少子化と男女共同参画に関する専門調査会

  1. 日時 平成16年10月21日(木)10:00~11:51
  2. 場所 内閣府3階特別会議室
  3. 出席者
    林田副大臣、江渡大臣政務官、佐藤会長、岩男会長代理、網野委員、大沢委員、奥山委員、杉山委員、高橋委員、武石委員、橘木委員、布山委員、藻谷委員

(議事次第)

  1. 開会
  2. 委員あいさつ
  3. 運営規則について
  4. 本専門調査会の研究課題・研究手法について
  5. 閉会

(配布資料)

資料1
少子化と男女共同参画に関する専門調査会の設置について [PDF形式:11KB] 別ウインドウで開きます
資料2
少子化と男女共同参画に関する専門調査会 委員名簿
資料3
少子化と男女共同参画に関する専門調査会運営規則(案)
資料3-1
男女共同参画社会基本法 [PDF形式:13KB] 別ウインドウで開きます
資料3-2
男女共同参画会議令 [PDF形式:12KB] 別ウインドウで開きます
資料3-3
男女共同参画会議 今後の進め方について(専門調査会の設置について)[PDF形式:12KB] 別ウインドウで開きます
資料4
『少子化と男女共同参画』~これまでの研究成果を踏まえて~ [PDF形式:328KB] 別ウインドウで開きます
資料5
研究手法について [PDF形式:25KB] 別ウインドウで開きます
資料6
本専門調査会の進め方及びスケジュール [PDF形式:15KB] 別ウインドウで開きます
資料7
新規アンケートの実施について [PDF形式:12KB] 別ウインドウで開きます
参考
既存意識調査・関連研究リスト

(議事内容)

名取局長
ただいまから、男女共同参画会議少子化と男女共同参画に関する専門調査会の第1回会合を開催させていただきます。私は、この専門調査会及び男女共同参画会議の事務を担当しております、内閣府男女共同参画局の名取でございます。どうぞよろしくお願いします。
 審議に先立ちまして、始めに林田副大臣からごあいさつをいただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
林田副大臣
おはようございます。このたび内閣府副大臣を拝命いたしました林田でございます。台風明けの非常にお忙しい中に、委員の皆様におかれましては御参集いただきまして誠にありがとうございます。
 男性も女性も性別にかかわりなくその個性と能力を発揮できる男女共同参画社会の実現は、21世紀の我が国の最重要課題であり、家庭生活における活動と職業生活等の活動との両立は、その基本理念の一つとして掲げられております。少子化との関係でも本年6月に発表された「男女共同参画の将来像検討会報告」において、仕事と子育ての両立支援が充実することが女性の労働力率が高まるとともに、出生率の回復につながることが期待される旨、指摘されております。
 先日の内閣改造においても、小泉総理から、男女共同参画担当大臣である官房長官に対して、男女共同参画については少子化対策等関連の問題も視野に入れて、広く国民の理解を得られる施策を推進されたいとの指示がございました。私も担当副大臣として、この重要な指示に誠心誠意取り組んでまいる所存でございます。
 委員の皆さん方におかれましても、少子化と男女共同参画のかかわりを明らかにできますように、活発なる御議論を賜りたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
名取局長
どうもありがとうございました。
 次に江渡大臣政務官からごあいさつをいただきます。
江渡大臣政務官
皆様、おはようございます。このたび、内閣府大臣政務官を拝命いたしました江渡聡徳でございます。
 委員の皆様方におかれましては、日ごろから男女共同参画社会の実現のために大変御尽力いただきまして、心から厚く御礼申し上げる次第でございます。
 さて、平成15年の合計特殊出生率は1.29と過去最低でございまして、少子高齢化が進む先進国の中でも、イタリア、ドイツと並んで出生率の低いグループにあるわけでございます。そしてOECD各国のデータにおきましては、女性の労働力率が高い国は合計特殊出生率も高い傾向にあることが示されているわけでございます。
 このような状況の中、総理からの御指示もありましたように、少子化対策等関連の問題も視野に入れまして、男女共同参画社会の形成を推進していくということは大変重要であると私も思っているところでございます。今後、我が国は活力ある経済・社会を維持していくためには、やる気と能力のある女性の活躍が必要不可欠ですが、同時に、次代を担う子どもを健全に育んでいくことのできる持続可能な社会を実現する必要もあると、そのように指摘もされております。
 私自身も議員になる前に福祉関係の仕事をしておりまして、特に青森の方で保育園6か所、児童養護施設に関係しており、特にこういう分野に対しては、私も大変興味深く思っているところでございます。それゆえにこの専門調査会が具体的な数値データをもとに少子化と男女共同参画の関係を明らかにしていただきまして、成果が実り多いものとなるよう、委員の皆様方の御協力をお願い申し上げまして、甚だ簡単、粗辞でありますけれど、私のごあいさつとさせていただきたいと思います。
 委員の皆様方、どうぞよろしくお願いしたいと思います。ありがとうございます。
名取局長
どうもありがとうございました。
 それでは、議事の進行につきましては、佐藤会長にお願いしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
佐藤会長
御紹介いただきました佐藤です。よろしくお願いいたします。
 私はこのほど、男女共同参画会議議長である官房長官から御指名を受け、この少子化と男女共同参画に関する専門調査会の会長を務めさせていただくことになりました。皆さんの御協力を得て、調査会の目的の成果が出せるように努力したいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、座らせていただきますが、初会合でありますので、私の方からごあいさつ、もう申し上げたわけですけれども、引き続きまして、委員の皆様からお一人2~3分程度自己紹介と本調査のテーマについては事前に御説明してあると思いますので、テーマに関係する問題意識や御専門との関係について御発言いただければと思います。なお、資料2として、本専門調査会の委員名簿を配布してございますので、御参照いただければと思います。
 また、本日は阿部委員、玄田委員が御欠席との連絡をいただいております。
 私は専門は人事管理で、企業の中での人材活用、最近は女性の活躍の場をどう広げるか、働き続けるということと、子育て等の生活との両立をどう図るのかというようなことについて勉強させていただいております。よろしくお願いします。
 それでは、網野委員の方から2~3分ずつ、自己紹介と問題意識等をお話しいただければと思います。よろしくお願いいたします。
網野委員
網野と申します。
 私は現在、上智大学文学部社会福祉学科で、とりわけ児童福祉、児童家庭福祉の分野を担当しております。先ほど政務官からお話がございましたが、保育園あるいは様々な児童福祉施設との関連も深いわけですけれども、私自身は長年にわたりまして、子どもの発達と福祉にかかわる行政、臨床、それから研究、教育に携わっておりました。中でも最近は、先ほどお話にありましたような少子化の中でようやくといいますか、子どもに関心を向けて育てることの意義について少しずつ認識が深まってくる社会状況が見られるようになりましたけれども、長年にわたりまして、私はこの仕事を通じて、どうしてこんなに日本は子どもにやさしくない社会になってしまったのだろうと思うことが非常に多かったわけです。とりわけ子育てと仕事の両立というのは、20世紀末からの大変大きな課題になっておりまして、その分野でもいろいろ勉強させていただき、いろいろなところで何とかこの重要な課題を解決したいと、微力ながら努力してまいりました。
 どうぞよろしくお願いいたします。
岩男委員
岩男壽美子と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 私は専門は社会心理学、それから、実はいろいろ個人的都合もあり看板には掲げてこなかったのですが、発達心理学を副専攻としております。
 政府で初めて少子化の問題が取り上げられたのは、橋本総理が御退陣になる直前で、森内閣で走り出したわけですけれども、少子化への対応を考える有識者会議というものができまして、その座長をしておりました。そのときに、「働き方」の分科会と「家庭に夢を」という分科会がございまして、私は「家庭に夢を」という方を担当させていただきました。そのときにいろいろ御参加いただいた委員の方もまた今回御一緒できるということで、大変うれしく思っております。
 それから、いろいろ研究でも少子化にかかわる問題、例えば一昨年は不妊を専門にしておられるお医者様と御一緒に研究をしたり、現在は今年度から3年で厚生科学研究費をいただきまして、父親の育児休業10%というのをいかにして実現するかという研究をちょうど始めているところでございます。先週までロシアに行っておりましたが、ちょうどロシアでも同じような問題意識といいますか、少子化が進んでおりまして、社会主義から資本主義に変わって、女性が仕事と子育てとを両立できなくなっており、この問題が非常に複雑だということを改めて実感して帰ってきたところでございます。
 どうぞよろしくお願いいたします。
大沢委員
日本女子大学の大沢でございます。よろしくお願いいたします。
 私が1986年に出した博士論文のテーマが「女性の就業と出生率」ということで、そのときのポイントが、女性の働き方が出生率に非常に大きく影響するということで、特に外で働いている女性と自営業として家で働いている女性、専業主婦の3つのグループで出生率を比べますと、雇用就業者の子どもの数が低いということから、女性の働き方と就業率の低下の問題に取り組み、その分析をいたしました。また、毎日新聞が今までは出生調整の調査をずっと長い間やっておりましたが、今年度は意識調査に切り替えまして、今年の夏に第1回の調査を行いました。その中で女性の働き方についてもいろんな質問を加えまして、その担当をいたしました。
 同じように、女性の働き方と平均の子ども数という関係を見ますと、20年前とはちょっと違う傾向が見られまして、まず共通点としては、家で働いている女性の出生率が高いということがありました。これは自由業、自営があり、自営が一番多かったです。それからパートの方がフルタイマーよりも子どもの数が多いということで、そういった点でも、働き方に影響されると。
 一つだけ30年前と違うことがあるとすると、専業主婦のグループは、前は普通に高い子ども数でしたが、今回は低いという数字が出ています。派遣労働者として働いている女性と専業主婦として働いてない女性が子ども数が少ない。どうしてだろうということで、専業主婦のグループを見ますと、その中に二つぐらいの異なったグループといいましょうか、一つは、早く結婚して、早く子どもを産んで育てて、子どもは希望の子どもの数だけ産んでいるというグループと、もう一つは、就業を継続して子どもを育てている女性よりも、もっと結婚が遅れていて、かつ子どもがもっと欲しいと思っているのだけれども、もう高齢になっているので、子どもが一人といった女性のグループとの二つが存在していることがわかりました。もしかしたら、これはもっと大きなデータで分析する必要があると思いますけれども、以前は働いているのだけれども、今は仕事をしてない、かつ高学歴の女性ほど結婚・出産を遅らせて、そして子どもを産むとやめるというところが多分、日本の大きな課題です。そういう女性たちが継続就業していくためには、今までとは違う考え方で働き方というものを考えないと、就業率が低下するというよりは、望む子どもの数だけ産めない社会になってしまう。自己紹介というより研究の話になってしまいましたが、この調査会では、そういった観点からお話しをしたいと思います。
 どうも失礼いたしました。
佐藤会長
それでは、奥山委員、よろしくお願いします。
奥山委員
今、大沢先生のお話を聞いていて、私は85年に大学を卒業して、その専攻はやはり社会心理だったのですが、全然心理のことを役に立てることができず、一般の企業に就職をしまして10年働きました。その10年働いていたときに、自分が結婚するとか子どもを産むというようなイメージがないまま結婚し、子どもができて慌てたという口でございます。それで、子どもができたときに社内でまだ育児休業制度がなかったのですけれども、第1号取得ということで、後輩に道をつけなければいけなかったのですが、1年休んで、1年復帰して、やめざるを得ないというような状況になりました。
 第一子が32のときだったのですが、幸い私は高齢出産でしたけど、3人ほど産みまして、ただ、そのとき思ったのは、やはり10年、本当に10時、11時まで仕事をしていた私が、子どもを育てるといった、地域とともに生活するということに切り替えるのにとても時間がかかりました、いろいろな意味で。今はコンビニもあり、一人暮らしがとてもしやすくなって、働いていてあまり不自由を感じなかったことが、やはり子どもを産むということは非常にいろいろな意味で不便さを感じる中で、それをどういうふうに変えていったらいいのだろうか。そういうふうに考えを変えまして、自分も子どもを育てながら地域を変えていきたいという思いで、「親子の広場」という在宅子育て支援の拠点を親たちで立ち上げました。
 在宅子育てというと、何か専業主婦の集まりのようにイメージされるかもわかりません。私も最初そうかなと思っていましたが、利用される方は育休中の方もいらっしゃいますし、アンケートをとってみると、在宅ワークをされている方もいるということがわかって、それでこういった場所でいろいろな地域の情報を得ながら、それから友達もつくりながら多様な働き方を支援していく必要があるなと感じています。
 NPOとして、例えば幼稚園や保育園、0~3歳児の後のこともフォローしていくわけですが、これが行政で幼稚園のこと、保育園のことを全体としてお話ができるかというとなかなかできないですよね。そこの部分をNPOが横糸として、あなたの働き方だったら、幼稚園の預かり保育を使いながらいけるのではないか、認可保育所に入れなかったら、横浜保育所の中でもいろいろある、というようなお話ができる。そういう意味で、0~3歳児から始まった広場ですけれども、お母さんたちの働き方も応援するような、そういう場にしていきたいという思いがあります。
 今年、文部科学省の方の子どもの居場所授業も始めまして、乳幼児の広場に中学生、小学生、通常、大学生は日常的にかかわっていますので、そういう0~3歳児の広場を中心に、異世代交流だとか、次世代育成というような、そういういろいろな世代が集える場というのをきっかけに男女のこういう共同参画という視点を盛り込んでいきたいなと思っております。
 よろしくお願いいたします。
佐藤会長
杉山委員、お願いします。
杉山委員
おはようございます。奥山さんにならっていきますと、1987年に大学を卒業しまして、1年足らずで妊娠してしまって、それで早婚というか、早くに出産をすることになったのですが、なぜか子どもは一人ということなんですね。妊娠のときに仕事をやめて、しばらく専業主婦をやっていたのですけれども、その時期に、男女雇用機会均等法とかいろいろな法律を受けて私たちは社会に出たにもかかわらず、家庭に入るとこういう生活が待っているのかということに非常に疑問を感じて、一たん仕事をやめても、もう一回、子どもを育てながら仕事ができる環境をつくっていきたいということを強く感じました。
 それで相当苦労しまして、フリーライターの仕事を得ることができて、その後、育児雑誌ですとか、それから子育てガイドとか、地域の情報誌を発行して、有限会社セレーノという会社を2000年に設立いたしました。その間、岩男先生が座長をされました、先ほど御紹介のありました「少子化への対応を考える有識者会議」にも参加させていただいて、その延長でというか、去年、おととしの厚生労働省社会保障審議会の年金部会の委員もさせていただいて、あと、ここ何人か御参加の方に御協力をいただいて、現代のエスプリの「仕事と家庭の両立」という本を編集させていただきました。
 ずっと子育て回りのことを仕事にしながら、ベースにあるのは、やはり働き方、女性の働き方、それに合わせて男性の働き方ということになるのですけれども、その中でかいつまんで問題点を二つ、私が思っていることを挙げますと、一つが年金部会に入っているときにも強く感じたことなんですけれども、そもそも子育てって誰がするの、といったときに、大体、親と社会というふうに私たちは思うのですけれども、制度では女性がすることになっている。その部分を何とか変えていかなければ、いくら男性の働き方を見直しましょうとか、社会全体で子育てを応援しましょうといってもなかなか変わっていかないのではないか。第3号被保険者の問題ですとか、そのほかの税制の専業主婦の優遇の部分ももう一回見直しをしてもらって、一方で、子どもの育ちを保障する制度というのが本当に少ないので、児童手当が5,000円しかないのだったら、もうちょっと増額をといった、そういう制度の改革をしてもらえたらいいなということを一つ思っています。
 もう一点が、私が生まれたのが福井県です。もともと女性の就労率が非常に高くて、共働きが当たり前という環境で育っていますので、専業主婦の家庭を見る方がちょっと違和感があったりするのですけれども、そういった福井の状況を見ても、男女共同参画の理想的な働き方と家庭が築かれているのかというと実はそうではないようです。男女ともが働いていても、家庭のことは全部妻がやっているんですね。だから、仕事も家事も子育ても女性がやっていて、男性は大分ラッキーというか、これでいいのかというような状況になっている。ここをやはり、働き方とか制度もさりながら、意識も見直していくということが必要なのではないかというように思っています。
 どうぞよろしくお願いいたします。
佐藤会長
高橋委員、よろしくお願いします。
高橋委員
国立社会保障・人口問題研究所の高橋です。私は人口学という専門の立場から、これまで研究所の方では、将来人口予測を過去2回にわたって責任者としてやっておりまして、そういう中で出生率が人口予測にとっては非常に重要なことですので、研究所も5年に一度、出生動向基本調査という全国調査を行って、出生に関する研究を行っています。
 その人口予測のことから話をしますと、いずれ日本の社会というのは大規模な人口減少が起きるわけですが、これからの人口を考えた場合、労働供給全体が減っていく中で、女性の労働力というのは極めて重要な意味を持っています。そういう中で女性の働き方ということと、人口の再生産といいますか、そうした、いかに結婚し家族を形成して子どもが産めるような社会環境を整えていくかということは非常に重要な意味を持っています。
 そういう中で、私は出生率、特に男女の働き方と共同参画と出生率の問題を考えているところです。そうして出生率に関しては、特に今、1990年代までの少子化現象と90年代以降の少子化現象には大きな変化があって、90年までの少子化現象というのは9割方が結婚の変化によってもたらされている。90年代に入って以降に関しては、夫婦が子どもを産まなくなるという現象によって6割方の少子化現象が説明できるようになってきている。そのような大転換が起きていまして、今、まさに男女がパートナーシップをいかに築いて、そのもとで男女がパートナーシップを結んで子どもを産める環境にするのかというのが極めて重要になっていますので、ぜひこの場をお借りして、いろいろ発言させていただきたいと思っています。
 よろしくお願いいたします。
武石委員
ニッセイ基礎研究所の武石でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 私は人的資源管理とか女性労働というのを研究しております。私は82年に就職をして、89年と91年に子どもを一人ずつ産みました。どうしてこういうことを言うかというと、私は均等法の施行前に就職をして、育休法が92年に施行されているので、その前年に子どもを産んでしまったということで、均等法にも育休法にも恩恵にあずかってないということなんですが、そういう私から見ると、今の労働環境というのはすごく進んでいると思います。男女雇用機会均等法と育休法ということで、大きく前進していると思うのに、実態を見ると子どもを持っているお母さんがほとんど働いていないという状況があって、私はそれは何なんだろうということをずっと考えておりまして、最近、一番の問題は、女性よりも男性の問題だと考えるようになってきました。
 先ほど男性はラッキーという話があったのですが、私は男性はかわいそうと思っておりまして、本当は仕事も子育てもいろいろやりたいと思うのですけれども、仕事しかできない状況がある。女性は子育てとか専業主婦になっているということで、そこで男女共同参画というのが非常に阻害されている。それは男性も女性も両方にとってやりたいことができない社会なのではないかというふうに思っています。
 最近は、ワークシェアリングとか非正規労働者の問題とか、女性労働に限らず全体としての働き方がどういうふうに変わっていくかというのを関心を持って研究しているところです。この研究会では、ぜひ、男性のライフスタイルを見直すという視点で発言をしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
橘木委員
京都大学経済学部の橘木と申します。専門は労働経済学、公共経済、社会保障等をやっておりまして、今まで男女共同参画に関してはあまり仕事がない者ですが、労働に関することなのでこういう会議に出ていると思います。
 皆様の話をお伺いしていて、一つ抜けている点があると思うのですが、今、女性の方は全員働いているんですね。働いて子どもをつくられたという、非常に立派なことをやられて、これは非常にいいことですが、今の若者を見たとき、仕事がないんですよ。仕事と子育ての支援策以前に、若者、今、400万人フリーター、これは内閣府と厚生労働省でちょっと数字が違いますけど、ニートとかいわれる人たちがいて、女性が働くことと子育て支援は絶対大事なのですが、その前に働く場所がない若者がいっぱいいるということも皆様ここでちょっと了解していただきたいと。我々大人の責任でございまして、そういう人たちを放っておくと独身をずっと続けて、仕事もない、子どもない、非常にミゼラブルな人生が待っている若者がいっぱいいますので、そういう人たちをまず助けるということも非常に大事であるということを私はここで考えたいというふうに思っております。以上です。
佐藤会長
布山委員、よろしくお願いします。
布山委員
おはようございます。日本経団連から参りました布山でございます。
 まず、よく名刺交換をして聞かれるのが、国民生活本部は何をやっているのということでございますけれども、本部自体は社会保障のグループと労働安全、治安関係のグループと、私どもの国民生活グループが企業の効率的な運営と国民の幸せ、生活の向上というのをどうマッチングできるかという大きなテーマのもとで研究をしています。特に当面のテーマとしては、男女共同参画、少子化という近々の課題について、その中で経済界の立場からどういうふうに考えるかという研究をしています。また、労働政策本部の中では、私、特にこれまでずっと雇用均等関係の、特に女性労働ということで研究をしているほかに、もう少し幅を広げて、ダイバーシティマネジメントということの研究も担当しています。
 その中で考えるのが、昨年、「子育て環境整備に向けて」という提言を私どもの方から出したのですけれども、企業がまず何を考えるかといったときに、少子化ということを前提にして、その中で企業が何をできるかということの中では、少なくとも従業員の子育て支援というのをどういうふうにしていくかということが大きなテーマかなと思いまして、その中で提言をまとめたのですが、先ほどお話もあったように、均等という問題から入ると、女性の就業継続のためにはどうしても子育て支援ということが大切なので、そのトーンで提言をしてしまうのですけれども、一方で、やはり個人的には、これがいつまでも女性の問題だけでいいのかという意識もありまして、現実としては女性の就業のために子育て支援が必要で、かといってあまり言いすぎると、いつまでも女性の問題でしかないというところが非常に今悩んでいるところであります。
 今回もこの調査会の中で、「男女共同参画」というのが前面に出ているということで、女性のということではなく、働く方の中でどういうふうに支援をしていくかということをもう少し経済界の中で考えていきたいと思っております。また、今、先生の方からお話があったように、私も、別途人口、労働力が減少する中で、若者をどうしていくかということまでテーマを広げておりまして、当然この件というのもどこかで視野に入れつつ考えることかと思っております。
 どうぞよろしくお願いいたします。
佐藤会長
ありがとうございました。最後になりましたけれども、藻谷委員、お願いします。
藻谷委員
藻谷です。どうもおはようございます。
 私はどこへ行っても仲間外れというか、何でこんなやつがいるのかというところに顔を出す変な者でございますが、日本政策投資銀行という特殊法人の一職員であります。参事役というのは部下なし課長のことでございます。どうもいつもお世話になっております。
 職業は、専門を強いて言いますと、地域経営と言っております。実際は、私、講演屋さんでございまして、きのうも蔵王温泉で、蔵王温泉がいかにだめで、どうやったらいいかということを皆さんが考えていると、全然違うことをしなければいけませんよということを、温泉のおじいちゃん、おばあちゃんたちにずっとしゃべっていたのですが、年間330回ぐらい講演して歩いています。多分日本で一番回数が多いのではないかという、累計1200回ぐらい、永田町とか偉い方の場合もあるのですが、主に地域の普通の方々を相手に講演をします。
 ここに参画する意味は、こういうところで話されている認識と、実際に地元の人が何を考えているかという認識はいかにずれているかということについて、私は肌身にしみて感じているんですが、多くの場合、先生は大所高所から正論をおっしゃって帰ってくると思います。私の場合は全部その地域の数字をつくり、その地域の地名と具体的なプロジェクトを使って、いかに皆さんの考えが間違っているかということ、だから、こうしなければいけないということをお話しする。永田町なんかと違うのは、皆さんは逆に地域の声をお聞きに回っていらっしゃるので大変偉いのですが、私はただ正論だけ言って、あたかも、君たちはだめだというか、こうしなさいと言って帰ってくるという意味では、ずっと気楽な商売であります。大変申し訳ないです。
 私は、ちなみに子どもを2人育てているのですが、やりたいことは、会社に行かずに家族と過ごす時間をもっと増やしたい。それから本を書きたいのですが、時間がありません。地域の人は3つのことを誤解しています。まず、高齢化と少子化を一緒のものだと思っているのです。この中にもいらっしゃるかもしれませんが、私は強く申し上げますが、少子化と高齢化は違う現象です。高齢化というのは団塊の世代の数が多いということからくるものです。社人研予測によれば、2020年まで日本の人口はまだほとんど減りませんが、何と70歳以上は8割増えるわけです。そのことを全然気にしてない人が、子どもさえ増やせば、高齢化問題は解決だと本当に言っているのです。でも日経新聞だけ読んでいると、実際にそう書いてあります。信じられないことです。
 実は日経新聞の部数はどんどん落ちているんですね。高齢者が退職していくので読む人が減るわけです。子どもを増やしても全然解決しないのですけれども、当の日経はそれをわかってないというか、わかっていて書かない。これは実は別問題なので、両方に対処しなければいけない。そのことをまず強く言いたい。あたかも年金のために子どもを産めというめちゃくちゃな議論はぜひやめるべきだ。人を冒涜していると思います。子どもはそんなもののために産むものではないと思います。
 それから、女性が給与をもらって働くことに関して、けしからんことであるという人が非常に多い。日本の歴史を振り返って考えると、女性が働いていなかった時代、働いていなかった階層とは、本当にどれだけいるのだろうか。お百姓さんは全員共同参画で働いているわけでありまして、一部高級公家と高級武士の奥さんだけだと思います。それ以外の女性はみんな働いているわけです。そもそも女が働かないということ自体がおかしいというか、日本のさがに反しているということを申したいと思います。女性がなぜ働くのか、働きたいからに決まっているではないかと。国の経済がどうという前に、本人が働きたいようにできているのだということをまず言いたいと思います。3番目に間違っているのは、男は家事労働、子育て労働しなくていいと思っている人が非常に多いです。日本人が全員よみがえって多数決をとると、家事労働、子育て労働しなかった男というのは、多分日本人の中の0.01%ぐらいしかいない。つまり一部の時代の高級公家と高級武士のトップだけだと思います。西郷隆盛だって、大久保利通だって、下級武士、中級武士以下の人はみな家事はしていたと思うんですね、子どものころ。これはたまたま戦後につくられた固定観念に強くとらわれていて、時代に合わないことをやっている、戦時体制の考え方ですよ。女が家事をやって、男が戦争するという、それを戦後に続けてきたのが多分失敗の原因だというのが私の意見です。
 その結果、どうしたらいいかということについて申し上げますと、高齢化対策というのは少子化とは違うので、高齢者が働いて、そして収入を得ることによって、収入以上に消費するということが高齢化対策だと思います。それが地域へ行くと、女が子どもを産めばええんじゃと。わしは何もせんでええんじゃとふんぞり返っている高齢財界人などがいっぱいいらっしゃいます。本当なんです。これがこういうところで話されているレベルと実際のレベルの違いで、これは本当に大変な問題だと思います。
 2番目に少子化対策に関しては、女性が働くのは当たり前で、働いて給与もらって消費してくれないと日本経済は沈没するわけですが、ところが地方に行くと、そういうことはしなくていい、女は家にいるべきで、外国人さんを入れろという議論が圧倒的です。私の意見では、外国人さんが入ってくるのは時の流れかもしれませんが、人数的にもコスト的にも高齢者と女性が働いた方がずっと安いし、効率がいいし、需要が増えるのではるかに経済効果は高いと思います。でもこの外国人労働者の導入と女性の労働を繰り返して議論している人は経済界から、日本じゅう財界人とか、99%多分逆の順序で考えています。これは非常に信じられないことです。
 最後に対策として、子育てを男女共同参画でやるべきだと。デンマークみたいに、子育てできなかったから逆に罰すると。変な話ですが、母子家庭や父子家庭、どちらかの親だけの場合、全然お子さんは変にならないのですが、両方の親がいるのにもかかわらず、どちらかだけしか子育てをしないと、その子どもはだんだん変になるのではないかという説があります。だから、決して片親がいけないということではなくて、両方いる場合には子どもは両方からかまってもらいたいものなので、当然かまうべきだし、それが日本というか、世界の人間の共通の設計なのではないかと。
 こういうことをいうと、おまえは間違っていると。核家族で育てるということ自体が間違っているので、地域社会全体で育てなければだめだというと怒られることが多いのですが、そこはよく理解できてないのですが、とりあえず、私もなるべく家に帰って子育てするようにしているんですけれども。ただ、最後に申し上げたいのは、いわば常識的な話が根本的なところで理解されていないというところに私は問題があると思うわけです。
 本当にありがとうございました。
佐藤会長
どうもありがとうございました。貴重な御意見をいただいて、これからの専門調査会での研究の中で検討していきたいというふうに思います。
 副大臣と政務官は、御公務のため、ここで退席されます。お忙しい中、貴重なお時間を割いていただきましてありがとうございました。
林田副大臣
よろしくお願いいたします。
江渡大臣政務官
よろしくお願いいたします。

(林田副大臣・江渡大臣政務官退室)

佐藤会長
それでは、お手元の議事次第に従いまして、本日の審議を進めさせていただきます。
 委員の皆様方から御発言をいただきましたので、次は議事次第の3、「運営規則について」議論したいと思います。本専門調査会の運営規則につきましては、事務局の方で案を用意していただいていますので、御説明をお願いいたします。
塩満参事
官 私の方から説明させていただきます。
 まず、資料3をお手元に御覧ください。「少子化と男女共同参画に関する専門調査会運営規則(案)」でございます。
 第1条でございますが、(調査会の運営)ということで、本調査会の議事の手続その他調査会の運営に関しましては、法令及び男女共同参画会議運営規則に定めるもののほか、この運営規則の規定するところによるとございます。
 資料3-1、「男女共同参画社会基本法」についてで、男女共同参画会議(本会議)の方の設置について、それから所掌事務、組織について規定しております。
 それから、資料3-2でございますが、「男女共同参画会議令」という政令で専門委員の任命、それから専門調査会の設置について規定してございます。
 この政令の(専門調査会)という見出しのある第二条 「会議(男女共同参画会議)は、その議決により、専門調査会を置くことができる。」というところにつきましては、資料3-3でございますが、7月28日に開催された男女共同参画で、真ん中の方でございますが、「統計データ等の分析を通じて、少子化と男女共同参画の関係について調査検討を行う。」ということで、本専門調査会の設置について議決が行われました。
 本調査会はこの議決に基づきまして設置されたものでございますが、資料3に戻りまして、(調査会の招集)につきまして、第2条「調査は、会長が招集する。」と規定しています。
 それから(委員の欠席)につきまして、第3条「調査会に属する議員又は専門委員が調査会を欠席する場合は、代理人を出席させ、又は他の調査会委員の議決権の行使を委任することはできない。」
 第2項につきましては、「調査会を欠席する調査会委員は、会長を通じて、当該調査会に付議される事項について、書面により意見を提出することができる。」ということでございます。
 (議事)、定足数につきましては、第4条「調査会は、会長が出席し、かつ、調査会委員の過半数が出席しなければ、開くことはできない」。
 第2項、「議事は、出席した調査会委員の過半数をもって決し、可否同数の場合には、会長の決するところによる。」とございます。
 (議事要旨)につきましては、第5条、「会長は、調査会の終了後、速やかに、当該調査会の議事要旨を作成し、これを公表する。」
 (議事録)につきましては、第6条 、「会長は、当該調査会の議事録を作成し、調査会に諮った上で、一定期間を経過した後にこれを公表する。」ということでございます。 また、(会長代理)につきましては、第7条、「会長に事故があるときは、あらかじめ会長の指名する調査会委員が、その職務を代理する。」
 (雑則)につきましては、第8条、「この規則に定めるもののほか、調査会に関し必要な事項は、会長が定める。」
 以上、運営規則(案)でございます。
佐藤会長
今、運営規則(案)について御説明いただいたわけですけれども、議事要旨は、名前が入ってない。
塩満参事
官 入っていないです。
佐藤会長
入ってないものですので、これは私が目を通させていただいて、その後、速やかに公表すると。議事録については、名前が入っているものになります。ですので、皆さんに事前に見ていただくということになります。
 もし、ほかに御質問があれば、いかがでしょうか。それと代理出席はないということですので、欠席が多いと成り立たなくなりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、これでよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

佐藤会長
ありがとうございました。それでは、今、御了解いただきました運営規則に則って進めさせていただきますが、その原案どおり決定させていただくというふうにしたいと思います。
 ただいま決定されました運営規則の第7条に、会長は会長代理を指名することというふうになっておりますので、会長代理をお願いしたいと思いますが、岩男委員を指名することにしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 続きまして、議事次第の4の「本調査会の研究課題・研究手法について」です。事務局の方で、資料を用意していただいていますので、御説明をいただき、その後、質疑応答、意見交換をさせていただければというふうに思います。質疑応答は説明が終わった後に時間をとらせていただきます。
 それでは、資料の説明、よろしくお願いいたします。
矢島分析官
では、御説明させていただきます。お手元の資料4をお開きください。
 本調査会における調査目的は、先ほど資料3-3にありましたとおり、統計データ等の分析を通じて少子化と男女共同参画の関係について調査検討を行うことでございますけれども、こちらの研究課題を整理するために、既存研究を整理いたしまして、事務局で取りまとめさせていただきましたものでございます。
 資料4を御説明させていただきます。まず1ページ目をお開きいただきまして、「主要国における出生動向」でございます。
 これまで少子化に関する議論におきましては、OECD諸国を中心にした先進国に関するデータのみで検討されることが多かったのではないかと思われますが、まず最初に世界的に見た出生率の分布状況を確認しておきたいと思います。こちらのグラフは合計特殊出生率と一人当たりGNI(国民総所得)になっております。見ていただきますと、およそ一人あたりGNI(国民総所得)が1万5000ドルを超える国では、合計特殊出生率はおおねね2.0を下回っておりまして、少子化の傾向にあります。
 次のページにまいりまして、同じくこちらは合計特殊出生率と乳児死亡率との関係を示しております。「少産少死」と言い方がされますが、乳児死亡率の低い国では、合計特殊出生率も総じて低く、先進諸国、下に丸で囲っておりますけれども、一群となって少産少死の傾向を示しているということが御確認いただけるかと思います。いわゆる人口転換を迎えている国々ということが言えるかと思われます。
 次のページにまいりまして、こうした先進国諸国の中で見ますと、こちらのグラフの方は、皆さんもう既に何度かお目にされているかもしれませんが、女性の労働力と出生率というのが正の関係にあるということが見てとれます。こちらのグラフで見ていただきますと、日本というのは、女性の労働力率も出生率も比較的低いレベルに位置しております。 次のページを御覧ください。ただし、現在ではこうした傾向を示しているのですが、OECD諸国においても、70年代には女性の労働力率と出生率が負の関係にあったということが言えます。こういった関係が80年代半ばを境に正の関係に転じてきております。
 次のページを御覧ください。なぜ、こういった展開が起こってきたかということでございますけれども、合計特殊出生率に関して、60年代以降の主要国の変遷を見ております。日本やイタリアのように合計特殊出生率が一貫して下がり続けていく国と、アメリカやフランスのように80年代半ば以降に出生率が回復してきている国、スウェーデンやイギリスのように上げ下げしながら長期的には出生率を維持している国とがあります。
 次のページを御覧いただきますと、こうした推移の違いによりまして、先進国の中で、おおよそ出生率1.3前後を境に、上の水準を維持している「少子化国」と、一貫して出生率を下げ続けている「超少子化国」とにグループが分化しつつあるのではないかと思われます。今、少子化国ということで示しておりますのは、主に北欧、フランス語圏、英語圏、それから超少子化になっていますのは、日本・アジアNIES・南欧・ドイツ語圏といったあたりでございます。
 こういった状況を見ますと、日本の課題は超少子化国から脱して、少子化国群のレベルに達することではないかということで、超少子化国と少子化国の違いを検討する必要があるのではないかと思っております。
 次のページへまいります。こうしたことで、「少子化国」と「超少子化国」にはどういった違いがあるのかということで、これまでの研究で指摘されている点ですが、こちらの指摘につきまして、主に国立社会保障・人口問題研究所の阿藤先生の方で御指摘されている点を中心にまとめさせていただきました。
 (1)性別役割分業システムの解消の度合い
 <1>少子化国の方が女性の労働力率が高い
 <2>少子化国の方が男性の家事・育児分担度合いが高い
 (2)両立支援策などの強化
 少子化国の方が、「仕事と子育ての両立支援」や「子育ての経済支援」を含む家族 政策に力を入れている
 (3)出産の高年齢での増加
 少子化国では、20歳代の出生率が超少子化国ほど下がらず、30歳代の出生率が超少子化国に比べて大きく上昇した
 (4)婚外子の増加
 少子化国の方が、同棲・婚外子が増加している
 ということでございます。阿藤先生は、このほかにも避妊等の技術の発達等も指摘されていらっしゃいますが、主なところで(1)から(4)を挙げさせていただきました。
 次のページ以降、今の点につきましてデータを示しております。
 (1)性別役割分業システムの解消の度合いにつきましては、<1>の少子化国の方が女性の労働力率が高いというグラフは3ページの図で既にお示しいたしました。
 <2>の少子化国の方が男性の家事・育児分担度合いが高いということにつきましては、こちらは家事時間ということで、合計特殊出生率と男性の家事時間割合の関係というグラフをお示ししております。
 次のページにまいりまして、家族給付費割合と合計特殊出生率との関係を示しております。アメリカに関しては、やや傾向から外れますけれども、それ以外の国については一定の傾向が見られるかと思います。
 その次のページは御参考として厚生労働省の資料の中から、主要国の両立支援の取り組みの一覧表を載せさせていただきましたが、説明は割愛させていただきます。
 次のページにまいりまして、11ページ目でございます。(3)出産の高年齢での増加。上の日本、イタリアのグラフを見ていただきますと、20歳代で大きく出生率が下がっておりますけれども、下のスウェーデン、オランダを見ていただきますと、20歳代の出生率が日本、イタリアほどは下がらず、右側に矢印でグラフを示しておりますけれども、30歳代以降の出産が増えているという状況でございます。
 次のページ(4)婚外子の増加ですけれども、主要国の全出生に対する婚外子の割合ということで、スウェーデン、フランス等で大きく増えているということが言えます。
 こうした問題点は、今まで先生方が御指摘いただいたことにも、国内の状況にも大変符合するものがあるのではないかと思いますけれども、次に、3.国内の出生率格差と影響要因についてでございます。
 まず国内の地域ブロックごとのデータを比較してみますと、OECD諸国と同様に、労働力率と出生率は正の関係を示しております。ただし、こちらにつきましては、OECD諸国とはまた別の背景があるかと思われますが、関係としては正の関係を示していると思います。
 次のページにまいりまして、各都道府県の過去10年の出生率動向を見ますと、基本的には全都道府県で下がっております。こちらのグラフにお示ししましたのは、47プロットしますと見にくくなりますので、いくつか抽出いたしました。
 上の方の沖縄、福島、鳥取というのは、2003年の合計特殊出生率の上位3県でございます。
 次の島根、秋田、新潟というのは、過去10年の低下率が大きな3県でございます。0.35ポイント以上下がっている低下率の大きな県でございます。
 次の熊本、香川、岐阜、京都につきましては、過去10年の低下率が0.15ポイント以下ということで、下げ幅が小さい地域でございます。
 最後に東京、京都、奈良、京都は重なっておりますけれども、2003年の合計特殊出生率が最も低い3県でございます。
 過去10年の低下率の47都道府県の平均は0.23ポイントになっております。
 このように見ていただきますと、都道府県別では、いずれも下がっているわけですけれども、下がり方にある程度格差があるということが見てとれるかと思います。
 次のページにまいりまして、では市区町村別に見るとどうなのかということなのですが、こちらでは出生率が上昇しているところがあるということが報告されております。現在も継続して検討されています研究でございますけれども、財団法人こども未来財団において、川崎医療福祉大学の岩渕先生が主任研究者となっていらっしゃる出生率の地域格差に関する研究がございまして、こちらで1990年から2000年の10年間をとりまして、出生率が上昇していると推定される市区町村が全国に約330あるということが示されております。その中で人口規模が1万人以上の自治体だけでも70以上あるということでございます。
 こちらの地域について、出生率の地域格差に関する研究でもいくつかの自治体の事例は分析されているわけですけれども、こちらの70なり、330という自治体の傾向がどうなっているのかということを分析する必要があるのではないかと思われます。
 最後のページにまいりまして、こうした既存の研究成果を踏まえますと、「少子化と男女共同参画に関する専門調査会」の主な研究課題として、このような点があるのではないかと思っております。
 1)少子化と男女共同参画に関する実証分析におきましては、<1>男女共同参画の推進と少子化の抑制に対し、共に正の関係を示す社会環境の把握ということでございます。 女性の労働力率と合計特殊出生率にともに影響を与える社会環境を指標化しまして、各国の特徴を示すとともに、女性の労働力率と出生率をともに向上させる社会環境とはどのようなものかを把握したいと思っております。ここで申しております社会環境というのは、生活実態や国民意識というようなものでございまして、こういったものをまず把握する必要があるかと思います。
 <2>こうした社会環境を踏まえて、各国の施策・制度の違い。特に「超少子化国」と「少子化国」の違いに着目して施策・制度の違いを検討する必要があるのではないかと思います。同じ少子化国群の中でも、社会環境の違いによって施策・制度がどのように異なっているのか。従来、施策・制度だけを比較していますとなかなか見えてこない部分がございますけれども、やはり社会環境と施策・制度との関係ということが大きいのではないかということで、そういった視点で、2段階で整理をしたいというふうに考えております。
 <3>国内での出生率地域格差要因の分析でございます。
 こちらは先ほどお示ししましたとおり、出生率が上昇している地域を事例としまして、出生率変動に影響を及ぼしている要因を分析することで、我が国における出生率上昇に必要な要件を把握したいと思っております。
 この1)では、少子化と男女共同参画の関係を見ているわけですが、さらに一歩進みまして、男女共同参画が経済や企業に与える影響というのも一応見ておく必要があるのではないかということで、2)は、男女共同参画社会の形成が経済社会に与える影響でございます。1)の結果を踏まえ、男女共同参画社会を形成し、少子化の流れを変えることによる経済や企業等への影響を把握するとさせていただいております。
 一応、資料4の方はこのような形で取りまとめさせていただきますが、もしよろしければ、これを踏まえた研究手法、資料5について引き続き御説明させていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
佐藤会長
はい。
矢島分析官
1番目の「少子化と男女共同参画に関する実証分析」につきましては、まず国際間比較といたしまして、既存文献調査、統計データ分析、海外ヒアリング調査に基づいた調査を行いたいと思っております。
 OECD諸国における「女性労働力率」と「合計特殊出生率」の状況とその要因と考えられる社会環境等の特徴を以下の手順で整理、分析する。
 まず、ステップ<1>で、先ほど申しましたように社会環境を把握するということで、女性労働力率や合計特殊出生率に関連が高いと考えられる社会環境に関する指標を収集・整理し、指標化することで、各国の社会環境の特徴を多面的に把握いたします。
 ステップ<2>で、各国の施策・制度の違いということで、女性の労働力率/出生率動向を方向づける社会環境特性の背景として、施策・制度の導入/定着がどのような役割を果たしているのか、どのような施策・制度がどのような社会環境とリンクしているのかを検討いたします。
 分析対象国といたしましては、OECD諸国の中から15カ国程度を抽出して分析したいと考えております。
 次のページにまいりまして、社会環境指標のアウトプットイメージを示しております。仮に6分野程度を設定しておりますが、こちらは今後この指標について、皆様の様々なお立場の知見から御意見をいただきまして、社会環境を総合的に示すにはどういった分野のデータを指標化すべきなのかということを御議論いただきまして、こういったアウトプットを作成したいと考えております。
 2.の国内間比較でございますけれども、こちらも統計データ分析、既存文献調査、また必要に応じた国内自治体ヒアリング調査を行いたいと考えております。我が国における「女性労働力率」と「合計特殊出生率」の状況とその要因と考えられる社会環境等の特徴を整理、分析いたします。
 1番目に国際間比較と同様の手順で特徴を把握いたしまして、2番目に過去10年から20年の時系列の特性・傾向を整理いたしまして、こういった特徴・傾向について分析をいたします。また、3番目が合計特殊出生率が上昇に転じている市町村に着目して、それらの市町村に共通の特色を検討いたします。
 分析対象は47都道府県、13政令指定都市と指標値上昇市町村の抽出分析でございます。 最後のページにまいりまして、「男女共同参画社会の形成が経済社会に与える影響」でございます。
 1.男女共同参画社会の形成が経済社会に与える影響を定性的に分析するということで、既存文献調査、新規アンケート調査、ヒアリング調査でございます。
 まず、地域、家庭等につきましては、こちらは将来像検討会報告書と書いてありますが、皆様の机の前の方に、先ほど副大臣のごあいさつにもございましたけれども、平成16年6月に取りまとめました男女共同参画社会の将来像検討会報告書というのを置かせていただいております。こちらの方で整理されている将来像をベースといたしまして、その他既存研究で示されている将来像、それから1の方の先ほど御説明しました分析結果から予測される将来の男女共同参画社会の構造の変化等を加味して整理したいと考えております。
 3番目の企業につきましては、既存調査や、今回、実施したいと考えております新規アンケート調査の結果をもとに男女共同参画社会の形成が企業にもたらす変化を整理いたします。
 4番目の経済社会につきましても、やはり将来像検討会報告書を中心に、既存研究で示された将来像を整理いたします。
 また、産業構造の転換や市場に与える影響という部分も検討できればと考えております。
 2.の男女共同参画社会の形成の経済効果、こちらは定量的な分析になりますが、既存文献調査、統計データ分析、新規アンケート調査をもとに行います。
 企業につきましては、既に経済産業省、21世紀職業財団から、女性の活躍と企業業績ですとか、企業の女性活用と経営業績の関係に関する調査など、これまで研究が出されておりますが、そういった研究を基礎といたしまして、男女共同参画関係指標と企業の利益率指標との関係等を分析いたします。
 2番目のマクロ経済については、1.の経済社会像に基づき、こちらに21世紀ビジョンと書いておりますのは、経済財政諮問会議の方で、日本21世紀ビジョンに関する専門調査会というのを立ち上げまして、こちらで広く経済環境の変化というところで検討がなされておりますので、こういった議論を踏まえた上で整理をさせていただければと思っております。
 こうした既存の研究成果につきましては、お手元の資料の最後の方に、参考ということで、「既存関連研究・意識調査リスト」というのをおつけしております。こちらの中で、これまで行われております主要な意識調査、こちらは今後社会環境指標を作成する際の参考データになるかと思われますが、そういったものと、それから既存の計量分析調査、最後の経済・企業等に与える影響関連研究ということで、今、御紹介したような研究を整理させていただいております。後ほど御参照いただければと思います。
 資料の説明は以上でございます。お願いいたします。
佐藤会長
研究課題と研究方法について、案を御説明いただいたわけですけど、資料1を見ていただきますと、調査会の設置なんですけれども、この調査会の課題というのは、データ等の分析を通じて実証的に、少子化と男女共同参画の関係を整理する。具体的には、調査内容が2つありますけれども、男女共同参画を進めると少子化が進んでしまうのではないかという議論もあるわけですが、そこをきちんと整理し直そうというのが1で、それを踏まえて、男女共同参画社会を進めていくことによって経済社会全体とか企業にどういう影響があるのかということを分析しようと、こういう2つの調査内容が我々のミッションです。
 それを踏まえて既存研究を整理していただいて、こういうものが研究課題になり、先ほどの資料4の4ページですけれども、それを明らかにするためにはこういう調査・研究方法があるのではないかということを御説明いただきました。
 まず最初に、主要な研究課題と研究方法の前に、前半のデータ、先行研究のことについて御質問なり、御意見があれば、そこから伺って、その後、研究課題、研究方法について御意見を伺えればと思います。まず前半の先行研究のレビューのところについて、御意見なり、御質問があれば伺えればと思います。どうぞ。
橘木委員
「少子化国」と「超少子化国」を比較されているということは、もう日本は頑張っても少子化国にしかなれないのではないかという発想ですか。
矢島分析官
そのあたりについても、皆様の御意見をいただきたいと思うのですが、これから少子化対策ということを考えるにしても、そういった前提で行うのか、そうではないのかで大きく違うと思いますので、一応、私どもの方で既存の研究の流れの中から整理しました範囲ではこういうことではないかということでお示ししたのですけれども、いや、そうではないということであれば、この調査会の中でそういった御意見をいただければと思います。
佐藤会長
それは課題の方でまた議論したいと思います。ほかには。
大沢委員
7ページですが、「少子化国」と「超少子化国」の制度がどう違うかということで、両立支援策についてふれられていますが、もう一つ、税制度と社会保障制度との関連というのは、どこの国でも重要な影響を女性の働き方に与えるということですので、そこも1点入れられたらおもしろいと思います。
矢島分析官
<1>の少子化国の方が、女性の労働力率が高いということをどう見るかということにかかわってくるかと思うのですけれども、その背景というのでしょうか、そういうところにかかわってくる問題ではないかと思います。ここは一言で書いてありますけれども、ここの背景にはいろいろな問題があるのではないかと思っておりますので、今後の研究課題にしたいと思います。
大沢委員
そうですね。労働力率なのか、雇用者比率なのか。それから、税制度の場合は、労働力率に影響を与えるというよりは、パートかフルタイムかという労働時間の選択、女性の労働供給に影響を与える場合と、それから、企業の雇用戦略に与える影響と両方が考えられますので、そういう面ではこの中に入れてもいいのですが、総合的に考える必要があると思います。特に先ほどの地方で講演すると、どうもここで話しているのと実感が違うという理由について、21世紀職業財団の方が伺うと、企業の経営者の方は、わざわざ女性の能力を活用しなくとも、パートや派遣労働者で十分やっていけるという考え方があるので、本当は真剣に考えてないのではないかというような、これはあくまでもコメントの一つですが、そういった意見が多いんですね。
 それと社会保障の関係というのはやはりあるのだろうと思います。つまり、そういった負担を避けるために就業形態を多様化することのインパクトがもう一つ、今、少子化の問題の中に出てきて、それは諸外国の問題とは少し違うと思います。今、議論している問題というのは、女性が働くことによる少子化の影響ということですが、もう一つは、経済的な理由で産みたいのに産めない人がいるのではないかということで、そちらについては、あまり諸外国の研究の成果を知りませんが、日本に関して言うと、少し気になることが出てきておりますのと、もう一つ、橘木先生のお話の中で、もう少子化国以上になれないのかどうかという、なれないのではないかと私は思っていて、その理由は、所得層を5分位に分けて、出産を完了した40歳以上の女性の世帯の平均の子ども数について見てみると、一番高所得の層で子ども数の平均が少なくなっています。
 時系列で見ていませんが、一つの仮説としては、子ども一人ひとりに少しお金をかけるようになったり、教育費の高騰の問題、子どもを育てることにかかるコストが高くなっているということが少子化をもたらしているように思いますので、個人的にいえば、超少子化国は少子化国にはなれるが、それを超えることは非常に難しいのではないかというふうに思っております。
佐藤会長
橘木委員も、大沢委員も課題の方の議論ですので、資料4の16ページで、先行研究課題を出していただいておりますので、大沢委員の方から、<1>の社会環境の中に税制とか社会保障も少し入れてみたらというような御意見だったかと思いますし、橘木委員は、初めから、「超少子化国」と「少子化国」というか、出生率がもうちょっと高いところを除外して比較するのでいいのかというような御意見だったかと思いますので、今のお二方の御意見についてでもいいですし、この研究課題の外にこういう大事な点があるとか、それぞれの課題についてもう少しこの点を分析したらというようなことがあれば伺いたいと思います。
岩男委員
ここでは男女共同参画と少子化がテーマですから、それをはみ出すというか、直接男女共同参画につながらないようなところは自制しなければいけない。大事な点は外にもいろいろあっても、そこは置いておいてということだと思いますが、これまで私が行った研究でも、働いている女性と働いていないお母さんを比べると、希望する子どもの数も、実際に産んでいる子どもの数も、働いている母親の方が多いわけですね。そこで男女共同参画とうまくつなげていく問題が出てくるのですけれども、働いていないお母さんたちも必ずしも望んで働いていないわけではないわけで、その辺りをしっかり押さえれば、男女共同参画が実現していないから、本当はもっと子どもを産んでほしいのだけれども、少なくとも働いている母親と同じ程度産んでほしいのだけれど、こういう状況では専業主婦が、産んでいない。その辺りを切り込み、きちんと男女共同参画という土俵に乗せるための説明が必要にはなりますけれども、その辺りをよく考えて入れ込むということが一つ必要なのかなという感じがするんですね。
 それから、ついでにお話しいたしますと、国際比較をするときに、多くの国で社会環境を押さえると地域差が非常に大きいんですね。日本でも、先ほど御説明があったような地域差があるのですけれども、地域差と階層差というのが日本からは想像できないほど大きく、海外に行って講演をすると、必ず日本の階層差、地域差についての質問が出てきてしまって、なかなか納得していただけないようなところがあるんですね。その辺りをどういうふうにデータにとっていくか、気をつけなければいけない点だと思います。
 それから、もう一つは、移民の問題を必ず入れていかないと、スウェーデンなどが回復したときには、やはり移民がたくさん入ったからだとか、あるいは移民の出生率が大体高いといわれています。それはアメリカでも同じことです。ですから、そこはやはり考えておかないといけない。
佐藤会長
研究手法の方にかかわって、国際間比較するときに国の中、外からのインパクトも相当大きいとか、国の中の地域間階層、これは結構難しいかもしれませんけれども、ただ、移民の問題を少し入れてみないと、それぞれの国の質を比較するときに見誤るということがあるかもしれませんね。ほかにはいかがでしょうか。
奥山委員
大沢委員が最初に指摘された、正社員なのか、パートなのか、在宅なのかという働き方の違いというのはかなり大きいと私は思っております。例えば地方と都市部を比べたときに、確かに地方、東北と北陸が高いわけですけれども、子どもを持って近所のパートで働いていらっしゃる方が非常に幸せに家庭を切り盛りしているのかどうかというところで、もしかしたら、このまま放っておいたら、都市部の状況がただ地方にも移動していって、今高い地方もこれからどんどん下がってくるという可能性もあり、地方の問題と都市の問題は表裏一体的なところもあると思います。子どもが多くて労働率も高くて、それでハッピーねということでは決してないと思っており、そこの分析をきちんとしないといけないのではないかということが、このデータを見ていていつも感じることです。
 それと、先ほど御指摘があった、働いていない人も、きっと働きたいのではないかという点ですが、保育について、やはりフルタイムでないと、いろいろ制度をつくっても子どもを預けにくいという状況があります。日本は、その辺の施策が、幼稚園か保育園か、それ以外があまりないというような状況なものですから、保育の制度というのも、諸外国は大分カバーされていると思うんですね。緩やかに週に2~3日預けられるとか、その辺りのところも調べていただくともう少し具体的に見えてくることもあるのではないかというふうに感じました。
佐藤会長
研究手法の方では、国間比較と国内比較ですから、そのときに労働力率だけでいいのか、もう少し就業形態を考えるかとか、働いていない人でも働きたいと思っているのかという辺りのことも含めたらどうかと、データ的にどこまでやれるかですけど、手法の方も含めて、今、御意見を出していただいていますので、一応前半の方の少子化と男女共同参画に関する実証分析は、一つは、国間比較とか、あと国内間の地域間比較ということを想定しているわけですけれども……どうぞ。
大沢委員
先ほど岩男先生がおっしゃったことで、再就職のことですけれども、専業主婦が働きたくないと思っているわけではないということで、再就職のタイミングをイギリスとアメリカと日本と比べてみますと、イギリスやアメリカの場合は、結構蓄積がある女性は一たん休んでもすぐ戻るんですね。日本の場合は逆で、結構前にやめて、子どもが大きくなって戻るという、どちらかというと緩やかに両立している女性たちはそれなりに戻るのですが、高学歴の女性の再就職のあり方も非常に問題があるのではないかなと思うんですね。ここも、やはり女性の場合ですと、多様な働き方をしたいと思っていると思いまして、子育てに一段落した後に戻れる再就職の環境は日本で整っていないのではないか。私個人としては、税制度が絡んでいて、パートの仕事、非定型の仕事しかなく、本当にいい仕事がないのではないかというふうに思っておりますが、ここの点が非常に重要で、再就職のタイミングを決めていると思います。
佐藤会長
高橋委員。
高橋委員
今の大沢先生の関連ですけれども、要するに女性の労働インセンティブを奪う仕組みというのがいろいろなところにあるわけで、それを何らかの統計の形で見る必要があるだろうと思います。その見方の一つとしては、機会費用を国別に計算して比較していく方法が考えられます。そうすると、日本の場合、機会費用というのは相当高くなっているわけで、特に再就職先がほとんどがパート就労のような社会では、それによって、そういうインセンティブを奪うような仕組みを一つひとつつぶしていくことが男女共同参画につながって子育ての機会費用を下げて出生率も上がるという、そういう図を描いて分析指標の何か一つの核に据えればいいなというふうに思います。
佐藤会長
重要な点で、社会環境指標の中に、うまくやれれば、そういうものも入れるようなことをやっていただけると思います。杉山委員。
杉山委員
何か注文ばかりですけれども、女性ではなくて、男性の方の働き方、特に海外比較をした場合に、一社でずっと終身雇用でいくのか、もしかしたら男性も多様な働き方をしているのではないかという部分もあるので、働き方や、生き方というか価値観、家族観という意識の部分も少し見たいと感じました。以上です。
矢島分析官
今回、社会環境と制度をあえて分けたというのは、そういった点が重要ではないかと思っておりまして、施策・制度ですとか、どうしても女性の就労支援ですとか、子育て中の夫婦に対する支援ですとか、そういったところに集中してしまいますので、社会環境を見ることで、男性も含めた働き方ですとか、意識という部分を取り込んで示すことができるのではないかと考えています。
佐藤会長
意識の場合、同じ質問でいろんな国をやっているのはあまり多くない。今、EUはユーロ・バロメータがあって、多分いくつか質問もあると思いますし、あとISSP(International Social Survey Programme)という、今、30か国ぐらい、ワークオリエンテーションというので、何年に一度、二十何か国同じ質問で調査しているので、そういうものを使えるかなというふうに思います。
布山委員
もしかしたら、今のお答えの中であるのかもしれないのですけど、特に国際の比較で施策・制度の部分を調べるときに、単に制度があるからという話ではなくて、実際にどういうふうに機能しているかというところが本当は大事だと思うんですよ。それが、例えば男女別にどういうふうに使われているのかとか、日本の中でもいろいろ制度がある中で、それが機能してないから、多分今の状態にあるということを考えると、単にこういう制度があるということだけの把握だと、少し足りないのかなという気がします。
網野委員
ちょうどお二人の委員の御発言と関連しましたので、実は今議論されていることは、私がこれからお話しすることは少しずれるのかなという気持ちもありまして控えていたのですが、今、まさにお話のありました社会とか経済とか、これを様々なアウトプットされたデータで統計的にということの意義は本当に言うまでもないですし、大切だと思いますが、どちらかといいますと、私も専門性の基本が心理学からスタートしているものですから、やはり量的分析と同時に質的分析というのは欠かせない部分がありますよね。そうしますと、やはり今の社会における男性性とか女性性とか、母性・父性ということはどうもかなり絡んでいるように思います。少子化にしても男女共同参画にしましても。一番よく言われていることは父性の不在、いろんな側面から言われているのですが、これが日本の出生力の低下とか、男女不平等とか、あるいは本当に様々に両立するということにどうかかわっているかという分析は確かになかなかしにくいですね。
 でも、それをもう少し広げて、例えば、子どもっていいねと思うとか、子どもを産みたいという気持ちが醸成されていく全体の意識というもので見たときに、幸福度指標的なものはなかなかとらえにくいのですが、結局は量的に分析するとなると、精神的不健康とか、あるいは人間関係の回避とか、いわゆる家族・親子関係に対する消極性とか、そういうことが結構これは絡んでいると思うんですね。
 そうした場合、国際比較で社会環境指標の一つに入れることができるかどうかは少し難しいですが、ただ、少なくとも国内間比較の場合に市町村とか、かなりデータを見たときに、虐待とかDV(ドメスティック・バイオレンス)とか、あるいはひきこもり、不就学、不登校、そういったもの。あるいはもう少し広げるとマタニティブルーの発生の状況とか、いろいろなそういうものも、もし量的なものから、何か質的にとらえられるものがひょっとして可能かもしれませんね。
 それからニートとかフリーター、玄田先生はきょうおられませんけれど、もちろん非常に関連している部分もあるでしょうから、要するに人間関係の意欲とか、あるいは結婚志向とか、あるいは幸福感の持ち方とか、そういうものもどこかの指標で含むことができればと思います。
佐藤会長
国際比較の方で無理であれば、国内間の地域間比較でというようなことも検討していただければと思います。あと、これは地域間比較で難しいのは、前回、準備で議論したときに、きょう御欠席の阿部委員が言われていたのは、特定の地域で出生率が上がっていても、実は周辺から若い人を呼び込んでいるだけで、周辺は落ち込んでいるというようなことも結構あるので、ちょっと難しいと。特定の地域は確かに上がっているけど、広げてみるということも必要だ、この地域間比較をどういうふうにやるかというのは結構課題だなというような議論もしました。
 いかがでしょうか。これですぐというわけではないので、また、途中、途中で御報告いただくということになると思いますが、とりあえずこういう課題について、国際比較、国内の地域間比較、それを踏まえて経済社会、きょうはあまり御意見いただけませんでしたけれども、企業への影響について分析を進めるということでよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

佐藤会長
どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、議事次第の5ですけれども、「本専門調査会の進め方」について御説明いただければと思います。
矢島分析官
お手元の資料6を御覧ください。『少子化と男女共同参画に関する専門調査会』の進め方ということでお示ししております。
 まず、一つ目に、本専門調査会の検討に資するために、打合せ会を開催させていただきまして、具体的な分析手法や分析結果の取りまとめ方法等について検討を行う会を持たせていただきたいと思います。
 メンバーとしては、事前に皆様にお諮りいたしまして、佐藤会長、阿部委員、玄田委員、武石委員、布山委員ということでお願いしております。
 打合せ会の検討課題は、調査仮説の検討ですとか、分析手法の具体的な検討、対象データの検討、アンケート調査票案のような具体的なものの検討、それから分析結果の検討等でございまして、開催は各専門調査会の間に一回程度ずつ行わせていただきたいと思いまして、先ほど佐藤会長からもございましたけれども、初回につきましては、この専門調査会の前に一度行わせていただいております。
 それから、2番目の民間研究機関への調査委嘱でございますけれども、今回行います新規のアンケート調査及び打合せ会の運営支援、統計データ分析ということを民間研究機関に委嘱いたします。委嘱内容は以下のとおりでございます。こちらは三菱総合研究所にお願いすることにいたしております。
 それから、3番目の海外調査でございますけれども、家族政策が出生率に与える影響ですとか、男女共同参画が経済に与える影響についても、各国の研究成果の有無、企業における両立支援策の実状・効果・外部からの支援等を把握するためにOECD諸国における行政機関・企業・NPO等を対象としたヒアリング調査を実施したいと考えております。現在のところ、調査候補国をEU事務局とイギリスと設定しております。ほかの国につきましては、内閣府の経済社会総合研究所の方で昨年に引き続き、今年につきましても、スウェーデン、フランス、ドイツあたりを中心とした海外調査を行いますので、そういった調査とも情報連携を図りながら、海外調査の部分を取りまとめていきたいと思っております。
 また、委員への執筆依頼ということで、データ分析の一部と海外調査報告について、委員への執筆依頼をさせていただきたいと思います。今のところ、データ分析については、阿部委員の方から申し出いただいておりますが、このほかにも委員の先生方と御相談しながら、執筆をお願いできればと思っております。
 次のページにまいりましてスケジュールの素案でございます。こちら、平成16年10月第1回専門調査会、本日でございますけれども、お忙しい中、大変恐縮ですが、大体月一度ぐらいのペースで開催させていただきたいと考えておりまして、来年の5月に報告書案を取りまとめられればと考えております。次回(第2回)は、委員の方の中から、既存研究成果について御報告いただくと同時に、アンケート調査票案の検討をお願いいたしたいと思っております。
 それに加えまして、もう一つ、今回お話しさせていただきました社会環境の指標についての仮説をこちらからお出しさせていただいて、それについても御意見をいただければと思っております。
 以上が進め方の御説明になります。
佐藤会長
かなりデータ分析等ということでテクニカルな検討もありますので、そういう意味で、打合せ会を設けさせていただいて、少しそういうテクニカルな点について詰めさせていただくという形でやりたいと考えています。
 海外調査につきましては、国内でも、制度についてはかなり情報がありますので、例えば企業の中で具体的にどう行われているか。あとはどういう課題をそれぞれ政府が抱えているか、そういう運用の課題とか実態を聞いてくるというようなことで行ったらどうか。あと、ほかの組織、内閣府の中の別の研究所で行っていることもありますので、同じ国に両方行くというのも何ですので、調整しながらやりたいということです。
 あと、委員についてはこういうふうになっていますが、ほかの方でも、ただ、報告書の時期までに原稿が間に合うという条件になりますので、その辺を見ながら手を挙げていただければというふうに思います。
 こういう進め方ですが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

佐藤会長
では、これで進めさせていただければと思います。
 それでは、先ほど御説明の中にもありましたように、議題6ですが、新規のアンケートを計画しています。その基本的な考え方について御説明いただければと思います。
矢島分析官
お手元の資料7を御覧ください。
 先ほど申しましたように、具体的な調査の中身については次回御相談させていただきますが、まず枠組みとしてどのようなアンケートを実施するかということで今回御意見をいただければと思います。新規アンケートは企業を対象として、両立支援策に関する意識調査を行うということで、育児休業や短時間勤務等の制度を利用した社員のいる部門の管理者を対象とし、制度利用の際の具体的な対応策、課題、あと効果等を把握したいと思っております。
 調査対象としては、従業員100人以上の企業で、両立支援策を利用した社員のいる部門の管理者、調査実施時期は12月を予定しております。
 調査件数でございますが、仮の案でございますが、従業員100人~300人の企業で、1500社程度、各2名に配布いたしまして、従業員301人以上の企業につきましては1000社、各3名、それぞれ3000名ずつを対象としたアンケートということを考えております。
 また、調査内容は、1)回答者の属性、2)支援策利用者の属性、3)支援策のメニュー、4)支援策利用実績について、具体的な利用に際しての現場での対応の実状と課題等でございます。また、5)支援策利用の効果について、6)企業や行政に対する要望についてといったあたりを想定しております。
 こちらにつきましても御意見をお願いいたします。
佐藤会長
法律上、育児・介護休業法でも、皆さん御存じの育児休業は法定で子が1歳になるまで、短時間勤務等の柔軟な働き方などについては、子が3歳になるまでというような仕組みがあります。今、育児・介護休業法の改正も予定されているわけですけれども、布山委員からもお話ありましたように、実際、それがどのように運用されているかといえば、もちろん進んでいる企業もありますけれども、制度どおり使いにくいというようなこともあるわけですね。そういうものについて、企業の人事担当部門に対する調査はそれなりにしますし、厚生労働省でも女性雇用管理調査の中で、育児休業取得者何人というのを聞いているわけですけれども、運用面で進めるとなると、現場で実際上、例えば育児休業取得者が発生したときに、職場で管理者がその後仕事をどう回していくのかというようなことがうまくいかないと本人もとりにくいですし、送り出す方も喜んでなかなか育児休業に送り出せない。あるいは短時間勤務、通常8時間勤務なのに毎日6時間でくるといったときに、どんなような仕組みにしたらしやすいのか、そういう運用面のところをきちんとやらないと制度が進まないのではないかという関心から、育児休業をとった部下がいる管理者とか、あるいは実際、今、部下に短時間勤務の人がいる、そこの管理者に調査をしてはというような案であります。御意見いただければと思います。
橘木委員
両立支援策は基本的には小企業の問題でしょう。制度はあるけど、実際に活用しているのは大企業中心で、中小企業があまりやってないというのが実態ですよね。そういう実態のもとで、従業員100人以上の企業を取るということの意味はどういうことなんでしょうか。やってない企業が、どこに問題があるか。というか、制度はあるけど、取らせてない、あるいは取ることができないというような企業に対する配慮というのはここではできないのですか。
矢島分析官
それも御意見としてあるかと思いますけれども、想定いたしましたのは、大企業でも、現場で十分対応がシステマティックになされているのか、それとも実際に対応されている現場の方はいろいろな課題を持っていらっしゃるのではないかということもありますので、大企業も対象にするということになっています。
橘木委員
大企業を対象にするのは構いません。
矢島分析官
小さいところでも、ある程度の規模以上とっていますけれども、かなり小さいところになりますと、本当にそのとき、そのときで、現場の方の裁量、判断で変わってしまっていることも多くあるのではないかと思いまして、本当に小さなところを取ることが実態として、組織としての対応を把握することになるかどうかというところはちょっと難しいのではないかと考えて、100人以上を想定したのですが。
佐藤会長
テクニカルについていえば、今、育児休業を取っている人がいる上司とか……。
橘木委員
取れない人とか取らない人にあまり関心ない。
佐藤会長
いや、それによって取れるような人、つまり取れないところについてノウハウというと、取れているところで見るしかないわけですね、実際上は。そうしたときに、これはどこの企業で、今、育児休業取得者がいるかというデータは取れないわけですよ。そうすると規模が小さいところにいくと、調査票が行っても、そこに取得者がいないとか、短時間勤務を採っている人がいないということになりかねない。ですから、もし小規模企業でも、今、育児休業を取っている人、助成金のデータでわかるかもわからないのですけれども、それがわかれば、そこに送るということはいいと思うんですね。ですから、小規模企業で今そういう人がいますよという企業がわかれば入れることはできると思います。
 趣旨は、先生言われたとおりだと思うんですが、難しいところについては、うまくやれているところのノウハウをトランスファーしようと、そういう発想で考え方はある。
橘木委員
わかりました。
佐藤会長
ですから検討します。小規模企業で今短時間勤務の人がいるとか、育児休業とって、実際休んでいる人がいるというような情報が得られれば、そこをちょっとサンプルに入れるようなことも検討します。
橘木委員
確かに100人以下の企業はアンケートを取るのは難しいというのはよくわかります。
佐藤会長
あと、何年かに一度しかそういう人が出てない可能性もあるわけです、従業員構成上。
武石委員
育児休業や短時間勤務等、この「等」なんですけれども、どこまで入れるかというのがあって、多分いろいろな制度を入れると調査設計が非常に複雑になると思うので、私は育児休業と短時間勤務に限定してしまって、それ以外は除いた方がいいのではないかと思っているのですが、ただ、従業員100人~300人で2人、今のお話で該当するかどうかというのがちょっと心配なので、むしろ企業を増やして各1名にするか。
佐藤会長
今の時点でそういうふうに働いている人といったら本当に少ないかもわからないですね、規模が小さいところは。この1年間はといえばあるかもわからない。それはちょっと検討しましょう。
 一応趣旨は制度運用、運用が進むような形で、具体的に職場でどういうサポートしたらいいかということがわかれば、同じ企業の中でも、取りやすい職場、取りにくい職場があったりして、それは仕事の内容だけではなくて、同じような仕事でも、仕事の仕方とか、管理職のマネジメントもかなりあったりしますので、そういうものがうまくできれば中小企業。
 あと、大企業と中小企業の違いというより、一つは職場の大きさの方が大きいのではないか。大企業でも職場のあり方によってやりにくいところもあって、大企業だからやりやすいというだけではないかなという気もちょっとしています。
 今、いただいた御意見を踏まえて、また案を考えるようなことにさせていただくということでよろしいでしょうか。
 それでは、全体について、まだ言い残したことなりがあれば伺えればと思います。先ほど経済環境全体への影響とか、企業経営の影響というところについてあまり御意見いただかなかったので、研究課題、研究方法についてお気づきの点があれば。参考資料は、これは見ておけばいいということなのか、どういうものなのかだけでも。
矢島分析官
参考までに、もう一つお手元に、「少子化対策に対する特別世論調査」結果の要旨をおつけしておりますが、先の10月に内閣府の政府広報室の方から出ておりますけれども、こちらは少子化に関する調査ですので、お手元に配布いたしました。こちらの方の1ページ目の下を見ていただきますと、欧米諸国の出生率についてということの意見で、「欧米諸国が進めている施策の効果があったと考えられることから、こうした国で行われている施策を日本でも取り入れるべきである」という回答が33.2%あるのですが、一方で、「出生率というのは、各国の国民性や結婚・出産行動などによって違いがあると思うので、欧米諸国と同じ施策を日本で行っても効果があるとはいえない」という意見も32.2%ございまして、これは一般の方の間でもこういう御意見があり、有識者の方の間でもこういう御意見あると思いますので、施策と各国の社会環境との関係を見る必要があるのではないかと思います。
 この特別世論調査についても、御参考までに御覧いただければと思います。
佐藤会長
あとレビューしていただいたベースになった資料などは参考リストに載っているということですね。
矢島分析官
多少御説明した方がよろしいですか。
佐藤会長
はい。
矢島分析官
では簡単に御紹介いたします。1枚めくっていただきますと、主要な意識調査ということでお示ししております。こちらのデータは、先ほどの国内間比較の指標づくりに用いられるもとになるのではないかと思います。男女共同参画一般、結婚観・家族観、育児に関するデータなどがございます。
 次のページにまいりまして、生活全般ということで、こちらは、特に家庭経済研究所で行われております消費生活に関するパネル調査などは様々な分析が行われておりまして、パネル調査ということで、新たな世代間の問題等も出ていることがございます。
 次のページにまいりまして、既存計量分析調査ということですが、こちらはこれまでの計量分析の中でどういったことが指摘されているかということを字が細かくて恐縮ですが、整理しております。最初の『社会福祉と家族の経済学』については、出産へ与える企業の福利厚生と保育所の効果というのを課題としておりまして、調査結果では第一子出産選択に対して、保育所の待機率の影響。企業が提供する育児支援を目的とした福利厚生は、今のところ出産には効果を与えてないというようなこと。それから晩婚は出産を抑制しているというようなことが示されております。それから、出産後の就業継続に関しては、企業の勤務時間短縮制度が促進的であるというようなことを示しております。
 2番目の『都市の少子社会世代共生をめざして』という研究の中では、合計特殊出生率と少子化に影響すると想定される変数との相関関係ということで、今回、課題にしているような女性の労働力率と出生率との相関関係などを分析されております。ここで、重回帰分析で8つの変数、未婚率や教育費等の8つの変数を入れておりますが、有意な説明力をもった変数は、一人当たり住民税と女性の労働力率(国内の地域間比較)であったということが出ております。
 一つ飛ばして、『女性たちの平成不況デフレで働き方・暮らし方はどう変わったか』でございますが、こちらはたくさんの論文がございますが、阿部先生の論文の中で、出産と子育ての世代間の違いということが家計経済研究所のパネル調査を使った分析で出ていると思います。ここでは夫と本人の所得が出産にプラスに影響するですとか、育児・介護休業は就業継続にプラスの影響を与えるが、出生促進の効果は明らかでないというようなこと。それから、バブル崩壊後世代の問題等が指摘されております。
 次に『少子社会の子育て支援』、国立社会保障・人口問題研究所の研究の中ではいくつも研究が載っておりますが、第3章 ヨーロッパにおける家族政策については、母親の就業率と出生率との関係で、女性の労働力率と出生率とを国別に90年代後半時点でみると、正の関係を認めることができるということでございます。出産・育児休暇の割合の高い国は、スウェーデン、デンマーク、フィンランドで、低い国はイギリス、オランダであるというようなことでございます。
 それから、国際比較からみた雇用システムと少子化問題の中では、育児による女性の逸失利益も国際比較が出ております。これは子どものいない女性と比較して、同学歴で子どものいる女性の生涯所得は何%少なくなっているかを比較しておりまして、第一子では逸失利益が最も高いのは日本である。イギリス、旧西ドイツも高いということで、スウェーデン、フランス、アメリカでは10%未満にとどまっているというような傾向が出ております。ただし、子どもの数が増えると日本の逸失利益は低下するが、その他の国では増加するということで、第3子ではイギリスが日本よりも高率となっています。
 次の保育所充実政策の効果と費用につきましては、保育所充実策が出生率に与える効果ということで、保育所を利用していない女性の子ども数よりも、利用している女性の子ども数の方が大きいが差はわずかである。親との同居の方が影響が大きい、というようなことが示されています。
 また、次の父親の育児参加促進策の方向性につきましては、父親の育児参加を規定する要因分析が行われております。末子年齢が高くなるほど育児協力度は低くなる。核家族世帯か三世代かによって育児協力度に違いはみられない。帰宅時間が21時台以降の人で協力度が大きく低下するなどの指摘があります。
 次のページにまいりまして、『少子化のジェンダー分析』という目黒先生が編集されている報告書でございます。独身女性の結婚意欲と出産意欲に関してですが、結婚意欲・出産意欲とジェンダー的要因についてでございます。出産意欲が高い人ほど、結婚したいという気持ちが強い。結婚意欲の強さについては、年齢が高い人、結婚を必然と考える人、子どもにはすべてを与えたいと考える人ほど強く、仕事が好きな人ほど弱いというような傾向がみられるということでございます。
 それから、既婚男女の出生意欲にみられるジェンダー構造ということでは、第一子出生意欲については、男性の場合は年収が高ければ今後持とうとする子ども数が多くなるが、年収が低いと子どもの出生を望まないというような状況が出ています。また、女性は年齢が高い場合には、出産意欲が低くなる。伝統的結婚観は男女共に出生意欲の高さにつながる。
 第二子につきましては、有職女性は追加出生に消極的であるが、男性では妻の職業の有無は優位な効果をもたないというようなことが出ております。
 また、第9章では、男性の家事役割とジェンダー・システム。夫の家事・育児行動を規定する要因ということで、学歴が高く家庭外で働く妻を持つ夫は家事を遂行する度合いが高い。夫婦間の収入格差が大きいほど夫は家事役割を遂行しない。都市的地域の夫は農村地域の夫よりも家事を行う。帰宅時間が遅くなるほど夫の家事分担は小さくなる。夫方の親から遠くなると夫の家事遂行力は上昇する。妻が性的役割分業規範に対し肯定的である場合、夫の家事参加の程度は逓減するなどの指摘がございます。
 最後のページにございますのが、男女共同参画と少子化の経済・企業に与える影響研究でございまして、先ほどの研究課題に即して整理してございます。こちらは将来像検討会報告書ですとか、経団連さんのまとめられた提言等を整理させていただいております。こちらは文献のところにはタイトルしかございませんが、最後に皆様のお手元に文献リストをつけさせていただいております。こちらは御参考になさってください。
佐藤会長
ほかに今回の研究資料で、こういうものを見た方がいいというようなことがあれば、事務局の方に教えていただければありがたいと思います。できるだけ新しいものを使いながらやりたいと思います。
 今までの御説明について、御意見なり、御質問があれば。大体よろしいでしょうか。 それでは、最後に事務局から連絡事項があれば、御説明ください。
矢島分析官
まず一つ目に、議事要旨、議事録について、先ほど佐藤会長からも御説明いただきましたけれども、御承認いただきました運営規則に基づいて調査会の議事要旨、議事録を公表させていただきます。議事要旨は事務局で案を作成し、会長の了解をいただいて公表させていただきます。また、こちらには先ほど御説明いただきましたとおり、各委員のお名前は載せません。議事録は各委員の内容を確認いただいた上で公表いたします。こちらは第2回調査会時に案を配布させていただく予定でございますので、よろしくお願いいたします。
 また、次回の日時でございますけれども、次回調査会は11月22日(月曜日)の1時半から3時半、本日と同じ会場、内閣府3階特別会議室にて開催の予定でございます。開催通知は改めて送付させていただきます。
 また、次回以降のその以後の日程調整につきまして、調整をさせていただきたいと思いますので、お手数ですが、机上にお配りいたしました12月、1月のカレンダーに御予定を記入していただけますでしょうか。もし、今日おわかりの方は御記入いただいて、事務局の方へ渡していただければと思いますし、ほかの先生方も、大変恐縮ですが、できるだけ早く調整して皆様にお返しした方が、皆様御予定あると思いますので、できるだけ数日中にFAXなりで、事務局あてに御返送いただければと思います。よろしくお願いいたします。
佐藤会長
名前入りの議事録の方はちょっと大変だと思いますが、公表するということになりますので、お手数ですが、よろしくお願いします。それと日程調整、これも大変だと思いますが、よろしくお願いいたします。よろしいでしょうか。
 それでは、これで少子化と男女共同参画に関する専門調査会の第1回会合を終わらせていただきます。熱心に御議論いただきまして、どうもありがとうございました。