「共同参画」2008年 4・5月号

「共同参画」2008年 4・5月号

特集/仕事と生活の調和の推進 Part2

「仕事と生活の調和元年はじまる」 ~連続シンポジウム~ 内閣府男女共同参画局総務課・内閣府仕事と生活の調和推進室

仕事と生活の調和元年!連続シンポジウムが開催されました

憲章と行動指針の策定を受け、内閣府では平成20年を「仕事と生活の調和元年」と位置づけて積極的な取組を進めることとしており、2月から3月にかけて、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)連続シンポジウムを開催しました。

(1)第一弾となる「ワーク・ライフ・バランス シンポジウム」は男女共同参画推進連携会議と共催で2月16日(土)に開催され、上川大臣の挨拶の後、基調講演(佐藤博樹東京大学教授)、パネルディスカッションに続き、後半は3つのテーマに分かれての分科会が行われました。

(2)第二弾の「『家族と地域のきずな』フォーラム」は、高知県で開催され、上川大臣がコメンテーターとなり、高知県の取組、県内企業の事例発表などが行われました。その中では、1.地方では中小企業が多く、そうした企業への支援が重要であること、2.男性が抜けても女性が抜けてもチームプレーで補うことができるような職場づくりが働き方のイノベーションにつながること、3.各企業の制度の充実に加え地域全体で相互に支え合っていくことが重要であることなどが話し合われました。

(3)第三弾の「少子化対策を考える国際シンポジウム」では、英国、ドイツ、韓国、日本の取組が紹介されました。

(4)第四弾の「ワーク・ライフ・バランスの実現に向けて」シンポジウムでは、企業における生産性向上などの課題とその克服の処方箋などについて、熱心な議論が行われました。その中では、1.仕事と生活の調和の実現には中間管理職における対人関係調整能力が重要であること、2.仕事と生活の調和に取り組んだ企業は5~10年後に収益が高まっていること、3.多様な働き方のメニューを労使で提示したり、幅広い取組を国民運動として進めることで一人ひとりの意識を変える必要があること、4.仕事と生活の調和を進めないと離職が進んだり優秀な人材の確保が困難になること、5.制度を整えるだけではなく管理職の意識や組織風土を変えるといった職場づくりが重要であることなどが話し合われました。

ここでは、(1)と(3)のシンポジウムについて紹介します。

2月16日「ワーク・ライフ・バランス シンポジウム」(第1部)

2月16日、千代田区の学術センターに約500名の参加者を集め、第一弾のシンポジウムが開催されました。第1部冒頭で上川大臣は「今年を『仕事と生活の調和元年』と位置づけ、政府としても働き方の改革を積極的に推進していく。個々の企業・組織にとって、この取組は、コストではなく、将来の成長・発展につながる『明日への投資』であり、トップが経営戦略の重要な柱として位置づけ、推進していくことが不可欠」と挨拶しました。

基調講演

佐藤博樹東京大学教授から、「女性の活躍の場の拡大と働き方の改革:ワーク・ライフ・バランス支援の必要性」と題して基調講演が行われました。「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」と「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が目指す3つの課題について、1.男女共同参画の視点で女性が活躍できる場を拡大していくこと、2.女性も、若者も、高齢者も、働きたいという人がその意欲や能力を生かせるような働く場に就けるという労働市場改革を目指すこと、3.結婚や出産を希望する人がその希望を実現できるような社会をつくることが必要であると指摘しました。

ワーク・ライフ・バランス支援が必要な背景として、仕事に使える時間に制約のある社員の増加、社員の価値観やライフスタイルの多様化により、「ワーク・ワーク社員」から「ワーク・ライフ社員」への転換が挙げられる。ワーク・ライフ・バランス支援として実現すべき3つのポイントについて、まず、1番目は、社員の「時間制約」を前提とした仕事管理・働き方の実現(WLBの1階部分)、2番目は、ワーク・ライフ・バランス支援のための制度の導入と制度を利用できる職場作り(WLBの2階部分)、3番目は、多様な価値観やライフスタイルを受容できる職場作り(WLBの土台部分)であり、この3つが並行して変わらないと働き方の改革というのはできない。特に、働き方の土台と1階部分を変えていくということに取り組むことによって社会が変わる。男性を含めて働く人は家庭で子育てに関わり、地域社会でも専業主婦と高齢者だけでなく、働いている人たちも地域社会の活動を支えられる。働き方を変えて持続可能な日本社会を作っていくことが重要である旨述べました。

また、ワーク・ライフ・バランス支援の定着には、管理職の意識改革が不可欠であり、管理職が多様な価値観や生き方、ライフスタイルを受容できる職場作りの鍵を握っていることを強調しました。

パネルディスカッション

アパショナータ代表のパク・ジョアン・スックッチャ氏のコーディネートにより、産学官それぞれの立場からワーク・ライフ・バランスの取組事例や課題が報告されました。

(1)株式会社ワトソン ワイアット代表取締役社長の淡輪敬三氏は「多様性を生かす」と題してグローバルの企業である人事コンサルタントの立場から、「多様性への対応力が企業、ひいては国の競争力を決める」ことを強調しました。

(2)株式会社高島屋の代表取締役 副社長 安藤温規氏は「高島屋のワーク・ライフ・バランスへの取組」について発言。「女性の多い職場であることから早くからこの分野に取り組んできた。様々な顧客のニーズに応え、企業が発展していくためにはチーム力が求められるが、そのために多様な働き方で構成される個人個人の能力を引き出すことができれば、その力の集積が企業の力となる」と、ワーク・ライフ・バランスの取組が企業の重要な戦略になることを明らかにしました。

(3)株式会社クララオンライン代表取締役社長の家本賢太郎氏は、「クララオンラインにおけるワーク・ライフ・バランスの取組みについて」と題し、中小、ベンチャー企業における取組を報告。「大企業が行っているのと同じ取組を中小企業が単独で行うことは難しい。できることから初めていけばいいのではないか」と自社の取組事例を紹介されました。

(4)明治大学情報コミュニケーション学部准教授の牛尾奈緒美氏は「働く人の意識変化とこれからの人的資源管理」と題して、私生活の重視、仕事と家庭の両立への願望、長期間勤続志向の低下など最近の若者意識の変化を取り上げ、今や従業員の視点に基づいた人事管理が不可欠であり、ワーク・ライフ・バランスへの配慮と女性の能力発揮を両輪で進める必要性を指摘しました。

(5)兵庫県理事の清原桂子氏は「ワーク・ライフ・バランスへの兵庫県の協働の挑戦」と題して、阪神・淡路大震災の経験から、政労使、企業、地域団体・NPO、大学それぞれとの協働によるワーク・ライフ・バランスの取組について報告しました。

2月16日のワーク・ライフ・バランス シンポジウムにおける上川大臣の挨拶、佐藤東京大学教授の基調講演及びパネルディスカッション
2月16日のワーク・ライフ・バランス シンポジウムにおける上川大臣の挨拶、佐藤東京大学教授の基調講演及びパネルディスカッション