「共同参画」2008年 4・5月号

「共同参画」2008年 4・5月号

Symposium Report

「仕事と生活の調和元年」はじまる~連続シンポジウム~

2月16日「ワーク・ライフ・バランス シンポジウム」(第2部・分科会)
テーマ1「女性が変わる、ワークスタイルを変える。生活と仕事のハーモニーとは?」

会社の指導的立場にあり、バリバリ仕事をしつつ、一方でしっかり子育ても実践されている方々は特別な存在なのでしょうか。私生活はどのような荒波を超えてきたかの本音トークが、熱く展開されました。

パネリストの方々は、会社や先輩の後押し、夫や両親の理解やサポート、保育園、ファミリーサポーター、学童クラブ等の子育てサービスを積極的に活用する等、周囲をどんどん巻き込んでいるとのことでした。

「ワーク・ライフ・バランスを保つために何かやらなければいけないときは、周囲の人を巻き込む、そういう勇気を持ってもらいたい。」「産むことと仕事を続けることに悩んだら、そこで立ちどまっていないでチャレンジしてみれば、何か新しい道が開けてくるのではないか。」「仕事、結婚、子育て、選択するのではなくて、選択肢が増えたら、それもやってしまえばいい。」とのコメントがありました。

仕事と生活を調和させるためには、個人と社会との調和がポイントであり、欠かせないと締めくくられました。

テーマ2「社員の力を引き出す中小企業経営者の姿勢とは」

ワーク・ライフ・バランスの取組は、中小企業にとっては難しいとの意見が出されましたが、人材獲得をめぐる状況が厳しい中、有能な人材を定着させる意味においてもその取組は極めて重要であり、社員が長く働き、能力を存分に発揮してもらうことで、会社も発展する。そのためには、経営者の意識改革はもちろんのこと、社員が生涯設計できるような仕組みや制度を導入することが大切である。また、創意工夫によって、業務の改善、コストダウンにもつながり、生産性も向上する。労使双方が十分協議し、ワーク・ライフ・バランスに取り組む環境をつくり、お互いが共通の目標に向かって努力することが必要との報告や助言がありました。まとめとして、中小企業を活性化するためにも積極的なワーク・ライフ・バランスへの取組、そして中小企業と自治体との連携、それが地域経済の発展にもつながるということが確認されました。

テーマ3「就職活動を前に未来の私を考えてみよう」

立命館大学の学生に対するキャリア支援施策の先進的な取組を事例として紹介がありました。女子学生数が全国で3番目でもあり就職活動支援策を充実していく過程の中で現在の形になり、昨年からはワーク・ライフ・バランスも重要なテーマとして捉え、30代になった時の自分の姿を考えることから始め、社会でどのような働き方、ひいては生き方をしたいのかということをしっかり考える機会を提供していると報告がありました。その後のディスカッションでは女子学生の就職指導の観点や、結婚、出産、などのライフイベントとの関係や父親の視点の提供。実際のワーキングマザーの声なども参考にしながら、社会に人材を送り出す教育セクターとして、ワーク・ライフ・バランスをどう捉え、伝えていくべきなのかということも議論されました。そして、ワーク・ライフ・バランスは、女子学生だけではなく、男子学生にも伝える必要があることが指摘されました。

少子化対策を考える国際シンポジウム─英国・ドイツ・韓国─の報告

平成20年3月13日、日本学術会議講堂において「少子化社会対策に関する国際連携推進事業」(内閣府主催)の一環として、「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)と子育て支援策」をテーマに国際シンポジウムが開催されました。パネルディスカッションでは招聘国および日本政府の子育て支援策と民間企業の事例として資生堂の取組についての報告が行われ、それに基づいたパネラー間の活発なディスカッションと参加者との質疑応答が行われました。紙幅の都合上、ここでは3カ国の子育て支援策のポイントと特徴に焦点をあてて紹介することとします。

(1)英国は過去10年で210億ポンドの子育て支援のための投資を行い、出生率も2001年以後改善が見られました。現在子育て支援10ヵ年戦略に基づき少子化対策を進めていますが、最大の特徴は出産休暇の充実、親の就業支援だけでなく、就学前の基礎教育、5歳児の能力向上と格差縮小を目標とした「子どもの成長支援」に力を入れていることです。

(2)ドイツは新たな取組として「持続可能な家庭政策」を打ち出し、子育て家庭への補助金、保育の充実や父親の育児休暇の利用率の向上など、的を絞った支援策を進めているのが特徴です。また企業の家庭向け支援策の種類も多様で、官民一体となって少子化対策が行われていることがわかりました。

(3)韓国では、実労働時間の削減や勤務環境の多様化を進めており、家庭重視の企業経営に認証システムを導入しています。また子どもの年齢に応じた育児支援の充実と女性の就業を促進する保育支援サービスの拡大を進めています。特徴としては、非正規労働者の育児休暇や障害を持つ労働者の出産・育児支援プログラムの導入など社会的弱者への支援策を打ち出している点をあげることができます。

さて、今回のシンポジウムでは今後の少子化対策・子育て支援策の参考にできるよう、多くのご質問、意見をいただきたいという主催者の意図から、予め配布したポストイットに記入していただき、回収するという方法を取り入れました。嬉しいことに、パネリストが驚くほど、二色のポストイットでホワイトボードがいっぱいになりました。いただいた質問は、通訳の方の協力でパネリストの方々にひとつだけ選び、お応えいただきました。すべての質問にお応えすることやご意見を紹介することができなかった点が大変申し訳なく、残念でした。シンポジウム終了後、パネリストの方々から、参加者から多くの質問、意見をいただいたことへの謝意とともに、とくに「子育て支援策の中で、保育職務者側への支援・待遇改善への戦略をどうするのか」、「子どもたちの育つ環境についてもっと考えるべきである」というご意見は大変重要であり、しっかりと受けとめていきたいという言葉が寄せられたことを紹介し、本国際シンポジウムの報告といたします。

このページの執筆に関しては、本シンポジウムのコーディネーターを務められた萩原なつ子氏にお願いしました。

萩原なつ子/立教大学教授。男女共同参画推進連携会議議員。

Vol.001 ワーク・ライフ・バランス シンポジウム(2月16日(土)、東京都千代田区)
(男女共同参画社会に繋がる仕事と生活の調和の実現)
Vol.002 子育てを支える「家族と地域のきずな」フォーラム(2月23日(土)、高知県高知市)
(ワーク・ライフ・バランス企業に関する分科会の実施 など)
Vol.003 少子化対策を考える国際シンポジウム(3月13日(木)、東京都港区)
(諸外国、日本における仕事と生活の調和の取組 など)
Vol.004 ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて(3月17日(月)、東京都千代田区)
(仕事と生活の調和に向けた企業の克服課題 など)