計画実行・監視専門調査会(第3回)議事録

  • 日時:令和3年9月30日(木)10:00~12:00
  • 場所:オンライン会議システム(Zoomウェビナー)にて開催
  1. 開会
  2. 議題
    (1)アンコンシャス・バイアスに関する調査結果と今後の取組について
    (2)旧姓の通称使用の拡大の現状と課題
    (3)APEC「女性と経済フォーラム」
    (4)女子差別撤廃条約実施状況第9回報告
  3. 閉会

【配布資料】

資料1
今後の専門調査会の進め方について [PDF形式:702KB]別ウインドウで開きます
資料2
令和3年度 性別による無意識の思い込み(アンコンシャス・バイアス)に 関する調査結果 [PDF形式:3,287KB]別ウインドウで開きます
資料3-1
旧姓の通称使用の拡大の現状と課題 [PDF形式:1,327KB]別ウインドウで開きます
資料3-2
各種国家資格、免許等における旧姓使用の現状等について [PDF形式:563KB]別ウインドウで開きます
資料3-3
企業における旧姓使用の状況について [PDF形式:189KB]別ウインドウで開きます
資料3-4
旧姓の通称使用の限界に関する指摘の例 [PDF形式:880KB]別ウインドウで開きます
資料3-5
夫婦の氏に関する令和3年最高裁決定について [PDF形式:272KB]別ウインドウで開きます
資料4
APEC「女性と経済フォーラム」における議論について [PDF形式:393KB]別ウインドウで開きます
資料5
女子差別撤廃条約実施状況第9回報告について [PDF形式:125KB]別ウインドウで開きます
資料6
石黒委員提出資料 [PDF形式:1,340KB]別ウインドウで開きます
参考資料1
計画実行・監視専門調査会委員名簿 [PDF形式:108KB]別ウインドウで開きます
参考資料2
女性活躍・男女共同参画の重点方針2021 (令和3年6月16日すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部決定) [PDF形式:1,384KB]別ウインドウで開きます
参考資料3
APEC「女性と経済フォーラム声明」 [PDF形式:274KB]別ウインドウで開きます
参考資料4
女子差別撤廃条約実施状況第9回報告(日本語仮訳) [PDF形式:714KB]別ウインドウで開きます
女子差別撤廃条約実施状況第9回報告(英語) [PDF形式:795KB]別ウインドウで開きます
参考資料5
女子差別撤廃条約実施状況第9回報告 別添(日本語仮訳) [PDF形式:5,186KB]別ウインドウで開きます
女子差別撤廃条約実施状況第9回報告 別添(英語) [PDF形式:6,188KB]別ウインドウで開きます

【出席者】

会長 
佐藤 博樹  
中央大学大学院戦略経営研究科教授
同  
井上 久美枝 
日本労働組合総連合会総合政策推進局長
同  
大崎 麻子  
関西学院大学客員教授
同  
窪田 充見  
神戸大学大学院法学研究科教授
同  
佐々木 成江 
名古屋大学大学院理学研究科生命理学専攻准教授、お茶の水女子大学ヒューマンライフイノベーション研究所准教授
同  
治部 れんげ 
東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授
同  
白波瀬 佐和子
東京大学大学院人文社会系研究科教授
同  
徳倉 康之  
NPO法人ファザーリング・ジャパン理事、株式会社ファミーリエ代表取締役社長
同  
内藤 佐和子 
徳島市長
同  
山口 慎太郎 
東京大学大学院経済学研究科教授
同  
山田 秀雄  
山田・尾﨑法律事務所代表弁護士
内閣府
林 伴子   
男女共同参画局長
同  
吉住 啓作  
大臣官房審議官(男女共同参画局担当)
同  
杉田 和暁  
男女共同参画局総務課長
同  
花咲 恵乃  
男女共同参画局推進課長
同  
矢野 正枝  
男女共同参画局総務課調査室長

議事録

○佐藤会長 それでは、少し時間が過ぎましたが、一応今日の出席予定の方は入られるということですので、ただいまから第3回「男女共同参画会議 計画実行・監視専門調査会」を始めさせていただきます。
 まず最初は、本日の会議の趣旨について、御説明させていただければと思います。
 ここは何度もお話ししますけれども、本調査会では、第5次男女共同参画基本計画の着実な実行のために、各府省が毎年度、重点的に取り組むべき事項を決定する重点方針、いわゆる女性版「骨太の方針」の策定に向けた審議を行っていきます。
 前回の会議では、来年度の重点方針2022の策定を見据えて、本調査会においてどのような課題を検討すべきかについて、皆様から御意見を伺いました。
 本日の会議では、それぞれの課題について具体的に検討を進めていきたいと思います。
 まず最初は、今、御説明しましたように、検討すべきテーマについて、前回、皆さんの御意見を踏まえて、今、画面共有していただいた資料1の8ページ目です。重点方針2022に向けた検討課題について、皆様の議論を踏まえて、まずは投影していますように再整理させていただきました。
 各課題は独立した問題ではなく、相互に関連しているということで、そういうことを踏まえて議論していくということであります。
 2番目は、世代間や地域間が非常に大きいので、取組を実際に考えるときに、その辺を踏まえて検討していくことにさせていただきました。
 さらに(1)から(11)までテーマ、課題を挙げさせていただきましたけれども、前回の皆様の御意見を踏まえて、(1)から(11)に加えて(12)として、立法・司法・行政におけるジェンダーバイアス、裁判官におけるジェンダーバイアスのお話がありましたけれども、立法・司法・行政を踏まえて議論したほうがいいだろうということでさせていただきました。
 (13)として、企業活動における国際的な枠組みという形で、人権デューデリジェンスなども加えさせていただきました。
 もちろんここら辺については、また御意見があれば、見直していくことがあると思いますが、当面は13項目について、①②の視点を考えながら議論していくとさせていただければと思います。それを踏まえて月2回程度、それぞれの課題について議論していくとさせていただきます。
 本日は、まず議題(1)及び(2)について、事務局よりまとめて御説明いただいて、それから議論したいと思います。
 (1)はアンコンシャス・バイアスに関する調査結果とこのあたりについてです。
 (2)は旧姓の通称使用の拡大の現状と課題の二つのテーマであります。
 それでは、御説明いただきますが、その前に、本日は石黒委員が御欠席で、二つのテーマについて事前に資料を提出いただいています。資料6として共有させていただきますので、ご覧いただければと思います。
 それでは、御説明をお願いいたします。

○林男女共同参画局長 ありがとうございます。
 それでは、画面の共有をさせていただきます。
 まず一つ目、私どもはアンコンシャス・バイアスに関する調査を8月にいたしましたので、その結果を報告いたしたいと思います。
 全国20代から60代の方々1万人にお聞きをしています。
 この調査の設計に当たって事前に調査をいたしまして、性別に基づく役割や思い込みを決めつけられた経験など、具体的な事例を自由回答で聴取いたしまして、それを整理・分類の上、36の項目を測定項目といたしました。
 具体的には例えば男性は仕事をして家計を支えるべきだとか、こういったものについて、そう思うからそう思わないまで4段階で聞きまして、その回答の割合を見たものがその下の表でございます。
 ブルーで塗ってあるものは男女共通のものでございまして、例えば男性は仕事をして家計を支えるべきというのは、これは両方とも男女2位に入っている状況です。
 他方、男性は何々すべきだという項目の中で、男女差が大きく開いているものもございます。例えば男性3番目、デートや食事のお金は男性が負担すべきだというのは、男性は強く思っているようなのですが、女性は10位ということで、それほど思っていないとか、あと、6番目、男性は人前で泣くべきではないと男性は思っているようなのですが、女性はそんなことは思っていないということで、異性に対する思い込みだけでなく、男性、女性自身も無意識のうちに、御自身で異性よりも強く思い込んでいることもあるようだということが分かりました。
 シーン別に見ますと、例えば職場のシーンでございます。男女とも1位に入っていますのが、育児期間中の女性は重要な仕事を担当すべきではないというものでございました。
 年代別で見るのが重要だというお話がございましたので、見ております。男性50~60代、特に男性は、仕事をして家計を支えるべきだという意識が強いという結果が出ました。
 右側、共働きでも男性は家庭よりも仕事を優先すべきだというのは、男性のほうが強く、特に20代、30代で見ますと、男性と女性の間でギャップがあることが分かりました。
 性別に基づく役割や思い込みを人に言われた、あるいは言動や態度から感じた、メディアで感じた、こういったことについても聞いております。男性よりも女性のほうが性別に基づく役割や思い込みを決めつけられた、特に間接的に感じたことが多いという回答になっております。
 下の表ですけれども、例えば家事・育児は女性がすべきだとか、受付、接客・応対、お茶出しなどは女性の仕事だ、こういったことを感じさせられた経験があると言っている女性が多いということであります。
 こうした性別役割を言ったり、言動を感じさせた人というのは、父親、あるいは男性の知人・友人、男性の職場の上司、こういったところが多く挙がっております。
 年代別に見ますと、50~60代の女性で特にこうした性別に基づく役割や思い込み、決めつけを感じてきた割合が高いという結果になりました。
 メディアで見たり、聞いたりすることが多いのは、女性は感情的になりやすいとか、論理的に考えられないといったようなものが多く挙がったところでございます。
 さらに詳しい調査はこの中に細かく出ておりますが、一つだけ御紹介をさせていただきますと、地域における性別役割経験ということで、特に20代、30代の女性で地元を離れた方がどのような経験をしたのかということに注目して、分析をしてみました。
 現在住んでいる地域と中学入学時に住んでいた地域が異なる人、つまり具体的には例えば地方から大都市圏に出てきたような方、こうした方々は、ブルーの折れ線、移動ありで、こうした性別役割について直接言われた経験があるという結果になりました。移動のない方よりも多いということでございます。
 こうしたことから、性別役割に関するアンコンシャス・バイアス、あるいは直接言われたり、間接的に言われた経験、こうしたことが女性の大都市圏への流出、地域から若い女性がいなくなって少子化につながっていることと関係が深い可能性があると思っております。
 このようにアンコンシャス・バイアスの意識の問題について、どう対処すべきか、あるいはどう再生産を止めていくべきか、先生方のお考えを伺えれば、ありがたく存じます。
 これがアンコンシャス・バイアスに関する私どもの調査の結果でございます。
 次に、旧姓の通称使用の拡大の現状と課題でございます。選択的夫婦別姓について御議論いただく前の段階として、旧姓の通称使用の拡大の現状について、御報告を差し上げたいと思います。
 政府といたしましては、この20年間、旧姓の通称使用の拡大に取り組んでまいりました。また、昨年末に閣議決定をいたしました第5次男女共同参画基本計画におきましては、婚姻により改姓した人が不便さや不利益を感じることのないよう、引き続き旧姓の通称使用の拡大やその周知に取り組むとしております。また、選択的夫婦別氏も含めて、夫婦の氏に関する具体的な制度の在り方に関し、さらなる検討を進めるとなっております。
 この考え方は、6月に政府決定いたしました女性活躍・男女共同参画の重点方針においても、確認をしているところでございます。
 旧姓の通称使用のこれまでの動きを見ますと、国の行政機関、国家公務員での旧姓の使用が広がりまして、使えるように取組をしてまいりました。その後、最近では住民票、マイナンバーカード、運転免許証の旧姓併記、旅券の旧姓併記、各種の国家資格での旧姓使用につきまして進めてきたところでございます。
 例えばマイナンバーカードですと、ここにございますように、括弧内に旧姓を入れるということができるようになっております。
 パスポート、旅券につきましては、左側にございますように、現在、括弧内に旧姓、Former surnameとして旧姓を書けるようになっております。ただし、下にありますバーコードやICチップなどは、国際規約によりまして、戸籍名だけが入っております。したがいまして、通常電子的な処理をされます航空券や査証などは、戸籍名のみ記載となっているところでございます。
 各種の国家資格でございますが、こちらは私どもが全府省に呼びかけて、各種国家資格免許で旧姓が使えるようにということで依頼をしてまいりました。直近の調査、本日現在の状況では、302の国家資格のうち、今後の旧姓使用予定が決まっているもの、予定も含めますと、全部で287のもので旧姓の使用が可能となっておるところでございます。
 具体的にはここにありますように、それぞれにおいて、このような形で旧姓使用の状況について調べたものがございますので、詳細については、こちらをご覧いただければと思います。
 次に、企業でございます。企業における旧姓使用の状況につきまして、私どもがアンケート調査をとりましたところ、現在、45%の企業で旧姓使用ができるようになっております。
 企業の規模別に見ますと、大企業がより多く旧姓使用が使われており、中小企業では少ないという結果になっております。
 使えるということではあるのですが、旧姓使用を認めている範囲を聞きますと、職場での呼称、座席表、名刺、名札、社員証、こういったところは旧姓使用を認めているということなのですが、例えば下のほうにございます。給与明細、給与の振込依頼、こうしたところは納税、また、金融機関との関係もありまして、必ずしも旧姓使用は認められていない、そういうところが多くなっております。
 旧姓使用を認めていない企業に認めていない理由を聞きますと、通称と戸籍名の二つの名前を使い分けることになりますので、人事関連の手続が煩雑になるとか、給与の支払い関連の社内手続が煩雑になるといった理由が挙がっているところでございます。
 私どもは、旧姓の通称使用の拡大をしてまいったところではございますが、昨年、第5次男女共同参画基本計画を策定した際にパブリックコメントを募集いたしましたところ、選択的夫婦別姓について400以上のパブリックコメントを頂戴しました。
 いずれも旧姓の通称使用だけでは限界があるということなどから、選択的夫婦別姓を導入してほしいという声でございました。こうしたパブリックコメントの中から、特に具体的に旧姓の通称使用の限界について指摘している声などを私どもで整理したのがこちらでございます。
 旧姓の通称使用ができない、あるいはできない場合がある手続としては、まず納税で、こちらは戸籍名でございます。銀行口座につきましても、一部で非対応となっております。実は内閣府男女共同参画局から金融機関の業界団体に対して、通称での口座の開設を認めてほしいということで依頼をしてまいりました。しかしながら、例えば二つの名前、通称と戸籍名を使い分けること、それを使うことによるいろいろなリスクもあるのではないか。二つの名前を悪用してマネーロンダリングなどのリスクがあるのではないかといったような声もございました。
 一般にマネーロンダリング、テロ資金対策につきましては、FATFという国際的な枠組みがございまして、我が日本国はマネロン、テロ資金対策に関しては、必ずしも国際社会では評価は高くないという状況に一般論としてはございます。
 こうした中で、通称での口座の開設をどこまでお願いしていくかということが一つ課題としてございます。
 クレジットカードについても、個社によって状況が違うということであります。
 御本人、企業の経済的なコスト、負担がございます。企業・団体等で先ほど御紹介しましたように、人事、給与管理上の負担、煩雑化がございます。また、個人識別の誤りのリスクやコストの増大といった声もございます。
 御本人の心理的な負担ということで、改姓、旧姓併記により婚姻、離婚などのプライバシーが知られなくてもいい人、会社の人などに知られてしまうということ、また、通称名や戸籍名の二つの姓の使い分け、併用に伴う負担とか、混乱といったことがございます。
 改姓によるアイデンティティーの喪失という指摘もございます。両親が名字とセットでつけてくれた名前であって、やはり自分の名字を変えたくないという声も若い方を中心に大変多いものがございます。
 婚姻の妨げになっているということで、実家の名字の存続の問題などを指摘される声もあります。一人っ子同士の結婚が少子化で増えていることもありまして、自分の歴史のある実家の名字を大切にしたいという方も多いという状況がございます。
 渡航や外国生活における支障ということで、パスポートで旧姓併記はできるようにはなっておりますけれども、先ほど御紹介したようなこともありまして、使用の場面が限定しておることもございます。また、夫婦同氏を法律で義務づけているのは、今、日本だけでございます。そのため、括弧に入った通称、旧姓について説明を求められるという場面もございます。こうした諸外国にない制度ということについて、いろいろと負担が生じていることも実態としてあるようでございます。
 こうしたこともあるものですから、国際的に活躍する女性をはじめとして、様々なトラブルになっているという御指摘をいただいております。業績や研究実績の分断が生じているといったこと、あるいは事業承継における困難ということで、実家の事業を継いだ女性の屋号が実家の名字で、御自身の戸籍名は違うときに、例えば取引先に事業との関係を説明しないといけない、すぐには認識していただけないといった指摘もあるところでございます。
 これ以外の論点といたしましては、例えば現在、離婚、再婚が昭和の時代よりも増えておりますので、複数の旧姓を持っていらっしゃる方々も数多くいらっしゃいます。婚姻は毎年60万件ですけれども、離婚も毎年20万件ございます。また、婚姻のうち4分の1は再婚でございます。
 こうした中で複数の旧姓を持つ方も多いということで、様々な煩雑さ、あるいは困難といったことも起こり得る状況になっておりまして、こうしたことを全体として社会的なコストとして認識される方もいらっしゃるという状況にございます。
 今後、旧姓の通称使用につきましてどのように考えるべきか、先生方の御議論を賜りたいと思います。ありがとうございました。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 議題(1)というのは、アンコンシャス・バイアスの調査結果ですけれども、この結果についてどうお考えがあるか、あとはこの問題について、解消していくために、企業では具体的にどんな取組が必要になってくるということがあれば、伺えればと思います。
 (2)は旧姓の通称使用、これは拡大してきたのです。ただ、他方で限界も見えています。現状の拡大について、あと、今後どうしたらいいだろうか、この2点について、皆様から御意見を伺いたいと思います。
 時間制約があるので、前回と同じように最初は5分ずつぐらいいただいて、残った時間でまたそれを割って2回目を取れればいいですけれども、それを御理解いただければと思います。
 それでは、1巡目、二つのテーマについてお一方5分ずつということで、今日は石黒委員から、先ほど資料を出していただいているということで、御欠席ですので、名簿順でまず最初に井上委員から、この2点について御意見を伺えればと思います。よろしくお願いします。

○井上委員 ありがとうございます。
 連合の井上です。よろしくお願いいたします。
 まずアンコンシャス・バイアスなのですけれども、今、スライドの御説明をいただきましたが、スライドで出ていなかった詳細のスライド13、スライド14に、性別に基づく役割や思い込みを決めつけられた経験は、直接言われた経験よりも言動や態度から感じた経験のほうが多いということがありました。
 アンコンシャス・バイアスは、ある意味誰でも持っているものであって、個人レベルでは、まずはそれに気がついて自覚するところからだと思っております。ただ、持っていれば、言動や態度として表れる可能性は高いですから、それが現実の差別につながっていくと思います。そう考えると、個人レベルでの気づき、自覚を促した上で、社会的にはなくしていく、払拭していく、そういう方向性を明確に打ち出すことが重要だと考えます。
 連合もアンコンシャス・バイアスを調査したのですけれども、まずは気づくところで調査を開始しました。ただ、来期の連合の運動方針の中には、払拭していくということも入れました。ですので、その意味でもまずは払拭する方向性を明確に打ち出す。前回もお話をさせていただきましたが、思い込みとだけ表現するようなことはどうなのだろうか。偏見という言葉もしっかり使う、あるいは前回もお話しした男女共同参画学協会連絡会では、一種のバイアスと位置づけています。言葉の使い方もあるのではないかと思います。
 スライド13のところで、設けられた選択肢として、受付、接客・応対、お茶出しは女性の仕事だという記載がありました。この点に関連して、ハラスメントの議論を雇用環境・均等分科会で行っているときの意見で、例えば女性であることを理由に男性の補助的な仕事しか命じないということは、パワハラの過小な要求に当たるのではないかと考えられる、これに関して厚労省の考えを確認させてもらいたいという発言をしたことに対して、厚労省が具体的な例として、今、出したものに関して、女性だからという理由で男性の補助的な仕事しか与えないことになると、女性という理由での差別的取扱いということで、そもそも均等法で違法という形になると思う、そういう意味では、既に均等法で対処できる例だと思うと答弁されているのです。
 そういうことで、女性だからお茶出しさせるというのは、アンコンシャス・バイアスではなくて、明確な均等法違反になりますので、他の例示なども出しながら、今回の取組と併せてきちんと周知徹底したほうがよいのではないかと考えます。
 時間の関係もありますので、通称使用です。資料3-1で出していただいた中で、イ、家族に関する法制の整備等とあって、①と②の二つの固まりがあります。①の固まりは利便性の話で、②は人権の個の認識といった根本的な話であると受け止めています。
 その点では、本日いただいている資料ですと、例えば資料3-4でいろいろ書いてあるのですけれども、利便性の話と人権の個の認識といった根本的な話が混線するような資料の出方ではないのかと見えてしまいましたので、それぞれの課題と論点を分けて資料を提示いただけるとありがたいと思いました。
 連合では、人権とか、個の認識というか、根本的なところに重きを置いて、男女平等参画の計画をつくっています。その中に記載している内容をちょっと読ませていただくのですけれども、選択的夫婦別姓が実現していない中、結婚により姓を変更しているのは96%が女性であり、実際の職場では、多くの女性が結婚により姓を変更せざるを得ないことにより、個人識別の煩雑さに関する不満や実績評価などで不利益を被っているとの声が多くある。また、社会生活でも行政書類等の変更手続や姓を変更する場合に大きな負担となります。さらに結婚や出産を伴って退職しているのは圧倒的に女性であり、多くが何々さんの奥さん、何々さんのママと、旧姓どころか、名前でも呼ばれなくなるという経験もしている。男女不平等は人権の尊重、個人の尊厳に関わるゆゆしき問題であり、取組を進めることでそれらを規定に置いた社会を実現しなければならないということで、こういうことも文言できちんと入れています。
 今年の6月の、夫婦同姓規定の連合の談話でも、職場での旧姓の通称使用を認めたり、旧姓併記できる書類の範囲を拡大する動きもあるが、個人の尊厳に関わる問題であり、根本的な解決策になり得ない。夫婦同姓規定をそのままにしておくことは、男女の不平等の状態の放置を意味する。そもそも結婚後も自らの姓を名乗れるかどうか、人権に関わる問題であり、一方に望まない改姓を現実的に強いている規定は見直すべきということを明確に書かせていただいています。
 男女共同参画社会基本法の第3条、男女の人権の尊重ですが、それに男女共同参画社会の形成は、男女の個人としての尊厳が重んぜられること、男女は性別による差別的取扱いを受けないこと、男女が個人として能力を発揮する機会が確保されること、その他の男女の人権が尊重されることを旨として行わなければならないと記載があります。ですので、これに沿った議論を行うことが男女共同参画会議のもとに設置された本調査会の本旨でもあると考えますので、事務局にはぜひそのような運営をお願いしたいと思います。
 以上です。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 続いて、大崎委員、お願いいたします。

○大崎委員 ありがとうございます。
 私は、アンコンシャス・バイアスに関して、コメントをさせていただきたいと思います。前回と同じように国際協調の観点からお話しさせていただきます。
 アンコンシャス・バイアスというものがジェンダー平等、女性の活躍の阻害要因であることに対して、そのような問題意識を持って、政府としてこういう取組を行うのはすごくいいことだと思っています。しかしながら、私が見てきました諸外国の取組とは若干ギャップがあるのではないかと思いますので、それを指摘しておきたいと思います、  その理由は、政府が行うことイコールスタンダードと捉えられるので、正しい理解が必要だからです。
 一つ目、性別に関して無意識の思い込み、先ほど井上委員からも御指摘がありましたとおり、これは思い込みではないです。バイアスですから偏った見方、つまり偏見です。そこは緩くしてはいけないと思います。
 二つ目ですけれども、今日御紹介いただいた資料は大変興味深く拝見したのですが、之は無意識ではなくて意識、性別役割分業意識だと思います。無意識の調査、無意識の偏見をあぶり出すには、学術的な裏づけがあるようなミソドロジーを使ってないと、無意識な偏見をあぶり出すのは無理だと思います。今回いただいた結果というのは、性別役割分業の意識的な部分だと思っております。
 アンコンシャス・バイアスは、アメリカから出てきたそういう考え方というか、取組だと思いますけれども、諸外国で共通しているのは、コンセプトの意義です。こういうコンセプトを使うことの意義は、大きく分けて二つございます。
 一つ目は、先ほど林局長もおっしゃったのですけれども、ステレオタイプとか、性別役割分業意識の再生産を防ぐ。メディアとか、家庭とか、学校教育で再生産されていきますので、それを防いでいこうということが一つあると思います。
 二つ目です。こちらがより重要だと思うのですけれども、企業とか、行政機関などの組織での意思決定ポジションにある人たちの無意識の偏見が採用、登用、昇進、評価に影響を及ぼすという点です。この無意識の偏見というのは脳のメカニズムなので、研修などで軽減することはできるものの、解消は難しいというのが共有されている前提となっていると思います。
 こういう採用、登用、昇進、評価を確保するためにどういう手段が必要なのか、どういうツールを開発するのかということが重要で、それを運用して男性も女性もフェアに評価される、それによってあらゆる男女間ギャップをなくしていくというのがアンコンシャス・バイアスという概念を用いる意義ですので、そこをしっかり理解しないといけないと思います。
 中途半端な研修をしますと、アンコンシャスだからしようがないとか、そういうことはアメリカのレポートで出てきています。なので、そこをしっかり把握していただきたいと思います。
 私が政府に期待するというか、行政機関でやるべきだと思うのは、アメリカを含む諸外国でどういう主体、つまり行政機関、教育機関、企業がどういう取組、つまりどういうツールを開発して、どのように運用して、どういう成果を上げているのか、まずはそれを私は知りたいです。英語ではもうたくさんあるのですけれども、日本では日本語版は存在しないので、そういったことのレポートを日本語でしっかりレポートしていただくことが必要ということです。
 それを踏まえて、日本国内のガイドラインをつくるということが重要だと思います。例えばニュージーランドの政府などのホームページを見ますと、非常にシンプルなガイドラインがちゃんと出ているのです。例えばアンコンシャス・バイアスツールキットと呼ばれていますけれども、アンコンシャス・バイアスにはどういうものがあるかとか、アンコンシャス・バイアスをどう乗り越えるかとか、そういう基礎的なことと採用過程、つまり書類選考、面接での質問、インタビューパネルでの審査会とか、業績評価では具体的にどのようなことに気をつけるべきなのかというようなチェックリストを紹介して、非常に分かりやすくて、それをベースに教育機関とか、企業とか、自分たちの文脈に合わせていろんなものをつくっていけるとなっていますので、私はそういったものをぜひ男女局でつくっていただいて、各府省、地方公共団体などの行政機関でしっかり共有、運用していただくことが重要だと思います。
 ホームページに掲載していただければ、いろいろな企業さんなどが使えるようになると思いますので、私は政府が税金を投じてアンコンシャス・バイアスに関してやるべきことというのは、そういうことではないかと思っています。ありがとうございます。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 アンコンシャス・バイアスというのは、人によって思っていることが結構違うのです。なので、後で御説明しますけれども、必ずアンコンシャス・バイアスはあるということなのです。そうすると、偏見がいいかどうかだけ考えていただきたい。特定の部分は偏見とやっておいてもいいのか分からないのだけれども、人間は完全合理性なので、意思決定できないというような議論もあるので、それは後で議論できればと思います。
 窪田委員、お願いします。

○窪田委員 神戸大学の窪田でございます。
 今、佐藤先生から御指摘があった部分なのだろうと思いますが、アンコンシャス・バイアスで問題となるものとして、例えば女性だから不利に扱われるということがあります。これは非常に分かりやすいもので、パワハラの例として挙げられると思うのですが、他方,しばしば我々の業界の中でも出てくるものとして、私は差別など全くしていない、女性のほうが細かいことについては能力が高いと言っているのは、実は典型的なアンコンシャス・バイアスの例であって、なおかつ本人は全く意識していない。それを徹底して直すということは、簡単ではないだろうけれども、必要なのかと思いました。
 もう一つ、アンコンシャス・バイアス関連では、男女というカテゴリーに分けていろんな物事を判断していくということ自体、場合によってはそうした見方を支えているのかと思いました。法律の世界ですと、例えば損害賠償について、男女の逸失利益の賠償が異なるのですが、確かにそうしたデータはあるのですが、それを使うかどうかというのは、本当は単純な事実の問題ではなくて、そこに価値判断が入ってきている問題なのではないかと思いました。
 以上がアンコンシャス・バイアスについてです。
 もう一つ、夫婦別姓に関してです。前回とは重なる部分もありますが、先ほど銀行なり、税金の扱いの中で通称使用ということには慎重であるということで、マネーロンダリングの問題という御指摘がありました。マネーロンダリングだけではなくて、名前を変えるというのは、場合によってはクレジットカードのブラックリストから外れるためとか、いろんな形で使われます。実際に養子縁組はそういうふうに使われているケースがあって、一定の範囲では法務省の局長通達によって対応されている状況ですが、通称は、使い方によってはそのような可能性が出てくるのだろうと思います。
 夫婦別姓に対して慎重な考え方からは、通称を認めれば、問題は解決するという捉え方もあるのだろうと思うのですが、先ほどからお話ししているように、これが9割、95%に達しても、一定の部分では残る以上、この問題は解決していない。それと、私たち法律家の目として見てよく分からないのは、通称使用を認めるべきだというのですが、特に法律的に認められた通称はそもそも何なのだということが全く明確ではないのだろうと思います。
 これは前回申し上げたのですが、名前というのは個人を特定する上で最も重要な情報です。ここの部分で通称を使う、使わないということではなくて、それは個人の自己決定の問題だけではなくて、周囲の世界との関係も出てきますので、その点も確認しておきたいと思います。
 今日、オブザーバーとして法務省の方も聞いておられるのかもしれませんが、この法整備を進めるということに関して、一つ確認しておきたいのは、これは民法の改正になりますので、基本的には法務省の管轄ということになります。ただ、実はこの夫婦同氏の問題に関しては、1996年に既に法制審議会の答申が出ておりまして、そこで選択的夫婦別姓という方向が示されています。
 したがって、法整備というプロセスの中で見ると、法務省の検討段階としては終わっていて、あとは法案が提出されて国会審議だけだという状態になっているのだろうと思います。そこが全く動かないという状況ですので、その点を意識してこちら側で様々提案をする場合にも、それを踏まえて考えていく必要があるのだろうと思いました。
 以上です。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 最後の点はすごく大事なので、我々がどのように誰に発信するかということはすごく大事だと思います。
 佐々木委員、お願いします。

○佐々木委員 名古屋大学の佐々木です。
 画面を共有させていただきます。
 先ほど大崎委員からお話がありましたけれども、我々は科学分野のところからお話しさせていただきます。米国の国立科学財団NSFにADVANCEという女性研究者を増やすプログラムがあります。それは大学のカルチャーを変えることに力を入れておりまして、各大学共通の動きはアンコンシャス・バイアスの研修の義務づけになっています。ハーバードやスタンフォードでも、そのバイアス克服のための独自のツールを開発したりしております。
 そういうことで、日本でも科学技術分野の約100の学会が入ってる男女共同参画学協会連絡会、私も入っておりますけれども、そこのHPには無意識のバイアスのコーナーがあります。
 2017年にはリーフレットを作成し、学会で配布したりしております。その中に事例を載せていますが、シンポジウムのオーガナイザーが男性のときは発表者の女性割合が10%しかないのですが、選ぶ側のオーガナイザーに男女が入ると女性が32%になります。このように選ぶ側の性別が、一番効いてくる感じです。
 これは自分の調査なのですけれども、旧帝大の理学部における生物分野では、女性がPIの場合は、その研究室に女性教員が採用されやすく、女性教員割合が40%程度なのですけれども、男性のPIのときは15%に下がっています。一方、今、私が所属している名古屋大学の生命理学専攻は、女性のPIラボの場合は、66.7%、男性PIの場合は、50%となっており、差はありません。
 では、何が違うかというと、我々の専攻では、女性教員割合が他の大学と比べて非常に高いということです。すべての職位で、女性教員割合が30%近くあります。バイアスはマイノリティーに対して働くので、数を増やしていけば、自然となくなる。さらに、バイアスをなくせば数が増えていく。というように、いい循環が回るということで、数を増やすことは非常に重要なポイントだと思います。
 さらに学協会連絡会のホームページでは、資料やビデオも無償提供しています。大学の中でもいろいろ行われていますけれども、大事なのは意識と制度と統計、これをトライアングルで実行することだと考えています。
 今回、国の方で無意識のバイアスの調査をされましたけれども、その調査が毎年どのように変わっていくかというのは、政策がきっちりできているかどうかの確認のポイントになると思います。また、意識と制度もきっちりしていかなくてはいけません。
 先ほど言ったように、昇格とか、採用のところなどは、大きな差別に発展していきます。北東北の大学で組織しているダイバーシティー研究環境実現推進会議では、研究者採用を実施するために、無意識のバイアスでいろいろな気をつけなければならない点をまとめたリーフレットを作成したりしています。
 さらに、九州大学では、女性と若手のダイバーシティ・スーパーグローバル教員育成を実施していますが、その若手と女性を教育・育成していくプログラムの候補者を審議する審査員に対して、バイアスのチェックシートにサインをさせるということをしております。
 さらにこれはある研究機構の事例ですが、子育て、介護が不利にならないようにきっちり業績を点数化する、かつ育児、介護に伴っての休業期間で推定の業績をきっちり出して審査基準を明確する、かつ共有するということで、無意識のバイアスの入る余地が減るということが分かっています。
 さらにステレオタイプの脅威に関する研究で、テスト前に女子はもともと数学が苦手ということを伝えると点数が下がってしまいます。一方、聞かなかったグループは下がりません。なので、ステレオタイプの脅威を取り除くことがよい結果をもたらすということを知っていただきたいです。では、実際になぜこういうことが起きるかというと、ステレオタイプの脅威がある状況だと、脳がそれを克服しようという感情処理に使われてしまって、集中する能力を欠いてしまうからです。さらに健康状態にも影響を与えることが分かっています。
 次は旧姓の通称利用の話題ですが、女性の研究者というのは名前の影響を受ける業種だと思います。先ほどの調査の資料の44件のコメント中、研究者15名は非常に多いです。その理由は、研究者は名前が看板となっています。名前イコール業績で、論文の名前が変わると、自分の業績としてカウントされなくなる。確実に業績は名前とリンクしています。まだ通称利用ができていない大学、学部というのがあるので、そちらは文科省で調査をして、全国の大学で通称利用が導入されるようにしていただけないと、研究に大きな影響を与えていると思います。
 また、研究者は国際的な活動が基本ということで、海外の学会参加時にもたくさん問題がおきます。こういう名前が看板になる国際的な活動が基本の職業というのは、今後、別に研究者の分野ではなくても、いろいろ増えてくると思います。また、通称利用だけではなくて、別姓でないと解決しない問題もたくさんあります。実際の事例につきましては、後で2巡目が回ってきたら、お話させていただきたいと思います。
 以上です。

○佐藤会長 具体的な事例をどうもありがとうございます。
 治部委員、お願いします。

○治部委員 ありがとうございます。
 まずアンコンシャス・バイアスなのですけれども、私も最初に井上委員がおっしゃった差別とか、違法というものを悪気のないバイアスに分けなくてはいけないということに賛成であります。日本においてアンコンシャス・バイアスという言葉を企業研修で結構好んで使われるのですが、時にそれが差別をある種温存する、悪気がないから差別でもいいという感じに使われがちであるので、そこはいつもくぎを刺すようにしております。
 アンコンシャス・バイアスというのは分からないと思います。というのは、アンケートでは自己認識、アンコンシャス・バイアスは脳のパターン認識のようなものであって、もともとは動物としての自己防衛反応みたいなところから来ているので、悪いからやめろと言ってやめられるものではないのではないかと素人ながら思います。
 この件に関しては、多分研究のレビューが必要で、ここは研究者の方がいらっしゃるので、お譲りするとして、手っ取り早いのは、ワークデザイン、これは鏡写しになっていますけれども、NTT出版から翻訳が出ていて、イリス・ボネットさんというハーバード大学ケネディ行政大学院教授の方が、様々なデータを基にアンコンシャス・バイアスの測り方も含めて、いろんなリサーチを集めた本を書いて、和訳されているものがありますので、後ほど送ります。多分これを1冊お読みになることによって、ある種巨人の肩の上に乗れるのではないかと思いました。
 旧姓使用なのですけれども、まずは膨大の調査、すごくこんなにいっぱい行政がやったのだということで、その実態を調査するだけでも相当なお手間だったと思うのですけれども、大変お疲れさまでした。
 ここから分かることは、行政がやれることはほぼやり尽くしているのではないかと思いますし、ここから言える論理的なところは、通称使用の限界ではないかと思いました。この点で二つ申し上げると、経済の視点と人権の視点があると思うのです。
 経済合理性という視点からすると、一納税者として行政が通称の使用にここまで煩雑な事務の仕事をしているということに、正直言って、一生懸命やっているのに申し訳ないのですけれども、無駄だと思いました。行政というのは、公共政策を担っていただきたいので、例えばもっと困っている人です。今、コロナは大分落ち着いてきましたけれども、困っている方とか、そういうところに使っていただきたい事務コストが、はっきり言いますが、このような旧来の考え方を温存するために使われているのは、納税者として大変嘆かわしいことだと思います。
 一体これだけの行政コストを使って何を守ろうとしているのかということは、言わずもがななのですけれども、選択的夫婦別姓が今でも嫌だと思っている一部の方々の気持ちを守るために、ここまでの行政コストを使うということは、経済合理性の観点からして、私は容認する範囲を超えているのではないかと思います。
 もう一つは、人権の視点でこちらが本質になるのではないかと思いますが、これまでほかの委員の方々もおっしゃっていたとおり、人が自分の名前を呼ばれる、その名前を使うというのは、かなり人格の本質的な権利であります。私は長いこと記者をしておりまして、書面記事を書いておりましたので、私の名前、治部れんげという名前というのは、私のアイデンティティーだけではなくて、キャリアともひもづいています。
 ちなみに、うちは夫婦で事実婚なのですけれども、夫は研究者なので、先ほど佐々木委員からお話がありましたとおり、論文であるとか、そういったものと完全に名前がひもづいているので、どちらが変えるのも不合理、そういう状態にありました。
 ただ、そういうイレギュラーな選択ができるのは、私が日本女性としては結構異例で、経済的にも自立できているから、こういう選択をするのですが、ほとんど多くの日本の女性にはそういった選択はないということがあります。
 なぜ最高裁がずっと合憲と言っているのかということを考えたときに、結構シンプルなのではないかと思うのですが、最高裁の判事がほとんど全部男性で、今年3月の段階で歴代の最高裁判事は183人、女性は7人しかいないのです。4%弱です。
 この男性の判事の方々は、法律婚をしている方がほとんどだと思うのですが、今、96%が男性の姓になっている。つまり御自身が自分の姓を変えるという面倒、ないし精神的苦痛を味わっていない方々が人権の最後の砦のところにいらっしゃる以上、これは分からないだろうと思います。
 4%、法律婚をして姓を変えている人が日本にもいるわけですけれども、そういう方が知り合いでおりまして、メディアの方なので、定期的にお話しするのですが、男女不平等の問題に対して理解が深いのです。50代の男性なのですけれども、なぜあなたはこんなに分かるのですか、なぜあなたは私以上に怒っているのですかと聞いたところ、私は結婚して姓を変えたのですと、そこではすごく面倒があったり、いろいろな不利益などがあったりして、女性がこんなに理不尽な目に遭っているのだということがよく分かりましたとおっしゃっていました。問題は物すごくシンプルなのではないかと思います。
 男性が全く分かっていないかというと、そんなこともなくて、2015年12月に夫婦同姓が合憲だという判決が出たときに反対意見を出した方々がいらっしゃいました。女性の判事の方々が多かったのですけれども、中でも特に強い反対意見で、国家賠償のことまで踏み込んでおっしゃっていた方がいて、その方は実は70代の男性の判事だったのですけれども、山浦善樹さんという元弁護士の方なのですが、彼の本があったので、最近、書評を書いたのですけれども、このように言っています。
 「同姓にしないと結婚できないなどは即座に違憲だと思いました。」これは非常に真っ当な感覚なのではないかと思いますし、あとは、96%女性が変えているということに関して、山浦さんはこういうふうに言っているのですが、「多くの場合は女性に対してやりたくないことを無理強いするそれまでの姓を諦めさせる制度である」、現状はこうだと考えています。そして、実際に現実9割女性が変えているにもかかわらず、「これが純粋な選択の結果であるというのは、あまりにも実社会を知らないもの、あるいは狡猾な法律家の空言であると考えています」とまで言っています。
 私は正義というのはこういったところに現れているのではないかと思いますし、この乖離が様々な政治的なプレッシャーの中で行われていることはよく承知の上で、ちゃんと日本でも個人の尊厳が実現すると、正義は通るということをぜひ見せてあげてほしい。これが次世代の若い人たちの男の子も、女の子もだんだん意識が変わってきている中で、日本に希望が持てるようにする道ではないかと思います。
 以上です。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 次、白波瀬委員ですが、白波瀬委員の発言が終わった後に5分休憩ということでお願いします。

○白波瀬委員 よろしくお願いします。
 2点、5分ということですけれども、まずアンコンシャス・バイアスについて、これは佐藤先生からも最初にありましたが、アンコンシャス・バイアスという言葉だけが独り歩きしている部分があるので、これは整理したほうがいいと思います。
 すごく簡単に言うと、ある数値を見ても全く変わらない、あるいはある判断をするに当たって、結果的には現状維持になっている。その背景の要因として何があるのか。一つはアンコンシャス・バイアスという状況があるのではないか。だから、アンコンシャス・バイアスを全部なくしましょうとか、そういうことまで言ってしまうと、物すごく非現実になるので、ここに当たってのアンコンシャス・バイアスという仕組みを変えるには、逆に言えば、教育と合理的な強制性しかないと思っているので、ですから、その対象を明確にするということになると思います。
 1点、苦言というか、あれなのは、膨大な資料をアンコンシャス・バイアスにつけていただいたのですけれども、調査専門なのですが、項目がすごくバイアスされています。逆に言ったら、例えばですが、今、大崎さんも学術的にということで、完全にニュートラルな文面にして、実験的に入れていって、どれだけ人の回答が違うのかということを完全にコントロールはできないけれども、そういう形でしか男性のほうがこういうことに対してどうかとか、女性のほうがということは言えないのです。共働きでも男性は家庭よりも仕事を優先すべきだと思っている、これは非常に多いパターンですけれども、これを逆に女性でもということがここの中にちゃんとどこかに入っているのか、つながらないようにしています。
 物すごくあれなのは、育児期間中の女性は重要な仕事を担当するべきではない、悪いのだけれども、この項目はやめていただきたいです。つまりすごく小さい子がいるとか、あるいは障害を持つ子がいるとか、例えばお医者さんとかに24時間体制で、それで何かあったときに要するに出なければいけない。こういう条件が駄目だったら、あなたは仕事ができませんねという情景は何となく想定されていると思うのですけれども、これを想定すること自体がおかしい。いろんな人たちが働くという状況があれば、そういう期間中については、合理的な配慮の下に伏線的に設定すればいいのです。これはどちらが先で駄目なのか分からないというか、同じように男性が重要な仕事を担当すべきではないという、この文面については、逆の意味でアンコンシャス・バイアスが成り立っている。
 我々自身、研究者自体が注意しなくてはいけないことだと思います。ですから、アンコンシャス・バイアスは全てのものを持っているのです。教育しないと、我々でも女だからできると言ってしまうのです。それはアンコンシャス・バイアスという、そこはある意味で教育できません、対象を具体化させる、これは後ほどやられるということだと思います。
 あと、今、いろんなところで事例があるということで、非常に重要な点は、自分自身がそう思っているということを自覚してもらうという意味で、事例を読むことによって、そうだと気づいてもらうことがまさしく教育なので、事例集を基にしていろんなところの教育期間に入れていただくということです。現状、数値目標も結果として出ているので、繰り返しだけれども、その構図をちゃんと整理しましょう。
 あとは、選択的夫婦別姓についてです。研究者で、自分のことを言うのはあれですけれども、長い間、こういう状況にあって、とても大変です。でも、並記はやめてください。並記したら、あなたはいいと思われる。括弧書きに入れることがすごく変なのです。私は白波瀬佐和子なのです。もう一人のイシダさんが私の中にいるのです。それを併記で持ってこいというのは、個人的には物すごく違和感があります。
 この何十年間、私はこれでやっているのですが、非常に不便です。もちろん博士号を取った名前が白波瀬ですから、それは全く自然な成り行きなのですけれども、海外のパスポートで、あるいは税金でといったときには、完全に戸籍名でシフトするのですが、学会のときなどにひもづけられるとか、それで説明しなければいけないとか、支払い調書のときもいちいち電話をかけて、全部戸籍名を書いてもらうのですけれども、私はなぜあれなのかと思うと、なぜ自分でそう言っているのとか、申し訳ないです、すみませんと自分で言ってしまうのです。責任もない人にいっぱい煩雑なことをしてもらわなければいけなくて、書いてもらわなければいけないではないですか。そういう気持ちというのは、当事者ばかりをあれすると、数としては少ないから、ポイントは選択のところにあるので、選択させてくださいということでございます。
 以上です。

○佐藤会長 皆さん、個人的な研究を加えての御説明をありがとうございます。
 それでは、いつものとおり、オンラインの会議は結構疲れるので、背伸びも大事なので、5分だけ、今、3分なので、8分再開です。背伸びなり、お茶なりを飲んでいただければと思います。
 5分休憩です。

(休憩)

○佐藤会長 それでは、少しお待たせしましたけれども、続けさせていただければと思います。
 続きまして、徳倉委員に御説明いただければと思います。よろしくお願いします。

○徳倉委員 ファザーリング・ジャパンの徳倉でございます。よろしくお願いいたします。
 まずアンコンシャス・バイアスから、幾つか事例をお話ししながらということで、以前、内閣府の連携推進会議の委員をさせていただいたときに、大崎委員と御一緒していたと記憶しているのですけれども、長野県の学校の先生に来ていただいて、理科の担当の先生なのですが、高学年の理科授業の実験のときに、全ての方に許可を取って、ビデオと音声をずっと収録し続けて、そこにアンコンシャス・バイアスがないだろうかという実験をされたことがあります。
 この結果が結構驚愕で、アルコールランプに火をつけるという実験なのですけれども、1、2、3、4ということで、グループで順番をつけて、1の人がアルコールランプをつけるとか、2の人が消すとか、決めているのですが、撮っているものを見ていくと、順番に関係なく、男の子が火をつけるのは男の仕事だからみたいな、片づけるのは女の子の仕事だからみたいなことが、大多数ではないにしろ、結構散見をされる。教員として、そういうことに気をつけてやっていたけれども、現実問題として、そういう授業になっていたことに驚愕をされたと発表していただいたことがあります。
 先ほど白波瀬先生もおっしゃいましたけれども、まず教育の部分に関して、教員であるとか、教員を取りまとめる管理職であるとか、そういうところにしっかりとした人権意識が必要だと思います。授業を遂行していく上で、世界的に見て、教育のところはジェンダーフルイドがなっているとされている。しかしながら、実際の現場ではそういうものが培われておらず、いわゆるアンコンシャス・バイアスのまま育ってきた中で、その方々が社会に出ていく、仕事をしていくとなっていくと、再生産を止めるという意味では、この年齢層からどういう取組をしていくのかというのが、やはり男女共同はしっかり発信をしながら、今日も冒頭で文科省さんに来ていただいておりますが、これは各省連携をしながら一つ一つ、これは10年、15年かかるかもしれないけれども、確実に一世代クリアすれば、大きく変わっていく事例だと思いますが、一つ共有をさせていただきたいと思います。
 今度、企業の話に移りますけれども、私は四国におりますので、四国の金融機関という言い方をしておきますが、30代後半から40代の女性の方が、ある研修業務を担うことになりました。新人業務の研修内容に、女性だけがお茶くみの研修をするという項目があったそうです。それは女性だけがするものではなくて、お茶くみという業務があるならば、男性の新人も受けるべきだということを提案したところ、女性の管理職から、これは女がする仕事であると言われたそうです。
 そこからが驚愕なのですが、私は息子がいるけれども、お茶くみをさせるためにいい大学に入れたのではないというコメントが出て、その一言を聞いて、もう伝えるのはやめたと言っていました。ここはもう先がないかもしれないという相談を受けました。
 先ほど様々な先生方もおっしゃられましたし、先ほどの氏にもつながりますけれども、意思決定権者にお茶くみをした人はいないわけです。何が言いたいかといいますと、別姓のほうとリンクしてきてしまいますが、人権の意識とか、そういうことも含めて、やはりこういう問題があるからこそ、クオータ制度が必要だという、非常に分かりやすい制度設計をしていかなければ、今、いろんな制度はできてきているけれども、それを運用する風土がないのです。
 先ほど局長に御紹介いただきましたけれども、地方から女性がなぜ都会に行くのかというと、都会にもアンコンシャス・バイアスが強い組織はありますし、企業もあるのですが、そうではない組織もたくさんあるのです。地方はその割合が極端に少ないわけです。そうすると、自分のキャリアとか、自分の生き方を生かせるところの選択肢や可能性が高いほうにみんな流れていてきます。そうすると、地域の中でなかなか合わない。いただいた御意見の中にも、地方、田舎に帰ったら圧力が強くてきついみたいな、そういう話があるように、どんどん人、特に女性が首都圏だったり、場合によっては海外に行ってしまうことがあると思います。
 個別に言うと、私が12年前に育休を取ったときに、予防接種に行ったら、あなたは何をしに来たのかとお医者さんに言われました。お母さんはどこにいるのかと言われて、私が子供を抱いているわけですから、妻はあなたと一緒で、○○病院でドクターをやっていると腹で思っておりましたけれども、そういう中のアンコンシャス・バイアスは幾つかあるのです。
 最後に一つ言いたいのは、アンコンシャス・バイアスというと、極端な言い方をしますけれども、地方だと、何それ、おいしいのかという感じです。全く通じません。本当にそうです。四国でアンコンシャス・バイアスと言ったら、それは何という感じです。SDGsの理念が全く分かっていない人が、ここにバッジをつけているのと全く同じぐらい、意味が通じないわけです。そうだとすると、アンコンシャス・バイアスというのは、分かりやすい日本語が要ると思います。
 先ほど白波瀬先生は、名字に括弧は必要ないとおっしゃいましたけれども、今日はメディアの方もたくさん来ておられまして、支援の限りもあると思いますが、例えばアンコンシャス・バイアス括弧何々みたいな、やはり日本語に直していかないと浸透はしていかない。
 12年前にイクメンという言葉はなくて、11年前にイクメンという言葉ができて、徳倉さんってイクメンなのね、だから、育児休業を取って、働きながら子育てをしているのねと言われたように、12年前はリーマン・ショックのときでしたから、リーマン・ショックで徳倉さんの会社の業績が悪くて、首になって、あの人、育児しかしていないのねって、当時、埼玉県で言われていましたから、やはりそういうふうに言葉をどうつくっていくのかというのは、制度をつくっていくのと、もう一つ、風土をどうつくっていくのかという点で、とても大事なポイントになってきます。
 この委員のメンバーの中では、アンコンシャス・バイアスはこうだよねって、その中でも濃淡がありますけれども、これを日本の中に広げていく施策に何が必要なのかというところを、またどこかできちっと議論できれば、恐らく浸透する仕組みとか、再生産を防ぐ仕組みができてくるのではないかと思います。
 以上になります。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 続きまして、内藤委員、お願いいたします。

○内藤委員 アンコンシャス・バイアスについて、私自身、様々な問題があると思っていて、自治体で事業実施をする際にも問題があると感じています。
 例えば私は佐々木先生と同様に、女性の理系進学が少ないということにも問題意識を持っておりまして、徳島市では8月に女子中高生にプログラミング教育を無料で提供いたしました。その際に、内部の職員から、あと、市民の方々からも何で女性だけなのか、何で男性は駄目なのか、女性だけに無料で提供するのはおかしいのではないか、市長はいつも多様性と言っているくせに、誰でも受けられるようにしないということは、公平ではないと言われたのです。
 やはりそこで思ったのは、アンコンシャス・バイアスもそうなのですけれども、D&I、多様性の推進とか、真の公平を考えた上での機会提供というのは、どういうものなのかという教育をきちんとしないと、アンコンシャス・バイアスをどうにかして改善しようとするときに、そこがネックになってくると感じました。ですので、徳島市としては、多様性の教育の部分を研修を通してだったり、様々な事業実施を通じて、自治体全体、町全体に浸透させなければいけないと思っています。
 あとは、通称使用、旧姓利用の問題なのですけれども、私自身は、実際、通称使用とか、旧姓併記では限界があるので、選択的夫婦別姓制度を推進すべきという立場なのですが、現在、自治体としては、選択的夫婦別姓を使えないので、今の旧姓併記の徳島市の状況について、少しお知らせしたいと思います。
 旧姓併記につきましては、徳島市の住民票での実施件数が、令和元年度、これは11月からなので、5か月間で41件、令和2年度で34件、令和3年度が8月までの5か月間で25件となっていまして、人口25万人の徳島市の中で、1年10か月間の間で100人となっています。内訳は、女性の改姓が多いということもありますので、男性13人、女性87人という状況です。
 この会議がある中で、この情報を住民課から取り寄せたのですが、住民課の職員としては、ちょっと少ないです、周知がもしかしたら足りていないのかもしれない、だから、婚姻時とか、離婚時とか、周知に努めるようにしようという御意見をいただきました。
 一方で、私自身は、旧姓併記は限界があることも知っていますので、旧姓併記の啓発を自治体としてすることに対して、若干違和感はあります。もちろん知らない人が不利益を被ることはいけないことだと思いますので、そういった部分の啓発はできるだけさせていただきたいと思います。
 また、少し細かいことなのですけれども、例えば離婚で自動的に女性が元の姓に戻すといったときに、旧姓の併記は住民票において自動的には消えないのです。自分からこの旧姓を消してくださいという申請を出さなければ、旧姓が消えないので、例えば旧姓が内藤だったとして、旧姓が内藤と表示される状況に今なっていますので、ここも行政事務として、離婚して、旧姓内藤になっていた部分を取り下げるための申請書をわざわざ書かなければいけないというのは、どうかと思います。それも含めて、私は国にも求めていきたいと思います。
 あと、私が市長になるまで、旧姓、通称使用は、徳島市役所ではできなかったのです。令和3年です。令和の時代、令和3年3月からやっと旧姓の使用が認められるようになって、現在5人の方が利用していますけれども、自治体でもトップの意識によって、旧姓が使用できる自治体とできない自治体があります。旧姓使用ができるということは、全国で徹底してやっていただきたいと思います。
 アンコンシャス・バイアスは、今、おいしいのかというところだと思いますけれども、そういった意識を改善させるために、使用ができない自治体、あまり考えられたことがない自治体の首長さんなどには、こういうこともあるので、できるようにしてくださいという働きかけは、今からもしようと思っています。
 以上です。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 山口委員、お願いいたします。

○山口委員 ありがとうございます。
 アンコンシャス・バイアスについての調査からコメントをします。職場におけるアンコンシャス・バイアスなど、男女についての意識の解消は、もちろん重要だと思うのですが、これは既に多くの方が指摘なさっています。一方、教育の役割は非常に重要だということを感じていますが、今回、調査対象になっていないということなので、この点にフォーカスしたような調査も、今後、確実に必要になっていくと思います。
 学校段階が上がるに連れ女性の教員が減りますし、理数系の女性の先生は特に少ないです。さらには名簿順序ですとか、整列とか、席配置とか、あらゆる場面で、必然性もないのに男女を区別して扱うというのが慣習になっていて、これはまさにアンコンシャス・バイアスです。分けて扱うのが当然だという意識になってしまっていて、それが子供たちの意識に影響する。将来、子供たちが大人になっても引きずっていくので、この部分に対する教育というのは欠かせない。今回の調査では20歳以上ということになっていましたが、子供たちについての実態の把握も欠かせない問題になっていくだろうと思います。
 また、調査でも、地方における女性差別意識の強さみたいなことが指摘されていましたし、内藤さんから御指摘があったようなところはあるのですが、地方から大都市、特に東京へ若い人口が流出しているわけですが、流出という点で見ると、女性のほうが男性よりも大きいのです。そういった意味で、地方にとっても大きな経済的な損失になっていると考えられます。もちろん人が動くのには、様々な理由があるわけですが、可能性としては、女性に対する意識の問題もあると思うので、これが大きな経済的損失であるということは、もっと注目されていいと思います。
 また、私は調査の人間ですので、調査そのものについて、幾つか指摘しておきたいと思います。常に指摘されていますし、白波瀬さんから指摘がありましたけれども、文言レベルでの設計をしっかりしたほうがいいだろうと思います。既にいろいろな専門家からコメントとか、アドバイスがあったのかもしれないのですが、より多くの学術的な専門家の知見を入れていって、質の高い調査をしてほしい、今まで以上に力を入れてほしいと思いました。
 同時に、今回、非常に面白い結果も出ていますので、こうした調査の個票というのは、公開することをデフォルトにしてほしいと思います。多くの方が自由に分析して議論を行えるようにすること自体、問題の広い認識につながりますし、また、そこから新しい論点も出てくると思います。
 また、この手の調査は、毎回社会の問題が変わるので、新しいことを聞かなければいけないという側面はあるのですが、同じことを聞くことも重要なのです。意識の変化をきちっと追跡できるように、数年に一度、定期的に同じ調査を行うべきなのですが、そうした調査の継続性も必要だと思います。どうしても組織のメンバーは変わってしまうので、難しいところはあるのですが、過去からの継続性というのも、調査において重視してほしいと思います。
 旧姓の通称使用については、人権の問題だということは言うまでもないことで、既に御指摘のとおりです。実務上あるいは利便性の観点から見たら、どうなのだろうかということも、今回非常によく調査されていると思います。これまで、企業、行政がかなりの努力をしてきたわけですが、完全に限界に達していることがよく分かったと思います。具体的な事例がたくさん出てきています。特に全く動かしようのない事実として、金融機関、税金関連の手続、さらに海外のパスポートといった場面で、全く通用しない問題だということが分かったと思います。
 それと同時に、治部さんから御指摘があったとおり、個人に非常に大きな負担をかけるというのは当然なのだけれども、それ以上に企業にとって事務的な負担を負わせると同時に、行政にとっても大きな負担になってしまっていて、これは経済的にもマイナスになることが明白になったと理解しています。
 以上です。

○佐藤会長 山口先生が最後に言われたことは、大事です。旧姓使用を進めるというのは、実はいろんなコストをかけてしまっている。これでもやるのかということは、すごく大事な論点だと思います。
 最後になりましたけれども、山田委員、お願いいたします。

○山田委員 皆さん、こんにちは。
 まずアンコンシャス・バイアスですが、何人かの方がおっしゃっていたように、この言葉の認知度自体は20%ぐらいということで、非常に低い。しかも、無意識の思い込みという言葉の多義性といいますか、本来はハラスメント的な内容のものと、比較的罪のない思い込みといったものがごっちゃになっているという点での曖昧さというのは、この問題について、様々な人と議論するときに感じていることです。
 意思決定を制する昭和の世代の50代、60代ぐらいの人たちと話す機会が多いのですが、無意識で思い込むということ自体が悪なのかということに対する、素朴な疑問があります。思い込みが悪なのか。これは教育という背景があると先ほど先生がおっしゃっていましたけれども、自分が育った教育環境とか、時代背景、あるいは企業文化と密接に関連するものなのです。
 例えば男は人前で涙を見せないとか、男子厨房に入らずとか、男は結婚してこそ一人前といったようなことは、昭和の時代の学生、あるいは企業で教育を受けた人は、こういう教育を受けた人が多いのです。それが美徳のようにして過ごしてきた人たちにとって、令和の時代になって、急にそれがおかしいと言われても、表向きに反論することは恥ずかしいので、しないけれども、平場の議論、例えばお酒が一杯入ったときに、本音で私などと話す機会になると、先生、日本も本当に住みにくくなりましたね、私たちの時代、これがいいと言われてやってきたのだけれども、今度、悪だということになったら、後輩にどうやって指導したらいいのか分からないという企業の経営者とか、管理職の人たちは現実にかなりいます。
 私自身が経験したことで、今までもお話をしたことがあるのですが、弁護士会がクオータ制を実現する過程で、3年ぐらいかけていろいろな議論をしたのですが、途中で様々な男性の反発を受けたのです。その中で特に記憶に残っていることとして、女性に仕事や家事に加えて、副会長という公益的活動をさせることは酷である、男性として忍びないという意見が結構ありました。これが割と支持を受けたのです。
 また、ある企業で、私、社外取締役などを複数やっているものですから、部長を昇進させるときの議論に加わったことがあったのですが、女性の候補者がいたのですけれども、彼女は能力的に非常に優秀だけれども、今、お子さんが適齢で、教育等々で大変だ、だから、ここは男性を部長に昇進させたほうがいいだろうということがありました。一流企業と言われているところで、そういう議論がされたことがあって、私は思わず、えっと思ったのですが、これが普通に行われていることです。
 アンコンシャス・バイアスという言葉は難しくなりますが、私はそこに一種の優しさとか、男らしさの美学というような、そういう衣装をまとって、この問題は出てきているという感じが非常に強くするのです。なので、これをどういうふうに伝えていくか。教育とか、啓蒙という形でやっていっても、平場の本音の議論になったときに、少なくとも今の意思決定階層の人たちに本当に響いているのだろうかということをすごく強く感じます。
 私自身のやり方としては、アンコンシャス・バイアスという言葉というよりは、どなたかもちょっとおっしゃっていましたけれども、私は自分がつくる企業研修のビデオとか、本の中では、例えば荷物運びは男性の仕事で、お茶くみは女性の仕事だといったようなものは、正面からジェンダーハラスメントという位置づけで、これは違法である。要するに企業の内規に反するハラスメントなのだという、ちょっと強烈かもしれないのですけれども、そういう位置づけをしています。そうしないと、アンコンシャス・バイアスという曖昧な言葉で、そこに定義づけることは、逃げ道ができてしまうのです。思い込みなのだからしようがないのではないか、私が育った昭和の時代は、それが美徳ということで奨励されていたということで処理されてしまうことがありましたので、方法論としては、やや過激なのかもしれませんが、そういったことを感じています。
 それから、通称使用、旧姓使用の問題については、皆さんが言ったとおり、自分自身の名前というのは、当たり前のことですが、人格権に関わる基本的な人権の問題なので、ここは言わずもがなのところなのですが、事務所の中にも旧姓使用している女性もいますし、弁護士会の中にもいるので、話を聞くと、人権の本質論を除いても、あまりにも手続が煩雑であると言っていました。その煩雑さに耐えられないということを、現実問題の訴えとして聞きました。
 これを前提に最高裁で判決の出た選択的夫婦別姓の議論があるのですが、学習ということではなくて、ごくごく普通のことをやろうとしているのに、何で時代の趨勢とか、あるいは最近の自民党の先生方でいう絆の問題とか、そこに話が行くのか。私はどちらの立場でもなくて、普通の考えで、自分自身の名前というのは人格に関わる基本的な権利なので、それを使用することは政治的踏み絵として行うことではなくて、最も基本的な憲法上の権利だと思います。それを最高裁が時期尚早みたいな、ああいう判決のされ方をしているのであれば、旧姓使用の問題も含めて、何らかの形で法制化的な方向に持っていくことがいいと思います。日本は司法がまだ弱いので、立法行政が先頭に立って対応しなければいけないと思っています。
 以上です。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 少しだけ、先ほどのアンコンシャス・バイアスなのですけれども、まず大前提として、限定合理性という議論があって、合理的に意思決定しようと思ってもできないのです。そういう意味では、これを完全になくすということはできないのです。
 ただ、その中で、やはりなくさなければいけないものがあるのです。今、山田さんが言われたように、例えば企業を取り上げると、大卒の女性でも管理職になりたいですかと聞くと、自分は無理ですみたいなことを言う人がいるのです。自分が意思決定したというよりは、戻ってきてしまったところがあるのです。これは研修です。先ほどの教育や研修という部分でいうと、女性もできますという研修をしなければいけない。ただ、そういうことをやっても、自分は管理職に向かないと思いますとか、こういうことは残るわけです。
 もう一つ問題なのは、先ほど昇進という話がありましたけれども、例えば管理職が部下に仕事を割り振る。ちょっと背伸びできるような仕事で、この仕事をやると管理職に一歩近づくという仕事があったときに、女性は管理職に向かないのだから、この仕事は男性の部下に割り振ろう。つまり問題なのは、いわゆる管理職が個々人に仕事を割り振るという意思決定をするときに、現段階で言えば、中堅女性の多くは管理職になりたいと思っていないという情報で判断し、男性に振る。これが問題なのです。確かに現状を調査すれば、女性は管理職になりたくないと思っているかもしれない。問題なのは、佐藤さんという女性の部下がどう思っているかなのです。この問題です。つまり個人的な意思決定をするときに、平均的なもので判断するのではなく、その人がどうかなのです。個々人がどう考えているかを把握することがすごく大事で、個々人に対して仕事を割り振るとか、評価をするときに、女性だからとか、高齢者だからとか、そういうことではなく、その人がどういう人なのかと考えるというのが、もう一つの教育です。それがすごく大事だと考えています。
 二巡目に行くのですけれども、残りは23分ぐらいなので、1人2分ぐらいです。また戻ると、常に山田さんとか、山口さんが最後になってしまうから、今日の二巡目は治部さんから行きます。治部さんから行って、ぐるっと回りますので、治部さん、1人2分ぐらいでお願いします。

○治部委員 ありがとうございました。
 皆さんがおっしゃるとおりだと思うのですが、私は選択的夫婦別姓の話をしておきたいのですけれども、昨日、自民党の総裁選があったわけですが、それに先立って、いろいろなメディアが男女政策に関しても取材をしていまして、考えを聞いたりしていました。
 私、毎日新聞等々がやった、総裁選の立候補者4人にアンケートしたもの、回答の原文も見せてもらって、もちろん明確に賛成とか、反対とおっしゃっている方もいらっしゃるのですけれども、回答を留保していらっしゃる方もいらっしゃいまして、それは国民世論がどちらに向いているのかというところを結構ご覧になっているのではないかと思いました。
 今日はメディアの方もたくさんいらっしゃるので、ぜひお願いしたいのは、皆さんに考えていただきたいと思います。我々委員はそれぞれの専門性でもって物を言っているのですけれども、メディアの皆さんは、不都合とか、不利益などを感じていらっしゃらないでしょうか。今回、行政にはすごくいっぱい情報を出していただいて、一生懸命やっていると思いますし、我々も専門家としてやっているのですけれども、メディアにも政策決定過程に積極的に参加していただいて、届けていただきたいのです。
 特に、今日、徳倉委員と内藤委員のお話はすごく重要だと思いました。こういった話題で、東京の大都市圏とそれ以外のところで温度が違いますので、地方の新聞であるとか、テレビであるとか、そういった方々に一緒になって変えていくための議論形成に参加していただきたいと思いました。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 白波瀬委員、お願いします。

○白波瀬委員 ありがとうございます。
 2点あります。
 一つは、今、山田委員からあったお話なのですけれども、アンコンシャス・バイアスです。私たちは同じような時代を生きていて、もちろん全面否定するということは得策ではないと思います。それが悪くて、悪いことをして、ずっとここまで来たわけではないし、逆に言えば、ある意味の合理的な判断でここまで来ている。選択的夫婦別姓もそうなのですけれども、現状、実際のマジョリティーの9割以上は一緒なのです。だけれども、大変だけれども、変えなければいけません、特に次の時代に向かってというところで、やはり説明はしていただきたいということがあります。そういう意味では、バランス感覚があると思いました。
 もう一つ、女性は管理職になりたいかという話です。私も含めて、多くの人はそんなにない。男の人にそういう質問をしますか。やらないでしょう。私がずっと言っているのは、キャリアの一つなのです。それも期待の下に入っているというところがあるから、それは酷だと思います。正直なところは、やはりやりたくない。でも、ここはしようがない、私、もう高齢だからとか、そこだと思います。

○佐藤会長 ありがとうございました。
 徳倉委員、お願いします。

○徳倉委員 私は先ほどアンコンシャス・バイアスが中心でしたので、選択的夫婦別姓のことについてお話ししたいと思っております。
 それに関連して、内閣府の調査項目の中で、年代的なものもあるかもしれませんけれども、一番違和感があったのが、家を継ぐという表現でした。私、昭和54年生まれなのですけれども、家を継ぐという表現そのものが、昭和の感じがします。これが家業を継ぐですと、百歩譲って理解できます。
 例えば内藤委員がいらっしゃる徳島県などは、女性の経営者が日本一多いエリアです。しかし、私が住んでいる香川県は、女性の管理職が最も少ない県なのです。風土性ももちろんあるのですけれども、家を継ぐという表現は、恐らく今の40歳から下の年代には、あまり意味をなさないというか、ちょっと理解しづらい。感覚的に分かりづらいところがあると思いました。
 ここの大事なポイントは、先生方が皆さんおっしゃいましたけれども、選択できるということなのです。みんなが強制的に氏を変えていくではなくて、選択をしたい人が選ぶことができる中で、様々な先生から社会的コストが増大している、煩雑であるとありました。これが煩雑でなければいいのかということではなくて、自分が生まれてから持っているものをただ保持したいというだけのことなので、先ほど山田先生がおっしゃいましたけれども、リベラル、保守に関係なく、自分のものは自分のものですから、国というジャイアンみたいなものが出てきて、お前のものも俺のものみたいになってしまうところに、若い世代にとっては強烈な違和感が出てきているし、それまで我慢してこられた上の世代の方々もいらっしゃるのだと思います。
 この議論のときに、最後一つだけ大事なポイントで、今度の新総裁もそういうふうに一部思っていらっしゃるという報道があって、聞きましたけれども、子供をどうするのかということをセットに議論していきたいと思います。夫婦になっていく、その中で選択をしていく。そのケースのときに、そこから授かっていく子供の名前、氏をどういうふうに、彼ら、彼女たちが選択的に選ぶことができるのかというところを議論にセットしないと、いつも子供はどうするのかという理由を基に保留をされていく可能性が出てくると思うので、ここの議論の中では、次世代の中の氏をどうしていくのかということを一緒に考えていきたいと思っております。
 以上です。

○佐藤会長 徳倉さんが最後に言ったことは大事です。具体的な制度設計をどうするかということまでを含めて提示するというのは、すごく大事だと思います。
 内藤委員、お願いします。

○内藤委員 山口先生もおっしゃられていたのですけれども、地方からの人口流出というのは、アンコンシャス・バイアスによるものもすごくあると思っています。そういう意味で、やはり地方創生とか、地域活性化の文脈でもアンコンシャス・バイアスだったり、ジェンダーギャップの解消をもっと議論できればと考えています。
 私自身もそういうものがあって、東京に出ていったという経験もございますし、地方ではアンコンシャス・バイアスというよりは、コンシャス・バイアスがいまだにすごく残っていると思いますので、改善できる事業を徳島市でも実施していければと思っておりますので、先生方にも地方から変革をするために、御協力とか、御助言をいただければと思います。
 以上です。

○佐藤会長 山口委員、お願いします。

○山口委員 ありがとうございます。
 こうして皆さんで話をしているジェンダーの問題というのは、基本的人権の問題なので、経済とか、お金の問題に結びつけなくていいというのは、全くおっしゃるとおりだと思います。
 一方で、逆にマジョリティーで、一切自分は損をしないと思っている人たちを説得しないと、世の中はなかなか動いていかないと思いますので、この辺の経済的な不利益の話も残念ながら欠かせないと思います。
 また、山田さん、佐藤さんから御指摘があったように、女性は管理職になりたがっていないからみたいなことで、勝手にいろいろと判断するということがありました。そこで佐藤さんがおっしゃったように、属性で勝手に判断しないというのは非常に重要で、基本的な考え方の一つだと思います。
 経済学の中で統計的差別とよく言われるものなのですが、これはまさに悪気がないところから始まっているのだけれども、実際の行為は個人を見ないで、属性で、男だから、女だから、年齢が高い、低いという形で見てしまって、個人を尊重しないということに結局問題があるわけです。こうした考え方もより広まっていくといいと思います。
 ありがとうございます。

○佐藤会長 山田委員、お願いします。

○山田委員 私、先ほど50代、60代の意思決定階層の人たちは、教育から受けた思い込みが多い、あるいは偏見があるというお話をしましたが、逆に20代、30代は大分変ってきているという印象を持ちます。育児、家事、会社の仕事、夫婦の役割等々についても、50代以上と変わってきているので、この問題を普通に話せる環境というのは、かなり醸成されてきているのではないかということは、付け加えておきたいと思います。
 それから、管理職になりたくない女性がいるというのは、本当に上に行きたくないのではなくて、インフラ整備がされていないから、行くことが苦しいので、行けないという背景事情があるということを忘れてはいけないので、そこを見極めた上で、やはりインフラ整備が先だというと、結局この問題はいつまでも進まないとは言われるのですが、インフラ整備も同時に進めていかなければいけない。
 もう一つ、どういうふうに発信していくかということの中で、安倍さんのときに、安倍さんが本当に思っていたかどうかは別として、積極的に女性をいろんなところに登用しようということで言っていました。形から入ると言うと、安倍さんに失礼かもしれないのですけれども、形から入る部分も必要で、例えば先ほど出た最高裁判事の割合ですが、法律上の義務としてのクオータにしなくても、15人いたら最低3人、できれば5人入れるとか、閣僚が20人いたら、そのうち3人、4人は女性を絶対に入れるべきだということをアピールしていくということを、例えばこの会で発信していくことができれば、それを否定するということは、今しにくい世の中の流れにはなっていると思うので、トップ、いわゆる上のポジションに女性が入っていくということは、絶対に力になると思いますから、数も大事だし、上の階層に女性の発言力を持った人が行くということがとても重要なのではないかと思います。
 以上です。

○佐藤会長 ありがとうございます。
 女性が管理職になりたくないという話ですが、そう思い込んでいるケースもあるのですけれども、結構合理的に判断しているものもあるのです。つまり今の男性管理職の働き方は、自分はやりたくない。この問題を解消しなければ駄目で、管理職の働き方改革をやらない限り、女性の管理職は進まないです。積極的になりたくないと言っている人もたくさんいるので、そのとおりだと思います。
 井上さん、お願いいたします。

○井上委員 ありがとうございます。
 アンコンシャス・バイアスで、今、女性の管理職になりたくないということですが、ちゃんと研修をしている女性は、上昇志向というか、そういう意識があるということは、データでも出ていますから、女性に研修の機会が与えられていないというところも非常に問題ではないかと思います。
 それから、年齢が高い人のほうが、どうしても偏見を持っているという話がありましたけれども、最近、専業主婦の母親に育てられた男子学生は、それを見ているので、自分が結婚する場合、妻は専業主婦になって、僕のことを支えてもらいたいというのがすごく多くなっているということを感じます。なので、再生産がまさにそこで行われていると思うのです。少なくとも教育、小学校とか、その時代から、あなたの家庭はそうかもしれないけれども、いろんな家庭がある、そういう中で認め合う、まさに多様性を尊重する教育が必要ではないかと思います。
 夫婦別姓については、先ほど窪田委員からもありました。私も同様に思います。2015年の最高裁の判決が出たときの連合の談話でも、1996年に法制審が民法の改正案を答申してから20年間も経過している中で、何の立法措置も執られていないことについて、国会は真摯かつ速やかに対応すべきと記載をしています。まさに国会にボールが投げられていて、何でこれだけ何もやらないのかというのは、もっと言っていかなければいけないのではないかと思います。
 以上です。

○佐藤会長 どうもありがとうございます。
 大崎委員、お願いします。

○大崎委員 ありがとうございます。
 アンコンシャス・バイアスですけれども、アンコンシャス・バイアスという概念とそれを用いたアプローチを何のために活用するのかということをしっかり検討すればいいと思います。
 その際に、諸外国の取組を参考にすればいいと思いますし、あとは、佐々木委員が御紹介くださったように、こんなにいろんなツールがあるということは、私も知りませんでしたので、既にできている客観的な評価をしていく上での仕組みといいますか、そのガイドラインみたいなもの、そういうものの活用は日本でもできる機会があるのではないかと思います。
 あと、選択的夫婦別姓に関してですけれども、今回の重点方針2021の大きな問題意識で、国際的な遅れということがございました。女性差別撤廃条約に関して、後ほどお話があるかもしれませんが、委員会から再三日本政府が指摘されているのが、この問題だと思います。
 最近、G7サミット、今年の首脳宣言を見ますと、民主主義国家の集まりであるという、G7はそういうアイデンティティーであるというのがすごく強調されたと見ています。首脳宣言の中に、そういう考え方、価値観を共通に持つ国々の集り、多国間主義がやることとして、ジェンダー平等というのはちゃんと特出しで出しています。ジェンダー平等の共通概念、G7を含めて、国際協調での共通概念というのは、男女平等とはどういうことか、ジェンダー平等とはどういうことか、この共通理解の基盤であるのが女性差別撤廃条約ですので、そこで何を日本政府が勧告されているのかということを含めて、国際的な遅れ、その背景にある問題をしっかりと検証していかなければいけないのではないかと思います。

○佐藤会長 どうもありがとうございます。
 窪田委員、お願いいたします。

○窪田委員 私からは2点、いずれも夫婦別姓の話に関して、少し発言させていただければと思います。
 一つは、先ほど子供の氏の話が出ておりました。制度設計が重要だということだったのですが、1996年の法制審の答申においては、子の氏については、対応されております。選択的夫婦別姓を選択する場合には、生まれた子供の氏についても、あらかじめ決めておくとなっています。これがいいかどうかはともかく、少なくとも制度の案としては、既に用意されていることになりますので、この議論をしていく上でも、法制審議会の答申と答申に至る議論を資料として共有していただいてから議論していったほうが、生産的だと思いました。
 第2点は、徳倉委員から御指摘のあった部分なのですが、基本的には同姓か別姓かを議論しているのではなくて、選択を認めるかどうかということが問題となっています。これについても様々な統計がありますが、初期の段階から、法律家のアンケートでは、圧倒的に選択的夫婦別姓の支持が多かったと記憶しております。法律家といっても多様な考え方の人がいるですが、基本的には選択できるということでいいのではないか。自分がどうするかは別としてそれを認めるということだったと思います。
 それに対して、他のアンケートでは、これはアンケートの仕方自体にも若干問題があったようにも思うのですが、あるいはアンケートに答える側にも選択的夫婦別姓か否かではなくて、自分が別姓か同姓かという感覚で答えると、別姓というのは随分少ない。本来は同姓か別姓かの話をしているのではなくて、選択をすることを認めるかどうかということで、これを認めないという人は、自分は同姓を選ぶ、そして、他の人が別姓を選ぶことも許さないというものなのです。これは単に同姓か別姓かという問題ではなくて、他の人の選択も許さないという意味で、多様性を物すごく強く否定するものだということでありますので、その点を確認して議論していく必要があるのだろうと思います。
 以上です。

○佐藤会長 法制審の資料の共有については、まずは選択的別姓の趣旨、それぞれ選べるということなので、それは確かに誤解もあるので、基本的なことを伝えていくということは、大事だと思いました。
 最後になりましたけれども、佐々木委員、お願いいたします。

○佐々木委員 また共有させていただきます。研究者の事例を紹介するために、昨日、自分の持っているメーリングリストに投げましたところ、本当に多くの返信をいただきました。
 白波瀬委員が熱く語っておられましたが、職業上、研究者というのは、通称利用が絶対に必要なもので、本当は選択的夫婦別姓しかないのですけれども、何とか折り合いをつけているというのが通称利用なのです。自分は通称利用ができる環境でずっといたので、みんなできると思っていたのですが、できない大学があるということが今回わかったことは、自分の中の驚きでした。
 コメントをざっとまとめてみましたけれども、基本的な影響というところで、旧姓で書いた論文は自分のものとは分かってもらえない。特許は戸籍上の氏名でないのは、本当にしんどい。学位取得ですが、博士の学位は戸籍名になるので、論文時の氏名と同じ名前にするために、離婚をした。そのほか、研究費にも影響してきます。旧姓で取得した研究費の一部を入金するために、口座名義が現姓であったために入金ができなかった。留学時にもパスポート名と研究業績が結びつかないので、ビザの取得に皆さん困っています。婚姻関係がない無職の配偶者は入国できないので、出国直前に事実婚で別姓を守っていた人が泣く泣く変更しなくてはいけなかった。国際学会に関しては、海外出張の際、航空券を業者に任せていたら、通称の名前で予約されて、航空券のお金が研究費から払えなかった。身分証もまだ戸籍で、これを変えるのに20年かかった。大体、こういう交渉は女性研究者が行うので、ここに研究者の力を使うべきではないと思います。なので、大学の評価項目などに入れていただきながら、通称利用はすべての大学で必ずできるようにしていただきたいと思います。また、メールのアドレスに名前を使う場合があります。ここもIDなので、戸籍名になると困るというのもなるほどと思いました。また、もし選択的夫婦別姓ができたとしても、無意識のバイアスで、周りからの猛反対でできないのではないかという不安があるという意見もありました。これは本当にそうだと思います。
 私は旧姓で研究をしていて、プライベートで故郷の歴史の偉人の顕彰活動をしているのですけれども、そちらは戸籍名でやっていて、両方の活動ともに新聞などで紹介されると、離婚しているといううわさが地元で流れるのです。
 通称利用で二つの名前を使うのが当たり前な時代ということも知っていただきたいですし、そういう混乱を避けるためにも、選択的夫婦別姓を進めていただきたいと思います。
 以上です。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 まだまだ議論したいのですけれども、もう一つ、事務局から説明がありますので、12時に出る必要がある方は抜けていただいて構いません。
 それでは、最後に議題(3)と議題(4)について、事務局から御説明いただければと思います。

○林男女共同参画局長 画面を共有させていただきます。
 2点、御報告事項がございます。
 まずは資料4でございます。先週、APECの女性と経済フォーラムに関する会議がございました。この御報告をしたいと思います。
 今年のフォーラムのテーマは、コロナの影響を乗り越える女性の経済的エンパワーメントということでございました。
 日本からは、女性デジタル人材の育成の取組や人生のあらゆる場面におけるエンパワーメントの必要性、ジェンダー統計の重要性などを伝えた上で、日本政府としてジェンダー平等の実現と女性の経済的エンパワーメント、これも片仮名で、一般の人に分かりにくいこともあるので、私どもは女性が経済的に自立する力ということを経済的エンパワーメントの言葉として使ったほうかもしれないと考えておりますが、女性が経済的に自立する力の促進に向けて、全力で取り組んでいくことを発信したところでございます。
 会合において声明が採択されまして、ジェンダー平等と女性の経済的自立力によって、イノベーションによる生産性の向上など、大きな利益が得られることを強調し、また、具体的な策としては、男女別データの収集や分析によって、知見や好事例を共有していくことや、男女均等なデジタル技術の訓練へのアクセス、STEM等へのアクセスを促進していくことで、こういったことの重要性について一致を見たところでございます。
 もう一点は、女子差別撤廃条約の実施状況でございます。
 こちらにつきましては、先日、9月17日に女子差別撤廃条約の実施状況に関する日本国政府の報告の提出を国連にいたしましたので、その報告をしたいと思います。
 女子差別撤廃条約は、言うまでもございませんが、男女の平等や女性に対する差別の撤廃に関する基本的かつ包括的な条約であります。1981年に発効し、締約国は189か国に上っており、我が国も1985年に批准をしております。
 当時、この条約の批准に向けて、男女雇用機会均等法の制定が行われるなど、女子差別撤廃条約は、我が国の男女共同参画、日本の女性にとって身近な問題の改革を進めるてことして重要な役割を担ってきました。
 この条約において、日本を含む締約国は、条約第18条の規定に基づき、条約の実施のために取った立法上、司法上、行政上、その他の措置及びこれらの措置によりもたらされたことに関する報告を行うこととなっております。
 また、今回は9回目の報告になりますが、女子差別撤廃委員会の導入した新たな報告手続によりまして、今回から委員会から示された事前質問票に対する書面回答をもって報告をすることになりました。
 今月17日に日本国政府として提出した本報告では、2014年の前回報告からの6年間の進捗と、昨年12月に閣議決定をした第5次男女共同参画基本計画に基づく取組を中心に条約の実施状況を記載しております。
 報告の概要につきましては、資料5の2ページ目と3ページ目にまとめておりますほか、参考資料4及び参考資料5に先方の質問と日本国政府の回答の全文を掲載しているところでございます。
 今後、対面審査を経て女子差別撤廃委員会としての最終見解が発出されることになりますが、新型コロナウイルス感染症の影響によりまして、各国の審査が滞っておりまして、我が国の審査は来年以降、まだ少し先になりそうであると伺っております。
 以上、御報告を申し上げます。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 それでは、時間がちょっと過ぎましたので、また議論をしたいと思いますが、今日はここまでにさせていただければと思います。本日も活発に御意見をいただきまして、ありがとうございました。
 それでは、これで終了です。どうもありがとうございました。