男性にとっての男女共同参画シンポジウム 福岡 「落語『百年目』と地域に必要な男性像」(1)

2012年2月5日、福岡市天神の「エルガーラホール」にて、第2回男性にとっての男女共同参画シンポジウム「落語『百年目』と地域に必要とされるこれからの男性像」が開催されました。

第一部は本格派古典落語の雄、柳家さん喬師匠による落語『百年目』。第二部は『百年目』を受けて「誰もが、仕事でも家庭でも地域でも活躍するために必要なこととは」というテーマで、パネルディスカッションを行いました。

落語を軸に据えたシンポジウムに、会場は笑いとほろりとした感動に包まれ、それと同時に男女共同参画にまつわるさまざまな課題を、自分のこととして実感された方も多かったのではないでしょうか。

当日の概要は下記の通りです。

  • 第一部
  • 古典落語『百年目』
  • 柳家さん喬師匠
  • 画像:男性にとっての男女共同参画シンポジウム in 福岡01

作品紹介

「ここで会ったが百年目」とは、 悪事や企みが露見 して万事休す、もうおしまいと いう時に使う言葉。

『百年目』はこの言葉をサゲに持ってきた、古典落語の名作。江戸時代の落語のネタ帳にも載っており、江戸・上方落語の両方で親しまれてきた人情噺である。登場人物も多く、大看板の落語家でないとこなせないネタとされている。後半の番頭の苦悩は、現代の勤め人にも身につまされるシチュエーション。

百年目 あらすじ

ある大店の一番番頭は、40歳を過ぎても独り身で、堅物で通っている。旦那様の信頼も厚い。とある日の朝も、お客さまのところまで行ってくると外出したが、実はこの番頭、陰ではなかなかの遊び人で、今日もこっそり芸者衆と向島へ花見に繰り出した。屋形船に乗り込むのだが、小心者の番頭は顔を見られるのを嫌い、花見にもかかわらず船の障子を閉め切らせるほど。しかしそのうち、酒も入って大胆に。扇子を首に縛りつけて顔を隠し、長襦袢一枚で陽気に鬼ごっこ。ところが、つかまえた相手はなんと、奉公している家の旦那。番頭は動転。酔いもいっぺんにさめ、逃げるように店に戻ると、風邪をひいたと寝込んでしまう。

翌朝、旦那のお呼びがかかる。びくびくしながら出向くと、意外にも昨日の話はおくびにも出さず、天竺の栴檀の大木と南縁草という雑草の話をはじめる旦那。栴檀は南縁草を肥やしにし、南縁草は栴檀の下ろす露で繁殖する。持ちつ持たれつで、家では旦那、店では番頭が栴檀で、若い衆が南縁草。南縁草が枯れれば栴檀も枯れる。また、鯛という魚は、食べるのは胴中だが、尾っぽも頭もあってこそ価値がある。無駄があるから、お互いに支え合える。行き届くのもいいが、もう少し若い者にゆとりを持ってやってくれ、とやんわり諭す。

ところで、「向島はおもしろかったね」と突然話を振られてしどろもどろの番頭、旦那は少しも怒らず、実は、あまりに派手な遊びぶりに、帳簿に穴が開いているのではと、昨夜こっそり調べてみたが、一銭の間違いもなかったと番頭をほめ、「自分の裁量で遊んでおいでだ。約束通り、来年には必ず1軒店を持ってもらう。後を継ぐものを育てながら、もう少し辛抱しておくれ」と頼む。感激で泣き出す番頭。旦那、「そういえば昨日、妙なことを言っていた。毎日顔を合わせているのに、長々ご無沙汰を申し上げておりますとはどういうわけだ」と訊ねる。「真面目一辺倒と思われていたが、あんなところでお目にかかり、ああ、ここで会ったが『百年目』だと思いました」