあります。

このため、具体的には次のような取組を行います。

・先進的な取組の普及・定着

一部の大学・研究機関では女性研究者支援のための取組が始まっており、今後はその成果の定着や普及に努める必要があります。

具体的取組例 女性研究者支援モデル育成(科学技術振興調整費プログラム)の拡充

平成18年より、大学や公的研究機関を対象として、研究環境の整備や意識改革など、女性研究者が研究と出産・育児等を両立し、研究活動を継続できる仕組みを構築する際のモデルとなる優れた取組を支援しており、現在はこの取組の拡充に向け、取り組んでいるところです。

具体的取組例 出産・育児による研究中断からの復帰支援(特別研究員事業)

優れた男女の若手研究者が出産・育児による研究中断後に円滑に研究現場に復帰できるよう、研究奨励金を一定期間支給する特別研究員事業の支援枠を拡充しています。

(3)公務員 - 多様なニーズに応える行政へ -

国家公務員管理職において女性が占める割合は、年々増加してはいるものの、平成17年度において1.7%と依然低くなっており、また、役職段階が上がるにつれて女性割合は低くなっています。

このため、プログラムには、国家公務員の管理職(本省課室長相当職以上)に占める女性の割合を、平成22年度末までに政府全体として5%程度とするという数値目標が設定されています。これを受け、現在、各府省で次のような取組を行っています。

具体的取組例 各府省における「採用・登用拡大計画」等の見直し・充実

各府省において定めている「女性職員の採用・登用拡大計画」等に「現在の割合より3%程度を基本に増加」という数値目標を盛り込み、よりきめ細かで具体的な行動計画とすべく、充実・見直しを行っているところです。

実際には、上記の例だけでなく、プログラムに基づいて数多くの施策が実施されています。詳しくは、プログラム全文をご覧下さい。

http://www.gender.go.jp/kaigi/honbu/kettei.html