計画実行・監視専門調査会(第20回)議事録

  • 日時:令和4年12月22日(木) 10:30~12:00
  • 場所:オンライン会議システム(Zoomウェビナー)にて開催
  1. 開会
  2. 議題
    女性の視点も踏まえた社会保障制度・税制等の検討
    ・専門家を交えた意見交換
      お茶の水女子大学 永瀬伸子教授
  3. 閉会

【配布資料】

資料1
女性の視点も踏まえた社会保障制度・税制等の検討(内閣府説明資料) [PDF形式:1,396KB]別ウインドウで開きます
資料2
第3号被保険者制度及び被用者保険の適用拡大について(厚生労働省説明資料) [PDF形式:2,021KB]別ウインドウで開きます
資料3
全世代型社会保障構築会議報告書(内閣官房全世代型社会保障構築本部事務局説明資料) [PDF形式:693KB]別ウインドウで開きます
資料4
これからの日本の家族と雇用に関する社会的保護の在り方(お茶の水女子大学・永瀬伸子教授提出資料) [PDF形式:1,369KB]別ウインドウで開きます
参考資料1
計画実行・監視専門調査会委員名簿 [PDF形式:112KB]別ウインドウで開きます
参考資料2
女性活躍・男女共同参画の重点方針2022(女性版骨太の方針2022)(令和4年6月3日すべての女性が輝く社会づくり本部・男女共同参画推進本部決定) [PDF形式:1,756KB]別ウインドウで開きます
参考資料3
配偶者控除について(財務省参考資料) [PDF形式:584KB]別ウインドウで開きます
参考資料4
民間企業における「配偶者手当」について(厚生労働省参考資料) [PDF形式:1,189KB]別ウインドウで開きます
参考資料5
計画実行・監視専門調査会 これまでの議論の整理 [PDF形式:313KB]別ウインドウで開きます
参考資料6
独立行政法人国立女性教育会館(NWEC)及び男女共同参画センターの機能強化に関するワーキング・グループの開催について [PDF形式:258KB]別ウインドウで開きます

【出席者】

会長   
佐藤 博樹  
中央大学大学院戦略経営研究科教授
委員   
石黒 不二代 
ネットイヤーグループ株式会社代表取締役チーフエヴァンジェリスト
同    
井上 久美枝 
日本労働組合総連合会総合政策推進局長
同    
大崎 麻子  
関西学院大学客員教授
同    
佐々木 成江 
お茶の水女子大学ジェンダード・イノベーション研究所特任教授
同    
白波瀬 佐和子
東京大学大学院人文社会系研究科教授
同    
山口 慎太郎 
東京大学大学院経済学研究科教授
同    
山田 秀雄  
山田・尾﨑法律事務所代表弁護士
有識者  
永瀬 伸子  
お茶の水女子大学教授
内閣府  
小倉 將信  
特命担当大臣(男女共同参画)
同    
岡田 恵子  
男女共同参画局長
同    
畠山 貴晃  
大臣官房審議官(男女共同参画局担当)
同    
杉田 和暁  
男女共同参画局総務課長
内閣官房 
鹿沼 均   
全世代型社会保障構築本部事務局審議官
財務省  
関 禎一郎  
主税局税制第一課長
厚生労働省 
若林 健吾  
年金局年金課長
同    
岡 英範   
労働基準局賃金課長

議事録

○佐藤会長 窪田委員、治部委員、徳倉委員、内藤委員が御欠席で、石黒委員は少し遅れて御参加と伺っております。
 まず本日は、小倉將信女性活躍・男女共同参画担当大臣に御出席いただいております。御挨拶いただければと思います。
 それでは、小倉大臣、よろしくお願いいたします。

○小倉女性活躍・男女共同参画担当大臣 皆様、おはようございます。
 男女共同参画・女性活躍担当大臣を務めております小倉將信です。
 佐藤先生をはじめとする委員の皆様、そして、本日御説明をいただきます永瀬教授におかれましては、大変御多用の中、年の暮れ、本調査会に御出席をいただきまして誠にありがとうございます。
 これは繰り返しになりますが、岸田内閣の目玉政策でもあります新しい資本主義の中核には、女性の経済的な自立が位置づけられております。
 先日、本調査会の親会議であります男女共同参画会議が開催されまして、岸田総理から、私も含めて関係閣僚に対して、女性の経済的自立に向けた取組をさらに強化をするよう指示があったところでありまして、本調査会におきましても検討を深めていきたいと思っております。
 今日の議題でもあります「女性の視点も踏まえた社会保障制度・税制等の検討」は、女性が経済的に自立できる環境づくりに向けた重要課題となっております。特に現行の社会保障制度等は昭和時代に形づくられたものですが、近年、離婚件数は結婚件数の約3分の1、世帯全体に占める単独世帯及びひとり親世帯の割合が約半分となりますなど、家族の姿は昭和の時代から大きく変化、多様化をしております。
 また、既婚女性の約6割が年収200万円未満であり、平成29年時点のデータではありますが、有配偶者の非正規雇用女性はいまだに4割程度がいわゆる就業調整を選択しております。こうした状況も踏まえて、今年の6月に策定した女性版の骨太の方針2022にありますとおり、「女性の視点も踏まえた社会保障制度・税制等の検討」といたしまして、第1に、現行の制度は就業調整を選択する人を増やしているのではないか。第2に、配偶者の経済力に依存しやすい制度は男女間の賃金格差も相まって、女性の経済的困窮に陥るリスクを高める結果となっているのではないか。そして、最後に第3に、現行の制度は、分配の観点から公平な仕組みとなっていないのではないかなどの観点から議論を深める必要があると思っております。
 また、女性の就労の制約と指摘されている制度等については、全世代型社会保障制度構築会議において、働き方に中立的なものとしていく観点から議論が行われ、先般、報告書が取りまとめられたところであり、本日はこの報告書の内容も踏まえて議論を行っていただきたいと思っております。
 さらに、社会保障制度そのものの議論が重要であるのはもちろんのこと、希望の女性がいわゆる年収の壁にとらわれずに働くことが選択できるよう、リスキリングの強化、仕事と子育てを両立できる環境整備、固定的な性別役割分担意識の解消など、様々な観点から検討を進めていく必要があります。
 限られた時間になりますが、皆様の専門的なお立場からぜひ忌憚のない御意見をいただきたいというように思っております。少々長くなりましたが、本日の議論を通じて、女性の経済的自立に向けた取組への力強い後押しをしていただきますよう、心より御期待とお願いを申し上げまして冒頭の挨拶とさせていただきます。
 本日はどうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。

○佐藤会長 小倉大臣、どうもありがとうございました。
 それと今日は先ほど大臣からも御説明がありましたが、本日の議題に関わる専門家として、お茶の水女子大学、永瀬伸子教授に御出席いただいております。よろしくお願いいたします。
 それでは、議事に入らせていただきます。
 まず、内閣府の畠山大臣官房審議官より、資料1について御説明いただければと思います。よろしくお願いします。

○畠山大臣官房審議官 おはようございます。本日もよろしくお願いいたします。
 私のほうから資料1に基づきまして御説明させていただきたいと思います。
 資料1の1ページ目、女性版骨太の方針における記載、これは先ほど大臣の御挨拶にもありましたけれども、ここに書いておりますように「女性の視点を踏まえた社会保障制度・税制等の検討」として、①から③という3つの観点から社会保障制度や税制等について検討を行うということが本年6月の政府決定において行われているということでございます。
 それから、次のページでございます。
 関連制度につきましてという資料でありますけれども、税・社会保障等々でこの金額を超えるとこういうことが起こるというようなことで様々な仕組みがございます。税の観点から言いますと、住民税課税では100万円、所得税課税では103万円、これは配偶者特別控除という仕組みができたことによりまして、壁ということではないのですけれども、所得税がかかる水準として103万円。それから、106万円につきましては被用者保険、一定の規模によりますけれども、被用者保険への加入対象となるのが106万円。それから、130万円というのは配偶者の扶養から外れる額。150万円からは配偶者特別控除の額は段階的に縮小を開始する。201万円になりますと配偶者特別控除はなくなるということであります。
 次のページ、お願いします。
 昭和35年あるいは昭和60年に配偶者控除の制度あるいは第3号被保険者制度というのが創設されましたけれども、これも皆さん御承知のことと思いますが、その頃と比べまして様々な家族構成等々における状況が変化してきているというデータを整理してきたものでございます。単独世帯数でありますとか、下のほうですけれども、妻がパートタイムの者でありますとか、専業主婦世帯の割合、そうしたものについてかなり大きな変化が出てきているということでありまして、こうしたことを踏まえて検討が進められるべきではないかということに考えてございます。
 それから、4ページから6ページはパートタイム労働者の時給と年収の推移という関係で整理したものでございます。特に6ページのほうでまとめて御説明したいと思います。
 6ページでは、この二十数年間における総労働時間と時給と年収ということをパートタイム労働者について整理したものですけれども、ご覧いただければ分かりますが、時給はこの25年間、右肩上がりという状況でありましたが、月間総実労働時間という観点では右肩下がりということでありまして、結果的には年収はあまり変わっていないということで、この背景には年収の壁の存在の影響も考えられるのではないかというように考えられてございます。
 次のページでございます。
 非正規雇用女性の就業調整状況でございまして、これは見ていただければ一目かと思いますけれども、この50万円から99万円、100万円から149万円の範囲で相当のピークが来ているということでありまして、あと折れ線グラフのほうですが、就業調整をしている有配偶女性の割合ということで言いますと、やはり先ほど申し上げたようなレベルのところにかなり高い数字が来て、それより上になるとがくっと落ちているということをお示ししておるものでございます。
 次の8ページでございますけれども、現在の就労形態を選んだ理由で、女性パートタイム労働者に聞いたところ、ほかの項目もありますが、第3位としまして就業調整ができるからというのが2割強というデータが出ておるところでございます。
 それから、次のページですけれども、女性パートタイム労働者の過去1年間の就業調整の有無、就業調整をした理由ということでありますが、特に理由のほうで57.3%がこの一定額を超えると配偶者の健康保険、厚生保険の被扶養者から外れてしまうからという理由が挙がっているということでございます。
 次のページは第3号被保険者の状況ということでありまして、週労働時間20時間あるいは月額賃金8.8万円以上というような上限という中にどれぐらい入っているかということでありますけれども、労働時間については53%が、それから、月額賃金については70.6%がその中に入っているということであります。
 それから、3号被保険者全体の就労形態でありますけれども、全体の43.1%、非就業者・不詳というデータになってございます。
 次のページでありますけれども、夫の所得階級別の世帯数と妻の有業率ということでありまして、これは当然という面もあろうかと思いますが、夫の所得階級は高くなるほど妻の有業率は低くなる、専業主婦が多くなるということを示しているものでございます。
 一方、次のページですけれども、ひとり親世帯、単独世帯というのは先ほどの表にもありましたけれども、この間、増えているということでありまして、昭和60年に比べますと令和2年につきましては2倍弱ぐらいの数字になっているということであります。
 そうしたひとり親世帯の状況ということでありますけれども、これもよく指摘されることでありますが、相当厳しい状況の中で暮らしておられる方がいらっしゃるということを示しております。特に左側のほう、ひとり親世帯、子供がいる現役世帯とほかの世帯と比べますと、ピークの水準というのが相当ひとり親世帯は左側に寄っているということが分かると思います。
 また、国際比較という観点で右側ですけれども、相対的貧困率の国際比較という意味では、日本は韓国に次いで下から2番目という数字になってございます。
 最後に、世帯主が就業している世帯の所得分布ということでありますけれども、単身の世帯主女性お一人の女性の世帯あるいは単身世帯以外の世帯主女性、点々のオレンジ色のグラフですが、これがシングルマザー等々ということであろうかと思いますが、この世帯の方々につきましてはやはり男性の同じような状況の方に比べても相当左側にピークが存在しているということも示しておりまして、そうした状況を示しているのかなというように考えてございます。
 私のほうから資料1の説明、以上でございます。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 それでは、続けて、厚生労働省の若林年金課長から、資料2について御説明いただければと思います。よろしくお願いします。

○若林年金課長 厚生労働省の若林でございます。
 音声とあと資料2の共有、よろしいでしょうか。

○佐藤会長 大丈夫ですよ。

○若林年金課長 よろしくお願いします。
 そうしましたら、私のほうから第3号被保険者制度及び適用拡大の最近の状況について御報告いたしたいと思います。
 1枚、次のページに行っていただきまして、まずは現状です。
 平成7年度1220万人をピークに減少、現在では793万人という状況でございます。男女別はほとんど女性でして、年代別に見ますと30代、40代の方の約3割が第3号被保険者という状況になっております。
 それから、就業形態につきまして先ほどの資料にもありましたけれども、約4割の方が働いてらっしゃるという状況になっております。
 次のページ、お願いします。
 この第3号被保険者制度は基礎年金、1985年に導入されたときに導入されたものです。右の上のほうが現行制度の考え方、世帯単位での給付・負担の均衡化、それから、年金権の確立ということでこの制度は始まっております。
 他方で、左側のほうですけれども、これに対しましては、制度発足時より長年にわたりまして批判というのはございます。
 それから、対応の方向性ということで4つの方向性、これまで議論されてまいりました。一番上、それから、一番下については赤字のほうで対応は行われている。他方で、真ん中の部分については議論があったものの現在もこういう対応にはなっていないというものでございます。今現在、一番下、被用者保険の適用拡大することで第3号被保険者制度の縮小へのステップを踏むというのが一番対応としては進んでいるところでございます。
 この内容につきまして次のページをお願いします。
 この考え方が整理されましたのが直近ですと平成27年の社会保障審議会の年金部会での議論です。こちらの御紹介になりますが、一番上ですが、共働き世帯の増加あるいは女性の就業促進が重要な課題ということで、第3号被保険者を将来的に縮小していく方向は共有したとあります。
 他方で、2番目ですが、実態を見ますと、様々な状況の方々が混在しているということで、ただ、専業主婦を優遇しているという捉え方ではなくて、多様な属性を持つ方が混在されているということも踏まえる必要があるだろうというようにされております。
 その上で、まずは被用者保険の適用拡大を進めていくということで、第3号被保険者制度自体の縮小・見直しのステップを踏んでいく、このときにこのように整理いただいております。
 それを踏まえまして、次のページからですが、被用者保険の適用拡大ということを進めております。基本的な考え方でして、3点ございますが、まずは被用者にふさわしい保障の実現ということで、先ほどもございましたが、第3号被保険者の中でもかなりの数の方、働いてらっしゃる方はいらっしゃいます。こういう方々につきまして、いわゆる社会保険の厚生年金、健康保険による保障の枠に入っていただこうということでございますし、2番目の働き方や雇用の選択をゆがめない制度にしたいということで、これは後ほどございます勤労者皆保険の現在の議論にもつながっていく視点でございます。
 続きまして、次のページになります。
 この被用者保険の適用拡大ですが、左の上、2016年10月から始まっております。御案内のとおり、当初、企業規模要件などありまして、5つの要件ですけれども、こちらを順次拡大するということで、右側のほうですが、最も直近、令和2年の改正で幾つかの要件を緩和しております。結果的にこの10月から100人超の規模の企業について適用しておりまして、さらに2年後については50人超規模ということです。
 現在、約58万人の方が適用拡大に入ってらっしゃいまして、さらに今回の100人、50人ということで65万人ほど適用対象の方が増えるというように見込んでおります。
 それから、短時間労働者ということではないのですが、現在、個人事業所の中で非適用業種というのがございまして、左のほうですけれども、ここについても業種を拡大するということで話が進んでおります。
 次のページをお願いします。
 この第3号被保険者、いわゆる130万円の壁というところと被用者保険の適用拡大の関係でございます。その適用拡大する前、130万円がなぜ壁かというのが左側でして、130万円を超える、超えないを境に、給付のほうは変わらない、他方で、保険料負担が130万円を超えますと国民年金・国民健康保険、約2万2500円、月で増えますので、給付が同じ中で負担が増えるということで、これを壁と意識して就業調整する方がおられる。これは先ほどの統計データにもあったとおりです。
 他方で、適用拡大した場合になりますが、右のほうですけれども、負担のほうにつきましてはやはり社会保険料加入の負担ということで、半分は事業主負担でありますが負担も増える。一方で、給付が増えるということで、年金が増額というように赤字で書いておりますが、厚生年金の上乗せ部分、さらに医療保険からも手当金が出るということで、こちらのほうに入っていただくことによって、負担が増える分、給付も増えるというメリットを御理解いただくことで130万という被扶養者の認定基準を意識せずに働けるようになる、こういう狙いでやっているものでございます。
 次のページをお願いします。
 その場合、新たに106万の壁というのが出る。先ほど御紹介もございました。これは2016年10月に適用拡大を最初にしたときに、実際どのように働き方が変わったのかということを調べたものでございます。左の上の赤い棒、青い棒がございますが、労働時間が短縮された方、約3割。これは調整された方ということになると思っておりますし、他方で、保険加入して労働時間を延ばした方、約6割ということで当時の状況でございます。
 この場合、どういう要因が働いているかというところが下のほうでして、社会保険の加入のメリット、先ほど申し上げたメリットであるとか、あるいはどのように働き方が変わるのだということを従業員に説明することによって回避されているというお声をいただいております。これは下に好事例ということで少し書かせていただいております。
 これは2016年10月のデータでして、今年の10月、さらに拡大しておりますので、今、同じような調査を私どもはしております。それによって今後、どういう影響があるのか、どういうことが壁を意識しない、あるいは好事例を増やしていくことになるのか検証してまいりたいというように思っております。
 次、お願いします。
 今後の方向ということで、この後、全世代型社会保障構築会議の報告書の話もございますが、この点、今年の5月の中間整理でも取り上げられておりまして、女性就労の制約となっている制度の見直しということで、この真ん中の辺りですけれども、企業規模要件の段階的引下げ等々、いただいております。
 さらに、一番下ですけれども、女性就労の制約となっているこういう制度については中立的なものにしていくということで指摘をいただいております。
 それから、そのさらに下ですが、適用拡大の効果として、いわゆる130万の壁を消失させる効果、あるいは106万についても最低賃金の引上げで解消すべき、こういうようなこともいただいております。
 一番最後、この後も御紹介があると思いますが、次のページです。すみません。
 12月に社会保障構築会議の報告書を頂いておりまして、先ほど御紹介いたしました勤労者皆保険の実現に向けて適用拡大を進めていくということで、真ん中にあるような点についての対応ということをいただいております。
 改革の工程ということで、次期年金制度改正という言葉が下にございます。5年に一度、財政検証しておりまして、次は令和6年夏頃の財政検証を予定しております。通例ですと財政検証の結果を踏まえて翌年に制度改正を行っておりますので、通常のスケジュールでいきますと来年、令和5年、それから、6年とかけて議論していって対応していくということで考えております。
 私ども、議論の場というのは社会保障審議会年金部会になりますので、こちらのほうで今回の構築会議の報告書あるいは本日の御議論をいただきまして、関係者の先生方と共にこの問題について引き続き考えてまいりたいというように思っております。
 私のほうから以上になります。どうぞよろしくお願いいたします。

○佐藤会長 ありがとうございました。
 それでは、続けて内閣官房、鹿沼全世代型社会保障構築本部事務局審議官から、資料3について御説明いただければと思います。

○鹿沼全世代型社会保障構築本部事務局審議官 私のほうから資料3について説明をさせていただきます。
 内閣官房審議官の鹿沼でございます。
 全世代型社会保障構築会議につきましては、昨年の11月に第1回を開催して以降、先ほどの厚労省の説明にもありましたが、本年の5月にまず中間整理という形でまとめさせていただきました。それ以降、9月7日に総理が本部長をされております構築本部を開催いたしまして、総理のほうから子供・子育ての関係、医療・介護の関係と併せて働き方に中立的な社会保障制度の関係、この点について年末までに報告をまとめるように御指示をいただき、構築会議を同日開催し、それ以降、3つのテーマについてそれぞれチームを設けながら会議を開催してきたところであります。
 大体先生方には各チームでの議論、また、親会議での議論も含めてほぼ週一ぐらいのペースで精力的に御議論いただき、11月24日に論点整理という形で世の中に公表し、さらに12月16日、報告書を取りまとめさせていただきました。
 報告書につきましては、特にこの男女共同参画の関係部分を中心に御説明をさせていただければと思います。
 3ページ目であります。
 まず、この「目指すべき社会の将来方向」ということで、大きく3つの点を挙げております。
 一つが、ここにあります「『少子化・人口減少』の流れを変える」というものであります。
 続きまして、4ページ目のところ、「超高齢社会」に備えるということと、あと「地域の支え合い」を強めるというところの2点を挙げて、計3つの点について基本的な方向をまとめておりますが、特に「超高齢社会」に備えるという部分、もう少し上のページのところですね。働き方に中立的な社会保障制度を構築し、労働力を確保するという点が男女共同参画でも大切なテーマだと思っております。
 超高齢社会といった場合に高齢者が非常に増えていって現役が少なくなる、こういった中でまず1番目のポツとして、現役が少ない中で経済社会の支え手となる労働力を確保する必要。この点で、女性や高齢者の就労を最大限促進し、その能力発揮を実現することが必要であるとした上で、その段の4行目ですが、雇用や働き方に対してゆがみをもたらすことのない「中立的」な社会保障制度の構築を進める。制度の包摂性を高めることで、女性や高齢者をはじめ誰もが安心して希望どおり働き、活躍できる社会を実現していく必要というような形の方向性を打ち出しております。
 その上で、9ページ目以降に各分野ついての改革の方向性をまとめております。
 各分野につきましては子供・子育て関係、働き方に中立的な社会保障制度関係、医療・介護関係、地域共生社会という4つを挙げておりますが、この働き方に中立的な社会保障制度の関係については13ページ目のところになります。
 特に先ほど厚労省からも話がありましたが、被用者保険の適用拡大、勤労者皆保険の実現、ここがこの男女共同参画の中の一つの肝であろうということで、「勤労者皆保険の実現に向けた取組」ということで何点か挙げております。
 まず短時間労働者への被用者保険の適用に関して、今、企業規模要件がありますけれども、この企業規模要件と、あと常時5人以上を使用する個人事業所の非適用業種についてはまず早急に撤廃、廃止を図るべきだというような意見になっております。
 その上で、個人事業所でも5人未満を使用する個人事業所ですとか、週労働時間20時間未満の短時間労働者、こういった方々についての適用拡大についてもさらに道筋を検討していくべきで、次期年金制度改正に向けた議論の中で検討してほしいというようにされております。
 14ページ目であります。
 フリーランス・ギグワーカーの話とかも書いていますが、その下で「女性の就労の制約と指摘される制度等について」ということで、まずは働き方に中立的なものにしていくことが重要とした上で、先ほどお話ししたような適用拡大、これのメリットを分かりやすく説明しながら一層強力に推進していくことが必要というようにしています。
 また、そのメリットを分かりやすく説明ということで、この下のところでありますが、被用者保険適用拡大のさらなる推進に向けた環境整備・広報の充実ということで、どうしても報道等では保険料負担の話が中心になっていきますので、被用者保険になると保険料を負担することになりますが、一方で、給付がついてくる。その給付がついてくるというところの説明をしっかりしていく必要があるのではないか。そういったことは厚労省だけではなくて、業を所管する省庁、こういったところも一緒になりながら政府横断的な検討体制を構築し、しっかりとこの適用拡大を進めていく必要があるというようなことをこの会議としては打ち出しをさせていただいております。
 今後の改革の工程については、先ほどの厚労省の説明のとおりでありますし、この報告書を受けまして、同日、12月16日に総理が本部長の構築本部を開催し、その中でこの構築会議の報告書に基づき、今後、政府として着実に政策を進めていくというようなことがまとめられているところでございます。
 私のほうから以上でございます。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 それでは、最後になりますが、永瀬教授から御専門の労働経済学の立場から、本日のテーマの今後の方向性について御示唆いただくため、資料4に基づいて御発表いただけるということです。よろしくお願いいたします。

○永瀬教授 お茶の水女子大学の永瀬でございます。
 今日はお招きいただきましてありがとうございます。
 今までとこれから、少子化、高齢化、人口減少、こういった変化の中において家族と雇用、そして、それをどういうように社会的に保護していくかは、よく考えて対応していく必要があると思います。
 次のページ、お願いします。
 パートの就業調整問題、これは私の博士論文のテーマの一つでございまして、1995年提出の論文でございます。つまり80年代から既に言われていて、今日でもある。その上で、今日では、正社員がどちらかというと縮小して、非正社員、パート、様々な形の非正社員が出てくる中で、依然として正社員とパートは大きく労働市場が分かれたままである。正社員は月給制ですが、パート等非正社員は時給制であり仕事時間を選べるために就業調整が起きているわけです。次のページ、お願いします。
 これは私がパネル調査を使って有配偶女性の短時間パートに限定し年収分布をみたもので、2002年から2012年までのデータでちょっと古いのですけれども、同じ人をフォローしたものです。子供年齢が上がっていったときに年収がどう変化するかを見たものです。子供年齢が上がっていくと、3~5歳の頃は例えば年収60万未満の方も多いのですけれども、年齢が上がっていくほど103万の壁にぶつかる。その度合いは子ども年齢上昇とともに上昇し10~12歳ぐらいになると4人に1人は壁にぶつかる。そして、これは2012年までのデータです。次のページをお願いします。
 最近になるとどうか。これは2000年から2016年まで労働力調査から23-59歳の夫と妻の年収分布を見たものですけれども、2000年ですと妻は無職者が大体4割以上いたのですが、その後の16年で3割ぐらいに下がっています。左側が妻の年収階級の図ですね。妻の年収階級は、つまり、ゼロという人が最も多くて、次に多いのが50~99万であって、最近増えてきているのが100万から149万というちょうど社会保険賦課がはじまる辺りです。この辺が増えていまして、あとは200万から299万というところもちょっと増えていますけれども、日本は図からわかるように妻と夫で、対照的と言えるほど収入構成、収入の度数分布が違っている。
 右の図ですが男性の場合は500万以上が大体多くなっている。ただ、この2000年から2016年にかけて男性の年収分布はわずかに低いほうに移動してきています。女性のほうは少しずつ高い方に移動していますけれども、それほど大きく増えてはいない。これは夫婦を見た図です。
これ以外に図には示していないシングルがいます。シングルの方たちの年収ですが、シングル女性は有配偶女性よりも高いですが、でも、シングル男性ほどは高くはなく、一方シングル男性については非正規の方もいらっしゃって、全体に有配偶男性よりも低いという、このように性別と配偶関係で大きく異なる分布になっております。
 次のところをお願いします。
 なぜ日本の非正規雇用はこんなに低賃金なのか。これは私のまた博士大学院時代からの研究テーマであるのですけれども、現在でも就調の2017年を見ますと、昔に比べて大幅に非正規は拡大しまして、女性の雇用者の55%、男性雇用者の5人に1人が今や非正規でございます。年収300万以上を見ますと、正社員で見ますと男性8割、女性5割なのですけれども、非正規雇用ですと男性17%、女性3%で、年収149万以下が非正規の大多数を占めている。
 それはなぜか。昔から研究していますと、まさに主婦パートという働き方をモデルにして拡大発展してきたのですね。ですから、人的資本蓄積をしていこうという企業の取組もありませんし、そういう仕組みもないまま、それが若い人に広がってしまったというのがこの20年です。
 それまで主婦だからいいのではないかというような、そして、自由に働いてもらう、短い時間で、低賃金で好きなときに働いていただこうというそういう働き方が、若い人にそのまま広がってしまったために、例えば時給1,000円であれば1,000時間でしたら100万ですけれども、フルタイムに近い1,600時間から2,000時間働いても年収160万から200万にしかならない、こういうものに今、若い男性、女性がそこに入っていってしまっているのがこの20年間の非常に大きな日本の課題だと思います。それが日本の少子化も招いてまいりましたし、そして、若い人が自立できずに親元で暮らすというような変化も生んでまいりました。
 そして、103万、130万まで働いてもらうことで企業は社会保険料を節約できますし、有配偶女性本人も1,000時間ぐらい働くとちょうどいいかなということで、これ以上働いて社会保険料を払いたくないし、いいかなというところで今まで主婦層についてはある程度そういう納得があったのかもしれません。ですけれども、若い人についても、それからあともう少し働きたい人についても、日本の労働市場においては、パートの身分であることが賃金を大きく下げます。私の研究において、パネル調査を使って、同じ人が企業規模間を移った場合にどのぐらい賃金が変動するか。それから、同じ人が正社員からパートになった場合にどのくらい賃金が変動するかというのを見ています。すると、日本の場合は企業規模間のクロスセクションで見た賃金差は非常に大きいのですけれども、同じ人が移った場合には、賃金は、多少変わりますが、それほど大きくは変わりません。
 しかし、正社員からパートになると、同じ人でも賃金が約2割下がります。そういう特徴を持っています。果たしてそれが効率的な労働市場と言えるのかどうか。日本においては、正社員でないこと、また短時間であることを低く評価する、ということをこれまで企業はしてまいりましたし、人事もそのように、この方は短時間だから、この方はパートだからこちらの賃金、ということで、あまりきっちり生産性を評価してこなかったのではないかと思います。つまり、専門性を評価するよりは急な残業や転勤を評価する雇用慣行があった。これがいわゆる日本型雇用慣行なわけですけれども、その正社員と非正社員の賃金格差の大きさというのは、長く研究しておりますが、もう2000年の頃から国際的にみて、日本は際立って大きいもので、それが今も持続しております。
 次のページ、お願いいたします。
 これからの社会に何が求められるのかといいますと、やはり男性、女性ともに人生100年ですから人的資本を形成して自立できるということはとても重要だと思うのです。それから、日本にとって、私はこの少子化は本当に大きな問題だと思っていて、安心して子供を持てるような社会をつくっていくということが本当に重要なことだと思います。
 そして、103万、130万の壁は女性を実は自立できなくさせている壁になっております。つまり、先ほど見たように子供が大きくなってきたところで壁にぶつかって、もうそれ以上は働かなくなるわけですから。そして、最近、若い人にいろいろ聞いてみるのですけれども、やはり安心して子育てをするには夫に養われるというのではもう今の時代、不十分というのが多くの人の意見です。離婚するかもしれないとか、夫の仕事がどうなるか分からないというので、自分がしっかり収入を持たなくてはいけないという意識が高まっているように感じております。
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 現在の主婦の賃金の在り方は、つまり、女性の就業調整は、これまでいろいろ指摘されてきたことですけれども、税制や企業手当、社会保障制度の影響が大きいのですが、そのベースには、やはり男性の働き方、日本的雇用慣行、すなわち、夫が長時間働き、妻が家事全般を担うというのを前提としていろいろな労働時間とか転勤とか残業の慣行ができてきたという、そういう暗黙の雇用慣行があるというように思います。
 現在は男性が2人分あるいは子供の分、全員の分を稼げるような時代ではないです。それとともに、いかに女性の能力や知見を社会に生かしていくかということ。これはどこの国でも大事になっている。またそれがこれからのいい経済成長に結びつくとも思っています。ですので、税制や社会保障もそうですけれども、企業においての働き方のルールそのものをこれからは変えていく必要がある。すなわち、もう少し時間が柔軟であるとか、正規と非正規の壁を取り除くとか、中途から正社員に入っていけるとか、そういうことと税制・社会保障、そして、子育て支援や教育の在り方、これらを一体的に変えていく必要があるというように考えております。
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 では、若者の雇用状況についてちょっとお話しします。夫婦とも正社員で育休を取って、夫婦ともフルタイムで働くスタイルを希望する若者が大きく増加しています。出産後、一旦退職して再就職するライフスタイルの希望が減少しております。子供を持つ自信や意欲がない者が増えている。――実は私もちょっと驚いたのですけれども、驚くほど子供を持たない、持つかどうか分からないという消極的な意識が増えている。つまり、積極的に子供を持つという人が非常に急に減ってきています。その背景には、賃金の低い若者の増加、それから、あと年功賃金ですからもともと正社員でも若手では賃金は高くはない。それから、子供に費用がかかるとすごく意識されている。それから、男性の世帯主の賃金の下落傾向。さらに女性に働いてほしい男性が増加しており、それから、いい職に就いている女性についても、女性が仕事を続けながら昇進をしながら子供を持つということに関して出産タイミングが非常に難しいといったようなことを聞いております。
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 これは男女局が昨年された調査ですけれども、子育てについての理想で、子供がいる男女について第1子出産後、子供が2、3歳のときの雇用の理想ですが、60代は専業主婦世帯がいい、それが理想だと4割がおっしゃっているのですが、若い層は4割が妻育休、または夫婦とも育休で、夫婦フルタイム就業がいいと4割が回答しております。
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 それから、この間、秋口に出た最新の『出生動向基本調査』でまた大きな変化がとらえられたと思ったのですけれども、下の丸ですが、子供を持たない、つまり、非婚就業であること、あるいはDINKsであることが理想という女性が初めて2割になったのです。それから、両立というのはずっと上がってきているのですけれども、再就職ががくっと落ちました。これが理想です。
 右の図は、未婚女性の自分の予定ですけれども、予定は3人に1人が非婚就業と回答。これが今回ぐっと上がって、再就職が大きく落ちました。そして、専業主婦はずっと落ち続けています。
つまり、私は日本でこれから子育てをしていけるような次世代育成が非常に重要だと思っているのですけれども、この6年間で子供を持ちにくい社会に向かっているのだなという、ちょっとそういう結果が出ております。
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 これは1988年から見ていますけれども、労働力調査で計算したものですが、100%が23-34歳の若年層の雇用者です。1988年には、女性は――未婚者のみに限定していますが、未婚女性雇用者の9割が正社員だったのですね。その後の推移をみていきますと、大卒男性は赤ですけれども、現在1割が非正社員。高卒男性は青ですけれども、2割が非正社員。そして、大卒女性は2006年ぐらいにボトムをつけますが、当時は3割が非正社員。そして、高卒女性は止まることなく正社員割合は下がり続け、今、5割が非正社員というようになっています。ただしこのほかに無業者の若者もいます。
 右側は労働力調査をロンドン大学のDearden教授と私とで世帯の収入分位推計したものなのですけれども、これは新聞記事に出て結構反響がありましたが、日本では大卒女性の中年期の中位年収が170万というものです。中年期でちょうど真ん中、大卒女性のちょうど真ん中が年収170万。ちなみに、アメリカは、当時の為替レートで1ドル100円で計算していますが、500万、イギリスは300万です。これに対して日本は170万という、このように特段に低い。170万の人たちが貧困というわけではないのですけれども、夫婦合計で見るとそれなりの収入なのですが、自分の収入は大変低い。大卒であってもこういう低い収入しか得られてない。昔に比べると、今、大学進学する若者の4割が奨学金を持っているのですね。男性も女性もです。その奨学金を返さないといけないわけです。ですので、170万ではちょっと困ってしまうわけでございます。つまり大卒でも男女で非常に年収に差があるということをこの労働力調査から分位推計したものが右側になります。
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 これは私が科研費でやったものなのですけれども、未婚女性の子供を持ちたいという意欲は25~29歳層でも、――社人研の『出生動向基本調査』はもう少し高く出るのですが――、このように「どちらでもよい」、「考えたことがない」という選択肢も入れるとかなり低く出まして、一番高い25~29の正社員女性でも6割。そして、非正社員だと4割というように下がっております。
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 つまり、これからの社会保障は若者も出産とキャリアそれぞれについて、つまり、家族をつくっていくということとキャリアをつくっていくという両方をサポートする社会保障や雇用ルールが大変必要だというように思っています。そして、若年女性も若年男性も被扶養配偶者になること、あるいはそういう人を持つことを望んではいないということです。
 大卒男女が5割となっておりますし、奨学金の負担もある。そして、そういった人たちの人材活用をする必要がある。それから、今後の人口減少、高齢者の増加も考えると、女性が離職せずに人的資本を保ちながら出産していけるということが重要です。出産子育ては若い女性から「ペナルティを課されるようなもの」と聞きました。すなわち、出産すると、時間もお金もなくなってしまう。子供がかわいいという以外にいいことはないということを聞いたのです。そうではなくて、社会が資源を与え、出産育児を支えていくという、そういう方向に行く必要があると思います。
 そのためには、妊娠出産後、しばらく今の第3号のような制度があってもいいかもしれませんけれども、生涯第3号にとどまることを奨励するような現在の制度はよくなく、むしろスムーズに仕事へ復帰できるように支援するべきだと思います。夫婦が相互に調整しつつ、育休、それから子供が一定年齢までの時間単位での育時短時間、その間、育児休業手当を社会から受けつつ仕事を継続できることが重要です。正社員は今、その方向に向かっていますけれども、非正規雇用の若者も含めてそれを保証していくことが、――若い未婚者の非正規は大変多いので、そこを支援していくことが大変重要だというように思っております。
 それから、保育園や放課後児童クラブの拡充も必要ですし、低所得世帯の場合は児童手当の傾斜的な拡充も必要だと思います。それから、非正規雇用者の今までのモデルは主婦パートでしたけれども、これからは正当な雇用者である、「正当に普通の雇用者」であるとして社会的な保護とキャリアの先を見通せるようにしていくことが必要だと思います。
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 そもそも85年改革とは何か。私、下に小さく書いてありますけれども、2001年に開かれた厚生労働省の「女性のライフスタイルの変化に対応した年金の在り方検討会」の委員でした。当時、非常に注目された会議で、女性の年金、どう変えていったらいいのかという検討会の委員だったので、そのときに第3号というものがどういうものか、随分考えてみて、なかなかよく分からなかったのですけれども、こう理解すると分かりやすいのでちょっと書かせていただきました。
 まず左側は、改正前です。その頃は定額部分という赤い部分が、厚生年金の中の再分配部分です。つまり、同じ年数勤めれば収入が低い人も高い人も同じだけの給付をもらえるという赤い部分が再分配としてあり、この他に報酬に比例してもらえるという青い部分がありまして、85年改正前は、この赤い部分も青い部分も大きかったのです。
 それが、85年改正後になると赤い部分も青い部分も「適正化」ということで小さくなったのですけれども、その中でサラリーマンの被扶養配偶者が第3号被保険者という名前で、新たに名誉サラリーマンになったと理解するとすごく分かりやすいと思います。つまり、収入がゼロだから最も貧しい。なので、社会保険料はゼロで全部厚生年金全体が負担してあげる。だけれども、最も貧しいから基礎年金である再分配部分は100%もらえる。つまり、これで見ますと当時は4万5,000円から41万円まで標準報酬月額があったわけなのですけれども、そのもう一つ左側に年収一定以下の配偶者を収入ゼロの名誉サラリーマンとして仲間に入れたというように、この図を考える。すると、ちょっとしたパート収入があるかもしれないが、どうして第3号被保険者の保険料がゼロで基礎年金が満額もらえるのかというのが理解しやすいというように思います。
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 しかし、現実問題としては、私、当時、実はサラリーマン経験があるので、私の初任給は11万でございましたので、11万だと男性で奥さんはあまりいないのです。この15万円のところで奥さんがいるかは微妙なところで、30万、41万ぐらいになると被扶養配偶者がいるような有配偶世帯になっていくわけです。なので、現実には「第3号被保険者」の給付は、誰に対する給付だったかというと、報酬報酬月額4万5,000円や報酬報酬月額7万2,000円の人ではなくて、収入が高い男性の給付として上に乗っていたという、こういう形になっています。そこで何かずるいのではないかとか、豊かな家がもらっているのではないかとかといういろいろな議論がありました。それはまた現実にもそういう部分があったと考えます。
 ちなみに、85年改定前の私の単純計算でございますけれども、32年/40年加入、20年給付、金利を考えない単純計算で見ますと標準報酬月額4万5,000円の方たちは、改正前は社会保険料納付に対して12倍ぐらいの年金給付を受けていたのですが、改正後は5.69倍ぐらいですか。そして、標準報酬月額41万の方たちは2.99倍の給付を受けていたのですけれども、改正後は1.70に下がったのです。しかし3号被保険者がいるとして、配偶者への給付を本人の社会保険料に対する年金給付として加えると2.19に戻るというようなところです。青い四角に書きましたが、1985年前改正当時のことは私もよく覚えていますが、女性は結婚退職、出産退職がほとんどであり、そして、就職活動においては企業が我が社のお嫁さん候補として採用しますというように本当に言っていました。ですので、厚生年金に加入するようなサラリーマン家庭には専業主婦がいることを前提にそうした主婦に年金を与える改革であったと、当時の考え方がそうであったというように言えます。
 しかし、現在は共働き希望が増える一方で、低賃金シングルが増えていますので、この中で若者が次世代を育成できるような制度の拡充を考えていく必要があると思います。
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 現在の年金制度なのですけれども、これは現在の標準報酬で書いてみました。一番高いところが65万で、一番下が8万8,000円になっております。その左側にサラリーマングループで一番貧しい被扶養配偶者が来て、その次にサラリーマングループではないのですけれども、第1号被保険者がいます。現在は低収入の第1号被保険者に対して、自治体で認められますと保険料免除で基礎年金の半額を権利として得られるようになっています。
 また、雇用者であっても厚生年金の一員として認定されないと、先ほど年金課長のお話にもありましたけれども、第1号被保険者として事業主負担がないまま保険料は高いということになっております。これは第1号被保険者の社会保険料負担が第3号被保険者である厚生年金の第3号被保険者より高いことを示すオレンジの線で示されています。
 ですので、85年改正当時と比べると、第3号である被扶養配偶者と第1号被保険者のほかに第1号被保険者において、社会保険料負担免除で税金だけの給付を受けるような人たちもここに入ってきたということが新しい変化と言えます。
 そして、もう一つの点として、社会保険料の灰色が自己負担と事業主負担を合わせたもので、黄色が自分の負担なのですが、年収が一番高い右側を見ていただくと、自分の負担だけをみれば年金給付はより高いですが、事業主負担を合計すると、給付率がかなり下がった図にかわっているということもわかります。
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 ですけれども、先ほど言ったようにやはり年収があまり多くない人はあまり被扶養配偶者を持たないと思うので、そうすると、被扶養配偶者を一番左の収入ゼロの人として書き入れましたが、この黄色の給付は、世帯としてはどういう世帯への給付かといえば、どちらかというと年収が高い世帯でしょう。そこで矢印で黄色を報酬が高い個人の上に乗せました。これは制度として確実にこういう世帯に給付されているというわけではないですけれども、どちらかというと年収が高い世帯に行っているであろう。被扶養配偶者を持つ女性雇用者はほとんどいないと統計に出ていますので、主には高い年収の男性世帯主の社会保険料に対しての給付がその分増える形になっていようと思われます。
 一方、低収入では被扶養配偶者、なかなか持てませんので、それに比べると低収入シングルの給付は第3号被保険者がいない分だけ低くなっています。この低収入のところに誰が多いかというとシングル女性がちょうどこの辺で多いわけでございます。女性雇用者はシングルか有配偶共働きか第1号かのどれかなので、被扶養配偶者分をもらうということはめったにないのでその分同じ年収でも世帯に対する年金給付率は男性より平均的に低めだろうというように思っております。
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 これから勤労者保険ということで適用拡大を広げていこうという政策についてです。私はそれはいいことだと思うのですけれども、適用拡大を広げていったときにどういうことになっていくかというと、今、8万8,000円が標準報酬月額の一番下ですが、これが7万8,000円、6万8,000円、5万円、こういうように下げることで広げていったとしましょう。そうすると、標準報酬が月額7、8万の人が年収130万の被扶養配偶者に対して、被扶養配偶者は収入ゼロだからサラリーマングループ全体で社会保険料を担っている、ということになってしまいます。これは論理というか理屈に合わなくなってしまいます。つまり、パートに対する厚生年金の適用拡大と第3号被保険者制度とはちょっと矛盾というか対立する部分があると言えます。
 第1号との比較を見ましても、第1号被保険者の全額免除は個人負担ゼロで基礎年金半分です。第3号被保険者は個人負担ゼロなのですけれども、基礎年金全額で、月額は1万7,000円が厚生年金全体が負担するのであり、また税負担分も受けられるということ。そしてまた、第1号の被保険者は個人負担が1万7000円と高く、しかし基礎年金のみということになります。そして多分主婦の多くがこの中の近傍のどれかに分かれてくることになるでしょう。女性の中でこれの中のどれかに分かれていくとするとやはり損得を考える人は多いでしょう。どういう年金の在り方であれば、女性がもっと収入を得て、しかも、もっとしっかりちゃんと賃金として評価されるような働き方の一員になっていくのか、そういう労働市場を作り上げるにはどうしたらいいかということを改めて考える必要があると思います。
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 そして、では、第3号の現代的な意味とはということで、考えてみましたけれども、まず第3号被保険者のような制度は、私は幼い子供のケアのために収入が下落したような人たちについては、これは収入下落もしくは無収入も含みますが、サラリーマンの被扶養配偶者に限定せずに、そういった人を社会全体でサポートしていくということは意義あることだと思います。こうした配慮は、もちろん今は入っていないシングルマザーや第1号被保険者でお子さんをお育ての方々などにも広げるべき社会的な連帯だと私は考えます。
 そして、そういった時期が過ぎた後の無業については、現在の制度でも基礎年金の半額は税金で確保されているので、半額分はあるわけです。しかし、もちろん、その半額では足りないので、非正規雇用者のことを一人前の雇用者として厚生年金加入を進め、その人的資本育成や賃金上昇に向けた明確な政策を取っていくことがとても重要だと思います。そして、そのことによってシングルの非正規男女、有配偶女性、双方が自立できるようにすることが重要だと思います。
 ただ、実際にこの政策で本当によくなっているのか、本当に非正規雇用の女性の賃金が上昇していくのか、それは思いがけない動きがあるかもしれませんから、定点観測をして評価していくべきだと思います。また、もちろん若い世代は被扶養配偶者になることを望んでない人も多いので、子供を持っても就業継続できるように男性の育児分担を含め社会保障が支援していくようなルール変更やサポートをしていくべきだと思います。
 ただ一方で、自分で子育てをしたいという方の選択も大事にするべきであり、その場合の低収入については、国によっては働くことを前提とするような国もありますけれども、今の日本では急にそこはいけないのではないかとも思います。そういう場合には、先ほど言った同じことですけれども、育児中の低収入に対して免除の積極的な配慮がされるべきであります。そういう制度は多くの国が持っております。
 日本は基礎年金と報酬比例に分かれておりますけれども、子育てによる低収入を報酬比例年金においても挽回する年金制度というのも考え得ると思います。第3号被保険者は、基礎年金だけですけれども、報酬比例部分の挽回ということも大事かもしれません。例えばですが、子供が低学年までの間の低収入期間は加入期間には含めるけれども、平均報酬比例額の計算から除く選択肢を設けているような国もありますし、子供が幼いうちの低収入や無職について厚生年金の平均加入者と等しい賃金を獲得したものとして評価することなどもできますし、そのほか、短い時間しか就業していないことに対する平均報酬額の引上げや短い期間しか就業できてなかったことを補填するような、つまり、育児などをしていてできなかったわけですから、そういった仕組みを入れるということもいろいろ知恵を絞っていく必要があるかなというように思います。
 なお、厚生年金からの基礎年金拠出金は約1万7,000円が1人あたりです。年間はこの12か月分となり、第3号被保険者数分ありまして、800万人ですから、厚生年金からかなりの拠出金を妻のために出している、ということになります。今後、その原資は制度変更した後も第3号被保険者のような方々、すなわち子どもを持った結果として、低収入になっている女性や非正規雇用の女性の老齢年金の拡充をするような方向で使われるべきだと思います。
 また第3号被保険者制度を堅持するよりも、中年期からの就業奨励をしていくほうが現実にも女性の年金は増えると私は予想しております。しかし、実際にそうなっているかどうか。例えば女性にとって40年加入というのはなかなか長く実現は難しいのですよね。子供を育てて40年働くというモデルは、低賃金の非正規としてお子さんを育てた方が十分な年金を得るには難しい制度です。そういうことを考えると、どういうのがより年金を持続可能とし、また子育て負担をしている人に対して均等でバランスがとれたものであるのか、ということを考えた上で実際にそういうように拡充されているかというのは定点観測していくべきだと思います。
 参考資料として企業の配偶者手当のことが載っていましたけれども、配偶者に多い働き方である非正規雇用の賃金の拡充に向けて、配偶者手当の原資については、非正規の賃金アップの原資として考えるのが私は新しい社会連帯、つまり、仕事で自立した収入を得られて、かつ子供も得られる社会というものにはふさわしいのではないかと思います。つまり、今まで世帯主がもらっていたから、それをもう少しなだらかに分け合おうねというのではなくて、―それは自分の配偶者ではないかもしれませんけれども―、その会社の非正規の人たちの賃金の拡充の原資にしていくというような方向もあるのではないかなと思います。
 あと医療保険と公的年金は、私は別々に論じてもいいのではないかなと思っております。
 そして、あととても大事な点なのですけれども、第3号被保険者の制度の中に入っている女性、主婦は、実はすごく優秀な労働力なのです。それはもう本当にそうだと思います。その方たちが低収入にとどまる、自分は130万でいいと、このぐらいの賃金でいいといっていることは、――非正規の若者はその人たちと競争しなくてはなりませんから――、非正規の若者の賃金を引き下げているのです。私はこれが一番大きな問題だと思っています。だから、若者の非正規の人たちの賃金を上げることが重要。もう非正規とは呼びたくないのですけれども、そこの賃金を上げていくことこそが日本のこれからの雇用の未来に重要でありますので、そこにしっかりと目線を当てた改革をしていっていただきたいなというように考えております。
 長くなりましたけれども、以上でございます。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 本日のテーマは女性の活躍の場を拡大する上で社会保障・税制をどうするかということですけれども、永瀬先生のお話ですと、もちろんそのことも重要だけれども、企業の人材活用の仕組みとか子育て支援、教育の在り方、トータルでね。

○永瀬教授 ごめんなさい、先生、すみません。最後のページ、言うのを忘れました。

○佐藤会長 どうぞ。

○永瀬教授 すみません、次のページがあったのでした。まとめで、次世代育成が日本の最重要課題ということと、女性が収入を獲得して社会的に発言できる社会環境の整備が必要。出産子育てした女性を被扶養配偶者という低収入に生涯とどめておかない政策は、女性活躍の実現としても重要な政策であり、女性にとって結婚のハードルを下げる政策でもあると思います。非正規雇用者の社会保険カバレッジを広げる方向と第3号被保険者制度はやや対立的でありますので、子育て期間の年金保障としては今のような形はあり得るけれども、保護の形は変えていくべきだと考えます。
 出産や子育てによって仕事を失わないような雇用ルール、もし出産や子育て事情で低収入になった場合には金銭補償するなどの保護は一層拡充すべきだと考えます。
 最後に、この点を言いたかったのですけれども、政策は総合的に行うべき。雇用改革、年金改革、育休、育児短時間、税金、児童手当などはばらばらではやはり女性の視点に立つとうまくいきません。こちらが多少よくなってもあちらがよくなってないであると不十分です。年金の第3号被保険者をなくしていく方向はある意味では大変なことなので、代わりにパート賃金を大きく改善するとか、そういうのがセットで行われないと、国民は納得できないと思います。ただ、第3号被保険者の制度や配偶者控除等ですが、このままもう1980年から就業調整が問題と言われていて、こうした制度はずっと続いている、これを抜け出るためには、3号被保険者制度を改革するのは大変なことですけれども、もっといい世界がやってくるということが分かるような施策と合わせ技にぜひして、年金だけではなくて合わせ技にしていただきたいということをお願いいたします。ごめんなさい。ありがとうございます。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 税・社会保障だけでなく総合的に体系的に必要だと思うので、多分先ほどの全世代型社会保障構築会議での議論もそういう方向だと思いますが、大事な論点、どうもありがとうございました。
 それでは、今日はいつもと違って90分なので休憩はなしで、まずいろいろ御意見あると思いますが、内閣府、厚生労働省、内閣官房の御説明、確認だけ先に伺って、その後、御意見をお聞きしたいと思いますので、内閣府、厚生労働省、内閣官房、お三方の御説明資料等々について確認したいとかということがあれば先に伺うという形で。内容についてはいいですか。
 では、大崎さん。確認ということで、御意見は後で伺いますので、では、お願いします。

○大崎委員 ありがとうございます。1点確認させていただきたいです。
 今、永瀬先生から御報告いただいた御研究の内容、これまでの政策インパクトを経年変化で見てこられて分析されて、そして、今後の改革の在り方にまで踏み込んで御提言くださっている。こういった報告、アジェンダの検討というのが全世代型社会保障構築会議のような制度そのものを考える場でしっかりと共有されて、議題になり、ディスカッションされているのかということをまず確認させてください。お願いします。

○佐藤会長 そうすると、鹿沼審議官に伺うということでいいですか。

○鹿沼全世代型社会保障構築本部事務局審議官 会議の場で永瀬先生から直接お話はいただいておりませんが、実は事務局のほうで先生からヒアリングの機会を設けさせていただきまして、私どもの参与の山崎以下、先生と御議論させていただいていろいろな御提言をいただきました。
 特に子供・子育ての関係、私ども今回、一丁目一番地と思っておるのですが、その話を含めて非常にいろいろな御提言をいただき、それを踏まえて今回の私どもの報告書も作っているつもりではございます。そういう意味でいえば、永瀬先生、問題意識はかなり共有させていただいたのではないかというように思っております。
 以上でございます。

○佐藤会長 大崎さん、いいですか。

○大崎委員 ありがとうございます。
 事務局でヒアリングをして論点を明示していくというのはすごく大事だと思うのですけれども、会議体の構成というのはすごく重要で、その構成員の中にやはり永瀬先生なのかどうかというのは別にしても、こういう御専門の研究者が入るということは非常に重要だと思います。

○佐藤会長 ちょっと説明を忘れましたけれども、本日は配偶者控除の議論の関係で財務省主税局の関税制第一課長、また、先ほど永瀬先生のほうから配偶者手当のことも言及がありましたけれども、厚生労働省労働基準局の岡賃金課長にも同席いただいています。
 関連資料として参考資料3、4、配付しておりますので、もし御意見等があれば伺えればというように思います。
 それでは、質問、確認はいいですか。
 それでは、皆さんの御意見を伺って、あと例えば誰々さんへということであればそれも言って御意見を言っていただいて、例えば鹿沼審議官のほうにまとめて御質問があれば、もし可能な範囲で、後で最後にまとめて御説明いただければというように思います。
 それでは、どなたからでも手を挙げていただいて、どなたに対する御意見かということで、いかがでしょうか。
 先ほどの配偶者手当については、正社員でというわけですけれども、非正規の方の処遇改善にするということでどうかと。そうすると、正社員だった男性について言うと、自分の配偶者手当がなくなってもそれは例えば非正規で働いていれば別の会社でもそちらで処遇改善する。そういう意味で社会全体として再配分ということも提案されましたけれども、いかがですか。どなたもない。
 井上委員、組合として配偶者手当のことはどうなのですか。取組としては、結構正直言って難しい面もあって。

○井上委員 ありがとうございます。連合の井上です。
 それぞれ委員の先生方、各省庁からも説明ありがとうございました。
 実は連合も、配偶者手当あるいは第3号被保険者の問題に関しては見直しをせざるを得ない状況に来ているということで、現在、内部で議論をしているところです。来年以降、それを構成組織や地方連合会で議論をしてもらって、連合の来年10月の大会に向けて、制度の見直しを議論していこうと思っているところです。
 ただ、やはり現在の制度を変えることに関しての抵抗感であるとか、あるいはそんなに簡単にできるのかというのが意見として出てきます。そこで永瀬先生に御質問するのが一番いいのかと思うのですが、仮にこの第3号被保険者を廃止したときにどのぐらいのスパンで見直しができるのか。やはり現在の既得権益ではないのですけれども、現在対象になっている人たちの配偶者控除、第3号被保険者がなくなるということに関して、その制度改正をするととても時間がかかると思うのですよね。でも、早急にやらなければいけないということが目前にあるとしたときに、では、いつまでにどういうように変えるのかが、連合としては悩ましいところです。

○佐藤会長 今日はたくさん手が挙がる感じでもなさそうなので、それぞれ一問一答で行こうかなと思いますので、それでは、今の井上委員の御質問について、可能な範囲で永瀬先生、お願いいたします。

○永瀬教授 普通は段階的に、年金は大抵段階的に変更を行います。でも、今、3号は私の世代。私は幾つですかと言われてしまいますけれども、私の世代で入ったのですよ。だから、59歳以下の人たちが厚い第3号被保険者層で、40代にも厚くいます。ここの層は、そろそろ子育てが終わって働ける層なのに、10年後に第3号被保険者をなくしてもその時には働けない年齢に入ってしまう。一方若い世代については、共働きが増えています。20代、30代は共働きか、就業調整予備軍か、正規シングルか、あるいは非正規シングルですごく困っているかのように思います。つまりこれから子どもを育てる世代で困っている。なので、非正規に厚生年金制度を拡大しなくてはいけないというのはすぐしなくてはいけないと思うのですね。ただ、第3号被保険者制度があることが、拡大をすごく邪魔するのですよ。優秀な主婦が自分から第3号被保険者でいいと言ってくれ、企業もありがいたと思うから。
 ここは物すごい邪魔をするので、この30代の人たち、40代のシングルの非正規の人たちの状況をよくするためには、やはり3号は早くやめなければ駄目なのです。でも、3号の人が納得するためには、第3号被保険者を抜け出たらこんないいことがあるという、時限的でもいいから働くといいことがあるような、例えば時限的に、制度変更後〇年の間は、第3号から第2号にかわって働くとその間の年金が積み増しされるとか。これまで社会保険料を出していない人が出す制度変更だから、厚生年金財政は改善されるのです。その分、時限的にも給付に反映させることで働き方改革の推進を大きくすすめられる可能性があります。突然こんなことを言って年金課長から驚かれるかも。私もアイデアとして言っているのですけれども、抑制するというよりは働くといいという方向で何か考えたらどうかなと思います。

○佐藤会長 これからはやはり3号被保険者を一気になくせないので、そういう意味では適用拡大しながら3号の数を減らすとやってきたのだけれども、永瀬先生が言われるようにこれも矛盾があるのでなかなか難しい点だと思います。
 石黒委員、手を挙げられているのでお願いします。

○石黒委員 すみません、まず私、先ほどから参加して、途中から参加なので皆さんの議論とかをあまり伺ってない上での発言なので、間違っていたら申し訳ありません。
 今の議論もやはり段階的にとか第3号とか、あと私がちょっと疑問に思ったのは、配偶者控除のほうもある意味段階的にということを今、論じられているのだと思います。ただ、企業経営者として、また、日本の国として、もう歴然と家族の形態とか変わっていて、本当に昭和の時代ではないというところをここずっと言っていますよね。
 もう一人一人が配偶者とか扶養者ではなく、やはり国民として勤労、納税の義務を果たすべきだと、本来は、私はそうだと思うのです。ですけれども、今の制度が違うから、つまり、段階的に減少させる配偶者特別控除とか控除の費用額の引上げ、新しい混乱を招くだけだというように思っていて、そもそも調整をすること自体に国のビジョンが感じられないのですね。もちろん、一人一人の方のある既得権益を守らなければいけないという、その議論があることは分かるのですけれども、会社の場合でも給与とか評価制度を変える場合に不利益を被る人たちの救済制度というのがいつも論じられるのですが、それの目的というのはやはり就労を継続してもらいたいという目的があるのですよね。
 この場合、既得権益の利益をなくすことで就労がなくなるかというとそうではないというように思っていて、恐らく私はすごくラジカルなことを申し上げていると思うのですが、やはり国全体のマインドを変えてもらわないと、今の国の大問題、少子化問題、労働人口減少、女性の就業率を上げることが国の最優先課題だというように私は思うので、ここは国が全面的にリーダーシップを発揮してもらって、もう少し段階的ではなくて、配偶者控除をなぜ今、なくさないかというように私は考えてしまいます。
 もちろん、働けない環境にある人たちというのは配偶者とか扶養者ということではなく、これはあります。それはやはり福祉という大きなくくりで言えば福祉で救うべきであって、これは第3号とか配偶者手当についても企業側は基本的には同様の考えで行ってもらいたいなというように思います。
 ちょっとラジカルかもしれませんけれども、最優先課題ということを考えればそういった変更が必要だと思います。

○佐藤会長 これは伺っておくということで、では、佐々木委員、お願いいたします。

○佐々木委員 お茶の水女子大学の佐々木です。
 今日、いろいろありがとうございました。永瀬先生の貴重なお話、ありがとうございます。
 税制が130万円の壁とか、そこが変わるとすぐマスコミとかメディアでここが変わります、こういう働き方をしましょうみたいな、何かそういうマニュアル的なものが出てきてしまって多分こちらの意図がなかなか伝わっていないというところが大きいと思います。抵抗感もすごく強くなっていると思います。
 高校では、お金の授業みたいなものが始まってきていると思うのですけれども、我々の感覚と若い人たちの感覚はどうしても違ってきていると思います。特に最近驚いたのは、この間の内閣府の資料や、今回、永瀬先生のデータでも出てきましたが、若い女性の理想とする将来像で、子供産まない、結婚しないという回答が急に2倍ぐらい跳ね上がってしまっているのですよね。本当に考え方が全然違っているので、やはり若い世代の人たちがこの税制問題についてどう考えるか、どうしていきたいかということを反映させるために、税制改革を議論するメンバーの中に若い人たちを入れていってあげないといけないのではないかなというように思うのですけれども、今回の委員会のメンバーの年齢の構成はどうなっているのでしょうか。

○佐藤会長 では、鹿沼審議官のほうから、若い人がメンバーにいたかどうか、あとは若い人たちの意見みたいなのをもし聞いたのがあったら。

○佐々木委員 また、今後どのように入れていくかというところもお願いいたします。

○佐藤会長 その辺、いかがですか。もし可能な範囲でお願いします。

○鹿沼全世代型社会保障構築本部事務局審議官 有識者の先生、私ども、全世代型社会保障ですので、この男女の話だけではなくて子供・子育て、医療・介護、その他様々なテーマが入っていますので、比較的上の方が多いのは事実でございます。ただ、大学の先生をされてらっしゃる方は若い方と接せられているので、ゼミの生徒がどういうように言っているだとか、今の人、学生はこういう意識だというのは結構先生方がおっしゃられているので、そういうところはあるのかなというようには思っております。
 今後についてどうすべきかはちょっと決まってないのであれですけれども、そんな感じかなと思っております。

○佐藤会長 いいですか。
 どうぞ。

○佐々木委員 大学の先生は、私もそうですけれども、若い子と接していますが、若者たちのほうがもっと切実感が強いと思います。昨年、若手円卓会議があり、その後、女子中高生の理系進学支援を急に国が力を入れ始めてくれています。それは若者の声を聞いたからではないかなと。こんなに急激に進んだことはなかったので、ぜひ若者の声というのを尊重して聞くようなシステムをつくっていただければと思います。どうぞよろしくお願いします。

○佐藤会長 先ほど若林年金課長から適用拡大したときに積極的に働く時間を増やして収入を増やす人もいるし、他方で、もっと短くする人もいたわけね。そのときにやはり情報提供が大事でなかったかというお話があったのですけれども、何かその辺、もう少しどのぐらい制度について情報提供ではなくて理解度があるかどうかみたいな調査はやられているのですか。あまりそういうのはないのかな。
 若林さん、何か御存じですか。こういう提供していますという話はあったのだけれども、理解度と制度の働き方の選択みたいなことについてはないのかな。

○若林年金課長 本日御紹介させていただきました調査はJILPTのほうにお願いしまして、2016年の導入時点でのものです。今、同じようなことをお願いしていまして、そこでは御本人あるいは企業、両方についてアンケート、それから、ヒアリングをしてやる、そんなことで考えております。

○佐藤会長 ありがとうございます。
 その辺すごく大事かなと思う。制度の趣旨ね。やはりメリットもあるようなことを理解すると行動がどう変わるかみたいなことが分かるといい。
 永瀬さん、何か関連してあるみたいですね。今、音が入ってない。

○永瀬教授 例えばパートで、10万円で20年間働いて幾ら年金が増えるかというと、共働きにはあまり有利ではない制度なので、1万円しか増えないのですよ。そして、しかも、夫が生きている間はずっと1万円増えるのですけれども、夫が死んでしまったときにはこれがなくなるのです。今、こういう制度です。
 なので、第3号被保険者を取り除くときには、やはり低賃金の人へのインセンティブ配慮が重要です。つまり、今まで男性世帯主は同じ社会保険料で世帯としては第3号被保険者分の給付ももらっていたわけですよね。一方第3号であったような低賃金の厚生年金加入者―主に女性―は給付が小さい設計なわけです。そこの人たちの3号を取り除くときにはもう少し加速的に、低賃金雇用者の1階、2階建て部分が増えないと、よくよく考えても損かなと思うというか、とんとんなのです。新しく納めてもらっても、とんとんで給付が増えない。こんなことは大きな声で言っては申し訳ないのですけれども、そうだと思います。今後の労働人口を考えればインセンティブをつける改革は必要です。

○佐藤会長 あとあまり時間がないのですが、いかがでしょう。御質問なり御意見、どちらでも構いません。
 大崎委員、お願いします。

○大崎委員 ありがとうございます。
 小倉大臣が冒頭で、新しい資本主義では女性の経済的自立、経済的エンパワーメントというものを中核に据えているとおっしゃいましたが、その中で、税と社会保障制度の在り方は、政府が責任を持って男女間賃金格差を是正していく上で非常に重要なポイントだと考えています。
 国際的なジェンダー平等に向けた政策議論の中ではこの問題はすごく出てきます。アベノミクスといいますか、2011年以降に女性活躍推進をやって、日本は大きな結果を出した、女性の就業者が200万人以上増えたのだということを国際会議とかいろいろなディスカッションの場でデータとして出すわけですけれども、そうすると当然戻ってくる質問というのが、では、何でこんな賃金格差がまだ残っているのだということなのですね。
 先進国経済との比較ではもちろんのこと、アジア諸国の経済主要国・成長国と比較しても、日本は確かに女性の労働参加率は非常に高いのですが、男女間賃金格差の大きさに関しては韓国に次いで2番目に大きいというデータもあるのですね。このギャップを生み出しているのは一体何なのかというと、先ほど永瀬先生もおっしゃいましたけれども、日本の特異な正社員と非正規・パートの二重の労働市場であるということがはっきりと国際的な議論の場では指摘されています。ここを正していくにはどうするべきなのかということです。税と社会保障制度のジェンダー平等性が非常に低い。これが不平等な構造を生み出している。
 女性が就業調整をする、つまり、キャリア形成とか高い賃金とか求めないような選択が合理的選択になってしまっています。そういう選択を導き出していることが非常に大きな要因であり、政府がちゃんと取り組むべき問題だというのは本当に何度も出てくるのですね。なので、どのように責任を果たしていくのかというところがまず一点ある。
 あともう一つは、やはりこの制度は結婚している人はすごいいいのだけれども、そうではない人を阻害してきたという点です。シングルでずっと来た女性たち、シングルの中高年の女性の貧困率というのは非常に高いです。全世代の貧困率を男女別データで見ますと女性のほうが高いのですけれども、中高年、特に高年齢になっていくとその比率というのが非常に高まるわけですね。その背景には、やはりずっとシングルで働いて来られた方たちというのが日本の税と社会保障制度でちゃんと守られてこなかった、そういったことの帰結としてこういう問題があるわけですから、どう応えていくのか。
 女性の高齢者の貧困の問題と税と社会保障制度というものがどういうように結びついているのか、そこを正していくためには、その文脈でどういう政策が必要なのかということをしっかりと議論しなければいけないと思います。そういう議論を期待しています。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 では、山口委員、お願いします。

○山口委員 ありがとうございます。
 税と社会保障制度がやはり女性の就業を妨げるというか労働に対するディスインセンティブを提供してしまっているということは、これまで数々の研究が示していることだと思います。今日の御説明では、制度改革によって、いわゆる壁はなくなったとか、制度改革は進んでいますよというお話があって、確かにそれはいい方向に進んでいるとは思うのですが、何よりペースが遅過ぎて経済成長の足かせになっているという感じを強く持っています。様々な国際統計で見ても今、大崎さんから御指摘があったように女性の労働市場における活躍、日本は国際的に見て進んでいないということが言われています。
 参考までに東大の北尾教授らの研究なんかによると、この辺の制度改革、税と社会保障制度改革を行って配偶者に対する優遇措置というのを外していくと、短期的には就業が増えるというのはあるのですが、長期的には就業を通じて経験を積んでいくことによって所得そのものが増えるし、より高い役職に就けるということも出るので、御本人の賃金も増えるため経済成長にもプラスになるし、同時に彼女らの試算によると、税収ですとか社会保障財政の改善にもつながるということで、長期的に見ると経済全体、社会全体にプラスの変化を生じさせることができるのではないかというような指摘がされていて、私もそれに同感するものです。

○佐藤会長 どうもありがとうございます。
 では、白波瀬委員、お願いいたします。

○白波瀬委員 本日は大変ありがとうございました。
 1点、最も興味があるところの一つである、全世代的というところで少し確認をさせてください。
 ここでの報告におきましては、適用拡大ということが強調されていて、まずそこからといった印象を受けました。今、山口委員からもありましたように、変化のスピードが遅過ぎる。一方、足元のところでは歴史的経緯の中でさまざまな制度が作られ、そこで個々人の生活があるので一気にというわけにはいかず、周りに目配せしないといけないということは分かるのですが、変えることを優先すると、それでは時間がかかりすぎるといったこともあります。またとても気になる用語として、働き方に中立的なということがあります。見方を変えるとこれは中立的ではなかったので今があるわけですから、優先的な対応を実施するという一つの英断も必要ではないか。
 そういう意味では、働いていくことがいいことだと思えるようにする、この辺りのやはり全世代を通したという見方は重要です。そこで先に申し上げた適用拡大の推進を超えて、男女共同というところでの公平性なり平等という観点の視点をどう具体的な制度として反映されようとしているか。優先的と言った場合に、何を優先として位置付けておられるのかについて、もう少し踏み込んだところでのお考えを厚労省あるいは内閣府の方、あるいは本当は税制もそうなのですけれども、お伺いしたいところであります。
 以上です。

○佐藤会長 時間をちょっと過ぎたのですが、では、今の点について、後で鹿沼審議官と若林課長から伺う。
 山田委員、お願いします。

○山田委員 もう時間がないのでコンパクトに。
 本当に今日はありがとうございました。各省庁の方のデータを毎回聞いている中で全体、各問題がそれぞれ大きくて、全てつながっているということがさらに今日の永瀬先生のお話を聞いていてつくづく感じました。
 これだけ社会の構造、特に家族の構成あるいは結婚、離婚、出産の在り方、それから、仕事の就労の仕方について60年前と圧倒的な違いが出てきている状況の中で、同じような法制度で社会保障も税制も維持していくということは困難なのが目に見えていると思うのですね。その意味では、かなりスピーディーに手をつけなければいけないという状況は来ていると思うのですが、皆さん方がおっしゃったこと、私はかなり同感するところなのですが、やはり永瀬先生が最後のところでおっしゃっていた、これは例えば雇用改革、賃金格差の問題とか年金の問題と税制の問題、配偶者控除の問題、全部つながっていくのですね。あと高齢化社会の問題もそうなのですけれども、それを1つだけパッチワーク的にやっていくのではなくて、やはり縦断的に横串を刺して改正していかないと、例えば3号の問題だけやって、あとはまた先にということになると必ずハレーションが起きると思うのですよ。ですから、ぜひ総合的、全体的な政策のほうに考えて、なおかつそれをスピーディーにやっていただくということを考えていただければというように思います。
 以上です。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 それでは、今まで委員の皆さんの御意見を伺って何かあればということで、では、若林課長からもし何かあれば。

○若林年金課長 ありがとうございました。
 最後、何を優先的にかというところと、あとスピーディーにという御指摘をいただいたと受け止めております。おっしゃるとおりでして、私ども、次の年金制度改正の議論をまさにスタートするというところですので、今回の全世代型社会保障構築会議の報告書の御意見あるいは本日の御意見も踏まえて、それを優先的にということで考えております。
 他方で、やはり時間がかかってしまっているのは実態でして、適用拡大につきましても2016年から6年たってもまだ企業規模要件が残っている。これは私ども、相当事業者団体との意見交換を通じて、なかなか腰が重いところをお願いしてお願いしてということで来ております。
 それから、私の立場としましては、やはり793万人の方のお声も聞かなければいけないと思っておりますので、そういう多様な意見を丁寧に聞く、そこに一定の時間はかかると思いますけれども、年金制度改正は期限が決められて定期的にやっておりますので、その中で議論をして答えを見つけていくということは進めていきたいと思っております。
 以上です。ありがとうございます。

○佐藤会長 鹿沼審議官、何かありますか。

○鹿沼全世代型社会保障構築本部事務局審議官 いろいろと御意見ありがとうございます。
 確かに歩みが少し遅いのではないかというお話はいただきましたが、今回、適用拡大については私どもの中でも企業規模要件の撤廃とか、それも多分今まで、今、厚労省も説明がありましたが、なかなか進んできていなかったかなり難しいところだと思っています。中小企業の反対とかいろいろなことがあるのだと思っていますし、また、個人事業所の非適用業種も各業種から反発を受けるものではありますが、それも全部撤廃しようというような御意見も出させていただいております。さらには、20時間未満の方に踏み込んだりとかもしておりますので、適用拡大についてはかなり今回、最後の終着を見据えて御意見を出させていただいたつもりではあります。
 また、この適用拡大を進めることによって、3号の方々の収入が増えてくると1号にならずに2号になってくる。1号になるということは給付は変わらないのだけれども、保険料だけ払わされるのでどうしてもやはり壁が意識されることだと思っていますが、適用拡大が進めば3号の方が収入が増えてくれば2号になりますので、先ほど言ったように、保険料を払うけれども、給付もついてくるというメリットをしっかり説明していくことになろうかとは思っております。いずれにしましても、女性、高齢者の就労がいかに重要かというのはこの会議でもございましたので、引き続き皆様方の御意見を踏まえながら進めさせていただければと思います。
 以上でございます。

○佐藤会長 どうもありがとうございます。
 それでは、時間を過ぎてしまいましたけれども、まだまだ御意見あるかと思いますが、意見交換はここまでにさせていただいて、最後、小倉大臣から何かございましたらよろしくお願いします。

○小倉女性活躍・男女共同参画担当大臣 先生方、活発に御意見をいただきまして議論していただきましてありがとうございます。
 税と社会保障のいわゆる壁のところ、結構最近は物価高、そして、賃金上昇も相まって、むしろ下限のところを引き上げて労働供給を増やして経済にもプラスになるし、そんな意見もありますけれども、やはり重要なのは、こういった壁があることによって、先生方が御議論いただいたように、ある意味、昭和の時代の固定的な性別役割分担みたいなものを固定化してしまうということも非常に意識しなければいけないなというように思いましたし、最後のほうで永瀬先生がおっしゃったように、こういった制度をしっかり変えていかなければ、能力があって経験がある女性の皆さん方がそれに相応した社会における役割を果たせなくなることによって、さらには今の若い人たちが低賃金に甘んじざるを得なくなるということであります。
 やはり我々、重要なのは、一つはジェンダーという視点で今の税と社会保障の在り方というのをしっかり議論していくということと同時に、中長期的にそういったものを考えることによって、つい先日、来日をされておりました世界で一番ジェンダー平等が進んでいるアイスランドの大統領もおっしゃっておりましたように、このジェンダーの平等というのがすなわち社会全体の便益にも資するということをしっかり議論した上で、この専門調査会ならではの視点でこういう税と社会保障の議論を発信していくということが極めて重要であるというように私自身も感じましたので、引き続き専門調査会の先生方にはそういった議論を活発に行っていくと同時に、私ども男女局としてもそういった御意見をしっかりと受け止めた上で政府内でさせていただきたいというように感じております。
 今日はどうもありがとうございました。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。
 改革、やはり着実に、かつかなりスピードを持ってやっていただくということが大事だと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、議論はここまでにさせていただきまして、最後に事務局から報告があるということですので、よろしくお願いいたします。

○杉田総務課長 事務局でございます。
 時間がない中で、参考資料6ということで、先週、独立行政法人国立女性教育会館、それから、男女センターの機能強化に関するワーキングをこの専門調査会の下に置くということで持ち回り決定させていただいた内容でございます。
 検討する内容は2つございまして、一つは男女センターそのものの機能強化ということで、男女センター、地域によりまして非常に活動にばらつきがあり、温度差があり、かつ人材確保とか体制面あるいはネットワークというところでいろいろな課題を抱えております。女性の経済的自立を進めるというような形、男女共同参画を進めるという上で、地域で男女センターがしっかり役割を果たしていただくことが必要であるということで、それを強力にバックアップしていくということで、いわゆるNWECの機能強化を検討していくということ。それから、男女センターそのものの機能強化を図っていくということ。この2つを検討していくという形でワーキングを設置させていただくということ。
 今後、どのような役割を果たしていくことが必要か、あるいは機能強化の在り方、内容について御議論いただくということで、来週、第1回目の会議を開催いたしまして、年度内を目途に報告書の取りまとめをしたいというように考えているところでございます。
 以上です。

○佐藤会長 どうもありがとうございました。今のような形で検討させていただければというように思います。
 本日は、永瀬先生はじめお忙しい中、御出席いただき、熱心に御議論いただき、ありがとうございました。一応多分この専門調査会、今年は今日が最後ということですので、よいお年をお迎えください。どうもありがとうございました。