- 日時: 平成13年7月26日(木) 17:00~19:15
- 場所: 内閣府講堂
(開催要旨)
- 出席者
- 会長
- 岩男 壽美子 武蔵工業大学教授
- 委員
- 伊藤 公雄 大阪大学教授
- 同
- 猪口 邦子 上智大学教授
- 同
- 住田 裕子 弁護士
- 同
- 高橋 和之 東京大学教授
- 同
- 竹信 三恵子 朝日新聞企画報道室記者
- 同
- 寺尾 美子 東京大学教授
- 同
- 樋口 恵子 東京家政大学教授
- 同
- 古橋 源六郎 (財)ソルトサイエンス研究財団理事長
- 同
- 松田 保彦 帝京大学教授
- 同
- 山口 みつ子 (財)市川房枝記念会常務理事
(議事次第)
- 開会
- 選択的夫婦別氏制について(法務省、内閣府)
- 自由討議
- その他
- 閉会
(配布資料)
- 資料1
-
法務省説明資料 [PDF形式:231KB]
- 資料2-1
-
都道府県議会における選択的夫婦別氏制度に関する意見書の提出状況 [PDF形式:101KB]
- 資料2-2
-
国の行政機関での職員の旧姓使用について(平成13年7月11日各省庁人事担当課長会議申合せ) [PDF形式:6KB]
- 資料2-3
-
各種国家資格における旧姓使用状況について [PDF形式:9KB]
- 資料3
-
第1回男女共同参画会議基本問題専門調査会議事録 [PDF形式:94KB]
(議事概要)
法務省及び内閣府から「選択的夫婦別氏制について」説明が行われ、自由討議が行われた。
- 古橋委員
- 参画会議としてこの意見をいつ出すかという問題は、まだいろいろよく判断しなければいけない問題。世論調査の結果がこちらの選択的夫婦別姓について賛成が過半数であるということがある程度分かった段階で出すのか、分かっていなくても正々堂々と論理的に出すのかというところの情勢判断を考えなくてはいけない。
- 竹信委員
- 例えば、困っている事例を、呼びかけてホームページで募集すると、たくさん来るのではないか。
- 岩男会長
- きちんと民法改正で法律的にやるというのと、現実に日常的にいろいろな不利益をこうむっていることを取り上げつつ救う部分と、両方が必要。
- 住田委員
-
平成8年の世論調査でも、40歳代までは賛成が多数であり、20歳代だと45.1%が賛成、反対がわずか20.6%である。5年経っているから、世論調査の結果は楽観しているが、過半数かどうかを一つの目標にすると厳しいのではないか。ただ、反対派が平成8年で39.8%まで減っており、今度はもっと減ることは間違いないから、賛成の32.5%がどのくらい増えるか期待したい。
同一性を確認するとき、日本の場合は戸籍簿を原点にしているから、それによらざるを得ないものは、困った事例として出てこざるを得ない。 - 高橋委員
-
憲法論としては、重要なのは平等権と婚姻の自由の2つ。制度が作られた当時はまだ家制度的な観念が残っている中で男性と女性を全く平等に扱う制度として作られたということがあり、当時はまだ個人の尊重という問題意識が希薄だったが、50年憲法を運用してきて、実質的な性差別になっているということがはっきりしてきた。また、個人を中心にした考え方がある程度国民の中に広まってきて、名前が個人のアイデンティティの要素を成すのだということが自覚されてきた、という変化がある。憲法をつくった当初は合憲だったけれども、その後の立法事実の変化によって、性に基づく差別の状況になっていると評価すべきというのが1点。
もう1つは、氏名権は、最高裁で、法律上保護されるべき利益ということまでは認められている。憲法24条で、結婚は両性の合意のみに基づくということになっているが、名前を一方が捨てなければいけないことは、結婚するときにどちらかが不平等に扱われるわけで、その限りでは、姓に基づく差別ではないが、平等権の侵害だと思う。
氏名権の侵害あるいは人格権の侵害と言うと、そこまで憲法論として議論できるかどうかは憲法学の内部でもいろいろ対立があり、今のところはっきり言えないが、婚姻の自由が憲法上認められ、両性の合意にのみ基づくわけで、どちらかが名前を捨てなければいけないというのは、現代においては非常に大きな負担を課しており、婚姻の自由の許されない制約になってきているのではないか。 - 住田委員
- 氏が個人の呼称であれば、自分の名前だから勝手に変えてもいいというのが一つの見方だが、逆に社会のもので、この人に対してはAさんと呼び続けるというのが社会のメリットであり、そうころころ変えるのは望ましくないと言える。
- 寺尾委員
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本当に男女平等を考えると、本当は一代限りのファミリーネームの方が平等だと思う。結局、父系と母系のどっちをたどるかという話になり、どうしても不平等になる。だから、実際上夫婦別姓を認めても、お母さんだけ別の姓、子どもはお父さんの氏というのが非常に多くなると思う。
結婚により新たな氏を創ることを選択肢の一つに入れてもよいと思う。家族の一体性を唱える議論に対しても、この議論をすることによって、今の制度が実は偏っているということを言えるのではないか。改正反対の方は、同性両方を平等に扱っていると必ず言う。そういう意味で選択を強調するなら、それも可能にすればいい。 - 樋口委員
- 福沢諭吉が、例えば寺尾さんと樋口さんが結婚したら「寺口」か「樋尾」にすべしと、確か日本婦人論の中で言っていた。これにより、家族の一体感の、今、寺尾さんが言われた夫婦同姓で子ども同姓でという、核家族の一体感は保障できる。ただ、そういう議論は前回のときも全然なかった。
- 高橋委員
- 夫婦別姓の論拠が、名前が変わると困るということであり、どんな名前でも変えてもいいというのとはうまく整合しない。名前は全く自由に個人のものだという立場に立てばいいが、社会にとっても有用だということをある程度認めた議論をしようとすると、ちょっと難しい。
- 猪口委員
-
憲法の基本論に返って、両性の合意にのみ結婚が許されるというような立場に戻れば、それ以外のいろいろな制約、つまり、名前をとにかく作らなければいけない、家族全員がそれを使わなければいけないというのは、もう一つの国家の結婚の際の介入になるので、それは適切でないという立論は重要である。
いろいろな方法で組み合わせるべき。まず制度内議論、あるいは憲法論を正面に出す。そして、具体的に困った事例を国家として放置していいかというような、やはり万人に分かりやすい問題の提示の仕方。理論と現に困っていることという2つの路線。それから、世論調査。この3つの方法で、同時並行的にやるべき。
海外の事例を引くことは理論的に必要性があればいいが、外国をどう評価するかはその人の認識によるところが多く、説得材料としては、困った事例が内発的な変化を促すいい方法ではないか。 - 樋口委員
- まさに婚姻の自由の制約の一つとして理解して構わないと思う。今の日本の非婚率の高さなどは、夫婦別姓がないから婚姻が成立していないということ。
- 伊藤委員
- 両性の合意に基づくという婚姻の自由の問題だが、突き詰めれば寺尾さんの言うように、新しい姓を作るというのも一つの選択肢としてある。ただ、今の議論でそれを出したら、とても無理。
- 樋口委員
- 猛烈な反対には一つ一つ反論していっていい。今、別姓を認めないから事実婚が増加している。参入が規制されているから婚姻に参入しなくなっている。親族の扶養意識というのは介護保険制度とも逆行する考え方。
- 山口委員
- 官房長官が、現実的なことを考えて旧姓使用についてこういう方針を出したのは、注目すべき。しかし、一方で、とにかくこういうような便法があれば民法を改正しなくてもいいという根拠もある。だから、これはあくまでも民法改正、選択的夫婦別姓を拘束するものではないということを確認しておきたい。
- 岩男会長
- 旧姓使用は、夫婦別姓を妨げるといった性質のものではない。だから、私たちが提言を書くときも、それはきちんと書かなければいけない。誤解のないようにしておかなければいけない。
- 伊藤委員
- 余りいちいち反論しない方がいいと思う。ただ、中身としてきちんと反論は入れておくべきだと思うが、反論を目的として対応するべきではなく、我々の議論がメインストリームなんだという認識で意見表明すべきだ。
- 住田委員
- かなり保守的な地盤のところでも流れが変わってきたように、政治家は流れを非常に敏感に考えていると思う。男女共同参画会議がメーンストリームとして、非常に骨太の意見を出すと、政治家はそれに対して十分に御理解いただけるような、今そういう情勢になっていると考えたい。
- 松田委員
- 今は選択の時代だと思う。だから、ただ別姓というのではなくて選択というところが大変重要だ。自己決定権というか、自分で選択して人に押し付けられることではないという時代だ。自分の名前まで人に押し付けられるというのは、こんな基本的な自己決定権に対する侵害はないと思う。
(以上)