(開催要領)
- 日時:平成15年11月11日(火)10:00~12:00
- 場所:内閣府 仮設K304会議室
(出席者)
- 古橋
- 会長
- 庄司
- 会長代理
- 岡谷
- 委員
- 鹿島
- 委員
- 神田
- 委員
- 佐藤
- 委員
- 田中
- 委員
- 広岡
- 委員
- 深尾
- 委員
- 横田
- 委員
(議事次第)
- 開会
- 平成14年度監視「地球社会の「平等・開発・平和」への貢献」に掲げる施策(国際規範・基準の国内への取り入れ・浸透)男女共同参画の推進に関わる条約等の状況等(厚生労働省、外務省、法務省からのヒアリング)
- 閉会
(概要)
厚生労働省からILO未批准条約について、外務省から国連婦人の地位委員会における政府代表発令の対応、女子差別撤廃条約選択議定書の概要と問題点、児童の売買、児童売春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書について説明があり、意見交換が行われた。審議の概要は以下のとおり。
<1>ILO未批准条約について
- 古橋会長
- ILO第111号条約について、国内法制との整合性についてさらに検討する必要があるということだが、具体的にデータを提出してほしい。ILO第175号条約及び第183号条約についても、具体的に文書で条約で規定されたことを実施することができない理由を提出してほしい。
- 鹿嶋委員
- 10月から改正パート労働指針が適用になり、正社員と比較できるパート労働者が35%程度いることが明らかになった。また、パート労働者については、正社員と違い外部市場ができているので、ある程度の時間単価の平均相場が存在し、比較が容易である。したがって、これまでのような比較可能なパート労働者がいない状況が解消されつつあるため、批准できる可能性があるのではないか。
- 厚生労働省
-
ILO第175号条約は、同一の雇用関係、すなわち常用雇用の者は常用雇用同士、有期契約の者は有期契約同士で比較することにしており、現行のパート法と異なるパート労働者を誰と比較するのかについては、社会的なコンセンサスを得る必要があると考えている。
また、パート労働者は外部市場ができているという点については、パート労働者を内部化されたフルタイムの労働者と比較しており、フルタイムの労働者の賃金や雇用保障の取扱いは企業によって考え方が違うため、企業を超えての比較は難しい。 - 佐藤委員
- 国際条約と国内法の整合性は、どの程度求められるのか。弾力的に考えない限り未批准でいくしかないが、批准している国はどのようにしてそういった部分をクリアしているのか。
- 厚生労働省
- 法制だけでなく、慣行や労働協約で事実上カバーされているようなケースも考えられる。
- 横田委員
- 批准の際の国内法制との整合性については、大きく分けると、条約を批准すると、国内法と同様に自動適用される国と、条約を批准しても自動適用されず、国内法が必要となる国がある。日本は前者であり、国内法との整合性を事前にチェックするため、批准に時間がかかる。オランダも日本と同じシステムだが、努力規定については実現義務はないと解釈するため、日本より批准が早い傾向がある。批准するための問題点を乗り越える積極的な姿勢が必要であり、男女共同参画会議は、国内を前向きに批准に動かしていく役割があるかもしれない。
- 古橋会長
-
ILOのこれら未批准条約を批准するために国内法をどのように改正すればよいかという資料を提出してほしい。
ILO第183号条約で、出産手当金を従前所得の3分の2にすると、給付総額はどの程度増加するのか。 - 厚生労働省
- 出産手当金の割合を変更すると、他の手当金の給付水準も影響が出るため、推測しかねる部分もある。
- 古橋会長
- 少子高齢化対策が緊急とされているのだから、出産手当金を増額することで高い効果が得られるのではないか。
- 鹿嶋委員
- ILO第175号条約の批准国数が10か国と少ないのは、理由があるのか。
- 厚生労働省
- EUのパートタイム労働指令においても、比較可能なパート労働者については、同一企業の中にいない場合は、適用可能な労働協約を参照するというようなことのため、EU加盟国の中でも、批准できない国があるようだ。
- 佐藤委員
- 先ほどの話では、批准しても実施していない国がかなりあるのではないか。
- 横田委員
- ILO条約の場合は、条約勧告適用委員会等で国内的措置をとるように勧告されるため、条約内容を実現する方向で努力しているはずである。
- 古橋会長
-
条約を新たに批准する際に、既存の法律が障害となっているのであれば、法律を改正することも必要である。
どのような点が批准に当たって障害となっているのかを勉強し、行政で不可能なら推進させるための資料をこの調査会でつくりたい。
<2>国連婦人の地位委員会における政府代表発令の対応について
- 古橋会長
- 国際機関の最高議決機関等以外は閣議発令しないという基準が内規によるものであれば、内規を提出してほしい。
- 外務省
- 内規といっても、国際機関の最高議決機関やそれに類する重要な理事会等の会議については「政府代表として発令し、他に二国間会議を含む重要な国際会議は、外務大臣の申し出を受けて「代表」として委嘱すること以外には、具体的な記述はない。そもそも、外務大臣の委嘱による発令だからといって軽視されることはない。国連関係では、通常、国連総会は「政府代表」として発令しているが、その下の経済社会理事会やその機能委員会である「婦人の地位委員会」等では実施していない。
- 古橋会長
- 日本の縦割り行政の実態を考えると、代表者にある程度の裁量権を与え、その権限を内閣が与えることが外交交渉において有力な手段になるのではないか。
- 外務省
- 外務大臣発令であっても、代表団に入る他省庁の事務官は外務事務官も併任するため、外務大臣をトップにした指揮命令関係は成り立つと考えている。実際上も「政府代表」となった途端に権威が上がり代表団を束ねる力が強まるわけでもない。必要性があれば政府代表発令を内閣に求めていくことが不可能ということはないが、事務の合理化の観点も必要。
- 古橋会長
- 指揮命令関係にあっても、外務省の立場では調整がうまくいかないことも多いので、内閣として裁量権を与えるべきではないか。
<3>女子差別撤廃条約選択議定書児童の売買、児童売春及び児童ポルノに関する児童の権利に関する条約の選択議定書について
- 深尾委員
- 選択議定書の個人通報制度について、研究会を開催しているということだが、何らかの結論が出る見通しはあるのか。
- 外務省
- 現在20回以上開催しているが、現時点では、最終的な結論が出る段階にはない。
- 横田委員
-
選択議定書を締結した方がよいと思うが、国内の裁判制度で権利が確保されないから国際的な委員会によってこれを変えさせようとするのは過大な期待である。
国際的な委員会の委員の質は様々である一方、日本の最高裁判事の中立性、専門性は高く、女性問題につきこれまで遅れた判断はあれ、制度としてかなりいいという事実は認めざるを得ない。いずれにしても最高裁での判決が女子差別撤廃委員会や人権委員会で覆されることはないし、これらの委員会が通報を受けて条約の解釈として出したコメントに対しては、日本の裁判所は法律論で反論すればよい。 - 法務省
- 委員会の見解については、法的拘束力はないという理解で検討を進めているところであるが、事実上の影響力であっても、重大なものであれば、関連する類似の事件等についての裁判官の判断に影響を与えるおそれがあり、憲法の保障する司法権の独立との関係で問題となり得ること等から、引き続き検討を行っている。
- 庄司会長代理
- 批准していない条約について、日本側が不名誉なことであると受け止めること以外に、何らかの影響はあるのか。
- 横田委員
- 誠実な対応をしなければ、強い言葉遣いで対応が求められる場合もある。また、日本の国際的評価全般にかかわってくる。こういう問題に積極的に取り組むことで、安全保障理事会の常任理事国につながるような支持が得られるのではないか。
(以上)