計画実行・監視専門調査会(第22回)議事録

  • 日時:令和5年3月8日(水) 16:00~18:00
  • 場所:オンライン会議システム(Zoomウェビナー)にて開催
  1. 開会
  2. 議題
    L字カーブの解消に向けて1
  3. 閉会

【配布資料】

資料1
L字カーブの解消に向けて1(内閣府男女共同参画局説明資料) [PDF形式:2,152KB]別ウインドウで開きます
資料2
L字カーブ解消に向けた取組(厚生労働省説明資料) [PDF形式:3,118KB]別ウインドウで開きます
資料3
L字カーブ解消のために(佐藤座長提出資料) [PDF形式:437KB]別ウインドウで開きます
参考資料1
計画実行・監視専門調査会委員名簿 [PDF形式:112KB]別ウインドウで開きます
参考資料2
女性活躍・男女共同参画の重点方針2022(女性版骨太の方針2022)(令和4年6月3日すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部決定) [PDF形式:1,756KB]別ウインドウで開きます

【出席者】

会長   
佐藤 博樹  
中央大学大学院戦略経営研究科教授
委員   
石黒 不二代 
ネットイヤーグループ株式会社代表取締役チーフエヴァンジェリスト
同    
井上 久美枝 
日本労働組合総連合会総合政策推進局長
同    
大崎 麻子  
関西学院大学客員教授
同    
窪田 充見  
神戸大学大学院法学研究科教授
同    
佐々木 成江 
お茶の水女子大学ジェンダード・イノベーション研究所特任教授
同    
治部 れんげ 
東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授
同    
白波瀬 佐和子
東京大学大学院人文社会系研究科教授
同    
徳倉 康之  
NPO 法人ファザーリング・ジャパン理事、株式会社ファミーリエ代表取締役社長
同    
内藤 佐和子 
徳島市長
同    
山口 慎太郎 
東京大学大学院経済学研究科教授
同    
山田 秀雄  
山田・尾﨑法律事務所代表弁護士
内閣府  
小倉 將信  
特命担当大臣(男女共同参画)
同    
岡田 恵子  
男女共同参画局長
同    
畠山 貴晃  
大臣官房審議官(男女共同参画局担当)
同    
杉田 和暁  
男女共同参画局総務課長
厚生労働省
村山 誠   
雇用環境・均等局長
同    
松原 哲也  
労働基準局労働条件政策課長

議事録

○佐藤座長 定刻となりましたので、ただ今から、第22回計画実行・監視専門調査会を始めさせていただきます。
 本日は、小倉將信女性活躍・男女共同参画担当大臣に御出席いただく予定ですけれども、国会対応で少し遅れられると伺っておりますので御了解いただければと思います。
 あと、徳倉委員が少し遅れて御参加と聞いております。それと、井上委員、治部委員、白波瀬委員は少し早めに出るということですので、御意見あれば意見交換の際に先に言っていただくということにさせていただければと思います。
 それでは議事に入りたいと思います。本日の議題は「L字カーブの解消に向けて」ということで、L字カーブについては後で事務局から御説明があるかと思いますけれども、その議論の第1回目になります。最初に内閣府の岡田男女共同参画局長から資料1で御説明いただければと思います。よろしくお願いします。

○岡田男女共同参画局長 内閣府でございます。私共からは関連するデータについて資料1に基づきまして説明させていただきたいと存じます。
 スライド2であります。正規雇用・非正規雇用労働者を見てみますと、非正規雇用労働者は、令和4年で男性が669万人、女性が1,432万人いらっしゃるということであります。正規雇用労働者の方は、男性が4年連続で増加したあとわずかに減少しほぼ横ばいで推移しておりまして、女性は8年連続で増加しているという、こういった労働市場になっております。
 次のスライドであります。理由別に非正規雇用労働者を見てみますと、男女ともに青色の「自分の都合の良い時間に働きたいから」というのが大きくなっておりますけれども、女性の場合は男性よりも、赤いラインで示しております「家事・育児・介護等と両立しやすいから」というのが割合が高く、また男性は女性に比べまして薄い緑色「専門的な技能等をいかせるから」、また、薄いオレンジ色「正規の職員・従業員の仕事がないから」の割合が高くなっております。正規の職員・従業員の仕事がないと答えていらっしゃる方は、不本意非正規雇用労働者と言っておりますけれども、次のスライドを見てみますと、その割合というのは2022年に10.3%となってございます。男女別と年齢別で見てみますと、右のグラフでありますが、男性は45~54歳で、女性は25~34歳で共に高くなっております。
 次のスライドでございます。正規雇用と非正規雇用の格差について見てみたいと思います。待遇面での格差はいまだ大きいものがございます。左図でありますけれども、非正規雇用は年齢に伴う賃金の伸びが見られないということでございます。右上のグラフを見ていただきますと、育児休業制度は正規雇用に比べまして、希望通りに利用できていないということ、また右下のグラフでありますけれども、教育訓練につきましては正規雇用の方と比較しますと、非正規雇用の方への実施割合が低いといった実態になっております。
 次に、L字カーブの現状と背景でございます。2番目の丸のところで下線も引いてございますけれども、総理からも女性が非正規雇用化する、いわゆるL字カーブの解消、そして、男女間の賃金格差の是正については、引き続き喫緊の課題ということでお話があります。
 次のグラフでございます。そもそもL字カーブは何かということでございます。M字カーブというのはよく言われておりますが、このグラフでは就業率の推移を表しています。青色の線の女性の年齢階級別の正規雇用比率が25~29歳の59.7%をピークでございますけれども、30代、40代になりますと非正規雇用が中心となる状況、これがいわゆるL字カーブと呼んでいるものでございます。出産時に退職、または働き方が変わって、育児後に非正規で働くケースが多いということが考えられます。
 次のスライドでございます。これを時系列、また有配偶者でいらっしゃるかいらっしゃらないかで見てみますと、右の未婚女性の正規雇用比率は全体として高く、有配偶女性に比べますと、30代以降のカーブは緩やかになっているということが分かるかと思います。
 次のスライドでございます。第一子出産前後の妻の就業経歴、よく使われるグラフでございますけれども、濃いピンクを見ていただきますと年々第一子出産後に就業継続する女性は増加しております。直近では、第一子出産前有職者の7割が就業継続している状況にございます。雇用形態別に見ますと、右上の正規雇用は育児休業による継続就業が進んでおります。右下、パート・派遣は低水準ではございますけれども、近年上昇傾向にございます。
一方で仕事を辞める方もいらっしゃるということで、次のスライドでございますけれども、仕事を辞める理由を見てみますと、左のグラフでありますけれども、末子妊娠判明当時の仕事を辞めた理由で、正規雇用および非正規雇用の女性で一番多い理由としては「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立の難しさで辞めた」ということになってございます。その理由を見てみますと、右側のグラフでありますけれども、「自分の気力・体力がもたなそうだった」、その他「勤務先に育児との両立を支援する雰囲気がなかった」、また「制度は整備されていたが、勤務先で短時間勤務制度や残業を免除する制度などの両立できる働き方の制度を利用できそうになかった」などの理由が並んでおります。
 次のスライドを見ていただきますと、こういった仕事を離れた方が仕事を続けるために重要と考える支援やサービスとしては、「保育園・託児所」あるいは「職場の育児との両立への理解、制度が利用しやすい雰囲気づくり」の回答割合が高くございますけれども、赤い点線で囲んでおりますように、「職場の短時間勤務制度」、「職場の在宅勤務制度」、
「始業・終業時間の繰上げ・繰下げ」なども一定のニーズが見られるところでございます。
 次のスライドでございます。家庭内の家事・育児の分担割合でございます。6歳未満の子どもを持つ夫・妻の家事関連時間及び妻の分担割合の推移を見ますと、右の折れ線グラフにありますように、妻の分担割合は減少傾向にありますが、共働き世帯でも家庭内の無償労働時間の8割近くを妻が担っているということでございます。
 こうしたL字カーブの解消に向けて、本日先生方から御議論いただければと思っておりますけれども、スライド15では、このL字カーブに関する議論を整理しておきました。L字カーブに係る要因は相互に、また複合的に関連し合っております。それらをあえて分解してみたものでございます。一番左をご覧いただければと思いますけれども、L字カーブに係る問題として、一つは今までも申し上げました通り、仕事と子育ての両立が困難ということがございます。また、30代以降の正規化が困難ということもございます。これらの要因を考えてみますと、企業の労働慣行に係る問題、また、家事・育児負担の問題、それから労働者のスキルやキャリア意識の問題などに分けられるのではないかと考えております。企業の労働慣行に係る問題としては、赤枠のところでございますけれども、平時からの多様かつ柔軟な働き方の問題、また子育て期における休暇取得や柔軟な働き方の問題に分解できるのではないかと考えられます。また、家事・育児分担の問題、あるいはスキルやキャリア意識の問題につきましては、その下の表のように整理しております。専門調査会では、右上に書かせていただいておりますように、赤枠の内容を中心に御議論いただいてはどうかと考えております。例えば、平時からの多様で柔軟な働き方の問題としては、多様な正社員の制度の整備だとか、慣行・企業文化としての定着はどうやって図っていくかとか、長時間労働、メンバーシップ型中心の常用労働慣行をどう見直していくべきかということがありうるのではないかと考えます。また、子育て期における休暇取得や柔軟な働き方の問題という観点では、育児休業等の子育てに係る休暇の制度の整備や取得を促進していくこと、あるいは時短勤務やテレワーク等の柔軟な働き方の整備をどう整備していこうかとか、その活用を促進していくことも考えられるのではないかということで書かせていただいたものになります。
 次のスライドからは、昨年の6月に政府がまとめました女性版骨太の方針において、働き方や労働慣行・制度に関わる問題はどういったものがあったかについて見ていきます。項目だけ申し上げます。男性の育児休業取得の推進、あとは長時間労働慣行の是正、または転勤の予見可能性の向上等に向けた労働契約関係の明確化、またコロナ下で広まったテレワーク等の多様な働き方の定着、コース別雇用管理の柔軟な運用等、非正規雇用労働者の賃金の引上げといったことを昨年の女性版骨太では記載をしております。
 その他、政府全体の骨太の方針におきましても、多様な働き方の推進が掲げられておりますし、昨年末に出されております全世代型社会保障構築会議報告書におきましても、子育て期の働き方、またはその他の労働者の働き方の見直しなどが記載されているところでございます。
 最後に関連データとしまして、いくつか紹介させていただきます。
 スライド24でございます。世論調査の結果を見ますと、女性の「子どもができても、ずっと職業を続ける方がよい」という意識は年齢とともに上昇しているということが分かります。これは赤枠で囲った数字を見ていただければと思います。
 また、次のスライドでございますけれども、結婚や出産、育児を機に離職した経験があって、今も就労していない方々に聞くと、離職して後悔しているという回答もあるということでございます。その後悔している理由ということでは、「経済的に厳しくなった」という回答のほか、「今後再就職しようとしても良い就職先がない」など仕事に関する回答が並んだということでございます。
 後ほど佐藤先生から、多様な正社員についてプレゼンテーションいただくということで、スライド29を紹介させていただきたいと思います。多様な正社員がいる企業は全体で18.3%となっておりました、企業規模が小さいほど多様な正社員がいる企業の割合が小さくなっております。
次のスライドでございますけれども、多様な正社員を増員する上での課題や導入が難しい理由としては、「区分が増加することで、労働管理が煩雑・複雑になる」といったことが挙げられているというような調査もございます。
 次のスライドでは、個人に聞いておりますけれども、今後5年先を見据えた時に多様な正社員として働くことを希望する可能性について、どうなっているかということでございます。74パーセントが「希望することはない」と回答しておりまして、その理由は「賃金が低下する」、「職務を限定すると、キャリア設計も限定される」といった結果の調査もございます。
 最後に、長時間労働につきましてデータを紹介させていただきたいと思います。スライド35でございます。週の労働時間を見てみますと、男性は30代後半から40代後半にかけまして、週60時間以上働く就業者の割合が増加します一方で、女性の場合は30代後半で割合が減少してございます。これは週の労働時間でございますけれども、一日の生活時間がどうなっているかというのを図にしたのがスライド36でございます。緑色が仕事、オレンジ色が家事、育児でございます。これを見ていただきますと、6歳未満の子どものいる共働き世帯の夫・妻の平日の行動時間を見ますと、家事・育児負担は妻に、仕事は夫に偏っているということがお分かりいただけるのではないかと思います。
 以上でございます。

○佐藤座長 ありがとうございました。
 先ほどより、小倉將信女性活躍・男女共同参画担当大臣においでいただいておりますので、まず大臣に御挨拶を頂戴したいと思います。それでは小倉大臣、よろしくお願いいたします。

○小倉女性活躍・男女共同参画担当大臣 皆様、こんにちは。座長より御紹介いただきました、女性活躍・男女共同参画担当大臣の小倉將信です。佐藤博樹座長はじめ有識者委員の皆様におかれましては、本日御多用の中、調査会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 私も冒頭から出席するつもりだったのですが、参議院の予算委員会が延びまして、ぎりぎり間に合わなかったこと、お詫び申し上げます。
 本調査会におきましては、引き続き、本年の「女性版骨太の方針2023」や「G7男女共同参画・女性活躍担当大臣会合」を見据え、「女性の経済的自立」に向けた取組を一層強化するための検討を深めていただきたいと思っております。
 今日の議題でもあります、出産を契機に、女性が非正規雇用化する、いわゆる「L字カーブ」の解消は、本年の通常国会におけます施政方針演説の中で岸田総理からも直接表明があったとおり、まさに喫緊の課題だと認識をしております。
 既に岡田局長からも御説明がありましたように、「L字カーブ」の背景には、企業の労働慣行の問題や、女性に偏りのある家事・育児等の負担の問題、さらには労働者のスキルやキャリア意識の問題など、複合的な要因があると認識しております。
 とりわけ、女性の離職や非正規化の大きな原因の一つは、仕事と子育ての両立の困難さでありまして、今日重点的に御議論いただく、多様で柔軟な働き方の推進は、「L字カーブ」の解消に向けたカギとなると考えています。
 報道にもありますように、今年の年初、総理から指示をいただきまして、3月末を目途に子ども政策の強化に向けたたたき台を私の下で検討を進めさせていただいているところでおります。
 総理の指示は、三つの基本的な方向性でございます。
 一つ目は、児童手当を中心とした経済的な支援の強化。
 二つ目は、保育・幼児教育を含む様々なサービスのさらなる充実。
 三つ目は、育児休業制度の強化をはじめとする働き方改革の推進であります。
 今、私どもが検討を進めている少子化対策の観点からも、働き方改革、そして、L字カーブの解消は、非常に重要なポイントだと認識をしております。
 今日は、男女問わずライフイベントを両立させながら、能力を十分に発揮してキャリアアップもできる社会の実現という観点から、子育て期における休暇取得や柔軟な働き方の推進はもちろんのこと、平時から多様で柔軟な働き方が選択できる環境づくりに向けて、どのような課題があり、どういった手だてを講じる必要があるかについて、この後、厚労省からも現状の政策についてお話があろうかと思いますが、ぜひ委員の皆様方には、それぞれの御見地から忌憚のない御意見を賜れればと思います。
 限られた時間ではございますが、今日の議論を通じて、女性の経済的自立に向けた取組への力強い後押しをいただきますことを心より期待を申し上げまして、挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。

○佐藤会長 小倉大臣、どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、厚生労働省の村山雇用環境・均等局長から、資料2に基づいて御説明をいただければと思います。よろしくお願いします。

○村山雇用環境・均等局長 お願いいたします。御紹介にあずかりました厚生労働省の村山でございます。
 今、資料2を開いているところでございます。少々お待ちください。画面共有をさせていただきました。
 資料2ですが、先ほどの岡田局長から御説明のあった整理に沿いまして、多様で柔軟な働き方の推進、そして、子育て期における仕事と育児の両立支援について、ただいま大臣から御示唆があった方向性に沿って、御説明を差し上げたいと思います。
 スライド2でございます。一つ目の多様で柔軟な働き方の推進に関しましては、先ほど大臣から総理の御指示について御紹介がございましたが、働き方改革の現状、さらに正社員化でありますとか、無期転換、また、様々な支援策、ルールの見直し等の取組などについて、御説明を差し上げたいと思います。
 スライドの3ページでございます。課題整理でございますが、先ほど来のお話でございますように、日本的雇用慣行、雇用システムの下で、真ん中辺りにあります正社員に無限定な働き方が求められること、正社員と非正規雇用労働者との不合理な格差が固定しやすいこと、また、一度非正規雇用となると、正社員に転換しにくいこと、こういったことがL字カーブの大きな背景になっていると考えております。
 こうした課題について、内閣府でおまとめになりました年次経済財政報告の女性活躍をはじめとする多様な人材を生かすという観点からの問題提起について、抜粋しているところでございます。
 4ページ目でございます。働き方改革につきましては、申し上げるまでもなく、多様で柔軟な働き方を目指すものでございますが、本日は、まず当時の大きな法律改正でございました4.罰則付時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正、2.同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善の現状について、御報告を申し上げたいと思います。
 スライドの5ページでございますが、働き方改革の現状①としまして、長時間労働の是正に関しましては、改正労働基準法におきまして、平成31年4月から大企業で、令和2年4月から中小企業で時間外、休日労働時間の上限規制が施行されているところであります。
 一方で、例えば荷主さんとの関係で難しいトラックドライバーの労働時間の問題ですとか、救急医療等の体制の関係で難しい医師の労働時間の問題ですとか、天候の問題などもある建設業特有の課題など、そうした適用猶予の業種に関しましては、他省庁、あるいは省内の関係部局との調整をしながら、一緒になって円滑な施行に向けて環境整備に努力しているところであり、これらについては、令和6年4月に施行が予定されているところでございます。
 6ページ目でございます。時間外、休日労働に関しましては、真ん中の労働基準法第36条の二つ目の◆のところでございます。時間外労働の上限について、月45時間、年360時間を原則とすること、その上で臨時的な特別な事情がある場合、すなわち特別条項の協定を結ぶ場合であっても、年720時間、また休日労働を含めて単月100時間未満、休日労働を含めて複数月平均80時間の要件を満たす必要があることが強行法規として規定されているところでございます。
 スライドの7ページ目は、この制度改正によってどういう影響が出ているかをデータで見ていただいているものでございますけれども、左側のグラフ、男女の総実労働時間の推移を見ますと、働き方改革の取組が始まってから男女とも足元5年間ほど減少傾向にございますが、令和3年では、男性が405時間ほど長くなっています。
 ちなみに、5年間ほどで見てみますと、男女共に5%ぐらいの総実労働時間が減少している状況にございます。
 一方、右の図でございますが、近年、男女とも週60時間以上就業する方、法定時間外労働で見て月約87時間以上の方というのは、大きく減ってございまして、特に男性におきましては、この5年間で4%ポイントぐらい減っているということで、こういったところに上限規制の直接的な効果が現れているのではないかと考えております。
 8ページ目でございます。長時間労働の抑制に係る対応策といたしましては、一つ目の○にございますように、中小企業をはじめとする企業の皆様への法律の丁寧な周知、また、法違反、例えば過労死、過労自殺事案等関しましては、厳しい監督指導を行う一方で、47都道府県それぞれに、仕事のやり方の見直しを含めた社労士等の無料のコンサルティングを受けられるような働き方改革推進支援センターを設けまして、様々な支援を行っております。
 あわせて、労働時間の短縮や年次有給休暇の取得促進に向けた環境整備に取り組む中小企業事業主に対して助成金を支給しているところでございます。
 9ページ目でございます。ここから同一労働同一賃金の関係でございます。
 働き方改革の現状②ということで、正社員、非正規雇用労働者の間の不合理な待遇差の解消も課題でございますけれども、これに関しましては、大企業のパート・有期や派遣労働者全般に関しましては令和2年4月から、中小企業のパート・有期につきましては令和3年4月から、ルールを導入しているということでございます。
 改正内容の柱といたしましては、従来のルールがパートタイム労働法という形であったものを、パートタイムと有期雇用の雇用管理改善法という形で改めて、パートと有期に関して総合的な法律にしています。同時に労働者派遣法において、派遣に関しても同様のルールを導入しているところでございます。
 具体的な内容は、不合理な待遇差の禁止ということで、裁判の際に判断基準となる均衡待遇、均等待遇を規定し、このうち均衡待遇に関しましては、待遇ごとに性質・目的に照らして、職務内容、人材活用の仕組み等、適切と認める事情を考慮して不合理な待遇差を禁止しているものでございます。
 あわせまして、行政指導の根拠規定についても整備をいたしまして、特に有期と無期の不合理な待遇差について、助言指導、勧告、公表規定、行政ADRの対象にしたということでございます。
 もう一つは、しっかりした説明責任を事業主に果たしていただくということで、労働者の待遇に対する説明義務に関しまして、パート・有期法において、労働者から求めがあった場合は、説明をしなければならない等の規定を新設し、派遣労働者については、労働者派遣法によって同様の規定を設けているところでございます。
 同一労働同一賃金が入って、どのように事業主が対応されているかというのは、スライドの10でございます。雇用形態に関わらない公正な待遇の確保の実現に向けて取り組んでいる、または取り組んだという回答をされた事業所の割合というのは、段階施行の過程で、年々上がっているところでございます。
 一方で、検証したけれども、待遇差はないという御回答も一定あるということでございます。
 明らかに課題となるのは、何も取り組んでいないと御回答になっている事業所で、資料の左側のグラフの右側の濃いグリーンのようなところで、これは減少傾向にあるということでございます。
 一方、取り組んでいる、または取り組んだという事業者が何に取り組んでいただいたかですが、一番分かりやすいのは実費弁償的な通勤手当等を含む諸手当の取組でございまして、こちらが一番高くなっています。次いで様々な福利厚生が続きます。基本給に関しましては、それらと比べると、率としてはやや低くなっているところでございます。
 恒常的な賃上げの文脈からの一層の同一労働同一賃金のルールの徹底が求められる中、現在、労働基準監督署の監督官による定期監督などで事業所を訪問する際には、同一労働同一賃金に関する自主的なチェックリストを配付して、記入していただき、担当部局における効率的な指導につなげる仕組みをスタートしており、一層の指導の徹底に努めてまいりたいと考えているところでございます。
 スライドの11でございます。ここからは例えば非正規雇用の方が正社員に転換するなど、働き方の見直しを応援していくような支援策等についての資料が続きます。
 個別政策の第一として、キャリアアップ助成金です。非正規雇用、特に先ほど岡田局長の御説明にもございました不本意に非正規になっているような労働者の正社員化を後押しする、また、非正規雇用で働いていらっしゃるけれども、賃上げ等がなかなか進まない方の後押しをするために、それらに取り組む事業主を支援する助成金でございます。
 具体的にはそこに書いていますように、上半分の四角のところが正社員化支援のメニューでございます。下が処遇改善支援のメニューでございますが、一定の取組を行った事業主に対して助成金を支給して負担を和らげることによって、一層促進していこうという施策でございます。
 ちなみに、令和3年度の実績で申しますと、赤で囲んでおります正社員化コースが約10.9万人の正社員化につながっています。下の処遇改善支援の代表的なメニューであります賃金規定等改定コースは、少なくとも3%以上の賃上げをしていただいている事業所で、6,000人ぐらいの非正規雇用の方が対象になっており、ほかのコースの実績も合わせまして、全体で約12万人の正社員化、また、処遇改善に実際に使っていただいている支援策の例でございます。
 12ページでございます。無期転換ルールでございます。こちらは有期雇用を繰り返し反復更新している方が5年を超えて反復更新した場合、私は無期に転換したいということで申し出ていただければ、民事ルールの強行法規として無期労働契約に必ず転換していただくルールでございます。
 これに関しては、施行は平成25年4月だったのですけれども、そこから5年間のカウントが始まったものですから、実際に無期転換申込権が本格的に発生し始めたのは、平成30年4月からと考えていただければと思います。
 制度化の背景は、実際に仕事はずっとあるのに、それを有期で反復更新させることが広く行われているという我が国の非正規雇用の実態の中で、有期で働く方が雇止めの恐怖にさらされて働かざるを得ない。そうした雇止めの恐怖から解放して、安定した雇用に持っていくということが一番の眼目でございまして、ヨーロッパ諸国のルールを参考にして、民事ルール化したものでございます。
 実態調査に基づきます厚生労働省の推計では、平成30年度、平成31年度の2年間で約118万人がこのルールによって無期転換しているところでございまして、人手不足も背景にしてではございますが、相当な成果が上がっているのではないかと思います。
 一方で、権利が発生したと見込まれる方のうち転換を申し込まれた方は、約3割にとどまっており、ルールが十分に浸透していない面があるのかもしれませんし、また、無期転換というのは、有期が無期になりますが、他の労働条件は原則的に変わりませんので、これらの方々の無期転換後のキャリアパスをどうしていくのか等が本日の一つのテーマなのかと考えております。
 次のスライドをお願いいたします。先ほどの岡田局長の説明でもございました多様な性社員制度の普及に向けてでございます。私どもとしても、L字カーブ解消の本丸は、我が国においては、正社員の方の労働時間や勤務場所、職場内容に限定性が低く、無限定に働かされている傾向が強いことにあると考えております。
 この点は後の佐藤先生の御高話に譲りたいと思いますけれども、単なる法制度の問題ではないので、労使と一緒になってどのように取り組んでいくのかが重要であるという認識の下に、好事例でありますとか、留意点に関して専門家の方々から御説明いただくセミナー等の開催でございますとか、そうしたものに取り組んでおります。
 14ページ目でございます。こうした働き方の見直しの中で、法制度で何かできるものはないのかという点で、昨年、おまとめいただきました女性版骨太の内容にもつながりますが、労働契約関係の明確化について一つの方針が出てございますので、御報告申し上げます。
 労働条件を明示することに関しましては、個別労働契約関係の基本法であります労働契約法で、労使は労働契約の内容についてできる限り書面により確認することとされており、同時に労働基準法において賃金、労働時間、その他の労働条件の明示が罰則つきで義務づけられております。
 具体の細目は省令に落とされており、この省令の改正の方向性が定まっております。具体的には点線で囲っているところですけれども、労働契約を結んだときの労働条件通知書は、従来は就業の場所、働く場所ですとか、従事するべき業務の内容、仕事の内容に関しましては、雇入れ直後のもののみを書いていただければ、それで既遂に達するという扱いでございましたけれども、今後に関しては、変更の範囲に関しましても書いていただくことにしたものでございます。
 これによって、労使双方の予測可能性の向上、これからどういうキャリアの幅になるのかという見通しが立てやすくなり、紛争の防止にもつながるのではないかと思います。何よりも働く側の方々にとってみれば、ワーク・ライフ・バランスの向上につながっていくのではないかと期待しているところでございます。
 全ての労使に係る大きな改正でございますので、十分な施行準備や周知の期間が必要なので、令和6年4月から施行したいと考えているところでございます。
 15枚目のスライドでございます。今日の問題設定の中で見落とされがちかもしれませんが、L字カーブの問題の基本的な面という意味では、失業された方をはじめとする求職者の方が円滑に労働市場に再参入していくことが重要であると考えております。ハローワークの取組、職業訓練の取組と様々にございますが、その中で本会議の御関心にも沿って、マザーズハローワーク事業について御説明をしているスライドでございます。
 具体的には子育て中の女性等に対する就職支援の強化策として、一般のハローワークに入りづらい場合もありますので、専門の支援窓口を設けているところです。子供連れで来所しやすい環境を整備し、特に託児機能なども備え、また、求職者の状況に応じた担当者制の個別支援ということで、丁寧な対応をする専門機関を設けているところでございます。
 一番下にございますように、年間、こうした機関で約6万件弱の就職件数を上げているところでございます。
 以上が一つ目の柱でございます。
 二つ目の柱ですが、16ページのスライドでございます。子育て期における仕事と育児の両立支援の関係でございます。ここにつきましては、利用状況ですとか、意識ですとか、労働時間、生活時間の現状、制度の現状等について、岡田局長からもデータに沿って丁寧に御説明がございましたので、少し省略をしながら御紹介をして、最後に厚生労働省における制度見直しの検討状況について、御紹介申し上げたいと思います。
 17ページのスライドでございます。第1子出産前後の妻の継続就業率は、御案内のとおり、上昇してきているということと、先ほどのお話でもございましたように、育児休業の取得状況に関しましては、働き方による差はあるものの、パート・派遣でも上がってきている傾向も認められるということでございます。
 18ページでございます。一方で、男女間での育児休業、さらに後のシートではルールなどの全般も出てきますが、利活用状況には非常に大きな差があることは課題でございまして、女性の場合は、育休の取得率は85%以上、また、一番多く利用される方が多いのは1年前後のところでございます。
 一方、男性に関しましては、上昇したとはいえ14%弱の取得率で、特に短期間の取得の方が多いことが課題でございます。
 19ページでございます。短時間勤務制度に関しまして、左側のグラフですが、同じように大きな男女差が認められるというところです。
 一方、所定外労働の免除制度に関しましては、必ずしも幅広く利用されておらず、今後、男女の残業時間がより短縮していくのであれば、子育て期にはこういう制度こそ活用されることが一つの目指すべき姿かもしれませんが、そうした状況に至っていないことをうかがわせる資料かもしれません。
 20ページでございます。希望する仕事と育児の両立の在り方ということで、女性と男性のそれぞれで数字的に見たもので、お子さんがだんだん成長していくにしたがって、どんな両立の在り方を希望されるかということです。
 男性を見ていただきますと、子育ては土日祝日や定休日を中心という紫の方、あるいは配偶者、パートナーに子育てを任せるという薄い黄土色のところがかなり全体に多く、しかも、短時間勤務等の活用状況、また、長期の休業の取得といったことに関しては、そもそも希望からいって必ずしも多くなく、先ほど見ていただいたように、現実ではもっと使われていないところでございます。
 一方、女性の方に関して見ますと、こちらはお子さんの成長にしたがって、1歳になるまでは長期の休業、その後は短時間勤務ですが、お子さんが3歳を超える頃になりますと、仕事のある日はできるだけ残業しないようにして子育てをするとか、出社・退社時間の調整によって対応していきたいという御希望が上がっており、こうした御希望をどのようにかなえていくのかということが課題であると思っています。
 21ページでございます。これは今後の子育て世代の意識ということで、毎年、大学4年生とか、院卒修士の2年生の方々を対象にして、将来のキャリアプランですとか、働き方について同じ質問形式で聞いている経時的な調査です。
 左下、図17の育児休業を取って積極的に子育てをしたいという希望に対しましては、男女の性差が非常に小さくなってきていることが近年の傾向でございます。特に足元2年間ぐらいは、いわゆるZ世代の方々を対象にしているものですが、男女間の差がなくなりつつあり、将来の子育て世代の希望をかなえる上でどんな働き方改革が必要なのかということが問われているのだろうと思います。
 次のスライドをお願いいたします。労働時間の現状についてでございますが、先ほど働き方改革、労基法改正で上限規制の話を申し上げました。月80時間とか、100時間という上限の規制は、ある意味、人間の健康を確保する観点から絶対的な最低限の規制ということでございます。
 一方、両立支援、特に子育てという観点から申しますと、残業しないでということが一つのニーズなのだろうと思っています。
 そういう意味では、週43時間以上の雇用者の割合を見てみますと、子育て世代で特に男性では高く、女性でも相当な水準があり、また、男性では非正規の方でもかなり高いということが見てとれるところだと思います。
 説明時間が超過しており、急ぐように言われましたので、23ページ以降は省略をさせていただきます。
 飛ばしていただきまして、30ページをお願いいたします。そうした問題意識の下で、現在、厚生労働省では、「今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会」を開催しております。
 31ページ、議論はまだ入り口でございますけれども、例えば2の(1)のところでございますが、代替要員の確保の具体策として、外から雇い入れるよりは、職場内でのカバーリングの支援をどのようにしていくのか、右側の2の(3)のところで、テレワークについての検討の必要性、それから、次の○のところで、短時間勤務はセーフティーネットとして重要であるけれども、先ほど見ていただいたとおり、より長い時間働くことへのニーズもあるので、より選べるような制度設計をしっかりやってほしいという御意見です。
 一つ飛ばして、社内のロールモデルの共有ですとか、キャリア形成支援の問題、さらに一番下の(4)の二つ目の○で、職場でそういう負担がある人、負担がない人による分断を避けるために、同じ職場でサポートした場合に評価される人事評価制度を広げていくにはどうしたらいいのかという点などが挙げられております。
 最後、32枚目のスライドですけれども、上から二つ目の○で、今の子育て世代のニーズをきちんと把握するために、労使コミュニケーションを含めて、様々なコミュニケーションを設けている例をもっと広めていく必要があるのではないか。
 さらに4番のその他の二つ目の○ですが、そういう意味では、社会全体の大きな目標に向けて、各事業所の取組を進めていくために、社会的な目標を各企業に投影していく次世代法のような枠組みについて、もっと活用していくべきではないか、あるいはプライバシーの配慮とか、個人情報の管理という視点も重要ではないかとの課題が挙げられているところであり、こういった問題について、皆様方の御支援をいただきながら、さらに検討を深めてまいりたいと考えているところでございます。
 少し時間が超過して恐縮でしたけれども、私からは以上でございます。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 小倉大臣は、2分前か3分前ぐらいまで聞いていただいていましたが、公務のため退席されていますので、御了解いただければと思います。
 それでは、続きまして、私から今までの御説明の中で多様な正社員制度と企業の人事管理を見直すことによって、L字カーブを解消しようという取組が進んでいますので、留意点について御説明させていただければと思います。
 次、お願いいたします。L字カーブは、御存じのように、正社員として働いている女性が妊娠、出産で子どもを育てながら、その後、だんだん辞める方が増えてくるわけです。正社員を辞められます。一度、専業主婦になったり、あるいは非正規になると、正社員に戻りにくいことがありますので、そういう意味では、正社員で働けるようにすること、働いたらその後に続けられることが大事なので、特に子育てのときが続けられることが大事だということで、今、御説明がありましたように、多様な正社員制度を導入することは、厚生労働省も進められておりますし、企業も独自にそういうものを導入することが進んできています。
 一番上のいわゆる勤務地限定制度と言われるような、例えば全国展開している量販店であると、全国、あるいは世界に異動してもいいとする全国展開する雇用区分とブロックです。例えば関西地域だけであれば転勤してもいいという雇用区分、あるいは通勤圏内のもので、小売店ですから、店舗は多いです。店舗は変わるけれども、居住地は変更しなくてもいいというような全国転勤型、ブロック転勤型、あるいは通勤圏内のような雇用区分をつくり、社員がそれを選択できるような制度を導入することによって、例えば子育て等で転勤しにくいときもいいように、そういう雇用区分をつくりますというような多様な正社員制度を導入する企業が出てきます。
 もう一つは、短時間勤務です。今、法律上は子が3歳になるまで法定では6時間勤務です。6時間勤務を企業が措置しなければいけないとなっていますので、そういう意味では、法律上、措置されている企業で働く方で、子どもが3歳までの子育て中は6時間勤務を選択できるということです。これは法律上ですけれども、特に大企業を中心として小学校入学まで、あるいは小学校3年まで、場合によっては小学校6年までです。短時間勤務が取れるような企業も増えてきています。そういう企業では、短時間勤務を利用しながら女性社員が子育てと仕事を両立できるところが出てきています。
 ただ、問題なのは、そのことがつまり多様な正社員制度の転勤なしの雇用区分であるとか、あるいは短時間勤務を長く使えるという制度を導入されることによって、女性に子育てという課題があっても、仕事を辞めずに続けられることで大事なのは、女性の活躍の場が縮小するリスクが結構あるのです。これをどうするかということだと思います。
 例えば短時間勤務を8年間利用します。そうすると、仕事の経験量は8年分ではないのです。フルタイムの人の8年分ではなく、フルタイムの人と比較すると6年分なのです。キャリア段階によりますけれども、ある程度仕事の経験がスキルを高めるようなキャリア段階であると、長い短時間勤務を取ることは、仕事の能力を慎重に取ってマイナスになる可能性があります。
 勤務地限定制度では、例えば居住地圏から通える範囲内というと、そこにある事業所の仕事しか経験できなくなるわけです。そういう意味では、勤務地圏内にどういう事業所があって、そこで経験できる仕事がどういうものかによって、例えば全国転勤の人と比較すると、仕事の経験の機会はどんどん違ってくるわけです。この辺は結構大事だと思います。
 もう一つは、短時間勤務等を長く利用すると、問題なのはそれ以外の社員との間のあつれきです。これは後でお話ししますけれども、例えば小売業などでいうと、夕方の忙しい時期の4時に短時間勤務の人は帰ってしまいます。その後、自分たちは忙しい仕事をし、あるいは残業もしなければいけない。特に独身の男女の社員であったり、あるいは結婚をしていても子どもがいない方、これはそれぞれの社員の選択です。そういうような間であつれきがあることもリスクが拡大します。
 この辺を留意しながら、どのように多様な正社員制度や短時間勤務を法定を上回る形で導入すればいいかということについて、少し議論しようと思いますが、まず多様な正社員制度になります。
 次のスライドにしていただけますか。多様な正社員制度ですけれども、これは厚労省の資料ですが、従来の勤務地が変わるとか、仕事が変わるとか、基本的にフルタイムでも残業があるような働き方は、いわゆる正社員といって、そうではなく、それに対して勤務地が限定されているものは勤務地限定正社員、異動の範囲があるけれども、仕事の範囲が限定されている職務限定、あるいは勤務地、フルタイムではない働き方というもので、例がそこに書かれています。
 こういう勤務地限定や職務限定、勤務時間限定とあり、これまで勤務時間限定は、残業免除とか、短時間勤務ですけれども、最近は選択的週休3日制で勤務する人を減らすようなものも入っています。こういうものがあるわけです。現状では勤務地限定制度を導入されているケースが多いわけであります。
 勤務時間限定制度は、正社員が残業なしなり、短時間を選べることだけではなく、もう一つ大事なのは、例えば短時間勤務で働いている有期契約社員が5年を超えて無期の社員になるときに、フルタイムで無期、あるいは正社員で転換すると、残業があったりして、無期転換あり、その先の正社員転換があるにしても、ちょっと難しいと思う人たちも少なくないわけでありますけれども、勤務時間限定の正社員制度をつくると、短時間で働いている有期契約が無期に転換し、かつ今度は勤務時間限定の正社員に転換する可能性があるという点で、そういう意味でも重要だと言われています。
 元に戻っていただけますか。そういう意味で重要なのは、一つだけ言います。多様な正社員制度の中に勤務時間限定で残業なしとか、6時間勤務、5時間勤務があるわけですけれども、それと育児・介護休業上の短時間勤務と何が違うかなのですが、厚生労働省が導入を推奨している多様な正社員制度の中の勤務時間限定は、育児・介護に限定されません。現状ある育児・介護休業法上の短時間勤務が取れない人たちも取れるような制度として導入してくださいとなっていますので、ここら辺を入れていただければと思います。
 そうしますと、そういう多様な正社員制度や短時間勤務制度を導入し、かつそれが女性の就業継続の可能性を広げるだけではなく、女性の活躍の場を縮小しないというリスクを避けるために大事なことは、フルタイム勤務の正社員の働き方の見直しなのです。つまり残業できない人たちがいるので、残業しなくてもいい制度をつくります、あるいは転勤できない人たちがいるので、転勤できない制度をつくりますとフルタイム勤務の働き方を変えずに、その制度に適用できない人たちの制度をつくることが問題なのです。そういう意味では、正社員全体の働き方、いわゆる残業前提のフルタイム勤務を見直す、あるいは転勤を想定したような人事管理を見直すことを進めながら、多様な正社員制度を導入したり、短時間勤務を導入することがすごく大事です。
 あわせて、男性の子育て・家事時間です。現状で言うと、カップルからすると、夫が長時間労働なので、自分が仕事と子育てを両立すると、短時間勤務を法定の子が3歳は無理なので、もっと延ばしてくださいと企業に要求し、延ばしてきた場合も少なくないのです。ですから、そういう意味では、パートナーの子育て・家事時間を広げることも併せてやることが大事だと思います。
 もしそういうことができれば、多様な正社員制度を利用しないと働き続けられないとか、短時間勤務を長く使わないと両立できないという社員が減ってくるのではないか。あるいは短時間勤務の非正規社員がフルタイム勤務の正社員に転換する課題も低くなるのではないかと思います。
 次の次のスライドをお願いします。これが先ほどのもので、現状、フルタイム勤務での残業前提の働き方があって、そうすると、子育て中にフルタイム勤務に戻ると、仕事と子育てが両立できないので、短時間勤務を延ばしてください、延ばしますとやっていました。大企業では結構多いのですけれども、こういう問題が結構起きています。短時間勤務が手厚くなった結果、働き続けやすくなったのですが、自分たちはサポート業務ばかりです。あるいはフルタイム勤務の人は、短時間勤務の人ばかり優遇されていていい、この問題は結構多いです。  この問題を解決するにはどうしたらいいかというと、フルタイム勤務に問題があります。フルタイム勤務の残業前提の働き方を見直して、両立支援制度に過度に依存しなくても、本人が希望すれば、フルタイムに戻って、フルタイムで無理なく両立できるような働き方です。当然パートナーの家事・育児参加もすごく大事ですけれども、それが目指すべき方向ではないかと思います。
 次、お願いします。なので、いわゆる正社員の働き方をそのままにし、勤務地限定とか、時間限定を入れるとなると、多様な正社員の傍流ということなのです。残業ができたり、転勤ができるものが本流で、これはまずいですということなのです。そういう意味では、いわゆる正社員の雇用管理、働き方を見直すことがすごく大事であります。
 例えば転勤の運用を見直したりすることをします。転勤の頻度を減らすことをやれば、あるいは転勤はあるけれども、自分で5年間は転勤しない期間を選べるようにすることをすると、勤務地限定制度を必要としません。幾つかの企業であるのですけれども、勤務地限定制度はあるのですが、正社員の転勤の仕組みを見直した結果、勤務地限定制度を選ばなくてもいいという社員が実は増えてきていることもあります。
 最近であれば、勤務先の事業所は変わるけれども、居住地を変更しなくてもいいというような異動を始めているところが出てきています。そういう意味では、テレワーク等で異動はあるのだけれども、自分が住んでいる場所は選ばなくてもいいです。NTTなどはそういうことを言っていますけれども、つまり正社員の働き方を見直すことがすごく大事だと思います。
 次、お願いします。もう一つ、残業つきのフルタイム勤務を見直すことによって、短時間勤務を長く使わなくていいです。結構あります。今まで短時間勤務になったのだけれども、在宅でテレワークをやるようになって、フルタイム勤務に戻れますという女性も出てきました。そのようにすることによって、今までの短時間勤務だと営業先との仕事ができないという形で仕事が限定されがちな場合も少なくなかったわけでありますけれども、在宅勤務でオンラインでも営業の仕事、あるいは代わりにオンラインでほかの事業所の人たちとプロジェクトを組むことも可能になってきていますので、そういうことになっていくと思います。
 下ですが、職務限定も中での仕事の選び方を会社主導ではなく、社内公募型に変えることによって、職務限定などは要らなくなることもあります。
 この辺もそうです。もう一つは、勤務地限定の場合、先ほども話しましたように、仕事の経験範囲が限定されます。勤務地限定を選ぶのだけれども、子どもが少し大きくなったので、自分から手を挙げて2年間だけ、例えば今は事業所で経理をやっているのだけれども、本社の経理をやりたいので、本人が希望して本社の経理に2年間だけ異動します。特にそのときに本社の経理部門で育児休業を取った人が出たときに1年、2年の間、そこに異動してカバーするなどという仕組みを導入しているところもあります。勤務地限定を選ぶけれども、経験できる仕事範囲を広げるような取組をやるようなこともすごく大事なのかと思います。
 いずれにしても、多様な正社員制度を導入する場合、あるいは短時間勤務を法定の短時間勤務になる場合でも、従来の正社員の転勤、働き方を見直すことと併せてやらないと、女性の活躍の場の拡大で働きやすくならなかったり、活躍できないことになることはぜひ避けたいと思います。
 最後です。今、お話ししましたことは、女性が結婚して子どもを持って、その後も子育てと仕事を両立できることが大事だというお話をしたわけでありますけれども、もう一つ大事なことは、女性が会社に入り、結婚や出産する前の初期キャリアの段階で、この仕事が面白い、これを続けていけば、自分が希望するキャリアを実現できるというキャリア自己効力感みたいなものを持ってもらうことがすごく大事だと思います。
 入社3年ぐらいまでは、同期の男性と同じような仕事の経験ができたのだけれども、3年、4年になってくると、上司がどうも自分には期待してくれないみたいで、そのうち結婚をし、子どもを持つと、短時間勤務になったりということもあるので、一人前までは育てるのだけれども、その後さらにということは上司が考えてくれないことを思うと困るわけです。
 結婚、出産する前にこの仕事は面白い、この仕事を続けていけば、あるいは頑張れば、自分が希望するキャリアを実現できると思う自己効力感を持った後です。その後に結婚したり、出産するというライフイベントがあると、両立制度は利用するけれども、できるだけ早くフルタイムに戻って、仕事と子育てを両立しながら働こう、あるいは働けると思ってもらえることになると思いますので、そういう意味では、フルタイム勤務の働き方を見直すことと同時に、女性の初期キャリアの段階でどういう仕事経験を持ってもらって、キャリア自己効力感を持ってもらえるかということがすごく大事だと思います。
 長くなりましたが、私のお話はここまでにさせていただければと思います。
 その上で、これまでの議論について御意見を伺うことになりますが、厚生労働省の御説明については、労働基準法関係の御説明もありましたので、本日は、厚生労働省労働基準局の松原労働条件政策課長にも御出席いただいています。
 ちょうど1時間ぐらいたちましたので、いつものパターンで5分ほど休憩していただいて、その後、皆さんから御意見を伺いたいと思います。
 そのときに少し早めに出なければいけない方は、先に手を挙げていただいて、御意見を出していただければと思います。
 それでは、今、58分ですので、私が長くしゃべり過ぎてしまってすみません。5時3分か4分ぐらいに戻っていただければと思います。休憩ということでよろしくお願いいたします。

(休憩)

○佐藤会長 お戻りになりましたか。
 それでは、いつものとおり手を挙げていただく方からにしたいと思いますが、今日、岡田局長への質問ということであれば、言っていただくし、村山局長であれば、言っていただくし、あるいは全体というか、質問というか、私の意見ですということでそれが分かるように、特に質問について分かるようにしていただくと、それぞれの両局長は、自分が答えたほうがいいというものをメモしていただいて、後でまとめてお答えいただくことにしたいと思います。
 それでは、御質問なり御意見を自由にお願いします。治部さん、お願いいたします。

○治部委員 どうもありがとうございました。
 女性の非正規が多いという問題自体は、岸田政権が掲げている男女間賃金格差を優先課題として掲げているので、そこに関連することとしてすごく大事だと思います。
 ただ、今日のお話を聞いていて、内閣府の男女局で扱う論点と今日いらしている厚労省で扱う話とがかなり交ざっている感じがしたので、労働に関する法制度のところは、きちんと厚生労働省の審議会等々でお話をされて、ルールメーキングをされていくことがよいのかという印象を持ちました。
 その上で、私からは岡田局長のお話に関連するところで意見を申し上げたいのですけれども、ここは政府の審議会ですので、政府がやるべきことと、企業が経営の自由度を持って競争としてやる人材戦略とは別なのではないかと思います。
 私が公共政策として優先的にやるべきことで、今日は触れられていなかったことを申し上げると、非正規公務員の問題です。皆さん、よく御存じのとおりだと思います。今日、国際女性デーでしたので、いろいろな関連の記事が出ていたのですけれども、例えば朝日新聞デジタルですと、官が生み出すワーキングプアの苦境、非正規公務員の4分の3は女性とか、琉球新報の記事を毎日が転載しているような形なのですけれども、沖縄県内の公務員の非正規の76%が女性、正職員は男性60%といったことで、内閣府も国家公務員に関連していると思うのですけれども、はっきりと官のワーキングプア等々の問題をきちんと扱うことが政府の優先課題であろうかと思います。
 企業のところに関しては、もちろんやったほうがいいのだけれども、優先度としては厚生労働省マターなのかと思ってお聞きしておりました。今、私は大学に勤務しておりますけれども、大学にも非正規の職員の人が物すごくたくさんいます。そのほとんどが女性です。信じられないぐらい低賃金で働いておりまして、そういうところを何とかしないとしようがないと思います。
 内閣府男女局で申し上げますと、全国に男女共同参画センターがあるのですけれども、そういったところに出張で講演等に行きますと、非常に専門性の高い知見を持っている職員の方がいらっしゃいます。いろいろと話をしていくと、私は非正規なのですとか、1年単位で契約を更新していますという話を聞きまして、私はとんでもないことだと思いまして、女性の労働力を搾取しながら進めるような男女共同参画政策はあり得ないと思うので、もちろん多様な働き方等々もいいとは思うのですが、まず御自身のところから見なおしていただきたいことを強くお願いしたいと思います。
 以上です。

○佐藤会長 パブリックセクターは有期契約の方は結構多いので、ハローワークも結構多いのでしょうか。後に関連することで御意見があれば、伺うようにしたいと思います。
 次の方、いかがですか。どなたからでも手を挙げていただければと思います。井上委員、お願いいたします。

○井上委員 今日はいろいろと説明をありがとうございました。
 岡田局長から御説明がありましたL字カーブの解消について、資料9ページにあるL字カーブの状況、配偶者の有無別についてのデータなのですが、ここに「未婚女性の正規雇用率は全体として高く、有配偶者女性に比べると30代以降のカーブが緩やかになっている」と書いてあります。ということは、未婚であっても30代以降にカーブが生じていると思います。その前の8ページの男性のグラフは、ほぼ台形になっています。未婚女性も結果、L字になっていることに変わりはないのではないか。
 L字カーブの要因が結婚や出産であるのならば、未婚女性のグラフも台形になると思うのですけれども、9ページの未婚女性のグラフを見ると、25歳から29歳のところが大きなピークになっている点は、高さや角度は違いますが、有配偶者女性と傾向は変わらないのではないかと思います。
 有配偶の男性、あるいは未婚男性と比較してみないと分からないかもしれないのですが、L字カーブの要因が結婚や出産だけではなく、性別が関わっている可能性もあるのではないかと思います。その辺りをきちんと見ないと、L字カーブの根本的な解消にはつながらないのではないかと思ったのですけれども、半分感想めいたところなのですが、もし現段階で原因を御説明いただけるところがあれば、いただければと思います。
 以上です。

○佐藤会長 どうもありがとうございます。
 結構大事な点で、未婚の女性でも男性と比較すると下がっているのではないか、これは分かる範囲内で、分からなければ、検討していただければと思います。
 白波瀬委員、お願いします。

○白波瀬委員 よろしくお願いいたします。
 本日は、たくさんのデータを見せていただき、佐藤先生の講演を久しぶりに聞くことができ、改めて勉強させてもらいました。ぼんやりとした形のコメントということになってしまうかもしれないのですが、L字カーブという用語について、言葉だけが先走っている傾向があるように感じます。L字カーブのどこを問題としているのか、その中身が何なのかが重要です。L字カーブ解消ということは、正規と非正規の間のカテゴリーとして、非正規から正規に戻ってといくことが目標として想定されています。しかし、正規カテゴリーに戻らないので、非正規というカテゴリーのままで、こちらをもっと積極的に展開するというやり方もあるのではないか、と思います。
 それは佐藤先生のご報告でも基準値を変えるということが指摘されていましたこれだけいろいろな制度等ができているのですけれども、最近、リテラシーという言葉がはやっているのですが、労働者側がそれなりのリテラシーを持ち、しっかりと自ら選択していくことが、ますます求められるところです。ですので、教育的な場なり、相談のためのワンストップ的な対応の在り方が重要になってくるのではないでしょうか。また、縦割り行政の結果ともいいましょうか、厚労省様からのご報告と内閣府の男女共同参画は対象としては同じ、あるいは似ているにもかかわらず、アウトリーチ先にいる当事者としては違う印象も少なくなく、複数情報源からの情報の間である意味整合的でないこともあります。政府の方としていろんな支援や対策を導入して努力されていることは理解できますが、実際の当事者には使い勝手が悪かったり、肝心のユーザーまで正確な情報が届きにくいこともあります。
 最後、感想なのですけれども、1点、現時点でどれくらいの方が実際に活用し、その結果としとしてどういうことが起こっているのかの情報がもっとあるとよいと思いました。統計数字の中身や、いつの時点のデータか等、基本的な情報もリアルタイムで動く分簡単ではありません。ただ、少なくとも単純にどれだけの人が活用しているのかという基礎データをサービス提供主体の自治体レベルで一律に見えるようなシステムができてくると、とてもよいと思いました。
 以上です。

○佐藤会長 ありがとうございます。
 関連して言うと、昔から労働者の権利についての教育はやらなければいけないと言っていて、厚労省もいろいろと取り組んでおられますけれども、難しいことは、今、基準法みたいに全ての労働者へ一律に適用される部分と、派遣については、派遣として働いている人には知っているけれども、そうでない人は知らなくてもいいです。知らなくてもいいという言い方は変ですが、そういうことが結構多いのです。有期契約の人は無期転換をしていたほうがいいわけです。初めから無期で働いてしまったら、当面は要らないのだけれども、そういう意味では、教育の仕方とか、学ぶほうも結構難しくなっています。先ほど村山局長からありましたように、無期転換をしてもないのか、あるいはそういうことを知らないこともあるのかも分かりません。これはすごく大事な点だと思います。
 窪田委員、お願いいたします。

○窪田委員 窪田でございます。
 私も意見や質問というよりは、感想めいたものになってしまうのですが、御容赦いただければと思います。

 基本的にL字カーブという言葉が適当かどうかはともかくとして、それに対する対応として特に厚労省で正社員化という柱と、もう一つ、処遇改善支援という二つのアプローチで対応していくこと自体はよく分かりましたし、一定の成果を上げていることも分かりました。
 ただ、御説明を聞きながら、違和感というほどではないのですが、感じていたことは、そこで扱われている問題というのは、L字カーブの問題なのかというときに、佐藤先生もおっしゃっていたのですが、本来は非正規労働に関する問題であって、女性の固有の問題であるとか、出産に固有の問題があるというわけではないという気がしました。もちろんその点が改善されることによって、結果的にL字カーブの点も改善されるのかもしれませんが、L字カーブを改善するためにこの話をするのではないのではないかということを少し感じました。
 一方でというか、それに重ねてになるのかもしれませんが、つまりL字カーブの改善というときに、現在の子育ての状況を前提として、それに対応できるように、あるいは夫婦でそろってやれば対応できるという形のアプローチなのか、諸外国の法制度などを見ていくと、子育て支援そのものの対応がなされることのほうがもっと本質的なのかという気もするのです、子育て支援といった場合には、今度、幼稚園とか、保育園という話で、従来だったら縦割りの話なども出てきていましたし、どこの管轄なのかということも出てくるのですが、少なくとも従来の状況を前提として、どうやって処理するかというアプローチをもう少し考えてもいいという感じがしました。
 感想めいたことで申し訳ないのですが、私が感じたことになります。以上です。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 続きまして、石黒委員、お願いいたします。

○石黒委員 本日はいろいろな資料を見させていただいて、御説明を受けて、例えば先ほど治部委員が言われた、いわゆる政府の管轄が違うというのはその通りで、その意見に反対しているわけではありませんが、私はむしろ、全体を議論せず、L字カーブのことだけ議論すると、企業によって様々な企業がありますから、例えば上場企業は、労働時間の規制とか、全部守っていて、政策だけ個別に決められてしまい、今のままの運用を継続すると企業の生産性は落ちて、日本の経済力が落ちていくと思います。それは企業の種類にもよるし、ですから、全体の議論をせず、L字カーブの解消だけを進めるようになってしまうことで、弊害が出ることを、今回、特に心配をしました。
 男女の働き方とか、子育ての参画をこのままにしておけと言っているわけでは全くありません。私どもの企業も先ほど佐藤会長が説明されたように、育児や介護の問題に取り組み、時間の選択、曜日の選択、部署の移動も実施しています。全てやっています。ですから、これをこのままにしておけと言っているわけではなくて、優先順位としては、男性、女性を完全に平等にしなくてはいけないし、育休も取らせるべきだと思います。
 ただ、企業規模が大きいところでは、ある程度それはなされていて、企業規模が小さいところではというのは、恐らくミスリードで、もうかっている企業は対策ができているのです。十分に利益が出ているので、そこまで手が伸ばせるのだけれども、そうではない企業はできない状況にあるのが、今の日本の現状だと私は思います。
 私がお願いしたいことは、こういう個別の議論ではなく、全体の枠組みを同時に直していかなければならないということです。運用面では、例えば男性が100%の生産性を常に発揮して、長時間労働しているという大前提であれば別ですが、生産性にはむらがあり、それを縮小しましょうということはできます。しかし、問題はそればかりではありません。
 意見が分散していてすみません。もともと非正規雇用が増えたのは、解雇規制が厳し過ぎるからです。それにより解雇をしやすい非正規雇用を増大させようという企業の行動が増えた結果だと私は思っています。今、岸田政権が進める政策を私は強くサポートしていて、岸田政権がやろうとしていることは、企業が就業者のキャリアをつくるという時代は終わって、個人がキャリアをつくっていくべきだということです。この流れからすると、労働市場が流動化し、リスキリングを提供し、ジョブ型の雇用をつくっていくという全体の流れの中で、金銭解雇さえ保障されない非正規雇用を増やすのではなく、金銭解雇もあるべきだということです。
 そうしないと、コストばかり増えて、労働市場が流動化して、人が逃げていき、それに対するコストを増やすのですが、解雇はできない。アメリカ企業に比べて物すごく競争力がない状況が生まれる。そういうようなところも見直していただかないと、運用面で結果として日本の経済力は落ちていくのではないかと思います。
 例えば全体的に見直すというのは、当たり前ですけれども、生産性を高めるために同時にデジタル化やIT化による生産性の向上をやっていかなくてはいけないし、社会全体で子供を育てる仕組みづくりをやっていかないといけません、私自身も子供を持って、日本市場では無理だと思って、アメリカに行ったにもかかわらず、5年間、本当に疲労困憊した状況で仕事を続けてきて、そういう経験をしたときに、今の日本の現状の中で女性が置かれている立場は、本当に大変だということは十分に理解しています。
 そこを平等にするとともに、今、正規雇用で働いて活躍していらっしゃるというか、そういう方は家族のサポートがあって初めて成り立っている例が多いのです。そうであれば、今、社会全体で、定年も延びていますけれども、例えば高齢の方々に子育てを手伝っていただく仕組みづくりです。健康寿命も延びていますし、自分の直系の家族ではないのですが、サポートできるような仕組みをつくっていただくとか、個別の議論だけではなく、全体的に人口動態を考えて、社会全体でサポートできる仕組みをつくっていかないと、個別の問題は解決しないのではないかということです。
 L字カーブのこととはかなり離れるのですけれども、企業経営者としては非常に心配することがあって、日本の政策で決まっていると、特に上場企業は、それを必死で守ろうとするのです。それは当たり前なのですけれども、それをするあまり、運用面でどうしてもコスト増になって、結果的に10年たったら企業の経済力がすごく落ちてしまって、日本全体の経済力が落ちてしまったというミゼラブルな状態をつくらないために、全体の枠組みを一緒に考えていきたいと思いました。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 議論する場ではないのですけれども、解雇ルールについては、アメリカと比較するとあれですが、日本は別に厳しいわけではないことが一般的です。

○石黒委員 アメリカと比較するとそうなります。

○佐藤会長 でも、ヨーロッパと比較したら、そんなあれですし、解雇規制ルールがあるわけではなく、企業の人材活用の仕組みなのです。そこを限定せずに解雇するときに問題になるだけで、今も中途採用で、即戦力で取った場合は、契約解除できるような判例も出てきています。

○石黒委員 ただ、日本は判例主義ではなくて、ひたすら法律を守ろうとする企業があります。

○佐藤会長 解雇できないという法律上は変わらないのですけれども、解雇できるのです。結構誤解があります。議論してしまってすみません。司会がこういうことをやっていると進みません。
 山口委員、お願いします。

○山口委員 ありがとうございます。
 おおむねここまで議論されているテーマについては、賛成するところが多く、特に佐藤先生の御報告などは共感するところが多かったと思います。多岐にわたる論点だったので、個人的に関心があるところに絞りながら話をしていきたいと思います。
 一つ重要だと思っていることは、長時間労働の見直しで、これはぜひ進めていくべきだと思います。今、幾つかの企業から人事データをもらって分析しながら、企業内でどのように男女間賃金格差が出るのかを見ているのですが、その中に労働時間が最大の原因になっていると思います。
 一つには、時短等を使ったりすることもありますし、男性のほうが残業を多くすることもあって、同じ労働時間でも賃金率が高くなるので、これだけでかなりの差になります。その上で、それは多くの日本企業に共通していると思うのですが、誰かを昇進させようといったときに、長く働ける人でないと、そもそも現場のリーダーにふさわしくないという考え方がかなり根強くあります。結果、時短を行っていたら、全くのノーチャンスだし、フルタイムでも残業をしないと、昇進上でかなりの不利に扱われるということで、労働時間が短いことで、短期的にも長期的にも非常に大きな男女間賃金格差を生み出すことがデータから出てきていると思っています。
 結局、これを改めるために労働時間規制なども有効な部分はあるのですが、究極的には男性側の働き方改革が必要です。働き方の文化の部分を変えていかなければいけないと思います。あくまで民間企業の中でのことなので、政策で無理やり変えるのは非常に難しいことは理解しています。
 一方で、非常に重要な出発点だと思うのは、男性の育休取得推進を促すことだと思います。男性の育休の取得期間は、欧米でもそれほど長くはないのですが、1か月、2か月であっても、3年後のライフスタイルに影響を及ぼすぐらい、育休を取ることで育児時間、家事時間が長くなって、残業が減ることも言われていますので、男性の育休取得率はまだまだ低いわけですが、ここに対して今まで以上に強い働きかけをしていくことで、男性のライフスタイルを変えて、企業の長時間労働文化を改めていく必要があると思っています。
 2点目に触れておきたいことは、子育て期における休暇所得や柔軟な働き方ということで、時短勤務を推奨するとか、さらには一時議論になったことがあると思うのですけれども、時短勤務に対して給付金をつけることも議論されてきたと思います。
 仮に男性が時短勤務を選ぶようになるのだったら、いい政策だと感じるのですが、現状の根強い社会規範として、子育ては女性がするものとなってしまっています。これを前提としてしまうと、給付もつくのだから、女性は時短でいいということになって、ますますマミートラックに女性を追い込んでしまって、管理職になるような女性は増えないし、男女間賃金格差が大きくなるような問題が生まれるところが非常に気になっています。
 資生堂の話もされていらっしゃいましたけれども、あまりに家庭の状況や子育てに理解があり過ぎるような状況を生み出してしまうと、かえってマイナスになってしまうことも踏まえておかなければいけないだろう。制度設計上は重要な点だと思います。
 最後に、非正規雇用の話なのですが、治部さんが触れられたように、公務員の非正規雇用の多い状況から改めるべきではないかと思いました。さらにL字カーブとは別に、それ自体、同一労働同一賃金の問題として捉えるべきだということは、私も賛成いたします。
 その上で、非正規の問題というのは、社会全体に悪影響を及ぼしていることも指摘しておいていいのかと思います。L字カーブの問題もそうですし、あと、少子化ですとか、結婚率が下がっている問題の原因ではないかと感じていますので、その点に触れておくことも悪くないのではないかと思っています。
 1点、質問させていただきたいのですが、厚労省の村山局長に伺いたいのですけれども、データの細かい話になるのですが、資料2の7ページです。男性の60時間以上就業する人の割合が減ってきたということがあって、劇的に下がっていて、いい傾向だと思ったのですが、年齢構成で男性の労働力全体が高齢化していく中で、勤務時間が下がっている部分で引っ張られている程度はどれぐらいあるのかと思いました。逆に言えば、年齢別で例えば30代、40代に限定したときにどういう動きが起こっているのかを見ておきたいところだと感じました。
 以上です。ありがとうございました。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 先ほどの週60時間以上というと、今、所定は週40時間なので、60時間は毎日2時間残業していかないと60時間にならないのです。土日出勤もやっていて60時間、これも減ってきています。ただ、49時間以上、ほぼ毎日2時間は4割ぐらいあるのか、結構多いので、超長時間が減って、長時間労働は結構あるのかと思います。分かれば後でお願いします。
 山田委員、お願いいたします。

○山田委員 ありがとうございました。
 大変広範なデータで、非常に役に立つ内容だと思いますが、皆さんがおっしゃっていたように、一つ一つがかなり大きな問題なので、絡み合っていて、それをどこから取り組んで実効性を上げていくかということについての回答というのは、L字カーブの問題だけではとても集約し切れないという印象を持ったので、このデータを分析した上での深掘りしたテーマ分析みたいなことをする必要があるのではないか。
 つまり石黒委員がおっしゃっていたのですが、私もいろいろな企業との付き合いがあるのですけれども、大企業と中小企業、あるいは学校とか、一般の小さな公益法人とか、様々なところと付き合うと、一部の大企業だけでは、この問題について積極的に取り組もうとして、政府側の主導に従って、かなりの時間をかけて、経済に影響を及ぼすレベルで頑張るようなところがあるのですが、一方で、中小企業では全くそこまでいきません。経済効率を上げることが最優先で、時短だとか、そんなことを言っていられないのが本音だと聞こえてきます。この乖離はかなり決定的なものがあって、そこを分別して議論していかないと、ついていけないのではないかと思いました。
 佐藤先生のお話の中で一番腹に落ちてきたことは、基本は正社員の働き方をきちっとしていかないと、全部変えられないのだということはまさにそのとおりで、その中で一つ、長時間労働と給与を上げていくことがポイントになっていくと思うのですが、一つのヒントとして、今回のコロナ禍を契機として、在宅勤務の比重が上がってきたと思います。
 これは質問にもなるのかもしれませんが、在宅勤務が増えることによって、通勤時間が減少して、長時間労働が避けられていることになった場合の長時間労働に関するデータみたいなものがあれば、非常に参考になると思います。時間があまりたっていませんから、貴重なデータは出ていないと思いますが、すごく興味のあるところでした。
 働く側、使う側の論理からいったときに、例えば我々のような専門職の場合も、10人ぐらいの弁護士がいる、お医者さんがいる中で、時短で午前中だけ、午後だけと仕事をする人がいるのですけれども、そうすると、現実問題として、その人に非常に能力があった場合でも、継続性はすごく重要になってきて、いつでも頼めるとか、あるいは継続して仕事をやっていくことによって、仕事ができることになるので、ヘビーな仕事が頼めなくなります。そうすると、結果的に短時間でやれるような仕事だけやっていくと、活躍の場面がすごく少なくなっていくような循環が否定し難いです。
 最近、離婚するときの親権をどうするかということで、昔は絶対に親権は女性みたいなところがあったのですが、データは申し上げられないのですけれども、親権を譲るというケースがすごく増えてきています。親権は要りませんという女性が私の体感だけでも増えてきて、あるいは親権を1回獲得して、養育するのだけれども、何年かして親権をお返ししますから、養育はそちらでやってくださいというケースがあり、20年前、30年前ではあり得ないことが増えてきて、今の現実の働く女性が置かれている大変さを物語っているような感じがしているのですけれども、そういうことを現実問題として感じました。
 あと、先ほど申し上げたように、このデータはすごく貴重なので、一つ一つを分解しながら企業別とか、分野別で分析していかれることをぜひやっていただくとありがたいと思いました。
 以上です。

○佐藤会長 ありがとうございました。
 今日のL字カーブ解消は第1回ということなので、もう一回やるみたいです。
 佐々木委員、お願いします。

○佐々木委員 様々なデータをどうもありがとうございました。
 様々なデータをどうもありがとうございました。
 佐藤先生がおっしゃったような短時間勤務とか、転勤しなくていいとか、多様な働き方をしたときにキャリアアップを諦めなければいけないのかというところは、かなり大きな課題だと思います。
 ある研究所では、育児中に業績をかさ増しして評価するために、実際の業績に1.数倍かけてあげる処置を行っています。その人の本来の能力がどれだけあるかというところを評価するために、そういう補正みたいなものがあると、短時間勤務も取りやすいのではないかと思います。
 また、男性の短時間勤務の取得率が低いというデータがありましたが、育休も取ってほしいのですが、短時間勤務を育児中に取ってもらって、早く帰宅してくれるのもとてもいいような気がします。私の研究室の男性が短時間勤務を取りたいと言って、取りましょうという話になったのですが、育休中、片方のパートナーの給料が下がっている段階で自分もお給料が下がってしまうということが理由で、結局、取らなかった方がおられました。なので、育児中の短時間勤務におけるお給料の下がり分を補償するような制度などがあって、かつ業績にも響かない状態があれば、男性と女性も取りやすくなっていくと思いました。
 また、今回、話題に出ていないのですけれども、スライドを共有させていただきます。都市計画が働き方に非常に関わっておりまして、都心の場合ではあるのですが、通常、会社が都心にあって、自宅が郊外にある方が多いと思います。その際、男性は会社から自宅に直行する傾向が高いのですが、女性は通勤の間にお買物とか、お迎えとか、いろいろなものがあって、そのために自宅と職場が近いことを好む傾向があることが報告されています。そのために、賃金格差が生まれてしまいます。
 実際に人の動き方を調べてみますと、仕事のための移動の次にケアワークの移動が長いことが分かっており、ケアワークをきちんと考慮した都市開発とか、交通機関の整備をしていかないと、そこに問題が埋め込まれてしまっていてなかなか問題解決に至りません。今、千代田区などで子供が増えていますが、それはパワーカップル達が近いところの職場に住んだほうが両立できるということで、千代田区などに住んで、そこで子供を育てるという流れが出てきているからです。
 都市設計の委員会は、大体男性しか入っていなくて、そこにちゃんと女性が入っていかないと、そういうことをなかなか想定できません。実際に世界の主要設計事務所において、女性が最高ポジションに占める割合は20%ぐらいしかおらず、世界銀行では、ジェンダー包摂をする都市計画のハンドブックをつくったり、ウイーンなどでもしっかりジェンダー視点を入れていて、こういうジェンダー視点を入れた都市設計を考えてあげることが大事だと思いました。
 あと、流山市の例なのですけれども、保育園に子供を預けられたとしても、駅から遠いところだと、預けたりお迎えに行くための移動時間がたくさんかかって大変なので、様々な保育園の子供を駅近くに1か所に集めて、そこに預けたりお迎えに行けばいいというサービスをしているので、そういうサービスなども行政がしっかりやってあげることで、なるべく移動距離を減らしてあげることも重要だと思います。
 以上です。

○佐藤会長 ありがとうございました。
 都市設計は大事です。流山では、普通だと保育園まで行って、また自宅まで戻って、駅まで行ってみたいに、自転車を保育園に預けられないことが結構多いみたいで、どこにあるかということで、家まで戻ってこなければいけないみたいな話も聞いたことがあります。流山は駅に子どもを連れていけば、市が保育園まで連れていきます。そういうことも大事だと思います。
 大崎委員、お願いします。

○大崎委員 今日はいろいろと勉強になりました。ありがとうございました。
 何名かの委員の方も既に強調されていらっしゃるのですけれども、大きな視点として、性別役割分業を前提とした雇用制度、雇用慣行を改革すること、それが政策でやるべきところなのかと思っています。
 日本は、家事、育児が女性の責任というジェンダー規範がものすごく強いので、とにかく徹底的にケアワークの責任の再分配を進めること。これはSDGsが掲げる普遍的な課題ですけれども、日本では特にすごい問題ですから、とにかくそこをやること。男女での職域、職種の違いも非常に大きなジェンダーギャップでして、ここに社会全体の賃金格差が生まれてくるわけですから、そういう視点がこの議論でも必要だと思います。
 ジェンダーの視点を踏まえた構造的な変革は、「コロナの女性への影響と課題に関する研究会」で非常に強い提言として出てきて、それを踏まえて、去年、おととしの骨太の方針では、ジェンダー視点のある政策が打ち出されました。私はこの1~2年の方針で示された政策や論点の精度をしっかり高めていく、深化させていくことがすごく重要なのではないかと思います。
 ペイギャップの情報開示義務化は物すごく威力があって、企業はこれがコンプライアンス事項になるということで、当然のことながら徹底的にやります。ただ、そこが数合わせに終わらないように、つまり、外から人を連れてきて、どうにか数字上はよく見えるということをやるのではなくて、男女間ペイギャップから見えてくることは何なのかという要因分析をしっかりとジェンダー視点から行い、課題を抽出して、行動計画を立てる。そういう一連のプロセスを徹底的に企業にやってもらうための道筋をつけることが非常に大事だと思います。
 あと、合理的な選択として、非正規雇用や短時間の就労を選ぶ女性たちがいます。それも骨太の中で「税と社会保障の見直し」として出てきています。それを進めていく必要があると思います。
 厚労省さんの資料の中で出てきた今後の両立支援の研究会でも言及されていたようですが、くるみんとか、えるぼしなどの認証制度の効果をしっかりと検証することが政府としてやるべきことです。認証しているにもかかわらず、企業の中でジェンダーギャップが解消されていないのだとすれば、それは公共政策の失敗ですから、しっかりと検証する必要があると思います。
 ケアワークに関しても、4月から1,000人以上の従業員の会社は男性の育休取得率の公表義務化となるかと思います。中小企業も含めて取得率を出させるとか、取得期間の開示も重要です。男性育休取得推進は、ケアワークの責任の再分配という文脈での公共政策ですから、1日、2日取っても全く意味が無い。取得期間が重要になってきます。その辺の情報開示を考えていくことができると思います。
 実際に企業も今はDEI(ダイバーシティ、エクイティ &インクルージョン)だったり、人的資本経営やウェルビーイング経営など、一人一人の社員が働きがいと働きやすさを追求できる職場になっていく方向に大きく動いているので、そういった流れも踏まえながら、公共政策でやるべきところを整備していくことが大事だと思います。
 最後です。今、申し上げたことは、既に骨太の方針でカバーしてきた論点ではあるのですけれども、新しいものとしては、公務員の非正規雇用の問題に向き合う必要があると思います。同一価値労働同一賃金の考え方とも連動してくると思いますが、図書館の司書であったり、先ほど治部委員が言っていたような男女共同参画センターの専門家だったり、ケアワーカーだったり、社会的な価値やプロフェッショナルとしての価値は非常に高いのだけれども、賃金が全くそれに見合っていない。そういったことにしっかりと向き合っていく必要があるのではないかと思います。
 以上です。ありがとうございます。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 ケアワークの話が出て、それが女性に過度に偏っていてということで、今日は子育てだったのですけれども、女性が継続就業をできるようになった後、親が75歳を過ぎてというと、介護の社会化と言ってきたわけです。介護保険制度の財源と介護に担い手が維持できるかどうかは、次の大事な課題になると思います。
 徳倉委員、今、来たばかりですけれども、いいでしょうか。

○徳倉委員 徳倉です。遅れましてすみません。
 4時20分ぐらいから耳は生きていまして、皆さんの御説明を聞いています。

○佐藤会長 それでは、もし何かあれば、お願いします。

○徳倉委員 皆さんの意見がまさにそうだということで、治部さんの御意見もそうでしたし、あと、石黒さんの企業側からの視点もすごくそうで、実際に会社を経営しながら、妻もばりばりフルタイムでやり、育休を3回取った地方にいる者として、昨日、ショックだったことをお話しします。
 今、地方では、公立高校の入試がありまして、調べられたら、四国新聞には、今日の記載で問題は全部ありますので、内閣府さん、厚労省さん、ぜひ見ていただきたいのですが、社会の問題でL字カーブの問題が出ました。社会でグラフを読み取りましょうということで、私は塾も経営しているものですから、全部見る関係上、泣きそうになったのですが、端折ります。
 答案の回答例は、育児と仕事が両立しづらいです。もう一つの回答例は、年齢が高くなるにつれて、正社員との賃金の格差が拡大している、年齢が高くても、賃金が低く抑えられているということが回答例としてあります。これを今の15歳が回答しなければならない現実を我々大人、国がどう考えるのかということは、物すごく腹立たしさと虚しさと、今でも泣きそうなのですが、これを解かせないといけないという現状がすごくつらくて、しかも、今日はL字カーブをやらないといけないということでした。
 今日、欠席をしないで、これだけは絶対に言って帰ろうと思って、本当に多岐にわたると思います。政策なのか、制度なのか、それぞれの立ち位置なのか、大きな問題から語らないといけない部分など、確かにあるのですが、全部複合的な要因の中で、ここは男女共同参画の中なので、どうやって男女の格差をなくしていきながら、L字カーブを減少させていくのか、もしくは生きやすい社会にしていくのか、子どもたちがこういう問題を解かずに済むのかということも、幾つかの視点はもちろんあると思いますけれども、その観点を忘れてしまうと、つらいというところです。
 最後は駆け足でお示ししましたが、社会の問題は本当につらくて、ぜひ関係者の方に見ていただいて、今日付の四国新聞には載っていますので、見ていただいて、皆さん、感じていただければと思います。
 以上になります。

○佐藤会長 ありがとうございます。
 我々からアクセスできない場合もあるかも分からないので、事務局で探していただいて、委員の皆さんと共有できればと思います。
 それでは、委員の先生から意見があるかもしれませんが、時間もありますので、この後はどうしましょうか。岡田局長、村山局長の順で、可能な限りで回答できること、あるいは御意見についてこんなふうにするとか、できそうだという話があれば結構ですので、よろしくお願いします。

○岡田男女共同参画局長 先生方、今日はいろいろ御指摘をいただきまして、ありがとうございました。
 複合的に要因は様々というのは、私どもはそのとおりだと思っておりまして、スライド15であえて要因を分解しています。ただ、先生方がおっしゃるとおり、これが一つ一つそれだけで解決するわけではなくて、システムとして変わっていかないと、L字カーブは結果として変わっていかないのではないかと考えております。
 今日いただきました御意見は、また整理させていただきまして、政策をどうやって関連させていくとうまくいくのかということを改めて考えさせていただきたいと思います。既に御退室ですが、井上委員がおっしゃったデータをもう少し調べまして、男女の差なども見た上で、御提供させていただきたいと思います。
 繰り返しになりますけれども、先生方から様々な御意見をいただきましたので、よく整理をさせていただいて、先生がおっしゃいましたけれども、今日は1回目ということですので、次回までに整理させていただきたいと思います。ありがとうございます。

○佐藤会長 第2回目の議論のときに、今日の皆さんの御意見を伺って、少し整理していただければと思います。
 村山局長、よろしくお願いします。

○村山雇用環境・均等局長 先生方から多岐にわたる非常に示唆深い御意見、また、御質問をいただきまして、ありがとうございました。
 まず明確に御質問という形でいただきました点。山口先生から男性の近年の週60時間を超える長時間労働者の減少について、年齢構成の変化による影響があるのかどうかという点でございます。近年、長時間労働者の年齢による分布は、相当の高齢者を除けば、あまり大きく変わっておりませんで、したがって、年齢構成による影響は少ないと考えております。
 むしろ今後この会議で深掘りをしていただきたいのは、改正労働基準法の適用猶予の対象とも関わりますけれども、長時間労働者は一部の産業、職種に極めて偏っている点です。具体的にはトラックをはじめとするドライバーの方々です。荷主との関係での待ち時間等の関係があって、交渉上の地位から来る問題があるということです。
 それから、医師の問題です。これは救急科をはじめとする医療提供体制の問題で、一部の産婦人科や救急科の医師が非常に長時間にならざるを得ない構造があります。産業での取引ですとか、国民・利用者のニーズなどに由来するところが大きいのだろうと思っています。
 その上で、適用猶予はかけていますけれども、それぞれの業界でも御努力をいただき、例えば荷主問題であれば関係省庁、特に発注側のいろいろな関係省庁とも連携して、国交省さんと我々で働きかけていくとか、あるいは配置上の工夫とか、ICT化とか、そういったことも含めて、各業界でも御努力いただいて、そういったものの積み重ねにより、そうした分野でも長時間労働の削減につながっているのではないかと考えているところでございます。山口先生から御質問をいただいた点へのお答えは、そういったところでございます。
 その他、たくさん御意見をいただきました。白波瀬先生からいただきました労働者側のリテラシーの問題について、佐藤会長からもお話をいただきましたように、労働法教育に関しましては、高卒で就職される方や大学で就職活動中の方に向けては、各高校・大学の先生方とか、就職部の御理解も得て、厚労省の出先機関の職員が出向いて、基本的な講座をやっています。その際に使うテキストも、学校の進路指導の先生方と共同開発して、かなりブラッシュアップされた内容となっており、漫画で読める労働法みたいなものも含めていろいろなものができています。
 今後は佐藤会長からもお話がありましたように、社会に出て、派遣なら派遣、フリーランスならフリーランスなど、いろいろな働き方に応じた対応がどこまでできているのかという点は、教育を提供する場の在り方など、いろいろな課題があると思っています。先生方の御指導をいただければと思っているところでございます。
 山口先生と佐々木先生からお話のあった育児のために短時間労働をしている方々への給付の創設ですが、全世代型社会保障構築会議の報告書の抜粋が今日の岡田局長の御説明資料に入っています。この施策について、山口先生から女性のマミートラックの助長にならないようにするためには、男性側の働き方の上で考える必要があるし、現時点での導入がマイナスにならないか留意が必要であるという御指摘がある一方で、佐々木先生からこういった制度があれば、給与面、収入面からの男女労働者の不安も取り除かれるのではないかという御指摘がありました。両方とも大変貴重な御意見だと思っております。
 これから政府全体として、財源も含めてどうしていくのかという難しい調整もある課題だと思いますが、こうした御意見があったことに関しては、所管部局にしっかりお伝えしていきたいと思っております。
 なお、若干私見で申し上げれば、仮にこうした制度をつくるとすれば、育児休業をするよりは短時間勤務を促進し、短時間勤務の中でもより長い時間働ける選択を促進するような制度設計、これは現在の雇用保険制度の中でも雇用継続給付で取られている考え方だと思いますけれども、トータルとしての収入をまさにどう考えるかという制度設計の視点も重要な課題ではないかと考えております。
 その他、今、たくさん御意見をいただきました。テレワークにおける長時間の問題ですとか、あるいは現在、私どもでやらせていただいている両立支援での論点について、好意的な御意見もいただきまして、大変触発されるところもありました。
 1点、石黒先生から大変貴重な御提起をいただき、佐藤会長にも解説していただきましたが、解雇に関してです。会長と重複になる部分があるかもしれませんが、日本の解雇ルールは、判例法理で積み重なってきたものを足しも引きもしない形で、労働契約法の第16条において、客観的な合理性や社会的な相当性のない解雇は権利濫用で無効だということがルール化されており、また、労働基準法で30日前には必ず予告せよという手続的なルールが定められております。
 こうした法律上の規定は多くの国と比べて特段異質なルールではないけれども、石黒先生がおっしゃるように、厳しいというお声が経営の現場から起こるのは、正社員の人材活用の仕組みとして、ふだんから長時間労働をさせる、幅広く配転する、そういったことをやっているのだったら、解雇回避をするためにもそういう努力をしてくれという、そうした裁判例が積み重ねられ、規範化してきたのではないかと思います。
 一方で、佐藤会長から御指摘がありましたが、高度専門職でジョブが明確化された雇用管理の中では、ジョブやポストが消滅した際などについて様々な裁判例もあるということに関しては、我々も雇用指針という形で、労使の皆様方にも内容をチェックしていただいた上で、そうした裁判例の内容を周知してきている経緯もあります。そうした点も含めて、こうした場で、様々に御指導いただくとともに、周知に向けて御支援をいただければと思っております。
 本日は大変貴重な機会を与えていただきまして、どうもありがとうございました。
 私からは以上でございます。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。村山局長に丁寧に御説明いただきました。
 ただ、先ほどの短時間勤務等々の給付金の在り方をどうするかも、やはり山口委員が言われたように、基本的にはフルタイムも無理なく、もちろん男性も取りやすくすることを考えながらの制度にしていただければいいと思います。
 それでは、まだちょっとありますけれども、一応ほぼ予定の時間だということと、2回目を予定していますので、男女局で今日の議論を踏まえて、第2回目の議論のテーマを設定していただければと思いますので、すみませんが、今日の議論はここまでにさせていただいて、2回目にもまた積極的に御意見を出していただければと思います。
 本当にどうもありがとうございました。