オムロン株式会社
- 創業 昭和8年5月10日(1933年)
- 設立 昭和23年5月19日(1948年)
- 本社所在地 京都市下京区塩小路通堀川東入
- 事業内容 制御機器・FAシステム、電子部品、車載電装部品、公共・交通・セキュリティなどの研究開発・製造・販売
- 従業員数 連結37,709人 2016/3/31現在 単独4,689人(うち女性920人) 2016/4/20現在
【ご協力】
グローバル人財総務本部 企画室
ダイバーシティ推進グループ
上村様 森様
女性活躍の現状と取組状況について
――貴社における女性の活躍の現状や取組を教えてください。
オムロンは、現在、グローバルで約38,000人のグループ社員がいます。グローバルな成長を続けていくため、2012年に社長直轄部門のグローバル人財総務本部の中にダイバーシティ推進グループを設置して、女性や外国人などのダイバーシティ(多様性)の促進に取り組んでいます。国内の従業員のうち男性が8割、女性は2割と女性の割合は低く、特に、国内の課長以上相当職(オムロンでは経営基幹職と言う)の管理職(ゼネラルマネージャー)と専門職(スペシャリスト)は、全体で約1,500人いますが、女性は36名(2.3%)のみとなっています。少ない母数ではありますが女性の登用には、課題があると認識しています。そこで、女性活躍推進法が成立する以前から数値目標を立てて、課題の解決に向けて取組んでいます。目標は、2016年度末までに経営基幹職に占める女性の割合を3%、2018年度末までに5%です。目標を設定した2013年度は、女性経営基幹職が1.5%という状態で目標をたてました。少しアグレッシブな目標設定ではありますが、必ず達成する覚悟で取り組んでいます。
――どういう考え方で女性の活躍を進めていらっしゃるのでしょうか。
女性の活躍といえば、上司や職場からは、男性と同様にバリバリ働くイメージを持たれる一方、女性たちは、仕事とプライベートを両立し、しなやかな働き方を求めるというように、それぞれがイメージしている働き方や目指している姿が違うことがわかりました。ただし、男性も女性も会社の成長に向けて貢献していきたいという気持ちは同じです。その貢献の仕方や想いの違いをきちんと理解した上で、では、どうすれば会社の成長という同じ目的に向かってベクトルをあわせて活躍することができるのか、多様なメンバーの活躍には、なにが必要なのかを議論していくことが重要です。一人ひとりのメンバーと向き合って「対話」し、そして、お互いが「腹落ち」して、前へ進むことで、一つひとつの課題を解決することにつなげています。
社員が希望する多様な活躍の形を支える支援制度
――仕事と生活のバランスをとりながら、社員が希望する多様な活躍の形を支えるという中の一つの取組として、不妊治療支援を行っているということでしょうか。導入された経緯を教えてください。
不妊治療支援も、ライフイベントを支援する取組の一環です。2005年に労使による「仕事と家庭の両立支援検討委員会」が発足し、社員が妊娠・出産を経て働き続けることのできる環境を整えるという観点で、不妊治療休職制度を設けました。それとほぼ同時期に、治療費の補助として共済会による給付金制度を導入しました。制度設計当時は国や地方自治体の補助制度もなく、他に参考になる他社事例もありませんでしたが、働くメンバーをなんとか支援したいという考えからオムロン独自で実現しました。
休職制度と給付金制度の両方を導入
――不妊治療支援について、休職制度と給付金制度の両方を導入されていますが、それぞれ概要を教えてください。
休職制度は、申請者1人につき、1日単位で、1か月以上通算365日以内を取得することができ、分割取得も可能です。職場から離れる期間を短くできるように、また必要な期間を自分で選択出来るように、制度を取得するメンバーの視点で制度化しています。
給付金制度は、従業員とその配偶者の両方の治療が適用になります。2年間につき最大20万円が給付され、治療が終わるまで給付申請が可能です。また、申請にあたっては、プライバシーが確保されるように手続きの方法についても工夫しています。
利用実績について
――休職制度と補助金制度と、かなり手厚い支援制度ですが、利用者はどのように捉えていますか。
オムロングループでは、有給休暇の日数も多いため、不妊治療を有給休暇申請で対応されている方が多いと思います。そのため、1か月以上の不妊治療休職制度の利用者は、数名程度に留まります。一方で、給付金制度については、現在までにグループ全体で約750名(複数回の取得を含めたのべ人数)が利用しており、申請者数は、男性が女性を上回っています。
利用者と話をすると、会社の制度をありがたく感じて、治療後、会社に戻ってもっと活躍して会社へ恩返ししていきたいという声や、給付金の申請手続きが共済会への直接申請のためプライバシーが守られることに対する安心感など、肯定的な意見がでています。
――給付金制度は、他社に事例のない先進的な取組であり、かなり利用実績が上がっている様子ですね。
2005年の制度設計当時は、先行した取組もなく、どのくらいの需要があるかわからない中で、制度を導入しましたが、結果として潜在的な需要があったということだと思います。また、オムロングループの共済会の取組は、不妊治療以外に、介護中の従業員に対する給付金の制度もあり、このような取組は他に事例がなく、大変進んでいると高評価をいただいています。
――ダイバーシティ推進の意識を高めることや制度を利用しやすい環境作りについて、意識して取り組んでいらっしゃることはありますか。
ダイバーシティ推進を掲げた当初は、取り組み意義を理解できず否定的な意見もありました。しかし、従業員向けに様々な講演会や勉強会などの機会を設け、ダイバーシティの取り組み意義、目指している状態、そして、その状態に向けた環境整備や意識啓発を対話していくことで、従業員の理解を得て、多様性を受容し、共に活躍する意識に変わってきていると感じます。
具体的な事例として、女性メンバーに対する講演会を実施しています。ヘルスケア部門の女性マネージャーが講師となり、自身の体験談も含め、自分の健康を大切にしながら、ウィル(意欲)とスキル(能力)とネットワークを構築して、自身のキャリアを伸ばしていくためのさまざまな知見を学ぶ機会を設定しています。また、男性マネージャーに対しても、女性特有の不調には、原因が様々あることを専門的な見地から伝え、男性の理解による職場のコミュニケーションを円滑にするための研修などを行っています。
――制度や取組の周知についてはどのようなことに気を付けていますか。
不妊治療の場合、当事者は周りに言いたくない、知られたくないなど、センシティブな問題もあります。必要な人に、必要な時に、きちんと情報が伝わることを心がけています。
今後の課題について
――今後の課題としてどのようなことを考えていますか。
ダイバーシティ・女性活躍を進めるにはたくさんの課題があります。女性活躍が進んでいる企業の先進的な取組について、日々、参考にさせていただきながら、自社にあったよりよい制度や働く環境を作っていきたいと考えています。また、個人のニーズも多様化しているので、全員に一律・平等な制度だけでは、多様なメンバーの活躍を支援していくことができません。対話を通じて個々人の声を聴き、制度へ反映させるとともに、制度を利用するメンバーと上司との対話を促進し、信頼関係を構築して、しっかりとマネジメントする環境を整えていくことも大事だと考えています。
――本日はどうもありがとうございました。
【支援制度の概要】
制度名称 | 制度概要 |
---|---|
不妊治療休職制度 |
年次有給休暇を上回る長期間の休職が必要な、高度な不妊治療を受ける場合に認めるもの(無給休職)。申請者1人につき、通算365日以内(分割取得も可)。休職期間は1か月以上1日単位。申請書と不妊治療を行う旨の医師の証明書の提出が必要。 また、休職制度とは別に、特別年次有給休暇(年2日)・積立年次有給休暇(年3日の繰り越し分)の使途に不妊治療を追加。 |
不妊治療への補助金 | グループ従業員の共済会(会社が会費の半分を拠出)において、従業員またはその配偶者が治療を受けた場合、公的補助との合計が実治療費(体外受精などの保険診療費の自己負担額及び保険適用外医療費の合計額)を上回らない範囲で補助。2年間で通算20万円までで、複数回の取得が可能。 |