仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会(第16回)議事録

  • 日時: 平成21年2月23日(月) 10:00~12:00
  • 場所: 内閣府本府5階特別会議室

(出席委員)

佐藤
会長
岡本
委員
大沢
委員
鹿嶋
委員
勝間
委員
北浦
委員
高橋
委員
武石
委員
永木
委員
羽入
委員
牧野
委員

(議事次第)

  1. 開会
  2. 「雇用者以外の就業者の仕事と生活の調和」に関する有識者ヒアリング
  3. 意見交換
  4. その他
  5. 閉会
佐藤会長
それでは、時間も過ぎましたので、ただいまから「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)に関する専門調査会」の第16回会合を始めさせていただきます。
 お忙しい中、御出席いただきありがとうございます。
 初めに植本委員にかわり、岡本委員に新しく御参加いただいておりますので、一言ごあいさついただけますでしょうか。よろしくお願いします。
岡本委員
おはようございます。連合の副会長をしております岡本です。
 日ごろは、NHKの組合の議長をしております。多分ワーク・ライフ・バランスにはほど遠いところだと思いますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
佐藤会長
どうもありがとうございます。
 なお、上手委員におかれましては、都合により退任されましたので御報告いたします。
 それでは、本日の審議を進めさせていただきます。
 あらかじめ御連絡していただいておりますとおり、本日は雇用者以外の就業者の仕事と生活の調和をテーマに、3人の専門家の方々をお招きしてヒアリングを行うこととしております。
 順に御紹介させていただきます。
 昭和女子大学大学院教授の天野様です。
 日本ベンチャー学会事務局長の田村様です。
 日本政策金融公庫総合研究所の主席研究員の竹内様をお呼びしています。後でいらっしゃると思います。
 進め方ですけれども、天野様、田村様、竹内様の順にお一人20分程度御発表いただき、その都度5分程度の質疑応答をしたいと思います。お三方の発表後にまとめて全体を通じた質問、御意見を伺う形で進めさせていただきたいと思います。
 それでは、まず最初に天野様よろしくお願いいたします。
天野氏
昭和女子大学の天野です。よろしくお願いします。
 私のところは、女性農業者の現状、そして、ワーク・ライフ・バランスの現状に触れるようにというお話でしたので、その辺りのところをご説明させていただきます。
 早速ですが、私が今日お話することの立脚点を明らかにしておきたいと思います。
 私はこれまで戦後の日本の女性農業者の地位について見てきました。
 それと、都市の勤労者夫妻の生活時間調査を5年ごとに繰り返してきまして、一番の中心的なところとして、生活時間に関して話をさせていただきたいと思います。
 まず農業の話をするということなんですけれども、農業の基本的なデータを示しておきました。赤いところはこれまでの施策の中で、女性の地位に関わる部分です。農業を考える場合に、農業の経営体数、つまり農家と言っているものですけれども、それがどのくらいあるのかというところで言えば180万です。それだけを頭に入れていただきまして、次にいきたいと思います。
 用語説明は、お手元の資料にありますので、見ていただければと思います。
 農業者においてのワーク・ライフ・バランスとは一体何だろうか。農業者にとってはワーク・ライフ・バランスというのは、余り聞かない用語であるわけです。
 生活時間からすれば、ワーク・ライフ・バランスとは何かと言いますと、生活の質の問題です。生活の質の問題というふうに一般化してとらえた場合には、すべての人の問題、つまり、子育て期も中年の夫婦も高齢者も、夫婦でいる人も、1人でいる人もという形ですべてのステージにとっての問題、自分に関わりのあることになります。
 ただ、それが時間のところでバランスをしていたとして、それがいいかというと、農家の場合、特に注意したいところですけれども、一定の労働で希望を持って持続的に生活ができていくか。生活設計が立てられるかという問題があります。
 それから、1日の生活の中に人間らしい複雑な多様な行動が保障されていくのかどうかという、単純に同じことばっかりやらされているようなことはないかという問題があります。
 ただ、インターネットなどでワーク・ライフ・バランスのことについて見てみますと、産休がとれるかどうかとか、育休が何だとか、そういうところに特化してしまうと、農業の方では非常に考えづらいという問題が出てきます。
 資料の方をごらんいただきたいのですが、2ページのところです。農業の担い手の年齢構成をごらんいただきたいのですけれども、男女別になっています。白のところが50代、60代ですが、全体の50%~60%を占めています。ということは、20代、30代がいかに少ないかということでもあります。20代、30代が少ないからこそ、そこで子どもを産んだ場合に、子育て上の問題があるということにもなります。それに対処するということが非常に大きな問題だということです。
 それから、先ほど言いましたワーク・ライフ・バランスの用語の認知度ですけれども、これは内閣府が出したデータですが、自営業が低い。自営業が低いというのは、自営業の中に更に農業の方があるということですから、これと一致しているのではないので、農業だけのデータが出たとしたら、もっと認知度は低いのではないかという気がします。
 そして、3ページをごらんいただきたいのですけれども、3ページは「農業者の生活時間」をとっています。
 左上の図ですけれども、これは比較的忙しいときと比較的ゆとりのあるときというふうにして、比率で帯グラフになっています。帯の中に入っているのが時間ですけれども、何時何分ということじゃなくて、何点何時間となっていますので60をかけて分に直さなければいけないところがあります。
 忙しい時期は、自営農業をしている時間が10時間となっています。10時間ぐらいだったら、みんな働いているのではないかとお感じになるかもしれませんけれども、これはあくまでも平均ということです。
 真ん中の図はKさんという水菜栽培の人ですけれども、生活時間を順を追って挙げました。この人の労働時間を見ますと13時間で、それに加えてご飯をつくったり、お掃除をしたりといったようなことが加わっていく。そういう生活があるということです。
 右上の表ですけれども、これは社会生活基本調査2006年版で農林漁業と非農林漁業という、かなりはっきりした分け方をして、データを並べたものです。これで見ていただきたいところは、例えば農林漁業の方がゆっくりご飯を食べている、食事というところを見てください。非農林漁業の方のところと20分違う。20分違うというのを小さいというか大きいというかはわかりませんけれども、やはり3分で立ち食いそばを食べるとしたら、20分はかなり長いということになるかと思います。
 それから、非農林漁業の方が男女ともに労働時間が長いというのは、仕事のところを見ていただければわかると思います。女性では約400分、男性では約500分となっています。
 いわゆる教養の時間というか文化的な時間というか、テレビ、ラジオは農林業の方が長い。
 家事時間は、農林漁業も非農林漁業もともに男女差が歴然です。下の図は、今、見ていただく時間はないわけですけれども、1週間をとってみたらどんな生活をしているのかというデータを挙げておきました。
 次にいきたいと思いますけれども、子育ての状況がどうなっているかというところです。
 子育てのところは上半分の図表を見ていただきたいのですけれども、農家の女性、就業した女性という意味ではないんですけれども、農家の女性と見た場合、主に農業やっている人、主に育児・家事に携わっている人、主に農外就労に携わっている人というふうに3分の1ずつになる。何々をしたいということに関しては、何々したいという希望が通っているんだろうということです。
 就業率はM字にならないのが特徴だと思います。これはなぜかと言いますと、結婚後あるいは末子就学後、農業に従事する。つまり、子育て期というのは、農業について知っていく、学びの時期に当てられている人が結構多いということです。
 主に農業に従事する理由というのが、グラフに出ています。自分の都合で働けるからとか、育児に手がかからなくなったということです。
 グラフの一番右側に「農業がしたい」とあります。農業がしたいという人が、次の問題に関わっていくのではないかと思います。
 下半分のところにいきますけれども、子育て期における農業に対する考え方、これは若い人のところをとっています。子育てに専念したいというのが約半分いるということです。
 農外就業したいという人、農業に携わっていきたいという積極派が、十分農業と子育ての両立ができるかどうかを見ていきたいのですが、左側のグラフを見ていただくと、両立の方法について書かれています。両立の方法は、同居家族で分担してみるしかないねという状況が一番高いわけです。2番目は、仕事をしながら子どもも見るという状況です。3番目に保育園が出てくるということです。これは保育園が足りない、ないしは入れてもらえないということも意味しています。
 両立で困ったことは、自分の時間がないとか忙しいときに世話ができないとか、これについては、都市も同じなのではないかと思います。
 とられている支援ですけれども、農林水産省では線で囲った部分の対策をとっています。相談員制度やe-Learningなどの対策をとっています。
 e-Learningとは何かと言いますと、子育て期に在宅しながら農業経営について学ぶことができるとか、農業経営以外の例えば農業技術について学ぶことができるということです。ただ、それが非常に活用されているかということになりますと、立ち上がってそんなに経っていないということもありますけれども、まだそこまではいっていないという状況があるようです。
 要望としては、保育園の入園基準を緩和して農業の人もちゃんと入れてほしい。決して親に見てもらえる状況ではない、そういうことを子どもがいる人は言っています。親が見てくれる状況ではないというのは、実際は親が50代、60代です。50代、60代というのは、農業のところで言えば働き盛りなのです。何もわからないお嫁さんを働かせるよりは自分が働いた方がいいという状況に農業では置かれている。
 それから、時間を延長してほしい。学年に関わらず学童保育に入れてほしいというのが切実に出てきます。夏休みとか土曜、日曜の受け入れをやってほしいというものも出てきます。
 5ページを見ていただきたいのですけれども、5ページは家事・育児です。これはどこでも言われているとおりなのですけれど、ほとんど女性が担っている状況です。
 農林漁業の男性のところで言いますと、農林漁業の男性が32分、女性が3時間25分。
 非農林漁業、一般に絶対的な人口の多いところになりますと、男性20分、女性2時間48分。これは社会生活基本調査、先ほど出したものです。どこをどうとってみても、家事・育児は女性が担っているという状況が出てきます。特に39歳以下の女性の6割は、とにかくもっとやってほしい、担ってほしい、夫や家族に担ってほしいと言っています。
 次にいきますけれども、仕事、家庭生活、地域・個人生活の優先度のところです。
 ちょっと面白いことに気づかされます。最初に右側の図を見ていただきたいんですけれども、右側で見るとこれは自営業という形で出されています。14.6%が仕事優先で、現実は34.5%、現実にはすごく仕事をしなければいけなくなっているわけですねということです。
 左側の図を見ていきますと、同じ自営業でも農林漁業は左上の棒グラフですが、一番左側の棒で見ますと、仕事を優先したいという希望と現実にそんなに差がないわけです。
 それほど差がないのに対して次の棒グラフを見ると、希望と現実のところがすごい差になっているということです。同じ自営業でも商工サービス・自由業というものと農林漁業では性格が全く違っているということが非常にはっきりと出てきている気がします。
 これは統計とるときには、是非ともさかのぼれるようにしておいていただきたいということです。
 7ページ、8ページに移りたいと思うんですけれども、資料の7ページは内閣府の資料です。家庭生活、個人生活などの時間がとれているかを並べたものです。
 ここで注目すべきところは、やはり地域活動の時間がとれているかというのが男性5割、女性4割ということでやはり低いです。男女差がこれで結構出てきているということがあります。
 そして、時間は女性の方がとれていると言うんです。とれているというのか、とらざるを得ない状況になっているというか、女性の場合はそういういろんなことしなければいけないわけです。だから、そういうことが実際にはとれている、女性の方が働かされていて長生きしているみたいな、そんなところとつながっているところなのかもしれませんけれども、多様なことをやっている率が高いんだろうと思います。
 大事な部分だと思うんですが、生活の満足度を見ますと、農林漁業のところですけれども、男性は5割満足、女性は7割満足となっています。所得・収入面での満足度はどうかというと、経営を担っている男性は7割が不満となっており、時間の問題ではないというのが出てきているのではないかということです。
 8ページは何かといいますと、非常に能力の高い農家で1週間の生活時間というのを経営者の夫妻、下の図は後継者の夫妻の事例を出しておきました。御興味のある方は、ながめていただければと思います。
 そろそろ時間なんですけれども、女性農業者による活動がいろいろ行われています。これは農業の多面的な機能という関係におけるところの活動なんですけれども、起業につながっていくところということです。全部が起業として、お金の入るものにつながっているかというと、必ずしもそうではない。そういうところもまだあります。
 今、起業はどのくらいあるかということでいいますと9,444件です。これが2007年の農水省の統計で出ています。
 その内容はどういうものなのかといいますと、300万円以下です。300万円以下というのはどういう意味かといいますと、1つのグループが年間300万円以下の売上げということです。売上げがそうであるということは、半分材料費とか包装代など、いろいろ経費で落ちるとすると150万。1つのグループが150万、10人のグループだとすると、1年に15万。1か月に直すと、1万幾らという数字になっていきます。
 1万幾らというのは、例えば学生がアルバイトしたら、どれだけ稼げるものかということです。そういう数字が出てくるということです。
 しかし、高齢者対策にはなっていますし、社会的に生き生きするという社会的地位は認められてくるし、地位向上という面ではそれがあります。
 一方で、非常に起業化している。つまり、経営者としてしっかりとやっている人たちも生まれてきている。2割方ですけれども、生まれてきているということがあります。
 9ページの下のグラフを見ていただきたいのですけれども、起業時に、農水省も農業者に支援をしているんですけれども、支援したときに、一般の自営業、起業する人と農業とで気をつけなければいけないところが出ていますので、見ていただきたいと思います。
 それは何かといいますと、真ん中のところですけれども、起業は、一般には低金利融資制度とか、税制優遇措置などが絶対に大事だと言われています。多分そうだと思うんですけれども、実際にそういう金利融資制度をつくったわけです。ところが、女性農業者はそれを使っていないという事実が出てきます。そこまでいってないということなのかもしれませんし、これ以上借金したくないということかもしれませんが、とにかくそういう状況が出てきます。つまり、女性の起業者のほしい支援というのは、違っているということが出てきます。
 最後ですが、農家においてのワーク・ライフ・バランスの課題を7点にまとめてみました。まずこれら全部がぴったりと該当しているかどうかはわかりませんけれども、これらの7点を無視して進めることはできないだろうと思っています。
 もしワーク・ライフ・バランスが日本人の生活の様式の中、都市の生活者の中に定着したとしたら、それが生産者にまた響いていって、いい関係になるのではないか。期待を込めて私が思っていることをお話しました。
 少し長くなりました。済みません。
佐藤会長
どうもありがとうございました。
 農業従事者の方は、ワーク・ライフ・バランスをどうとらえたらいいか。課題は何かということで御報告いただきました。
 2~3つ御質問があれば、まずこの段階で伺っておきます。確認したいことなどいかがでしょうか。
 局長、どうぞ。
板東局長
1つ御質問よろしいでしょうか。最後から3枚目「起業・支援」のところで、女性農業者のほしい支援は融資などではなくて別だというお話がございましたけれども、どういう支援を求めていると天野先生はお考えなのか教えていただければと思います。
天野氏
やはりノウハウや何かをもっとよく知りたいということが大きいだろうと思います。農村の起業の場合というのは、多分に農業の多面的機能というものに関わっているものです。都市の人たちが持っている非常に合理的なノウハウではなくて、自分の村には、自分の環境では何ができるのかというものをその場その場で掘り起こしていかなければいけないわけです。
 そうすると、一律に学べるというものではないから、その場その場に合わせながらの支援がとても必要で、その部分をやってから、それをやるんだったらどのぐらいの経済規模でやりたいとか、そういうものが出てくるんだろうと思うのですが、その下のところが大変な状況なのではないかと思います。
佐藤会長
ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。
 大沢さん、どうぞ。
大沢委員
どうも貴重なお話ありがとうございました。
 農業の方と雇用者の方との出生数を見ると、農業の方の方が子ども数が多いという結果が出てくるわけです。しかし、お話を伺っていると、保育園にもっと入りたい、足りないという困難な状況もあるんだということですが、なぜ農業従事者の方の方が子ども数が多いんでしょうか。
 それとも、それは変化してきているんでしょうか。
 3つ目は、保育園の基準を緩和してほしいということですが、具体的にはどういう制約があって保育園が使いにくい状況なのか。
 その3つを教えいただけたらと思います。
天野氏
第1のところは、雇用者と何ですか。
大沢委員
雇用者と農業従事者との子ども数を見ると、農業従事者の方が子ども数が多いんですが、どうしてでしょうかということです。
天野氏
わからないんですけれども、2人も3人も同じだという感じなんだろうと思います。都市の感じとはやはり違っている。
 それから、50%が子育てしたいと希望した場合には、それができる状況であるということです。
大沢委員
それはおじいちゃん、おばあちゃんがいるとか環境的にですか。
天野氏
環境的にということも勿論あると思います。都市の小さなアパートの中で、とにかくぎりぎり家族4人でということはないわけです。場所的には広いわけだし、走り回ることはできるわけです。子どもとしては、3人ぐらいいた方が遊び仲間にもなるというところはあるだろうということです。
大沢委員
お母さんが働きながら子どもを見たりすることはあるんですか。
天野氏
それもあります。
大沢委員
そういうことは、やろうとすればできる環境にあるんですか。
天野氏
できる仕事もあれば、できない仕事もあります。
大沢委員
わかりました。
天野氏
それは、それぞれの仕事、作目で全然違う状況にあると思います。
 保育園の基準ですけれども、農業のところでいいますと、やはりおじいちゃん、おばあちゃんに見てもらったらどうですかと言われてしまう。だけれども、実際はおじいちゃん、おばあちゃんといっても、先ほど申しましたように50代、60代のところでは、おじいちゃん、おばあちゃんの方がよく働くわけですから、見てもらうことはできないんです。だから、そういう状態に陥っていくだろうと思います。
佐藤会長
よろしいですか。御質問のある方は、また後で全体の議論のときにお願いします。
 それでは、続きまして、日本ベンチャー学会事務局長の田村様からお願いいたします。
田村氏
日本ベンチャー学会の田村です。よろしくお願いいたします。
 私は、今日「最近の起業者動向と起業者のワーク・ライフ・バランスの現状と課題」というタイトルをいただきました。
 最初に申し上げておきますと、正直いいまして、昨年から今年にかけて起業家に吹く風は非常に冷え込んでいますので、今日出させていただく数字より実際は低くなっているであろうということを前提に、お話を聞いていただければと思います。
 まず簡単に私が所属しているベンチャー学会ですが、今、早稲田大学の松田先生が会長となって、1,300人の会員がいます。
 現在「研究部会」というのは「1.ベンチャーキャピタル」から「9.カーブアウト・知財活用」の9つの研究部会が活動しているわけですが、やはり4年ぐらい前から、特に「5.シニアベンチャー」と「6.女性と企業」の研究部会に対して、どんな活動をしているのかとか、どういう調査が行われているかというような外部からの問い合わせが多い傾向があるということを皆様にお伝えしておきたいということです。
 起業家の動向というところで、何を基にしてお話をしようかと思ったのですが、とりあえず数がどういう形になっているのか。起業家はどういう方たちがいらっしゃるかということを1つのポイントとして、起業家の動向をお話させていただきます。
 まず皆様もよくお聞きになっていらっしゃいますとおり、中小企業庁が出しております『中小企業白書』の中では、昨今の起業の数として、廃業率の方が高くなって、開業率が低くなっているというのは皆さん御存じかと思います。
 ただ、この中でここ3~4年をとってみますと、下がった開業率の中では若干ここで上向きになってきているということ。
 あと、これは3~4年前にベンチャー学会の松田会長を中心に中小企業の外郭団体である財団と一緒になりまして、実際に自分たちの周り、特に都心では、情報処理を使ったSOHOワーカーの起業家がいるのではないか、もしかして開業調査を受けていない層がいるのではないかということを前提に、ネットで2日間だけで3,000人を集めた調査を行いましたところ、ここで言われている開業調査を受けたことがないと8割の方から答えがきていました。
 これはたまたまネット上の関係で数がひとり歩きしているんですけれども、実際は若手や女性を含めて起業動向というものは若干増えているのではないかということを、今、私たちが中心になって研究を進めているということを申し上げておきます。
 その中で開業の種類ですけれども、ここ2~3年下がった開業率が若干伸びている業種というのは何かというと、やはりサービス業です。4ページを見ていただくとおわかりのように、どちらかというと、ほかに比べてサービス業が伸び率が高い。
 女性の起業家の業種を調べてみますと、8割から9割弱のほとんどがサービス業です。割と小さく起業して、大きく育てるというような傾向がございまして、女性の場合は、どちらかというと自己資金を中心に、余り借り入れなどをせずに、自分の足元から会社を起こしていく傾向がございます。こういう数字から見まして、女性の起業家を中心に、会社を起こそうという傾向があるのではないかということが読み取れるかと思います。
 次に、起業家の動向はどういう視点が見られるのかということで、起業家の数の視点を調べてみましたら、女性の起業家だけではなくて、男性の起業、いわゆる自分で会社を起こした人の数字として、公の数字が出ているところがありません。
 よく私たちが研究会で用いる数字としまして、帝国データバンクに登録されている企業の中で、社長調査というものを行っています。社長調査の中で、そこに登録されている女性の社長の数がどれだけになっているかということを、実は1980年代から数を調べているわけです。
 それを調べましたところ、もともとパイが小さいんですけれども、28年間ずっと徐々に伸びているということです。特にここ2~3年は横ばいですけれども、一番最近のデータの2008年6月では、女性が経営する数が大体6万5,000社以上、6万5,000人以上の人がいる。全体に占める比率は前年と同じで5.74%に達し、1980年代のときは1万2000人程度でしたので、約5.8倍。つまり、数は少ないが伸びている。
 これは勿論女性自身が自分で会社を起こした数字ではございません。お父様から継いだ方、旦那様から継いだ方ということで、必ずしも自分で起こす起業家ではなく、女性が決定権を持って経営を営んでいる数は確実に増えているということが、ポイントと言えます。
 あと、私の次に発表があるところの、日本政策金融公庫さんの2007年度の新規開発の実態調査というものを見てみますと、そこでも指摘しているように、女性ならではの感性を生かした創業や若者ならではのアイデアの創業、もしくは経営豊かなシニアの創業というものは、市場が多様化する中で、確実に広がりつつあるという報告が出されています。
 実際に数を見てみますと、ここの図にも載せてありますように、女性であれば平成15年の3,848件に対して、平成19年は5,043件。
 シニアに至っては、平成15年の1,631件に対して、19年には2,400件。
 これでいくと、大体1,000弱増えている。女性でいけば1,200~1,300以上増えている。若者に至っても平成17年に比べて19年は800近く伸びているということで、政策金融金庫さんの方で出されている融資の数は完全に増えている。つまり、それだけ積極的に融資をもらってやろうとする数が増えているということが言えるかと思います。ですから、伸び率はそんなにではないかもしれないけれども、やろうとする、やる気のある方が増えてきているという状況がこの2つの数字からある程度言えるのではないかということが、最近の傾向です。まずは、数が伸びつつあるということ。
 もう一点は、確実にネクタイを締めた30代、40代の男性だけではなくて、シニアが御自身で会社をつくったり、もしくは女性が子育てをしながら仕事を続けようと思ったけれども、続けられずに一度辞めて、また社会に復帰するときに働く場所がないので自分で会社を起こすとか、昨今は大学発ベンチャー等の支援もありますので、若者が自分自身のアイデアを基に会社をつくる。まず起業家そのものの顔が多様化している。起業家像が多様化しているというのが最近の起業家の動向と言えるかと思います。
 それでは、若干増えつつある、多様化している起業家たちは、どういうワーク・ライフ・バランスの現状と課題があるかという点に触れておきたいと存じます。起業そのものがWindowsの浸透によったり、96年以降の会社は必ずしも資本金が1,000万円なくてもつくれるようになったとか、SOHOワーカーが増えたとか、2006年以降はLLCという合同会社なりLLPという有限責任事業組合ができて、支援自体も起業しやすい状態に、インフラ整備がされているということです。
 課題は何かといいますと、正直いいまして、起業家に対してあなたのワーク・ライフ・バランスはどうですかという調査は、私が見た限りではありません。ですから、数字上でどうという指摘はできないのでが、あくまでも私の場合、ケーススタディーを幾つか出させていただいて、なおかつ起業家たちがどういうきっかけで起業をしたのかというポイントを基にして、彼女、彼らが起業をしていく上でのワーク・ライフ・バランスの現状と課題を指摘させていただけたらと思います。
 まずある女性起業家が言っていた言葉ですが、男性にとって起業家になることはビジネス上の設計だけれども、女性の場合は人生の設計だ。つまり、今後どうやって自分が家庭を築き、子どもの育児をしながら、社会において、自分の企業が稼いでいくかということで、男性よりはライフの部分にかなり重きを置きながら起業をしているということが、この辺の言葉から読み取れるのではないかと思います。
 ただ、女性のライフスタイルというものは、就職して結婚して、育児または旦那さんの転勤や介護などの壁というのが、その人によって出てくるときが違います。またはどういうところに配属されているかとか、どういう働き方をしているかによっても壁が違うので、一概に何歳だからどうだとか、何歳以上のM字型がどうなっているというのは、なかなかとりにくいのが現状かと思います。ただ、その壁をどうやって乗り越えていくかということをしない限り、企業を起こしたとしても、その企業は存続していかないわけなので、それをどうやって解決していっているかということを少し見させていただきたいと思います。
 例えば起業した年齢、業種、形態によって本当にそれは違ってきます。これは非常にざっくりですが、私なりにいろんな方にインタビューさせていただいて思うところによると、やはり20代後半、30代で会社を起こした女性の方たちに動機を聞いたりしますと、このまま子どもを育てながら既存の会社で仕事をしていくためには、残業が多過ぎるとか、施策はあるのかもしれないけれども、子育ての支援の活用の仕方が難しいとか、家から会社に行くまでの距離の時間がもったいないということで、どちらかというと家庭の仕事の両立を望みたいがゆえに会社を起こしたみたいなところもございます。
 または、一時会社を辞めました。また社会復帰、再就職しようと思ったのですが、働く場所がない。だったら、自分で会社を起こしましょうという女性の像が少し見えます。
 ですから、20代、30代で勤め先を辞め、起業するということでいうと、育児支援というものを厚い形で望んでいらっしゃるということです。
 40代、50代で子育ても終わりました。そうすると、今度は自分の80年の人生、ワーク・ライフ・バランスを考えたときに、もう少し社会との接点を持ちたいということで、社会に出て行こうと思ったときに、社会で自分を受け入れてくれる場所は必ずしも多いわけではない。だったらということで、自分たちが思っている、または自分たちができることを1つのコアとして会社をつくるというところが出てきます。そういう意味では、どちらかというと、仕事をどう進めようかということで、仕事への志向にシフトしているという傾向が少し見える。
 この辺になってきますと、実は介護の問題も出てきます。比較的20代、30代の方が育児関係の仕事を起業する場合も多いです。40代、50代になってくると、自分が御両親の介護をしたけれども、十分なサービスがなかったので、自分でそういうサービスをつくろうという傾向もややあるかと思います。
 あとは、急成長型といいまして、店舗拡大が1つの山場で、その後は国際的にもグローバル展開していきたいのだということを最初から目途に入れてやっていらっしゃる方は、女性も男性も余り関係なく、ライフを無視しているわけではないとは思いますが、そういう方たちとお話するときは、基本的には経営戦略などの話が多い。そういう人たちは、どちらかというと起業家のネットワークで今後どう向上していこうかという話が多く出てくることが特徴的だと思います。
 安定志向型というのは、自分の身の丈サイズで、自分の足元で会社が起こせる環境をつくっていくということにおいては、この辺の方たちにお会いすると、やはり自分の地域を楽しく暮らしやすい環境にしたい。そのための手法として起業があったという発想、意見が多いものですから、そういう方たちはどちらかといえば地域のネットワークをどう築いていくかというところに割と関心が強いというポイントが言えると思います。
 全体的にいいますと、とにかく仕事にシフトしようと、家庭にシフトしようと、働く場所、勤める場所への通勤時間は短かければ短いほどいいということはよく言われております。
 また、旦那さんとだけではなくて、自分を含めた地域または環境、家族全体でともにみんなで働きながら、ともに育児も介護も地域的な問題をすべてやっていきましょうということを掲げることが特徴的だという気がいたしました。
 また、続けよう、両立しようと思ってなかなか実現できなかったがゆえに会社を起こしたというのが女性の場合は多いものですから、その女性たちというのは、両立しながら生きがいのある職場づくりをしたいんだ。現実はなかなか難しいところはあるんですけれども、そういうことを思いながらやっていることが多いです。ただ、現実とのギャップは非常にあります。それが特徴的、現状だと思います。
 これは、日本政策金融公庫さんが3年前に新規事業の実態調査をやられたときのものです。今日、私の方にお話をする機会をいただいた中で、できれば男女比も触れて欲しいという依頼がございましたが、男女比を比べた調査というものはほとんどなくて、実は日本政策金融公庫さんがやられている男女比というものが一番わかりやすいと思いますので、今日は使わせていただきました。
 そこで指摘されているのは、男性に比べて女性はキャリアの中での中断があるので、女性はビジネス経験が少ないから開業せざるを得ない。少ない経験で何となく、ノウハウがないまま開業せざるを得ない状況がまずあるということを彼らは指摘しているということ。
 ただ、そうはいっても、先ほど言った急成長型、女性でもキャリアをずっと汲んでいる方、そのままの延長上で会社をつくる方というのは、余り男女差はないということを指摘していらっしゃいます。
 女性の場合は一度会社を辞めた後でも、自分の趣味や自分の周りの中から起業というものを見つけているのが特徴的だとも言っていらっしゃいます。
 その中で1つ事例が出ていたのは、実際に旦那さんの事業が不振になって、自分で仕事を見つけようと思った女性が、この方は5人子どもを育てていたという状況もありますが、保育園探しが希望どおりかなわなかった。だったらということで、自分で保育園の事業を始めた。こういう女性は意外と多いです。自分の足元の問題点を1つの事業にしていくということです。
 彼女が言っていた中で、大切なのは、家庭も仕事も時間のやりくりをどう区別するかということと、あとはいろんな方とコミュニケーションをとっていくことが大切だという言い方をしていらっしゃいました。
 これも日本政策金融公庫さんのもので、2002年なのでちょっと古くなるんですが、このときに女性経営者に関する実態調査、男性の経営者と比較した調査があったので、わかりやすいと思って取り上げさせていただきました。
 上から2列が男性と女性です。有効回答が書いてあります。
 女性の下の方なんですが、キャリア型というのは、先ほど言ったずっと仕事を続けている女性が会社を起こした。
 下3つは、一度会社を辞めた女性たちが会社を起こしたときの傾向が表れています。
 一番は「自分の能力を発揮できるから」。このままではなくて、自分自身を試したいからということで会社を起こしたいという動機が男女ともに一緒です。
 「自分の裁量で仕事ができるから」の中で、子育てをしながら仕事をやろうと思ったときにできなかったということが見えるかと思いますが、この調査ではないところで、私がよく関わっている行政関係で女性起業家の調査をさせていただくと、会社を起こしたきっかけの中で、大体ベスト3に仕事と家庭の両立をしたかったので会社を起こしたというのがあいます。面白いことに、問題点は何かというと、ベスト3でやはり仕事の両立が難しい、それが課題だということを言っています。ですから、仕事と家庭の両立を思ってやっているものの、やはり現実はなかなか難しいというところが見てとれるかと思います。
 同じようなもので動機を見てみます。どうやって始めたかというきっかけの中で、男性も女性もトップは一緒なんですが、「勤務者としての働き方に限界を感じた」ということで、今後どうやっていこうかという先が見えない、ロールモデルがいないということです。
 あと、男性の場合は、どちらかというとビジネスチャンスやアイデアがあった。だから、起こすというのがあるんですが、女性の場合はまず1回辞めて、こういうことが足りない、こういうふうにしたいんだけれどもといったときに、働き方の1つして起業があるということを学んだということがあります。
 以前のものですが、前に研究所にいたときに、やはり女性起業家の調査をしました。そのときに株式会社を経営していた起業家の中の約7割が、最初は個人事業主で始めて、3年後ぐらいに株式会社にしたという調査の結果が出ています。
 あと、女性起業家の転職率というものを見てみたら、そのときは3.4回、つまり、必ずしもすぐに起業したというよりは、いろんなところの既存の組織に働き続けようとした、生活と仕事の両方を自分で守ろうとしたときに、なかなか働き続けられなかったために会社を起こしたということも、ある調査では結果として出ております。
 これは女性と仕事の未来館の起業家セミナーに参加した女性、または過去に参加した女性を対象にした女性の起業に関するアンケートの調査です。平成17年のものですが、女性の年代を見ていただくと、ちょうどM字の30代の女性が多いんです。ですから、既存のままでは働きづらい、仕事と生活を両立するためにどうするかの選択肢の1つとして起業があるということが、こういう数字から浮き彫りになるのではないかという気がいたします。
 事例を見ますと、皆さんよく御存じかと思いますが、メトロの乗り換えマップというものを御利用になられる方もあるかと思います。実はこれは女性がアイデアを出して、今、いろんなところに出ていますので御存じかと思いますが、彼女も普通にメーカーに勤めていたのですが、2人目のお子さんが生まれたときにベビーカーを引きながら不便を感じたのでこれをつくったということです。ですから、彼女の場合は、子育てをある程度十分にやって有限で始めてから会社を大きくして、今ではお子様が高校生になられたので、今は仕事に専念できると、この間も言っていらっしゃいましたけれども、仕事の仕方を時代とともに変えていくということです。
 あと、Aさんも、今、SOHOワーカーでは有名な方ですけれども、彼女も結婚、出産によって退職しなければならなかった。フリーでずっと続けていらしたが、御自身に来る仕事が増えてきたために仲間で会社を始めた。この人の場合、ネット上で会社をつくっています。ネットで仲間に呼びかけて会社をつくりました。
 なぜ彼女を例に挙げたというと、1つ面白いのは、実際に彼女は旦那さんの5回の転勤に伴って、最後の転勤の北海道の北見市の環境が気に入りまして、そこでずっと仕事をしていくということで、一時旦那さんが逆単身しています。自分がいい環境で生活を楽しみながら仕事をしたいということで、起業が成り立っているということが言えるかと思います。
 これは皆さんのお手元にはありませんが、Bさんを出させていただいたのは、今後こういうパターンが増えていくであろう動きが若干出ているので、出させていただきました。
 Bさん御自身は新宿区から結婚して大田区に移りました。来たと同時にどんどん商店街のシャッターが下りていくわけです。自分の生活しているところを何とかしたいというときに、彼女も子育てをしながら一番悩んでいるときに助けていただいたのが、大田区に住んでいる女性経営者でした。彼女が子育てを非常に助けてくれた。女性の起業は1人ではなかなか受注も含めて伸びていかないので、彼女、大先輩と一緒に新しい試みを始めた。
 働く女性、仕事と両立する女性たちを雇用するため、せっかく戦力になったのに急にお産で退職するということはよくあるものですから、そういう女性たち、同じ思いを持った女性たちが集まって出資して会社をつくり、ここで受注を受けながら、それぞれの企業にメリットがあるような仕組みを今つくっています。ここに一番最初に集まった原因というのは、実は仲間が集まって子育てが大変だとか、介護が大変だという会話から始まった会社です。
 さらに、彼女は2006年に合同会社のCという会社をつくりまして、ここで大田区の女性起業家が中心になって、仕事を進めていく意味での問題点などを、相談窓口でカウンセリングしています。最近ここに来るのは女性よりも男性が増えて、うつ病の男性がやたら増えてきたという現象があるという話をこの間もしておりましたが、そういうふうに同じ働く場所の地域にこういう施設をつくる、窓口をつくるということが、今後、女性の起業家が働き続ける1つのポイントになるという気がします。
 Dさんというのは、もともと栄養士を束ねて栄養士さんの独立、開業を支援しているということもあるんですが、御自身の御両親の介護をするときに、従来ある介護サービスでは十分に仕事を続けられなかったために、御自身の会社の中にデイケアサービスをつくりまして、そこで実際に御両親のケアをしながら仕事も続けているという事例だったので出させていただきました。
 これは男性ですが、フリーターを束ねているEという会社です。今、有名ですけれども、フリーターを束ねて急成長している会社です。
 シニア、60歳以上の人しか雇用しないという会社のFさんです。やはり今まで雇用と思われていない人を雇用創出している、ネットワークしているという事例を出させてもらいました。
 あと、NPO法人の彼は、今や男性も子育て支援のNPOを立てる時代になったということで出させてもらいました。
 最後に、起業家のワーク・ライフ・バランスの取組みはどうなのかというと、ワーク・ライフ・バランスという言葉は余り使っていないのが現状だと思われます。どちらかというと、福利厚生というか経営戦略そのものです。どうやって働き手の働き方に仕事を組み合わせるかというのが経営戦略になっているということです。
 やり方としては、なるべく子育て中のお母さんには期限の厳しいようなものは振らないなどですが、そうはいっても企業として稼いでいかなければならないですから、どうしなければいけないかということで組み合わせを考えたりということを工夫しております。
 彼女ら、彼らと話をしてすると、企業同士が連合した地域に託児所なり介護なり窓口をつくる。そういうものが今後課題なのではないかということ。
 ワーク・ライフ・バランス・チャレンジ・ファンドというか、ワーク・ライフ・バランスをしているところに、お金を渡すというのは余りいいとは思わないんですが、やっている方たちに税制ではないんですけれども、ポイントがくるようなポイント制みたいなものがあると、もっと積極的にやることができるという話をしています。
 個別によって導入の仕方が全然違うので、一緒にこういうものというのがなかなか言いにくいというのが、起業者のワーク・ライフ・バランスの取組みではないかということで、私の最後の言葉にさせていただきます。
 早口になって、どうも済みませんでした。
佐藤会長
どうもありがとうございました。
 女性の起業の現状とワーク・ライフ・バランスの現状と題してお話を伺いましたけれども、御質問なり確認なりがあればお願いします。
 勝間さん、どうぞ。
勝間委員
今日の話は目からうろこが落ちる思いで、やはりワーク・ライフ・バランスを整えるために起業する女性がこんなに多いというのは知らなかったんですが、ただ、先ほどから難しいと思ったのは、実際に整ったわけではないという理解でよろしいでしょうか。
田村氏
整っているとは思いません。ただ、今回あえて起業者のワーク・ライフ・バランスに視点を当てた場合ということです。
勝間委員
その場合、子育てが終わった後、皆さん落ち着かれて仕事に打ち込まれている様子がありありとわかったんですが、子育て中にワーク・ライフ・バランスでくじけた方もいらっしゃるという理解でよろしいでしょうか。
田村氏
そうだと思います。くじけたかどうかはわかりませんが、先ほど言いましたように、割といろんな調査をさせていただくと3年ぐらいがめどだと思いました。要するに、初めは個人事業主で始められます。事業化してみました。だけれども、実際はということで、たたみましたという方に実際お会いしています。
勝間委員
そういう方たちへの支援は何がいいんですか。保育園がいいんですか。何が必要なんですか。先ほどお金のようなものは難しいというお話がありましたね。
田村氏
これは人によっていろいろだと思いますが、多くのベンチャーの起業家の方を見ていて、支援がお金でない人の方が必要という傾向が多いと思います。ですから、お金というよりは、そういう仕組みづくりで、今でこそこういうものが話題になっていますけれども、やはり20年以上前から女性というのは幸か不幸か人材がいなかったですから、シフト制をしたりとか、それは雇用形態ではないと散々指摘されながらやってきたわけです。だから、新しい取組みなどをした者に対して、ただ賞を与えるだけではなくて、そういうサービスは積極的に行政が取り入れるとか、地域で盛り上げることが私は必要かと思いました。
勝間委員
ありがとうございます。
佐藤会長
ほかにはいかがですか。よろしいですか。
 局長、どうぞ。
板東局長
最後の期待のところで、企業連携による地域の託児所や相談窓口というお話がありましたけれども、現実にそういうもので幾つか例のようなものができてきているんでしょうか。
田村氏
先ほどの企業連携のところですね。先ほどの大田区や地域によっては行政の施設を借りて勉強会をするところは結構ありますが、ここまできちっといったところは、まだそんなにはないかと思います。
板東局長
最近、空き店舗が目立つ商店街などで、一室を借りて託児所的なことをやりましょうという話を多少聞くこともあるんですけれども、そういう動きはまだ十分には出てきていないということですか。
田村氏
そうですね。なかなかやりにくいということと、リーダーシップになる方がいらっしゃらないとやりにくいということです。
 大田区の場合も、先ほど言った大先輩の女性起業家がビルを提供しています。
佐藤会長
確認というか、女性が起業をするとき大体働いている人が多いわけだけれども、働いている人を前提にしたときに、そこで活躍できないといか、ワーク・ライフ・バランスがとれないから起業してみようというプッシュ型の起業と、こういうアイデアがあるから起業したいという人の比率はどんな感じですか。
 なぜかというと、雇われながら女性の活躍が拡大する、ワーク・ライフ・バランスを実現すると、多分プッシュ型の起業は減るのかどうか。
田村氏
これは数字で言えないので難しいですけれども、やはり元気で話題性があるのは、どちらかというと自分から出ていった方が多いです。アイデアがあるとか、こういうことをやりたいからということで出ていかれる方が多いです。
 片方で、アイデアだけで出たもののだめだった人もいます。現実的に本当に稼がなければいけない、何とかしなければいけないという人の方が踏ん張りがある人もいますので、何とも言えない。ただ、元気があるのは自分から出ていった方です。
佐藤会長
どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、日本政策金融公庫総合研究所の竹内さんから御報告をいただきます。日本政策金融公庫総合研究所は合併したので、もともと国民生活金融公庫の総合研究所に長くいらして、小規模企業の研究をずっとやられた方です。よろしくお願いいたします。
竹内氏
今日、私の方では「自営業者のワーク・ライフ・バランス」ということでお話をさせていただきたいと思います。
 今、佐藤先生からも御紹介いただきましたけれども、調査結果は全部国民生活金融公庫時代に行ったものでございますので、調査対象もすべて旧国民生活金融公庫の融資対象ですから、大きくてもせいぜい20人から30人程度のすごく小さな企業が対象になっているということでございます。
 それから、自営業者と称していますけれども、調査によって自営業者の定義がバラバラですので、その辺は大変不親切な資料で申し訳ないんですけれども、御注意していただきたいと思います。
 今日、申し上げたいことは3つございますが、ワーク・ライフ・バランス憲章なども読ませていただいたうえで、女性の自営業の現状に目を向けたものになっております。
 1つ目は、経済的な自立という面で、自営業という選択肢はリスクと不確実性が非常に大きいということです。リスクというのは、当然失敗するリスクですけれども、これはある程度見積もれるんです。不確実性というのは、もうかるとしてもどのぐらいもうかるかわからない。果てしなくもうかるかもしれないし、逆に損失もとんでもなく大赤字を出すかもしれない。たとえ一旦うまくいったとしても、それがいつまで続くかわからないという意味での不確実性を抱えている。そういう存在ということが1つです。
 2つ目としては、一応経済的自立が何とかなったとした場合には、能力発揮であるとか生きがいとかやりがいという点では、自営業者は非常にいい選択肢になり得る可能性がある。少なくともやっている人たちは、そう思っています。
 3番目としましては、地域との関わりという点でも、勤務者と比べますと自営業者の方はよりポジティブにといいますか、積極的でございますし、勤務者と比べてもコミットメントの度合いというものが非常に強い。自営業の方の場合は、どうしても商売上の必然性、必要性から地域貢献活動に取り組むということもあるんですけれども、やはり勤務者と比べると取り組みやすい。したがって、地域との関わりを求めるのであれば、自営業という選択も悪くはないだろうということです。
 その3点について、順を追って御説明したいと思います。
 資料を見ていただきたいんですが、最初に使う資料は古いんですけれども、2002年8月に「事業経営と生活意識に関するアンケート」というものを行っておりまして、ここで自営業者の生活の様子を探っております。
 ここで言っています自営業者といいますのは、そこに書いてありますように、自己雇用者とここでは呼んでいます。これは従業者数が3人以下で、家族以外に常勤の従業員がいないという個人事業主の方と定義づけています。常勤の従業員がいないんですから、非常勤のパートさんがいる分には構わないということです。でも、実際にはほとんど家族だけでやっていると考えていただいて結構です。ちなみに、当時の国民生活金融公庫の場合でいいますと、半分ぐらいがこれに該当する企業さんです。
 それと比較するために、企業経営者という用語を使っているんですけれども、これは従業者数が20人以上の企業のことを指しています。間は飛ばしているんですけれども、要するに当時の国民生活金融公庫からすると、20人以上というのはかなり上位の企業になりますので、一番下の方と一番上の方を比較することで、より対照的な数字が出るだろうということと、もう一つは、20人を超えますと、中小企業基本法でいうところの小規模企業から外れるんです。例えば製造業でも20人までは小規模企業という定義になりますけれども、20人を超えると外れますから、小規模企業ではなくなるということになります。ちなみに、これは国民生活金融公庫の貸付先でいくと、大体20人以上の企業は1割ぐらいしかないんです。これは「事業所・企業統計調査」などを見ていただいてもわかると思いますけれども、20人以上の企業というのはもともと少ないんです。
 このアンケートの数字を見ていく前に、図-1で特性を見ていただきたいんですけれども、自己雇用者といっても、先ほど田村さんもおっしゃっていましたけれども、自分で創業した人もいれば、2代目、3代目の方もいらっしゃるわけです。ここで業歴を出してもよかったんですけれども、経営歴の方がいいだろうということで、経営者になってから何年経っているかという属性で一応見ています。これでいきますと5年以下の方は非常に少なくて、圧倒的に21年以上の方が多いです。もしこれを業歴に直しますと、30年以上が半分ぐらいになります。
 これは国民生活金融公庫がそういうところばかりに貸しているからだろうという見方もあるかもしれませんけれども、最新の「事業所・企業統計調査」で開設時期別の事業所数がわかりますから、それを見ていくと、やはり4割ぐらいは30年ぐらい経っているんです。ですから、中小企業全体が高齢化しているというのが実態としてあります。
 ちなみに、年齢でいきますと、平均年齢で50歳を超えますので、相当高齢化しているということを御承知おきください。
 次のページにいきまして、図-2なんですけれども、これは2002年時点ですが、自営業になった今と比べて勤めていたときの収入はどうですかという質問です。選択肢がちょっと読みにくいかもしれませんけれども、多かったと答えているのは、今の方が少ないという意味です。自営業者になった方が少なくなったという意味です。
 そういう意味からいきますと、一応少なかったとかやや少なかったと答えている方が大体3分の2ぐらいを占めていますから、自営業になって収入が増えましたという方が多い。何かすばらしそうに見えるんですけれども、実はそうでもないということがあります。
 下の図-3ですけれども、これは直前の勤務先を規模別にみているんですが、当然ながら前の勤務先が小さな企業であった人ほど収入が増えている割合が高いんです。以前、何年か前の『中小企業白書』で開業率低下の理由の1つとして、自営業になっても経済的なメリットがないんだということを指摘しているものがありましたけれども、実は国税庁の統計を見ますと、個人企業の勤務者というのは自営業の人の所得よりも少ないんです。ですから、個人企業に勤めている人が独立する場合には、所得がアップする可能性があるんです。
 逆にこの図で示されていますように、1,000人以上のいわゆる大企業から独立すると、収入が下がる可能性が高いということです。
 先ほど田村さんから開業率の動向などがありましたけれども、一応私が把握している限りでは、自営業の開業は確実に増えています。これは「労働力調査」でわかるんですけれども、労働力調査の調査項目の中に、前月は自営業ではなくて、今月自営業になった人という調査項目があって、それを見ていきますと、オイルショック以降ずっと減っていたんです。ところが、90年ぐらいがボトムで、その後、逆に反転して増えてきているんです。
 なぜ増えているかというと、1つの理由は、やはり景気が悪くなって雇用が不安定になった結果として、自営業を選択している人が多いんだろうと思います。1つの証拠になるのが、かつては中小企業から独立する人が多かったのに対して、90年代以降は大企業や官公庁から独立する方が増えているんです。やはり雇用が流動化した分、自営業に選択肢を求める人が増えているらしい。この2~3年、特に今年になってからは状況が変わりましたので、少し変わっている可能性がありますけれども、自営業になろうという人が確実に増えているのは間違いないと思います。
 ただ、それ以上に辞めていく人が多いんです。高度成長期に開業して、後継者もいなくてだめになっていく、廃業していく方が多いものですから、今のところストックベースで言えば減り続けている。ただ、フローで見ていくとちょっと違った面が見えてくるということです。
 資料を出そうかと思ったんですけれども、出すのがすごく大変でございまして、最近ではネットでとれるんですけれども、ちょっと古いと統計図書館に行ってマイクロフィルムを見てこないといけないということで、申し訳ないですけれども、今日は出していません。もし御興味があれば、私どもで『マイクロビジネス入門』という本を出していまして、一応そこには数字を出しております。ただ、男女別までは出していないので、そこまでやろうと思うと、再度マイクロフィルムを見なければいけないので、本日はご容赦ください。
佐藤会長
非掲載の表ですね。
竹内氏
最近のものはネットに掲載されています。
佐藤会長
古いものは報告書に入っていないけれども、集計してあるということですね。
竹内氏
そうです。マイクロフィルムに保存されています。見てくださいということです。
 今、図-3までいきました。このように一応小さいところから独立すれば収入的には上がる可能性が高いわけですけれども、問題はアンケート先の業歴や経営歴というのはばらつきがあるということです。
 そうすると、経営歴あるいは業歴と収入との関係はどうなっているんだろうかというところで見ましたのが次ページの図-4ですけれども、当たり前と言えば当たり前なんですけれども、下が経営歴ですが、経営歴が長くなるほど今の方が収入が多いという方が増えている。
 注目していただきたいところは、1点目は5年以下のところですけれども、5年以下ですと今の方が収入が多いという方は少ないんです。つまり、5年以下ですと、まだ不安定なんです。
 先ほど田村さんも3年がめどだとおっしゃっていましたけれども、私どもも業歴別のデフォルト率というものを実は出していまして、今日はお見せすることができないのですが、大体1年目と2年目のデフォルト率が非常に高いんです。5年ぐらいまでは高いです。5年を過ぎると、デフォルト率のカーブが少し緩やかになってきて、10年になるとほぼ横ばいになってくる。そのままいくのかと思うと、また20年から30年ぐらいのところでデフォルト率が少し上がる。ちょうど世代交代というか、経営者交代の時期などに当たるみたいで、それがうまくいくかどうかによっても変わってくるんですけれども、基本的には2~3年目、平均寿命を計算するときの生存関数と同じで最初は死亡率が高いという状況です。
 もう一つの注目点は、21年以上のところです。これは数字を間違えたみたいで申し訳ありません。足して100を超えてしまっているので何か間違えがあると思いますので、後で事務局に正しい数字を出しておこうと思いますが、傾向は同じだと思います。
 11年以上とか21年以上のところですと、今の方が多いというのが圧倒的に多くなっているんですけれども、それはある意味で当たり前です。例えば10年前や20年前の収入と比べて少ない方がどうかしているわけです。その間、経済成長しているわけですから所得も上昇しているはずなんです。特に21年以上のところで30%以上の人が今の方が少ないと答えているわけです。要するに20年前の給料よりも今の方が悪い、所得が悪いと答えていることの方が問題です。20年という時間を考えれば、上がっていて当たり前だと思います。そこのところは、注目が必要だと思います。
 参考までに企業経営者、これは従業員が20人以上いますという方なんですけれども、こういう方だけで見ますと、勤務時代の方が多かったあるいはやや多かったという方は14%しかいないんです。20人ぐらいまでの企業までに成長すれば、所得の面ではサラリーマンよりもかなりよくなる。
 勿論20人までいかなくても、10人とか5人などでも非常にもうかっている例はあります。私が知っている範囲内で一番すごかったと思うのは、友達4人で開業して1人1,500万取っている会社、従業員が5人か6人しかいない小さな会社ですけれども、役員報酬が6,000万という会社がありました。そういう例外的な会社もありますけれども、一応20人以上までいけば、それなりの所得が得られる会社になります。20人も雇用しなければいけないわけですから、それだけ利益を上げなければやっていけないわけで、自分の取り分も多いということになります。
 次ページにいきまして、今度はどれぐらい働いているんだろうか。労働時間の問題なんですけれども、これに関しては特に傾向というものはないです。多くなった人もいれば、少なくなった人もいるとしか言いようがないです。働き方に対する考え方もあるでしょうし、前の会社でどれぐらい働いていたかにもよるでしょうし、それは人それぞれですので、増えたり減ったりとしか言いようがないということです。
 それでは不親切すぎるので、今までは比較だけで話していたんですけれども、実際にどれぐらい働いているんだろうかとか、どれぐらい稼いでいるんだろうかとかということを数字で見たものが表-1です。平均値を出しています。
 単純な算術平均で出しているんですけれども、まず労働時間を見ますと、1日の労働時間というのは、男性が9.9時間で、女性が8.9時間。男性の方がちょっと長いという感じです。
 それから、月平均の純利益のところを見ますと、男性が33万、女性が20.5万ということで、男性の方が大分高い。ただし、標準偏差で見ますと、男性の方がばらつきがかなり大きいです。平均値と変わらないぐらいの標準偏差がありますので、この倍稼いでいる人もいれば、ほとんど稼いでいない人もいらっしゃるということです。女性の方も標準偏差は結構大きいですので、余りもうかっていない方もいらっしゃる。
 最初に申し上げましたように、所得に関してはかなり不確実性が大きいということが言えると思います。
 3段目は、利益でもって生活費はどれぐらい賄えているのかということで、生活費を聞きまして、それに対して純利益がどれぐらいの割合を占めるか。要するに商売で生活できているのかということを見ているわけですけれども、男性の場合は平均値が125.8%で、一応賄えています。
 女性の方は77.7%ですので、賄えていませんという結論になります。女性の場合は有配偶者がほとんどですので、旦那さんの収入や別途家族の収入などで生活を立てているというケースが現実として多いんだろうと思います。また、副業的に始めている方もいらっしゃるので、そもそも家計を維持しようとは考えていないということもあると思います。もし配偶者がいない人だけに限定をしてみれば、違った結果が出てくると思うんですけれども、全体の平均とすればこんな感じになります。
 また標準偏差もすごく大きくて、男性の場合は標準偏差が平均値よりも大きくなってしまっているところも非常に問題でございまして、要するに、先ほども申しましたように、すごくもうかっている人もいれば、生活すらできないような、NHKでワーキングプアとして自営業を紹介していましたけれども、自営業のワーキングプアもないわけではないということなのです。
 事例としまして、例えば1回ヒアリングに行ったときに、飲食店なんですけれども、お客さんが全然来なくてやっていけない。しようがないから奥さんがパートに出て、奥さんの稼ぎで何とか暮らしているという例もありましたし、当然その逆もあると思います。
 標準偏差が150ということは、逆にいえばもうかってしようがない自営業者もいるということなので、暗い側面ばかり見ないで明るい方も見ていただきたいと思います。いずれにしても、不確実性が非常に高いということです。
 その下の表-2は、調査がまた違うものになるんですけれども、新規開業の貸し付けをした先に対してお願いしまして、パネル調査を実施しております。最初に実施したのが2001年で、今、第2コーホートを調査しているところなんですけれども、2001年から2005年の最初のコーホートに関しては、一応本も出しておりまして、御興味のある方は見ていただきたいと思います。
 これを見ていただきますと、スタートが2,181でアンケートをしました。その後、毎年アンケートをやっていくんですけれども、廃業が一定割合であるんです。特に絶対数でいきますと、2002年、2003年、2004年辺りはかなり多くなっています。
 存続率でいきますと、2001年に開業して5年後にはどうなったかというと、残っていた企業が82.7%。ただ、やっているかやっていないかわからないのが43件あるので、それをどちらに考えるかで多少数値は変わりますが、少なくとも18%は5年でなくなってしまっている、やめてしまっている。
 私どもは貸し付けしてスクリーニングをしていますので、スクリーニングした割には1年目から廃業しているのではないかと言われると痛いところがあるんですが、その辺は私どもでも読み切れないところがありますものですから、やむを得ない。
 更に20人以上でやるとかなりもうかりますと言ったんですが、20人以上まで育った企業がどれだけあるかといいますと、たった5年間でというのもなんなんですけれども、わかっているだけで53あるんです。2,181件あったもののうち、20人までいったのは53件しかない、2%ちょっとです。途中で回答を放棄してしまった人もいるものですから、どこかの年で1回でも20人以上いますと書いた企業ですと89社あるんです。それでも当初の4.1%にすぎないんです。だから、100人開業しても20人までに成長するのは4人しかいないということです。
 いわゆる雇用創出ということがよく言われますけれども、新規開業の雇用創出というのは、ごく少数の企業、上位1割とか2割の企業が大半の雇用を創出しているんだということです。このパネル調査で1企業当たりの雇用創出を毎年追っているんですけれども、5年間で増えたのは平均で1人なんです。ですから、自営業というものは開業してもほとんどが成長しないということなんです。短期間で20人を超えるような企業に成長するような企業さんもあります。先ほど田村さんが紹介されてたG法人などもそうだと思います。非常に成長率が高い企業さんもあるんですけれども、ほとんどは成長しないです。せいぜい増やしても1人です。10年経ったらこれが増えるのかといったら、多分増えていなくて、10年後もやはり4人か5人でやっているんだろうと思います。
 それはなぜかというと、ほとんどの人が就業経験のある業種で開業してしまうというところだと思います。要するに、美容院に勤めていた人が美容院を始める。ブティックに勤めていた人がブティックをやる。経験があるので失敗するリスクというのは小さいとは思うんですけれども、それだけ既存の業者がたくさんありますから、競争が厳しいということなんです。既にパイはとられていて、その中から更にパイを分捕ってこなければいけないということですから、失敗する可能性は小さいかもしれないけれども、伸びないんです。
 典型的なのは飲食店だと思うんですけれども、飲食店というのは「事業所・企業統計調査」の中でも開廃業率ともに高い業種としてよく知られていて、人によっては開廃業率が高いということは企業の新陳代謝が活発なんだろうと言うんですけれども、本当はそうではなくて、入っていった企業が既存の企業に打ち負かされてやめているだけなのではないか。勿論中には急成長する企業が出てきますけれども、新規参入して1年か2年で追い返されて退出していくというのがほとんどではないでしょうか。運よく生き残っても余り成長しないで、細々と生き残っていくというところです。
 非常にイメージダウンになることばかり言っていますけれども、経済的な面でいうとかなり厳しいです。特に去年のサブプライムローン問題以降、急激に自営業の経営内容は悪化しているようでして、私どもの貸し付けも相当増えています。今、政府の方針もあってどんどん貸せということで貸しているということもあるんですけれども、銀行さんに断られて私どものところに来る人が非常に増えているということですから、経済的な面では非常に不安定な存在ということです。
 ちょっと時間がかかりましたが、次にいきまして、やりがいとかそういったものなのはどうなのかということなんですが、表-3なんですけれども、自己雇用者の人に関して、いろんな点を挙げて満足していますかということを聞いているんですけれども、最初の2つ「収入」とか「資産」に関しては、ほとんどの人が満足していないと答えています。かなり満足しているという人は、例外的です。
 「余暇・ゆとり」「仕事」になりますと、多少満足度が上がってきます。余暇とゆとりと仕事に関しては、男女で有意な差が見られる。10%水準ですけれども、一応有意な差になっていて、女性の方が満足度がちょっと高いです。特に仕事に関しては、かなり満足しているとやや満足しているを合計すると、男性をかなり上回る結果になっています。
 更に下にいきまして、かなりあいまいですけれども「心の豊かさ」とか「生活全般」についてどうですかというと、女性の方はどちらかというと満足度が多い場合と、そうでない場合というのがあるんです。
 心の豊かさに関しては、女性の方が満足度はかなり高いです。満足していないという人はほとんどいなくて、むしろ、満足している人の方が多くなっている。
 生活全般についてはどうですかといいますと、これについても女性の方がやや満足度は高い。ここら辺がちょっと不思議なところです。
 ただ、これらはあくまで主観的な話なので、同世代の雇用者と比べた場合にどうですかということも見ています。これは表-4になります。
 同世代のサラリーマンと比べて自分はどうですかという結構きつい質問をしているんですけれども、これに関していいますと「収入」に関しては、やはり雇用者の方がいいと答える人がかなり多いんです。ただし、女性の場合は自分の方がよいと答える人も多くて、結構拮抗しているんです。男の方はサラリーマンでいればよかったという人がかなり多いんですが、女性の場合は半々ぐらいに分かれるというところです。
 「時間や気持ちのゆとり」は、男女ともに自分の方がいい。サラリーマンよりゆとりはあると答える方が多くなっています。
 「仕事のやりがい」になりますと、圧倒的に自分の方がいいというお答えをされる方が多いです。やりがいがなかったらやめていると思いますので、当たり前ですけれども。
 「社会的地位」なんですけれども、これも面白い数字が出ていて、やはり自分の方がいいと答える方が多いことは多いんですけれども、女性の方が多いんです。女性の方がOLとかパートの方と比べると、社会的地位は自分の方が上だと答える人がはるかに多いということです。これは注目してもいいところかと思います。
 「自分らしい生き方」は、男女差がほとんどなくて、男女ともに自分の方がよいということになります。
 今までの話をまとめますと、経済的にはかなり不安定な存在ではあるんだけれども、仕事のやりがいや能力発揮という点では、結構悪くない結果が出ている。ただし、それはあくまで経済的にある程度安定するということが前提の話で、実際、経済的に不安定なところだけを取り出してきてみると、やはり満足度は低くなります。多少相関はします。
 参考までに、これはもう既にご覧になっている数字かと思いますけれども「配偶者間の家事・育児の役割分担」を載せております。これは「女性経営者に関する実態調査」から持ってきたんですけれども、やはり女性が家事をやっていますということがあって、ただ、女性の方がどちらかというと配偶者と折半して行うというのが少し多くて、多少協力してくれている。
 試しに配偶者の職業別に見てみたんです。例えば夫婦そろって自営業の場合だったら役割分担するのかと思って見たんですけれども、そんなことはなくて、夫婦ともに自営業をやっていても、やはり家事・育児は女性がやっているところが圧倒的に多いということがありました。やはり自営業でもサラリーマンと同じで、家事・育児は女性の仕事になってしまっているというのが現状です。
 次のページにまいりまして、今度は新しい調査になります。昨年たまたま、本当に偶然なんですけれど、「小企業の地域貢献活動に関する調査」というものをやっていました。
 主たる調査対象は、旧国民生活金融公庫の融資先ですけれども、同時に雇用者についてもインターネット調査を使って参考に調査していますので、その結果なども御紹介したいと思います。
 ここで言っている地域貢献というのは公式な定義はありませんので、下に書いてありますような大きく6つの分野を挙げまして、それぞれ更に幾つか挙げて、どれをやっていますかという形で○をつけてもらうような方式で答えてもらいました。結果的に「その他」に○をつける人はほとんどいなかったので、この選択肢で大体あっているのではないかと思っています。
 具体的にどういうふうになっているかという調査結果なんですけれども、次のページの表-5です。地域貢献活動への取組み状況ということで、小企業と雇用者との単純な比較はできないんです。
 小企業の場合は、経営者が個人的にやっているというケースと企業としてやっているケースと必ずしも峻別できないということがあるんですが、小企業の方は「企業、個人ともに取り組んでいる」「企業として取り組んでいる」「個人として取り組んでいる」というカテゴリーをつくって示しています。そうしますと、男女差がなくて、取り組んでいないという企業が47.6%ですから、52.4%が何らかの地域貢献活動に取り組んでいますということになります。
 一方、雇用者の方はどうかといいますと、属性が大分違うんですけれども、男女差がありまして、女性の方が取り組んでいない比率が高くなっています。
 御参考までに言いますと、先ほども言いましたけれども、小企業の経営者というのは年齢が高くて、平均で50歳を超えます。一方、ネット調査の方は平均年齢がかなり若くなっていますので、50歳以上はむしろ少ない、少数派になりますので、年齢の違いなども考えなければいけないんですけれども、一応こういう結果になっています。
 どういう地域貢献活動をやっているのかということなんですけれども、まず図-7は企業としてやっているものについて見たものです。圧倒的に多いのは「文化・環境に関する活動」で、これを答えた人が76.8%いました。内訳を言うと何だと思われてしまうんですが、お祭りなんです。お祭りとか伝統行事の開催といったものに参加していますという方が非常に多い。
 次に大きくなっていますのが「治安・安全・防災に関する活動」ということで、45.5%の方が御回答になっています。この中身も聞くと当たり前の話で、治安というのは要するに防犯活動です。防犯協会などに加入しているとか、安全は当然交通安全活動です。防災は消防団に入っているとか、そういう話になるんです。ただ、消防団は本当は個人でしか入れない、企業としては参加できないはずなので、一応協力企業という形だと思います。
 この2つは、地域のコミュニティーの自治活動です。それを支えるような役割を担っていると私たちは評価しています。たかが祭りかもしませんけれども、やはり地域にとってはすごく大事なことですし、自営業の方がいらっしゃらないと祭りもうまく実行できないというのが実態かと思います。
 ただ、最近の動向としましては「雇用に関する活動」ですとか「保健・医療・福祉に関する活動」というものが少しずつ増えてきています。
 中身はどんなものかというと、例えば雇用に関する活動で言いますと、インターンシップを受け入れる、あるいは小中学校の職場体験を受け入れるということをやっています。インターンシップの受け入れの場合は、うまくすれば採用につながるからという経済的な動機があるんですけれども、小中学生の職場体験というのは全く利益にならない。むしろ、持ち出しばかりで負担になるんですけれども、なぜそういうことをやるんですかというと、地域に必要とされる企業にならなければいけない。だから、もうかるか、もうからないかは関係なくて、地域の一員として当然やるべきことでしょうとみなさんおっしゃいます。
 特に製造業の方の場合、今の町工場というのはみんな門を閉ざして、中で何をやっているかさっぱりわからないという状況になってしまっているので、それを公開することによって、こんな仕事をしているんだということをわかってもらいたいというお気持ちからやっていらっしゃる方が多いようです。
 それから、雇用や保健関係でいきますと、障害者雇用に取り組まれるような方、あるいは介護に取り組まれるような方も少なくないです。例えば保健・医療・福祉関係ですと、学童保育を始めた会社などがあります。G法人とは全然違って、もともとは社員の福利厚生の一環として始めているんですけれども、それを地域全体に広げたというケースがあります。
 時間がないので先に進みますけれども、今度は雇用者の場合と比較してみたいと思います。比較する場合には、企業と比較してもしようがないので、雇用者と小企業の経営者本人とで比較してどうかというと、これはほとんど差がないです。雇用者でも集中しますのは「文化・環境に関する活動」で、やはりここでも祭りだとか、あとスポーツ少年団などが地域にありますね。ああいうところの指導者という形で参加されている方か多いみたいです。
 「治安・安全・防災に関する活動」も同じように多くなっています。
 経営者と違うのは、教育に関する活動や雇用に関する活動が多くなっているのが奇異な感じがするんですけれども、1つには経営者の場合は企業として営んでいるというケースがありますので、それも考慮する必要があるということ。
 「教育に関する活動」「雇用に関する活動」というのは、会社がインターンシップや就業体験を受け入れ、その担当者になっているということで、これに回答されている方が多いということだと思います。
 問題なのは、どちらの方がより積極的に地域貢献活動に参加しているのか。あるいは地域貢献活動からやりがいを感じているのかということかと思うんですけれども、図-9では今後やめたい活動がありますかと聞いたんですが、人によっては3つも4つも、最大で十幾つ活動している人もいらっしゃるんですけれども、やめたい活動はありますかと聞きますと、企業経営者の場合は9.8%であるのに対して、雇用者の場合は22.8%がやめたい活動があるとお答えになっている。
 参考までに、企業として行っている場合は7.5%と更に少なくなるんです。ですから、企業経営者の方はあまりやめたいとは思っていないんです。
 ここにはお出ししませんでしたけれども、ほかにも聞いている質問の中で、例えば自分が参加している地域貢献活動の成果についてどう見ていますか、どう評価していますかと質問しているんですけれども、経営者の方は成果が上がっているか上がっていないのかどちらかに大体丸をつける方が多いんですが、雇用者の場合はよくわからないと答える方が2割ちょっといらっしゃいます。
 それから、活動の資金源は何ですかという質問もしているんですけれども、これについても経営者の方ははっきり答えられるんですが、雇用者の方は2割ぐらいがよくわからないと答えられる。
 ですから、同じ参加するにしても、勿論、雇用者の中にも強いコミットメントを持っている人もいると思うんですけれども、どちらかといえば、自営業者の方が中核的な存在として活動しているのに対して、雇用者の方はそういうところにくっ付いている方、ぶら下がって参加しているような方が多いと思われるということです。
 やめたいのはなぜですかという理由も聞いていまして、それが次ページの図-10になりますけれども、これも経営者の方と雇用者では大分違っております。
 雇用者の場合ですと、時間の余裕がないからということを挙げている方が44.8%で多い。忙しいのかなと思います。ネット調査ですので、30代から40代ぐらいの方が非常に多く御回答されていますので、一番働き盛りの世代ですから、当然なのかも知れません。
 一方で、経営者の方の場合は、体力的に続かないからということで、これは年齢的な問題だと思います。
 ですから、地域貢献活動に関しましても、雇用者と自営業者を比較しますと、やはり自営業者の方が関わる必然性もありますし、関わっていて中心的存在になっているケースが圧倒的に多いのではないか。我々自身雇用者ですけれども、地域と全く関わっていません。数年前の国民生活白書でサラリーマンは地域に全然溶け込んでいないのではないかという指摘がありましたけれども、そういうことがここでもある。ですから、地域ともっと深く関わりたいということであれば、自営業という選択も悪くないでしょうし、また最近コミュニティービジネスなどが増えているというのも、同様の理由からだと見ております。
 以上が私からの報告でございます。
佐藤会長
起業すると経済面ではかなりリスクもあるし、安定するというのはなかなか難しい。他方、ある程度基盤ができれば仕事の面ではやりがいがある、生活での満足度が高いというお話でした。
 確認したいこと、御質問があればお願いします。よろしいですか。
 田村さんの方からも事業者統計調査で開業率の話が出ていました。竹内さんからは開業が増えているのではないか、最近はちょっと減ったかもしれないというお話でしたが、なかなか開業の把握が難しくて、事業所統計調査は5年に一度ですので、調査期間中に開業してなくなる企業は入っていないんですね。
竹内氏
中間調査もあります。中間調査が2年半ぐらいなんですけれども、その2年半の間になくなる企業が相当あるんです。
佐藤会長
2年半のところでなくなってしまうんですね。
竹内氏
なくなってしまうんです。だから、把握されていないものは相当あります。
佐藤会長
多分36か月で半分ぐらいがなくなるんですかね。どのぐらいなくなるかがわからないんですね。
竹内氏
正確なパネル調査はないんです。
佐藤会長
かなり廃業率も高いので、そこはわからないと思います。
 それでは、お三方の報告について、コメントでも御意見でも結構ですので、伺えればと思います。どうぞ。
牧野委員
ありがとうございました。
 最後のお話を聞いていて、特に同世代の雇用者と比べての自己評価を見ていて、すごく辛らつな思いになったんですけれども、逆に言うと、企業においての男性と女性の満足度が違うから、新しく始めた方の満足度が変わってくるのではないかと思いました。
 そう思うと、逆に充実したいと思っている、あるいは才能がある女性というのは、どんどん企業から離れていってしまうのではないかと思ったので、やはりワーク・ライフ・バランスというものを企業でいかに提供していくのかということが重要という意味では非常に参考になりました。
佐藤会長
どうもありがとうございました。
 北浦さん、どうぞ。
北浦委員
どうもありがとうございました。1点感想、あと2点は簡単な質問です。
 1点は、いずれのお話を聞いていましても、ワーク・ライフ・バランス、例えば自営業中心のところになると、やはり社会的なインフラを相当整備しないとできないということが皆さん共通したところであったと思います。
 ただ、そのときの仕組みというものはどういうものか。これは田村さんのお話にあったように、いわゆるお金ではなくて、例えばみんなで助け合うネットワークであったり、そういう仕組みということもあるので、その方策というのは、単にハコモノやお金とかで考えない方がいいと思いました。これは感想です。
 あと質問ですが、簡単なことで2点です。
 田村さん申し訳ないんですが、起業のところで2点ほどお聞きしたいんですが、1つはワーク・ライフ・バランスとの関係でいうと、今の御説明は大変有意義な情報をありがとうございました。ただ、裏腹に例えば健康問題について不安を感じていらっしゃる方、これは自営業の方もそうなんですが、特に起業家の人は多いのではないかと思います。ワーク・ライフ・バランスの1つの大きいところで健康問題があります。健康を損なうと仕事ができなくなって、その中断をどうするかとかそちらもありますが、まず健康問題はものすごく関心が高いです。私の付き合っている範囲でもそういうことを聞いていますので、それが1点です。
 もう一つは、これは竹内さんの方と関係するんですが、スモールビジネスをやっていらっしゃる方というのは、奥山さんの話が出ていましたけれども、そういうものも含めて地域問題や地域貢献にものすごく関心を持っていらっしゃる。例えば障害者のNPOみたいものに一緒に関わっている方もいらっしゃると思うので、そういった広がりが出てくるのではないか。
 ですから、逆に言うと、ワーク・ライフ・バランスの家庭もありますけれども、地域生活も含めての満足度も、そういう意味ではやりがいを感じているところがあると思います。
 この2点について、少し教えていただければと思います。
田村氏
健康問題ですが、私が事例で出させていただきましたSさんは、今、御指摘がありましたとおり、中小企業の経営者が一番医者に行かない。健康に問題があるであろうということで、健康シートで中小企業の経営者を中心に回ったサービスを始めました。始めてみたところ、おっしゃるとおり、皆さん興味はありますが、このシートもそんなにリーズナブルなお金にならないものですから、価格を考えてしまう。初めのうちは会社で資金を出してやりますが、なかなか続かないという現状でありまして、関心はあるんだけれども、一方で、私は大丈夫という精神的な面で仕事をしていらっしゃる、特に男性経営者が多いというのは現実だと思います。
 女性起業家の場合は、先ほどの大田区でもありましたように、Dさんのところもそうなんですが、働く女性に対してもヘルシーキャリアのつくり方というものにも興味を持ち、女性経営者が自分の体に対して、健康をどうしようかということを、メンバー同士が集まって、ネットワークを組みつつあるという現状が1つあるかと思います。ですから、関心は非常にある。
 片一方で、仕事に追われていてなかなかできないという現状のジレンマに立っているということです。多くの経営者を見ていますと、やはり年に一度ぐらいの健康診断というものを心がけようとしている傾向があるということが1つ言えるかと思います。だた、これはまだまだなので、それこそいろんな仕組みができてくるといいという気がします。
 あと、地域への貢献ですけれども、先ほど言ったコミュニティービジネスは、むしろ、地域の活性化がしたいがゆえに会社を起こすという人たちは、地域貢献に非常に興味があるのはたしかです。
 あと、経営者でもある事業を始めたとき、貢献したいというときに、お金だけではないとはいえ地域貢献するのに資金もかかってくるわけです。ですから、そのときに、まずは自分の事業をきちっとしてからでないと貢献ができないというようなジレンマもありますから、まずは税金を納めるところから始めましょうという形で始める方も実際あります。
 貢献に関して非常に興味を持っているのはたしかで、先ほど言いました手元のお金で小さく始められる女性たちというのは、どちらかというと、Aさんのように、自分の生活をしている生活空間が楽しくなりたいという発想が多いです。楽しくするためにどうしなければいけないか。楽しくするための事業展開を考えようという視点で会社を起こす傾向も男性に比べて大きいので、そういう意味では、地域貢献に非常に関心を持っているのはたしかです。
 ただ、これは矛盾ですが、先ほどの地域貢献に余り重きを入れると、なかなか事業展開できないという矛盾をいつも感じながら会社をつくって運営しているというのが現状です。だからこそ、余り大きくならない。なかなか大きくならないような気がいたします。
佐藤会長
どうもありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。どうぞ。
船木政策企画調査官
船木と申します。興味深いお話ありがとうございました。
 竹内さんに1点だけ簡単な質問で申し訳ないんですけれども、起業したりする場合、私が関わっている地域づくりなどをやっているところで、案外、観光産業とか地場の物産を地域でつないで、町と村をつなぐみたいなことが多いんですが、それが地域貢献活動という調査の中でいくと、それで起業している場合は本業になるんですが、それもここの項目にカウントされているんでしょうか。
竹内様
カウントしています。例えば地域資源の活用ということも項目に挙げていて、それを選んでいる方もいらっしゃいますし、介護をやっている方は介護に当然丸をつけます。
船木政策企画調査官
ということは、本業であるケースもこの中には含まれていて、要は本業と地域貢献というのは別に分けて調査をされているという理解ではないということですね。
竹内氏
はい。
船木政策企画調査官
ありがとうございます。
竹内氏
ただ、結果としては、そういう方は少数です。
 先ほど田村さんの話と反対のところがあって、地域貢献活動をうまくやっているところはもうかっているんです。それは地域貢献活動と事業の活動をうまくミックスさせられる可能性があるんです。
佐藤会長
できているところは、もうかっているんですね。
竹内氏
もうかっているから地域貢献活動がうまくいっているのではなくて、地域貢献活動と事業活動が相互にいい関係をもたらして成長しているというケースが少なからずあるんです。だから、もうかっていないから地域貢献をしないというのは、どちらかというと言い訳ではないかと思います。
田村氏
一言言わせていただきたいのは、勿論、地域貢献をするために起こした会社というのは、確実にそれを続けるためにうまくいっています。
 私が言いたかったのは、地域貢献したいという思いがあって事業がうまくいっていない人は、まずは自分の会社をきちっとしてからではないと、そこにはいけないという意味で言いたかったんです。だから、もうかっていないからというのではなくて、きちっとやる方は両輪がうまくいっているということが言いたかったことです。
佐藤会長
これは地域貢献もそうですが、先ほどの6分野ではなくて、もともとの詳しいものに丸をつけてもらっているということですね。
竹内氏
そうです。それ以外に該当するものがあれば、その他に書いてくれという話になっています。
佐藤会長
岡本さん、どうぞ。
岡本委員
感想になりますけれども、私は農業従事者のワーク・ライフ・バランスという観点でのお話は初めて伺って、大変面白かったです。
 特に保育所の問題についてなんですけれども、やはりおじいちゃん、おばあちゃんに見てもらえるのではないかとか、M字型ではないというお話からも、いわゆる企業労働者と違って退職という考え方がないということから、基準から漏れてしまうということは確かにそうだなと思いました。
 ただ、これから、環境面においても雇用創出の面においても、今、グリーンジョブというお話が出てきていますけれども、まさに農林業における雇用創出をどうしていくのかということが全体的な議論になっていくときに、従来型の農業のイメージといったことをいかに変えていくかということがないと、なかなか難しいでしょう。いわゆる先祖代々そういう仕事に携わっている人ではない方たちが入ってやっていくには、保育園のことはこの中でかなり象徴的なんだろうと思いますけれども、いろんなことを変えていかなければいけないんだということを非常に感じました。
佐藤会長
もし何かあればお願いします。
天野氏
余り私もわからない部分なんですけれども、今、高齢化率が非常に高い。ということは、この10年、15年のところで変わるということです。変わるであろうところに企業型のものが入ってきたときに、そこに住んでいる人たちがどういう可能性があるのかというのは、危険も含めてすごく焦点にはなるだろうと思います。
 そのときに、今の40代とか30代などの女性たちがどんなふうになるのかというのは、予測を出せと言われても、私なんかにはとても予測は出せないところですけれども、見ていくしかないという気でおります。
佐藤会長
あとお一方にします。大沢さん、どうぞ。
大沢委員
とても面白く伺いました。特に成功した例も面白いんですが、リスクも非常に高いということで、そういうときのセーフティーネットというか、今、生活困難者のことが話題になっているので、ちゃんと積み立てておかないと老後に不安を感じてしまう。それがひいてはコミュニティービジネスを立ち上げるときのリスクにつながっていくということで、そういう調査などはあるんでしょうか。それとも今後必要になってくるとお感じでしょうか。
佐藤会長
起業した人、成功するとは限らない人たちのということですね。
大沢委員
失敗してしまった後の生活というのは、どうなっているのかということです。特に男性の年収で200万円以下の人というのは、統計で見ても増えている。そういう人たちは、もしかしたら、自営で事業がなかなかうまくいかなかった人だとすると、どういう政策をとっておいたらいいのかということを御存じでしたら、教えていただければと思います。もし場違いな質問でしたら、失礼しました。
佐藤会長
どうぞ。
竹内氏
一応、安倍首相のときに、再チャレンジという言葉がキーワードになって、私どもでも再チャレンジ貸付という融資制度ができました。
佐藤会長
再チャレンジ貸付ね。
竹内氏
一度廃業経験がある人などか来た場合には、少し優遇していると思います。ただ、なかなか言わないんです。経歴を聞いていって、何か空白の期間がありますねとなると、実は商売失敗しましたとかそういう話が出てくるんです。大体隠したがるので、なかなかわからないんですけれども、件数としては余りいないです。
 私はセーフティーネットみたいなものはすごく大事だと思っていて、自営業者の方は社会保障の対象になっていません。全部自己責任ということなので、そこを何とかしてあげないといけないのではないかという気はするんですけれども、ただ、反面、雇用者と違って、成功した場合、ものすごくもうかるという面があるので、そこをどうするのか。どう調整するのか。
佐藤会長
雇用者から起業して、また雇用者へ戻る人も相当いますね。
竹内氏
います。労働力調査を見ていますと、自営業者をやめた人がどこへ行くかというと、小企業なんです。4人から20人程度の企業に移っていって、また折を見て独立したりしています。
 随分昔に1回廃業したことがある人の調査をやったことがあるんですけれども、再び再起してという方がいるんですけれども、微妙な評価です。失敗から学んで2度目はうまくいっている人もいれば、同じ失態を繰り返す人もいますし、そこは個人差としか言いようがないです。
佐藤会長
よろしいですか。
 本日は雇用者以外の方、農業セクター、自営業セクターを取り上げて、そういう形で働く人たちのワーク・ライフ・バランスを議論してきました。貴重なお話どうもありがとうございました。
 それでは、最後に事務局から連絡事項があれば、よろしくお願いいたします。
日原調査官
今日はマイクの調子が悪くて申し訳ございませんでした。
 次回の調査会は3月下旬以降でまた日程調整をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
佐藤会長
それでは、ここで今日の専門調査会を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。

以上