男性にとっての男女共同参画コラム「パラレルキャリア」のすすめ

内閣府の担当者との打ち合わせで、『シングルモルトのウイスキーも美味しいけれど、いろんなリキュールを混ぜて作る、オリジナルのカクテルもなかなかですよね~♪』という会話から今回のコラムを掲載することになった。その心は、『男たちよ!もっと多様な生き方をしよう!仕事とは別の顔を持とう!』

私の友人にはとにかく、多種多様、そして多彩な顔を持つ人たちが男女を問わず多く、かなりユニークな「カクテル人生」を歩んでおられる方々である。まさに「複数の顔を持つ時代」の代表格といってもよいかもしれない。皆さんの周りにも、本業とは別の肩書の名刺を持っている人が多くなっているのではないだろうか。かく言う私も複数持っていて、最近また一つ増えた。本業は大学の教員だが、その他に複数のNPO法人の理事や評議員を務めている。そのおかげで、本当に多様で、面白い方々と知り合うことができ、私の仕事や生活をより豊かなものにしてくれている。

今、一つの組織に属して同じ仕事を続けるだけでなく、社会的活動を積極的に行い、「別の世界」を手に入れる、「パラレルキャリア」に熱い視線が注がれている。その社会的背景には経済環境や雇用環境の変化がある。仕事中心の価値観が崩れ、好きなことを仕事にしたい、楽しい生活を送りたいなど、仕事や働き方、生き方に対する意識が大きく変わりつつある。「パラレルキャリア」とは、ピーター・ドラッガーが提唱した考え方で、これからの社会に求められる人間のタイプは、『自分に責任を持ち、特定の組織に依存しない人たちだ。そして、自分のキャリアは自分で決める人たちだ』と述べている。具体的には、本業以外に、非営利組織を立ち上げたり、ボランティアをしたり、大学院に入って学び、新しい視野を持つことなどを奨励している。「二足の草鞋をはく」という言葉がぴったりくるが、どうやら、ドラッカーの「パラレルキャリア」は、二足どころか、三足、四足の草鞋をはくイメージである。「パラレルキャリア」実践者は、新しい人脈やスキル、知識、経験を本業に生かそうとする意識が強く、本業の仕事に対して新たな社会的意味や価値を見出すなど、仕事と生活の好循環を生み出しているようだ。仕事と生活の好循環といえば、ワーク・ライフ・バランス。日本においても、CSR(企業の社会的責任)の一環として、組織的に社員のボランティア活動などを後押しする傾向がみられる。自分の可能性を広げていく社員の「パラレルキャリア」への挑戦を応援することは、企業の社会貢献活動の新しい形として注目されている。

ところで、パラレルキャリアを進めるには、時間のマネジメントが重要であるとドラッカーも強調している。ドラッカー曰く、『時間は最も希少な資源。時間をマネジメントできなければ何もマネジメントできない』。時間のマネジメントが小さなチャレンジを生み、あなたの人生を変えるかもしれない。いまこそ、ひとつ“働き方”を変えてみませんか。

  • 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科・社会学部教授
  • 萩原なつ子