第9回 苦情処理・監視専門調査会 議事要旨

(開催要領)

  • 日時:平成13年12月3日(金)13:30~15:50
  • 場所:内閣府5階特別会議室

(出席者)

古橋
会長
庄司
委員
鹿嶋
委員
神田
委員
佐藤
委員
広岡
委員
深尾
委員
松下
委員
八木
委員
山口
委員
山谷
委員

(議事次第)

  1. 開会
  2. 平成13年度監視関係ヒアリング(仕事と子育ての両立支援策<2>)
    • (1)仕事と子育ての両立支援策に関して樋口恵子氏からヒアリング
    • (2)関係施策の実施状況等について関係府省からヒアリング
      • 中小企業庁:コミュニティ施設活用商店街活性化事業について
      • 内閣府:「両立ライフへ職場改革」に関する意見・情報交換会について
      • 国税庁:福利厚生費の損金算入に関して
  3. その他
  4. 閉会

(配布資料)

資料1
樋口恵子氏説明資料 [PDF形式:343KB] 別ウインドウで開きます
資料2
経済産業省(中小企業庁)説明資料 [PDF形式:162KB] 別ウインドウで開きます
資料3
内閣府説明資料 [PDF形式:670KB] 別ウインドウで開きます
資料4
財務省(国税庁)説明資料 [PDF形式:1270KB] 別ウインドウで開きます
資料5
第7回苦情処理・監視専門調査会議事録
資料6
第8回苦情処理・監視専門調査会議事要旨

(概要)

○元仕事と子育ての両立支援策に関する専門調査会長樋口恵子氏から、調査会で意見をまとめた際の考え方、監視のヒアリングに当たって留意すべき点などについて説明を受け、これに対する質疑応答が行われた。

○仕事と子育ての両立支援策に関して、中小企業庁、内閣府、国税庁からそれぞれ関連施策の実施状況等について説明を受け、これに対する質疑応答が行われた。

(1)樋口恵子氏説明に対する質疑応答

鹿嶋委員
保育園経営に株式会社やNPO法人が参入することは賛成だが、これにより最小コストで最大のサービスが得られるのか。利 益を出すために最小限度の基準を満たせばよいということになり、質の低下は免れないのではないか。
樋口氏
この点については、仕事と子育ての両立支援に関する専門調査会の委員の間でも様々な意見があった。参入規制は緩和す るが、サービスの質は担保しなければならないと思う。
私個人としては、対人サービスの効率化で危惧することとしては、安かろう悪かろうになるということと、そこで働く人の労働条 件が切り下げられていくのではないかということである。今日のような変革が女性の労働条件を落すことになってはならない。また、女性の非正規雇用化、不安定労働力化につながることになってはいけないし、同時に非正規雇用者の待遇を社会保障面 でも改善する必要がある。
古橋会長
株式会社の保育所も提供するサービスがよければ、保育料はある程度高くてもいいのではないか。保護者が選択できる多様 性があればいいのではないか。
樋口氏
株式会社側は敷地の提供や家賃分の補助を希望しており、そうすると株式会社に税金で補助をするということが可能だろうか という話になってくる。
鹿嶋委員
そこが悩ましい問題である。株式会社には市町村の財政援助ができない。社会福祉法人なら市町村の財政支援、あるいは 市町村の建物で肩代わりしてやれるが、今のシステムでは、利益を出すには最低基準でいくしかない。
佐藤委員
  • 両立ライフへ職場改革のところは、基本的に雇用者の話であるが、自営業セクターについて何か議論がなされたか。
  • 「両立支援」と「子育て支援」に関する施策間の調整について議論がなされたか。子育て支援が場合によっては女性の就業に マイナス要因となることもある。両立支援の観点から見ると望ましくないこともあるのではないか。
樋口氏
  • 自営業に関してはいろいろ話はあったが、今回は、待機児童が最もあふれている大都市の雇用者夫婦の両立が妨げられて いる状況に対する応急手当として大都市雇用者を重点的に考えた。
  • 子育て支援と両立支援は考えようによっては矛盾する部分もあると思う。しかし、社会全体が子育て支援、両立支援の体質 に変わっていくときに、子育て支援と両立支援との間に今存在するかのように見える矛盾は、最小になっていくと思う。現在は、 両立支援が乏しいから子育て支援との間に矛盾が見えると思う。
山口委員
  • 子ども何人に対して保育士1人の基準は変わらないのか。また、質のいいサービスを提供するために保育士の数の確保など について議論があったか。
  • 費用対効果などどのような効果が期待されるかという議論はあったか。
松下委員
応急的にどのように保育士の数と質を確保するようにしたらよいのか。また、大学で保育士や幼稚園教諭を養成する際の問 題として、将来的な保育士等の教育の内容が考えられたか。
樋口氏
保育士の需給関係については、むしろ余っているのではないかという見方があった。保育専門学校や大学、短大の保育者養 成コースがあるが、就職できないで困っている。
八木委員
両立支援策の5本の柱の中には対症的に対応できるものと、「まちづくり」など長期的なスパンで考えなければならない課題 があると思うが、これらがどの程度相互に関連して動いていくことになるのか。
樋口氏
「地域こぞって子育てを」などは大変長いスパンで考えなければいけないだろうが、平成16年度までに着手するということを明確 にした。
庄司委員
日本社会で非常に特異性があると思うのは高学歴女性の専業主婦化だと思う。そこにきちんと焦点を合わせた問題の把握 がないと、一般的な保育を充実していくという議論からは男女共同参画が進むという感じがしない。
樋口氏
高学歴女性の問題は、個人的には大変関心があるが今回の議論には出なかった。今は多くの女性が高学歴であり、高学歴 だから保育所を使わないということではない。両立支援については、学歴を意識する必要がなかったと思う。
広岡委員
ファミリーサポートセンターなどで話を聞くと、パートタイマーの女性の問題が大事なことだと感じる。子どもを預かるということだ けでなく、子どもをお父さんが迎えに行くといったサポート体制など、男女共同参画の視点が非常に重要だと痛感するが、そうい う議論はあったか。
樋口氏
パートでも産休・育休がとれるようにすべきという意見はあった。ただ、どんなに労働法制が整っても、そこからこぼれ落ちる女性が多く、働きにくさのひとつとなっている。また、職場の中に男女共同参画の風土をつくる一番象徴的なあらわれとして、そう いう議論はあった。一方、パートに育休が果たして本当にとれるのか、そういうことをする企業があり得るのかという現実認識も あった。
古橋会長
児童福祉法で「保育に欠ける」とうたっているが、男女共同参画の視点で言えば保育というのは支援の必要性があるものにつ いては、「保育を必要とする」者として支援する方向で議論していくことが必要ではないか。
樋口氏
「保育に欠ける」ではなく「保育を必要とする」は、そのとおりだと思うし、すべての委員も同じだと思う。ただこの間、スウェーデ ンに長く住んでいた男性から、「日本みたいにこんなに長時間、保育園に預けっぱなしで平気でいる親たちも少ない」と言われた 時、ショックであった。スウェーデンでは、父母の労働時間を短くするということが普通になっているようだ。やはり職場が子育て にどう対応するかが大きなテーマだし、子供が一定の期間、親に育てられる権利もあると思う。

(2) 関係施策の実施状況等の説明に対する質疑応答

<1>内閣府の説明に対する質疑応答

古橋会長
  • 公務員や民間企業の女性管理職(部長以上)の割合と就業者に占める女性の割合を実証的に比較することが必要である。ま た、ファミリーフレンドリー企業の女性の割合や業績はどうなっているか基礎データをまとめる必要がある。
  • 国家公務員も含め、管理職以上の女性で育児休業を取ったか、また、どの程度取ったか、それがその後の自分の昇進と関 係があると思うか、そういうことを調査していく必要があるのではないかと思うが、検討していただきたい。
佐藤委員
厚生労働省で両立施策をどの程度企業が取り入れているかや、雇用均等の方で管理職比率はどのぐらいかという調査をして いる。ただ、幾つか問題があり、例えば、育児休業、両立支援について調査する年度と雇用均等について調査する年度が異な り、両立支援と雇用均等の関係が分析できないといったことがある。また、企業のパフォーマンスについては、この調査ではわ からない。ただ、データを使ってある程度分析したものはある。

<2>国税庁の説明に対する質疑応答

古橋会長
  • 国際競争力の関係から福利厚生費をどう見ているか、例えば男女共同参画が進んだスウェーデンやノルウェーで、法人税法 における福利厚生費の範囲はどうなっているか調べた例があるか。
  • 日本では福利厚生費は、福利厚生費の範囲が職員や税務署によって解釈が違うというようなことがあってはいけない。その あたりの透明性なり、情報公開が必要ではないか。
  • 過去に総務庁から税務行政について勧告をしたことがあるが、その後どのようにに改善されたか。
  • 企業が保育所をつくった場合の保育所に対する経費はこの福利厚生費に当たるか。
  • 満4歳に達するまでの育児休業を認めたその期間の社会保険料はすべて会社負担という時に、この会社負担は損金算入が 認められているのか。
国税庁
  • 社会保険料は、企業にとって損金であることは当然である。また、個人負担分の社会保険料を会社が負担すれば、給与とし て損金になる。
  • 保育企業が保育所を作った場合、一般の職員に開放されていれば、これにかかる費用は損金として認められる。しかし、新 たに土地、建物を購入した場合には、建物であれば減価償却をすることになり損金として処理できない。土地であれば減価償却の対象ではないので損金性はなく、資産に計上することとなる。
  • 企業会計原則で費用とされるものは、法人税法上も原則的に損金性が認められている。企業会計原則には多数の種類の費用があり、その費用に該当するかどうかというのは、企業会計原則の話である。
古橋会長
福利厚生費に関しては、従来、基準通達や個別通達がたくさんあったのではないか。
国税庁
基本通達や個別通達の中には福利厚生費に関する項目は基本的にない。基本的に企業にとって福利厚生費の範疇に入る ものは、損金として扱われており、その点について異議申立て等の争いがあった例はない。
佐藤委員
福利厚生のところで問題があるのは、カフェテリア型(企業内福利厚生制度の一形態)のようなものについて、個人が選択して フレキシブルにやれるようにしてしまうと賃金とみなされて課税されてしまうところだと思う。そこの境目が例えば育児のクーポン などをどう扱うか、福利厚生とみなされるのか、賃金にみなされるのかで、従業員の側が違ってくる。
国税庁
個人課税の問題になるが、普通一般に給与になるか否かの判断基準は、現金で渡されているかどうかということ。現金で渡 されていれば、どのような名前がついていても基本的には給与という考え方になる。
山口委員
保育関係のNPOが寄付を受けた場合に、寄付をした側で損金算入の上限はいくらまでという設定がなされているか。
国税庁
今年の税法改正で、一定の要件を満たしていることについて国税庁の認定を受けたNPOに対する寄附金については、優遇 措置が認められることになった。
この認定NPOに対して寄附をした場合、寄附をした者が個人であれば所得の4分の1を限度として所得控除が認められ、また、寄附をした者が法人であれば一般寄附金とは別枠でその一般金の枠と同額を上限として損金算入が認められることになっ た。

<3>中小企業庁の説明に対する質疑応答

鹿嶋委員
コミュニティ施設活用商店街活性化事業で企業に直接補助金を出すというのは可能か。
中小企業庁
事業の性格からいって企業に直接というのは難しいが、商店街振興組合や地元の市町村と一緒になってやるという形で、実 質的に保育所の運営を行うことは可能だろう。現実には一部企業から問い合わせがあり、市町村と一緒にこうした事業をやりた いということで、市町村あるいは市町村の意を受けた商店街振興組合なりが受け皿になって、業務を委託するという形で企業が 受けられるケースについての相談がきている。
古橋会長
それは、正式な保育所として認可を受けるのか、それとも無認可保育所という形になるのか。また、無認可保育所ほどではな い単なる一時預かりという形か。
中小企業庁
認可を受けた保育所が基本になると思う。ただし、そういう施設が足りないということで、新しく地方公共団体で、一定の基準 を満たして運営していくことを厚生労働省とも相談しながらやっているケースもある。
古橋会長
無認可保育所の場合は、厚生労働省がある程度の届け出を受け、地方公共団体は最低限の安全等の監督をやるのか。
中小企業庁
地方公共団体を経由して補助金が出ている以上、地方公共団体もそこは責任を持たざるを得ないと思う。担当する商工関係 の部局が関連の部局と協力しながらその辺は万全を期するような仕組みにしたい。
八木委員
両立支援ということで、その運営のところは何年ぐらいのお考えか。また、この事業は、設置のための改装費の補助といった 単年度事業ということか。
中小企業庁
この制度で支援できるのはその設備を作るところまでである。具体的な運営費等についての補助は、認可の場合は厚生労働 省、無認可の場合は地方公共団体で独自にやられるケースもある。事業については、初年度の種々の経費と改装費を補助す るということになる。
鹿嶋委員
平成14年度の予算規模でどの程度つくれるか。
中小企業庁
通常の単価で計算すると全国で200カ所ぐらいできる。
山口委員
まちづくりの空き店舗対策の考え方は大都市中心となるか。空き店舗対策というと、さびれた地域を想像するが、ニーズはあ るのか。
中小企業庁
コミュニティ施設全体ということで見ており、大都市中心とは思っていない。全国的にニーズがあると思っている。地方都市に おいては地方都市の中心部は大抵業務地域のオフィス地域の中であり、必ずしもニーズがないわけではない。
古橋会長
建てる時はこちらの予算で建てても、後の運営が厚生労働省へ行くので、最初の段階から厚生労働省との連携とその後の 連携がうまく確保できるかどうかが重要だと思う。
中小企業庁
半年前から厚生労働省と協議しながらやっているので、その点については万全を期したいと思っている。

(以上)

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