第15回男女共同参画基本計画に関する専門調査会議事録

  • 日時: 平成17年9月14日(水) 15:00~17:00
  • 場所: 経済産業省別館827会議室
  1. 出席者
    岩男 壽美子
    会長
    古橋 源六郎
    会長代理
    石川 哲也
    委員
    鹿嶋 敬
    委員
    竹信 三恵子
    委員
    原 ひろ子
    委員
    山口 みつ子
    委員
  2. 議事
    • (1)開会
    • (2)「社会的・文化的に形成された性別」(ジェンダー)の表現等について
    • (3)その他
    • (4)閉会
  3. 議事内容
岩男会長
それでは、大変お待たせいたしました。ただいまから、男女共同参画基本計画に関する専門調査会の第15回会合を開催いたします。大変お暑い中、またお忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。
 本日の調査会では、「社会的・文化的に形成された性別」、ジェンダーの表現等について意見交換を行います。
 それでは、まず事務局から御説明をお願いいたします。
定塚男女共同参画局推進課長
それでは、本日は「ジェンダーの表現等について」ということでございまして、この調査会で検討していただくべき事項のポイントとなることを用意させていただいています。
 まず、現在の計画では「社会的・文化的に形成された性別(ジェンダー)」と表記しているわけですが、これについてよりわかりやすい表現、説明の例として、例をお示しいただきたいと考えております。事務局で用意したものといたしましては、まず1番目は短い言葉で置き換える方法ということで、「社会的性別(ジェンダー)」であるとか、「社会的性役割」、「社会的な男女の違い」、「社会的に捉えられた男女の特徴」、「男女についての社会通念」、「社会的な男女差別や固定的役割分担、偏見等」、「社会的・文化的に形成された性差別とその元となる性差別意識」、「社会的・文化的に形成された性別区分」などを掲げております。
 2として「ジェンダーに敏感な視点」ですが、計画等の文脈の中では「ジェンダー」のみで使うことは余りございませんで、どちらかというと「ジェンダーに敏感な視点」あるいは「ジェンダーの視点」といった表現で使われている文脈、表現ぶりが多くなっております。この敏感な視点については、こう書いてあるので敏感過ぎるのではないかといった批判を受けることもございまして、これを言い換える方法はないかということを検討していただきたいと思っております。
 例として、「ジェンダーに基づく不合理な格差/差別に敏感な視点」、「ジェンダーによって生じたマイナス面に敏感な視点」、これら2つの案は過去に検討されたことはあるけれども、いずれも採用はされなかったという案でございます。
 3番目は、「ジェンダーに基づく差別や固定的役割分担、偏見に敏感な視点」、それから「ジェンダーに配慮した視点」、「不適切なジェンダーに気づいて、性差別をなくし、男女の個性と能力の発揮を目指していこうとする視点」などでございます。
 もう一つ、「「社会的・文化的に形成された性別」(ジェンダー)の考え方についてわかりやすい説明を加える方法」ということで、計画においてジェンダーの考え方について、現行計画では十分な説明は書いてございませんが、何らかの説明をきちんと加えたらというものでございます。なお、今、申し上げた案は代替的なものではございませんで、全部並行して取るということも可能なものだと思っております。
 次に「「社会的・文化的に形成された性別」(ジェンダー)の考え方について」ということで整理をさせていただきました。
 1の「「社会的・文化的に形成された性別」(ジェンダー)の定義・目的」は、人間には生まれついての生物学的な性別がある。一方で、社会や文化によってつくり上げられた「男性像」、「女性像」、「男らしさ」、「女らしさ」、「男にふさわしいと考えられる行動」、「女にふさわしいと考えられる行動」、このようにして形成された男性、女性の別をジェンダーと言う。これをとりあえず定義としてはどうかという案です。
 次に、学説との関係でございますが、いろいろな学説があるけれども、基本計画で使用するジェンダーは個々の学説を取り入れたものではないということでございます。
 それから、これに付随して議論をしていただきたい論点でございます。
 1つ目はジェンダーの考え方の範囲、性差別等との関係をどう整理するかということです。
 2つ目が、ジェンダーとセックスとの関係をどう整理するかということ。
 3つ目が、ジェンダーについて通常よく記載文書等で使われておりますジェンダー・イクオリティとか、パースペクティブ、センシティブ、メインストリーミング等の言葉と、ジェンダーについての日本語の訳を「社会的・文化的に形成された性別」とすることとの関係をどう考えるかということでございます。
 次に「目的」です。ジェンダーという概念、言葉を使う目的につきましては、偏見や固定的役割分担意識が性差別を生んだり、個性と能力の発揮を阻害する制度・慣行を生じたりしている場合などに、それに気が付いて見直していこうとするための考え方だとしております。
 この際の論点は、ジェンダーの中には見直していくことが適当なものと、その必要はないものと、両方があるという言い方をしてよいかということでございます。ジェンダーについてすべて否定しようとしているとか、ジェンダーに基づくあらゆる社会制度を破壊しようとしているとか、そういった御批判があるところでございまして、そういうことは含まないという必要があるのではないかということでございます。
 それから、個々の事例について具体的にどこまでが見直すべきジェンダーで、どこまでが見直さなくても構わないジェンダーであるかという線引きについては、国民一人一人が考えて判断すべきものと考えてよいかどうかということでございます。
 次に、「「社会的・文化的に形成された性別」(ジェンダー)の考え方の必要性」です。まず基本法の3条には3つ要素が入っております。1つは男女の個人としての尊厳が重んぜられること、性別による差別的取扱いを受けないこと、個人として能力を発揮する機会が確保されることの3つを挙げて、その他の男女の人権が尊重されるという条文でございます。男女共同参画社会の実現のためには、こうした3つについて、これらを妨げるようなものについては見直していくことが重要であるということから、こうした問題点に気が付くためにジェンダーの考え方が重要であろうということではないかと思います。
 実際にジェンダーを現行基本計画に記述してあるわけですが、この記述により見直し改善が進んだ事項の例としては、男性が育児休業、介護休業を取りにくい状況の改善の動きがある。配偶者暴力防止法の制定、男性に対しての家族を養う責任を負うべきであるという心理的な重圧についての考え方が見直されているということ。起業家や消防士など、女性の進出が進んでいるということ。一部の地域の「出不足料」の慣行が見直しをされていること等がございます。
 次に「基本法・基本計画との関係」です。基本法については基本法の法案審議の際の委員会答弁で、基本法の目的や基本理念にはジェンダーの考え方が盛り込まれていると答弁しております。また、現行基本計画で明記されているところです。
 「国際的な認識」については、前回のヒアリングでも示されましたが、「社会的・文化的に形成された性別」という意味でのジェンダー概念は一般的に使用されていること。日本政府もこれらの国際文書を支持していること。それから、日本が本年発表した「GADイニシアティブ」は国際的にも評価されているということでございます。
 とりあえず私からの説明は以上にさせていただきます。
岩男会長
ありがとうございました。それでは、少し区切って議論をしていきたいと思います。
 まず「「社会的・文化的に形成された性別」(ジェンダー)の考え方について」の5つの論点ごとに検討をして、それから全体について議論をしたいと考えております。
 それでは、まず「「社会的・文化的に形成された性別」(ジェンダー)の考え方の範囲、性差別等との関係をどう整理するか」という点について御意見がございましたら御発言をお願いいたします。
定塚推進課長
もしよろしければ、この図の方を御説明させていただきたいと思います。別添の図の方をごらんいただきまして、簡単に御説明いたします。事務局で用意したものでございますが、ジェンダーという考え方で、まず狭義のジェンダーということで、下の黒い箱の中に入れたジェンダーという考え方がございます。これは、社会的・文化的に形成された性別というものがあるということで、それによる気づきのための概念であるという、いわばこういう気づきのためのこうした概念の箱のようなものがあるのではないかということを黒い部分で示しております。
 この中に入っているもので、意識レベルのものとしては固定的役割分担意識であるとか、偏見であるとか、その他の意識があるのですが、こうした意識の中にも問題につながっていくものと、特に問題にするまでもないものとが実際にはあるという整理をとりあえずしております。固定的役割分担とか偏見とかの中でも問題が出るようなものからは性差別が生じたり、男性はこう、女性はこうと決めつけて、一人一人の個性や能力を発揮する妨げが起こったり、あるいは女性は男性に従うべきものだというような考え方から女性個人の尊厳の軽視をしてDVにつながったりといったようなことが行動レベルで生じてくる。この行動レベルの多くは、基本法の4条に掲げられております制度・慣行ですが、制度・慣行になっているもの以外にも行動レベルでこうした事象が生じているというものです。
 ジェンダーという考え方を、先ほど申し上げた狭義のジェンダーという箱のようなものとしてとらえるか、あるいは性差別といったようなものも含めて全体を広義のジェンダーと書いてありますが、そうしたものととらえるのか。どちらなのかということもあると思います。
岩男会長
ありがとうございました。それでは、どうぞ御意見がございましたら御発言いただきたいと思います。
古橋会長代理
議論のためによろしいですか。これで狭義と広義ということを分けると、狭義のジェンダーというのは意識レベルで、意識レベルと行動レベルを含めたものが広義のジェンダーと書いてあるんだけれども、ジェンダーというのは社会的・文化的に形成された性別という定義であり、そこからは意識レベルで出てくる問題もあるし、更に意識レベルから行動レベルとして出てくるものがある。
 ジェンダーというのは意識だよというふうに考えるのはおかしくて、ジェンダーというのは単なる概念を規定したものにすぎない。その社会的・文化的に形成された性別からどういうふうに出てくるのかというふうにした方が頭に入るのかなという気がするんですが、ここのところを御議論賜りたいと思います。
岩男会長
私も実は今、古橋委員が言われたところは全く同感で、そのことを申し上げようかとも思っていたんです。ですから、ジェンダーというのはこの両方、全体をジェンダーと言っているわけで、その表れ方はいろいろなレベルでとらえることができるというものだと思うんです。ですから、ここに点線を引いて行動レベル、意識レベルというふうに分ける必要もないし、それから狭義のジェンダー、広義のジェンダーというとちょっと誤解を招くのではないか。むしろこの全体をジェンダーと言っていますとした方がいいのではないかという意見なんです。
 ですから、この下の箱というのはむしろなくなるといいましょうか、それで全体のジェンダーというものからその上に立体で考えるのは難しいけれども、問題のあるものもあればそうでないものもある。その上にというか、表現の仕方は図式化はちょっと難しいんですけれども、図式化は別として、とにかく考え方としてはそういうことではないかと思いますが、どうでしょうか。
鹿嶋委員
差別と意識というのは関連性があるかどうかですね。どうなんでしょうか。具体的に性差別というのは表れているわけですね。例えば、均等法などの議論をするときも男女間の職場の賃金格差からすべてあるわけです。それはここで言う狭義のジェンダー、すなわち意識が発展して差別につながるのであれば私はこの図でいいと思うんです。
 ただ、差別と言っても意識と関係なく別にあるのかどうか。そうだとすると、意識が発展していってそういう差別社会というものを形成していくのであればいいんだけれども、別の概念なのかどうか。そこがいまひとつよくわからないんです。
岩男会長
社会心理学の中の態度研究というのは、実はこういう問題を研究するのですけれども、意識が前提として存在して行動につながるとは考えていないんです。逆に行動が先にあって、その結果として意識というものが出てきたりするわけです。あるものを買って、あるいは飲んで好きになるということが往々にしてあるわけです。ですから、これは因果関係で考えない方がいいと思います。
鹿嶋委員
そうしますと、この概念図は因果関係で一応考えているわけでしょう。意識、偏見から差別がくるということなんでしょう。
岩男会長
ちょっとそこも不備だと思うんです。つまり、いつも別々に並ばされているものだから何となく差別をするという気持ちが生じてくるんだということは幾らでもあると思うんです。だから、この矢印もその意味では問題があるかと思います。
古橋会長代理
この関係で、ジェンダーの定義についての使用例で世界保健機関があるでしょう。社会的・文化的に形成された性別というものが定義なんです。それは単に性別があるということだけで客観的な事実なんだけれども、保健機関には「社会的に構築された役割、態度、行動、属性を示し」と書いてあるんです。
 このところがうまく理論的に説明できると、まず行動は上の方ですね。態度というのは意識レベルなのかな。属性は何でしょう。役割というのもやはり意識から出てくる行動の後ろにある役割分担意識というのか。世界保健機関でも「役割、態度、行動、属性」と言っているんですけれども、ジェンダーというものを定義するときに性別で切るわけでしょう。性別意識ではなくて、性別行動でもないし、ジェンダーというのは性別で切るんです。その性別の内容がいろいろ発展してきたものはジェンダーとは言わないでしょう。
岩男会長
すみませんが、最後の部分をもう一回おっしゃってくださいますか。
古橋会長代理
要するに、社会的・文化的に形成された性別ということから、性別というのは定義なんです。それは客観的な性別なんです。その性別の内容は何だということの内容として、性別意識、性別行動というものが出てくるのであって、性別というのはただそういうことを定義しただけの話ではないのか。
 社会的・文化的に形成された性別、それは性別の意識もあるし、行動もある。
岩男会長
社会的・文化的に形成された性別というのは、要するに役割であるとか、あるいは態度、行動あるいはさまざまな属性にみられる男女の違い。ここで属性に何を含めているかというと、恐らく職業が一番大きなものでしょうか。そういったようなことを含めていると考えるんですけれども、そこに男性と女性で実態的に違いが見られるというものを言っているわけですね。
古橋会長代理
そうすると、性別の定義をしたけれども、その性別の内容が意識と行動というふうに考えていいんですね。
岩男会長
私はいいと思います。
鹿嶋委員
要するに、言語学的な文法概念からきたジェンダーという解説がそれなんだと思うんです。社会的・文化的な性別ですね。
 ただ、共同参画という中でジェンダーという概念を扱う場合は、その文法概念から多分一歩踏み込んでいくんだと思うんです。そうなってくると、何がいいかとなると、ここで議論をしているのは、私は社会的・文化的に形成された性差別とその性別意識だと思うんです。文法概念ならば、性別という言葉でいいと思うんです。
古橋会長代理
だけど、ジェンダーの中にもいいものと悪いものがあるけれども、性差別というのはその中の悪い方であって、ジェンダーというのは性差別と言ってはいけないんじゃないですか。社会的・文化的に形成された性別であって、その中にはいいものと悪いものがあると。
鹿嶋委員
いいものではなくて、普通のものということですね。
岩男会長
例えば、おひな様は普通、差別と思っていないわけでしょう。
鹿嶋委員
そこに矛盾がありますね。
山口委員
この前、語源的にはジェンダーというのは辞書を引けば性差別ではないかということだという話が出ましたね。
鹿嶋委員
性別までで、差別とまではいかないんじゃないですか。
古橋会長代理
差別という概念ではないと思いますね。
山口委員
性別ですか。そこから女性学、文化人類学辺りで今のような説明が付いてきたわけですね。例えば、社会的・文化的・歴史的につくられたものということですが、ここの中で文化的という言葉が入っている例がありますね。そうすると、範囲の問題になりますね。これまた範囲がひと騒ぎだと思うんですけれども、そのときに男らしさ、女らしさ、そこのところが一体この範囲に入るのかどうか。ここが一番ややこしい話だと思うんです。
古橋会長代理
私は社会的・文化的に形成された性別の中にそのことが入ると思います。
山口委員
政府の方のディスカッション、審議でこの「らしさ」というのはどう扱っていますか。
名取男女共同参画局長
「らしさ」は定義ができないということです。
古橋会長代理
極めてあいまいな概念になるということと、そういうことの価値判断を他人に強制してはいけないということです。したがって、もし男らしさ、女らしさを使うときには、その内容で、優しいとか、責任感を持つとか、そういう具体的なことで言った方がいいですよと言っているのであって、男らしさ、女らしさを個人がどういうふうに思うかは勝手ですという言い方をしているわけです。
山口委員
文化という言葉が入りますと非常に範囲が広いですね。しかし、その範囲の広さが、私はジェンダーを問題とする一番根源的なことだと思うんですけれども、では男らしさ、女らしさということが当然ジェンダーに入るということですね。
古橋会長代理
私はジェンダーに入ると思います。男らしさ、女らしさということも文化によって違うし、時代によっても違ってくるわけだから、私はジェンダーの中に含まれると思います。これは男性像、女性像と同じだから。
山口委員
わかりました。これの中で、問題あるもの、問題ないものと設けてありますから。この問題ないものというのは何を想定しているんですか。
古橋会長代理
女性がきれいな着物を着るとかですね。
定塚推進課長
「らしさ」の中のかなりの部分は問題ないものに入ると思うんですけれども、ただ、先ほど申したように男らしさ、女らしさとは何かというのがまずわかりませんので、男らしさ、女らしさと言っても女は女らしく家にいてと言えば、それは問題があるものになるかもしれません。
古橋会長代理
ひな祭りというのは問題のないもので文化的に形成されてきた。
岩男会長
問題があるもの、ないものというのは、私は明確にしておく方がいいと思うんですけれども、男女共同参画社会の形成を阻害するようなものだけを問題にしているのであって、それ以外のものは、少なくとも私たちがここで問題にすることではないということを明確にしておくべきだと思うんです。そうしないと際限なく広がっていきますので、当面私たちに関心があるのは男女共同参画との関係においてだけであって、その阻害要因としてのジェンダーの部分を問題にしているのであるということだと思うんです。
原田審議官
ジェンダーで気づきのための概念、いわゆる分析概念という正に価値の含まれていない部分があって、そこから表れる意識レベルで問題があるもの、問題がないもの、あるいは行動レベルで問題があるもの、問題ないものが乗って、その全体をジェンダーととらえようという理解がされようとしていると思うんです。
 それで、今までセックスとジェンダーというのは対句的な概念でずっととらえてきた面があるんですけれども、セックスという概念にはそこまでの広がりはないのではないかと私は受け止めているんですが。
岩男会長
要するに、気づきのための概念というとらえ方はジェンダー概念の機能の話をしているのであって、これは別問題と考えた方が私はいいと思うんです。ジェンダーを定義することと、ジェンダー概念をどう使うかという話と混同しない方がいいというふうに思います。
 それから、2番目のセックスとの切り分けですけれども、私は人間としての生理的な側面に関連するようなものはやはり全部セックスの中に一応含めて考えていいんじゃないかと思っているんです。というのは、ジェンダーはあくまでも社会的・文化的に形成されたものであって生得的なものではない。例えば私は高い声で話すとか、男性よりも高い声で話すとか言われるんだけれども、これは生得的な問題なんですね。ですから、こういうものはセックスの方に私は入れて考えていて、ジェンダーとは考えていないんです。つまり、形成されたものではないと思っているわけです。
原田審議官
先生のおっしゃるとおりで、高い声、低い声はセックスから表れている行動かもしれません。私の申し上げているのは、その行動、高い声、低い声で発するということをセックスという概念でとらえてしまっていいのか。セックスから表れている行動だということは理解しますが、その行動も含めてセックス概念だと。
岩男会長
そこは議論が分かれるかもしれませんけれども、私はその切り分けのために生得的なものと形成されたものというふうに分けてとらえているんですけれども。
石川委員
先ほどの関連なんですけれども、2ページの下の方にジェンダー・イクオリティとかさまざまな言葉が書いてあるんですが、これが必ずしもジェンダーという定義だけではなくて生物学的な性そのものを含んでいる場合があるということなので、その辺のところをきっちり書き分けながらいかないと、ジェンダーという言葉から見たら非常に難しくなってくるのではないかという気がするんです。
岩男会長
その場合に、ジェンダーというものは定義をして、私たちはこういうふうに考えます。けれども、時にはこのような表現でジェンダーは生物学的な性別も含めて使うことがありますと、それでよくてそれ以上言うことはないと思います。
古橋会長代理
私もそう思います。
岩男会長
私も、「使われる」、「用いられることがある」でいいんだと思います。
 実は分けて議論しようと思ったんですけれども、一緒になっていますから、この3つ全体を含めて御議論いただきたいと思います。
山口委員
国連文書や何かでは、バチカンはジェンダーという言葉を反対しているのですか。
原委員
バチカンは国連の場でジェンダーという言葉そのものに反対したことはないんじゃないですか。バチカンが反対しているのは、人工妊娠中絶です。
山口委員
そういう特定の分野で、ジェンダーそのものを否定するとか、そういう具体的なことはないわけですね。
原委員
もう一つは、カップルズです。
鹿嶋委員
バチカンが反対したのは同性愛でしたよね。
原委員
そうです。カップルズという言葉では同性愛が入るから、夫と妻という表現にしなさいというふうなことを言うんです。絶対に同性愛は認めない。それから、人工妊娠中絶も認めないということです。
山口委員
「ジェンダーに敏感な視点」というのは、実際に最初のころジェンダー・センシティブというと翻訳の付けようがなくて、そういう言い方をしたときにもこれを一般に言うのに本当に説明に困りました。ジェンダー・センシティブというのはこういう翻訳しかないんですか。なかなか「敏感な」とかというのはなじまない言葉なんです。何かないんでしょうか。
古橋会長代理
ジェンダーというのはあくまでもいいものと悪いものが入っている。そういういいものと悪いものが入っているジェンダーというものを考えて、その中で最後の方の「不適切なジェンダーに気づいて、性差別をなくし、男女の個性と能力の発揮を目指していこうとする視点」、これが「ジェンダーに敏感な視点」という内容だと思います。ただ簡単に言うならば、ジェンダーという概念があるということを考えて、社会的に形成されている固定的役割分担などを見直す。「ジェンダーに敏感な視点」というのは、いいか悪いかを言っているわけでは本当はないと思うんです。
岩男会長
まして見直すというところまではもちろん入っていないので、私は余りいろいろなことを含めるよりも、例えば「ジェンダーの存在を意識した視点」といった方が全くニュートラルで、私はニュートラルでなければいけないと思っているんです。
古橋会長代理
そして、その結果ということで、センシティブというのはニュートラルなんです。
鹿嶋委員
「気づく」という言葉で、「ジェンダーがもたらす矛盾に気づく」とか、そちらの方が平たく言えば……。
古橋会長代理
だけど、センシティブな結果、悪いものに気づくんです。
岩男会長
そもそもジェンダーというものがあるということに気づくということですから。
古橋会長代理
社会的・文化的に形成されたそういう性別があるということに気づくことなんです。それがジェンダー・センシティビティです。
岩男会長
その結果、いろいろな政策を進めるとか、男女共同参画との関係で阻害要因となるものを除いていこうというアクションにつながるということだと思うんです。だから、余り多くの言葉を使わないほうがいい。例えば「不適切なジェンダーに気づいて」という「不適切」などという言葉も最初から言わない方が私はいいと思うんです。判断が入ってくるところはできるだけ避ける。
古橋会長代理
「ジェンダーに敏感な視点」というのは基本計画の中にありましたか。
定塚推進課長
現行計画にも答申にもございます。
古橋会長代理
だから、ジェンダーという概念があるということによく皆で注意して、世の中にあるいろいろな制度・慣行あるいは意識について見直しをしていきましょうということなんじゃないですか。
山口委員
ジェンダーという言葉を短い言葉でと書いてあるものだから、説明すればするほど長くなってしまいますよね。
古橋会長代理
それで1ページに戻らせていただいて、こういうふうにわかりやすい表現に直すんですか。私は直す必要は全然なくて、定義は社会的・文化的に形成された性別と、それでいいんじゃないかと思います。何もわかりやすく言い換えるという考え方は短い言葉で置き換える方法と言うけれども、置き換える必要は全然ないんじゃないかと思います。
岩男会長
ただ、やはり「社会的・文化的に形成された性別」と言ったとき、一般の人にはなかなかわかりにくいというのは私は事実だと思うんです。そういうときに、できるだけわかりやすい言葉に代えた方がいいと私は思うので、例えば社会的につくられた男女の違いとか、そんなような言葉にした方が……。
古橋会長代理
それで、また括弧でジェンダーと書くんですか。
岩男会長
それは括弧をして書いておいた方がいいと思うんです。
古橋会長代理
それだったら、「社会的・文化的に形成された性別」で括弧をして「男女の違い」とかと同じことなんじゃないですか。
岩男会長
もちろん同じことです。置き換えるんですから、同じことでないと困るんです。だけど、より短い言葉で、どれだけ短くなるかわかりませんけれども。
古橋会長代理
だけど、括弧をしてジェンダーと書くんだったら短くすることは全然ないんじゃないか。「社会的・文化的に形成された性別」(ジェンダー)。
岩男会長
その前段「社会的・文化的に形成された性別」がわかりやすければおっしゃるとおりでいいと思いますけれども、わかりにくいと私は思うものですから……。
古橋会長代理
社会的だけれども、UNDPが社会的・文化的につくり上げた性別をジェンダーと言っているわけですよね。それで、我が方も今までそういうふうに言ってきたわけですよね。
山口委員
かつて「歴史的」という言葉は入っていませんでしたか。
古橋会長代理
最初のときはありましたね。
山口委員
これはいつの間に消えたんでしょうか。私は今でも使うけれども。
古橋会長代理
社会的・文化的に形成してつくり上げられた性別と国連辺りは言っているから。だけど、歴史というのは時代によって違うよということを言いたいがために「歴史的」という言葉を入れたと思うんです。だけど、社会的・文化的ということはまさにそれは歴史によって変わるということです。
山口委員
「歴史的」というのは、長い時代の中で男女の性差別をつくったというふうに私は使うんです。
古橋会長代理
文化的というのは、長いことかかって文化ができるんじゃないですか。
原委員
ただし、本当に短い期間でも伝統はつくられるんですよね。だから、「我が国の伝統」として、「男は外で仕事、女は家の中だ」とおっしゃるけれども、それは近代になって、しかも農林業の就業者数が全産業の就業者数の約3割になった1960年頃からそうなったのです。全産業の就業者数のうち農林業の就業者数は1950年頃には約5割でした。その頃は、中小企業の家業を含めて、ほとんどの男女が働いていたわけです。だから、伝統の創造と言っても、伝統とか歴史というのは10年間でもつくれるのです。
岩男会長
今の古橋先生の御意見は、短い言葉で置き換える必要はないという御意見なんですけれども、そこのところをまず最初に決めるというか、一応御意見をいただいて、やはり置き換えた方がいいということになったら候補としてどういうものが考えられるか。1つに絞るということではなくて、ここに出ているものも含めて幾つか推薦をいただくというふうにしたいと思います。
古橋会長代理
私の意見を言えば、戦略的にこれからこの会議の意見としてきちんと確信を持っていくためには、ジェンダーというのは社会的・文化的に形成された性別であると言い切ってしまって、括弧をしてジェンダーと言い切っていく方がいいと思う。
 しかし、それが閣議決定とかいろいろこれからの関係で問題があると言うならば、もう1案、2案を書いておいてもいいけれども、私は専門調査会としてはそれに限っていくべきだと思います。
岩男会長
それに限るとおっしゃいましたが、それはどれですか。
古橋会長代理
「社会的・文化的に形成された性別(ジェンダー)」で、それについて説明を加えていく。そして、これは国連においてこういうふうにと使用例というものを付けておく。それで私は済むと思うけれども、こういうこともある程度考えられるという余裕を残しておくというのはいいです。だけど、それは内閣の閣議決定なんだから内閣の段階で変えればいい話であって、私ども専門調査会としてはあくまでも従来どおりのことで言うというのが私は筋だと思います。
 しかし、それが嫌で変えてくれと言うんだったら、もう少し余裕のあることを書いてもしようがないかもしれないですね。
山口委員
短い言葉でということは今、古橋先生が言われた「社会的・文化的に形成された性別」ということの範囲でということですか。短いという言葉でというのは要求じゃなかったですよね。検討しなさいということは書いてあるけれども。
岩男会長
これも中に入っています。わかりやすい言葉でと。
古橋会長代理
さっき岩男先生が言われたのはどんな言葉でしたか。
岩男会長
さっきは、たしか「社会的につくられた男女の違い」と言ったんです。
古橋会長代理
「文化的」というのは入れないんですね。「社会的につくられた男女の違い」ならばそれでもいいです。それで「(ジェンダー)」を付け加えるんですね。
岩男会長
ほかの御意見もどうぞ。
古橋会長代理
国連のものでは、社会的・文化的につくられたといろいろなところに全部入っているけれども、基本的には、わかりやすくするために「文化的」は省きましたということですね。
原田審議官
古橋先生に確認的に質問をしたいんですが、「社会的・文化的につくられた性別」という今までのものを踏襲するとして、この性別という概念、言葉の中に先ほどの概念図で言えば行動レベル・意識レベルも全部含めるという意味ですか。
古橋会長代理
そういうことです。内容として、単に性別を設けるということは方法論にすぎないんだけれども、しかし、その内容として性別の内容には意識と行動が入ります。
原田審議官
器だけではなくて、その中身に含まれている性差別、偏見等を含む性別と。
古橋会長代理
いいことも悪いこともある。ひな祭りもそうだし、言葉遣いとか、そういうものも全部入っています。
山口委員
認識だけではなくて、行動と意識ですね。
古橋会長代理
ここで世界保健機関が言っている役割、態度、行動、特性と書いてあるけれども、どうしてもというのだったら、「社会的につくられた男女の違い(ジェンダー)」という言い方もあるよということを付け加えてもいいですよ。
岩男会長
一つの可能性としてということですね。
鹿嶋委員
社会的につくられた男女の違いといった場合、一歩後退したとか、二歩後退したというイメージがありますか。
岩男会長
私はないと思いますけれども。どういうふうに後退でしょうか。
鹿嶋委員
私もわからないんですけれども、ここで決めるのは大事なことだと思うんです。何歩か後退したというイメージを与えるとすれば、かなりの反発が出る可能性もあるわけで。
岩男会長
ジェンダーの方を落したら後退と言われるおそれはあると思うんですけれども、それは落とさずに付いているわけですね。これが私の解釈ですけれども、ほかに御意見があればどうぞ。
山口委員
東京都の男女平等推進条例をつくったときに、答申に代わる報告書を出したのと条例が違ってしまったんです。そのときに「男女の違い」という言葉が入ってくるんです。それでその表現は誤解を招くと問題になったんです。
鹿嶋委員
ただジェンダーということではないから、これでもいいのかもしれないけれども、場合によっては今の「男女の違い」が特性論と間違われないかということです。でも、東京都の前文は「男女の違いを認めつつ」になっているから。
山口委員
ジェンダーとは書いていないんですが、その言葉で書いてあるんです。
鹿嶋委員
「男女の違いを認めつつ」だから、これとは違いますね。
定塚推進課長
短い言葉でというのはかなり御要望がありまして、やはり日本語で言いたい、特に政府の文章でもあるので、日本語で簡潔に言いたいというニーズが強うございまして、そのときに「社会的・文化的に形成された性別」と言うと概念としては完璧なんですけれども、ちょっと長いということを考えると、例えば「社会的性別」とか、そのくらい短い方が。
古橋会長代理
それは、括弧をして、「(以下、社会的性別と言う)」としていく以外ないんじゃないですか。そして、社会的性別という言葉でずっと世の中でそれが言い古されていけば結構いいじゃないかというだけの話なんじゃないですか。
鹿嶋委員
ジェンダーは取ってですか。
古橋会長代理
ジェンダーは取らなくていいですよ。そして、私どもの意識としては社会的性別で、以下社会的性別と言うというのと同じじゃないですか。それで、社会的性別ということが世の中に一般的に広がっていけば、ジェンダーという言葉ではなくて社会的性別という言葉が一般的に流布していくということなんじゃないですか。
定塚推進課長
そういう言葉を御議論いただきたいということです。もちろんジェンダーについての解説は幾ら付けても構いません。
古橋会長代理
社会的性別というのは「社会的・文化的に形成された性別」なんだから、岩男先生が言われた「文化」を取って「つくられた」というのを取りましたということで社会的性別になるんです。それで括弧でジェンダーときたわけでしょう。その後、定義、内容を細かく書いていけば同じことだと思います。
岩男会長
これも一つの候補だと思いますけれども。
山口委員
岩男先生のは本当に簡潔でいいと思いますが、「社会的につくられた男女の違い」という言葉は、「男女の差別」とか。
岩男会長
違いがあることをまず認識をして、次のステップとしていろいろと阻害要因として働く問題だというものが出てくるわけですね。それを是正するということだと思うんですが、まずそういうものがあるということを認識するということだと思うんです。
定塚推進課長
特に御意見をいただきたいのは、「社会的・文化的に形成された性差別」です。
古橋会長代理
性差別というのは間違いなんです。間違いはちゃんと正さなければいけない。ジェンダーの中に性差別ということはないんです。ジェンダーの中で悪いものを我々は排除するのであって、ジェンダーそのものの中に性差別という概念はないんです。それは直すべきだと思います。
 男の人たちに自主的な男女平等というものの必要性を説明するときに、やはりジェンダー概念というのは必要なんです。だから、我々はジェンダーという概念を言っているのであって、ジェンダーの概念というのはまさに推進の方法論にすぎない。導入することによって、そういうものが歴史的・文化的に形成された差別というものはまさに時代によっても異なるし、文化によっても違う。したがって、今あるものを固定的に考えてはいけませんよということを男性にまず理解してもらわなくてはいけない。
原委員
私はやはり雇用機会均等法の時は女性の労働条件がうんと悪いから、女性を男性並みにする。これは男女平等にするということで一生懸命やっていたわけです。ですけれども、ジェンダーという概念が用いられるようになってからは、近代社会とか現代社会の中で不利を被っているのは必ずしも女だけではない。例えば中年男性の自殺がこれだけ多いということを考えるとき、男女平等だから女も男並みの自殺率に高めましょうとはだれも思わないわけですね。逆に、男性の自殺率が低くなるようにするにはどういう社会にしていけばいいかということも考えるということです。これが国際的にもジェンダーという概念を使うようになってきたとても大事な要因だと思うんです。
 しかし、さしあたって男女共同参画基本計画に関して言えば、力点は、主に女性が不利を被っている部分をどう是正していくかに置いてあるということなんだと思うんですけれども、男女平等という言葉を使うとか、差別をなくすという言葉を使うだけでは不十分な部分がこのジェンダーという言葉によってカバーされるようになったと思うんです。
 また話は飛びますけれども、「仮に次期基本計画が「社会的・文化的に形成された性別」(ジェンダー)の考え方を採らなかった場合の問題点」ということの例示はここに示されていませんが、日本における男性の自殺率を下げる施策は重要なジェンダーの課題であると思います。そのようなことも入れていくことはできるのかどうかと考えていたんです。そういう意味で、なるべく幅広い御理解をいただくような努力というものをいろいろな形でしていくことはとても大事だと感じています。
岩男会長
今おっしゃったことは当然非常にいい、わかりやすい例だと思いますし、幾つか例を集める必要があると思います。
原田審議官
少し戻る形で恐縮ですけれども、定塚課長から申し上げたとおり、ジェンダーを今、議論のように正しくわかりやすく定義を置くというアプローチとともに、やはりジェンダーという片仮名だけでは広く浸透しにくいという実態上の側面があるので、間違いのない範囲で、例えばですけれども「社会的性別」とか、非常に簡潔な形で「(ジェンダー)」を付けながら置き換えるというアプローチも是非お願いしたいと思います。
古橋会長代理
だから、1のところで言っている「社会的性別(ジェンダー)」というのは私はOKだと思います。「社会的性役割」というのも、まあまあいいかもしれないけれども。
 最後の下の2つは間違いだと思います。「役割分担、偏見等」と書いてあって、これは善悪の判断が入ってしまっているでしょう。それから、「性差別意識」というのもジェンダーの中に善悪の判断が入ってしまっているから、これは間違いです。
定塚推進課長
最後に「性別区分(ジェンダー)」という案もあります。
原委員
でも。これは長いです。
岩男会長
短くするのに長くするのでは御要望にこたえられないから、長くなるのはやめましょう。
原委員
どういう結論になるかはわかりませんが、私はジェンダーをどうしても短くしろとおっしゃるのならば、一番上の「社会的性別(ジェンダー)」となるかと思います。岩男会長の案の「社会的に作られた男女の違い」は、やはり字数は多いんです。
岩男会長
わかりやすさということで、中学生ぐらいに言っても何となくわかるだろうというメリットを考えたんですけれども。
古橋会長代理
私は、「社会的性別」で一般的に広がっていくならばいいと思います。
鹿嶋委員
「社会的性別」だけだと、男女差別とか、男女平等というものでいいんじゃないかというような主張が通りかねないので、意識は入ったんですか。さっき古橋さんは意識まで入っているということですけれども、「社会的性別・意識」と「意識」まで入れてしまったらおかしくなりますか。要するに、ジェンダー概念というのは偏見が意識の中に入ってくるわけでしょう。
岩男会長
でも、そうしたら「・行動」が必要になるんじゃないですか。そうすると、長くなってしまう。
鹿嶋委員
その行動は性別にしても……。
古橋会長代理
差別が入ればそうだけれども、ジェンダーはそういう差別は入らない。
山口委員
差別ということは入らないんですか。
原委員
その結果、差別があるからそれを直す。
鹿嶋委員
それは本来はあると思うんですけれども、この議論には入っていない。
古橋会長代理
ジェンダーの概念の中に入っていないんですね。
原委員
だから、英語で言うときはジェンダー・ディスクリミネーションとか、ジェンダー・バイアスとかという案ですね。
岩男会長
ここで、次の「「ジェンダーに敏感な視点」を言い換える方法」というものがあるんですけれども。
山口委員
そうしますと、今の上の方は「社会的性別」になったわけですか。
岩男会長
1つしか候補に挙げないというのではなくて、この程度だったら許容できるものはこの辺までではないかと。ですから、下の2つはもうだめだということですね。もちろんいい知恵があったら是非お出しいただいて。
 それから、下から3つ目も長過ぎることだと思います。
古橋会長代理
もし短くするということならばですね。私は短くする必要はないと思うから、「社会的・文化的に形成された性別」のままでいいと思います。現在の基本計画に入っているんですから。
岩男会長
それも一つの可能性として候補に入れていただければと思います。
 それから、先ほどの「ジェンダーに敏感な視点」というのは、私は「ジェンダーの存在を意識した視点」というふうに言ったわけですけれども、ほかにありますか。とにかく判断が入るものは全部やめた方がいいと思うんです。
原委員
私は、岩男会長がおっしゃる「ジェンダーの存在を意識した視点」というのがいいと思います。
古橋会長代理
それはそれでいいと思います。それだけに限った方がいい。ただ、差別とか何かを入れろと言うんだったら、「ジェンダーに基づく差別や」と、だからこのジェンダーに基づく前のジェンダーというのは中立的です。それに基づく性差別や固定的役割と偏見に敏感な視点ということで言い換えてもいいかもしれないけれども、しかし、ジェンダーの存在と、敏感とは何ぞやと言ったら、存在に敏感だということですね。
原委員
結局、ジェンダーの存在を意識して物事を見ていくと、「これは違っているけれども、これはこれでいいじゃないか」というようなものもあるし、「いやいやこれは結果としての不平等をもたらしているからとか、結果だけではなくて入り口の機会の不平等ももたらし、かつ結果の不平等ももたらしているから、これはやはり変えていかなければいけない」と思うかどうか、それも時代によって変わってくるだろうということだと思います。
岩男会長
これまでの御議論で見直す必要があるものとないものがあるということは明らかになったと思いますので、そこは改めて議論をしないで、その次の「個々の事例について具体的にどこまでを見直すべきであるかについては、時代や国により異なるものであり」、その次が問題なんです。「国民一人一人が考えて判断すべきものである」、私はこれはいかがなものかと思うんです。
古橋会長代理
国民一人一人がジェンダー・センシティブであるということは必要なんです。しかし、その結果、それに基づいて社会として見直しがもし必要であるならば、それを直していくということが必要という考え方で、「国民一人一人が考えて判断すべきもの」などと言っても……。
 そうではなくて、一人一人が考えて皆で議論をしてみて、社会全体としてやはりこれは見直すべきものだということがあったときにおいては見直していく。それで、それが制度だったら制度を直すとか、それは国会がやるんだし、政府がやるんだし、個人で判断すべきなどというのはおかしい。
岩男会長
私も間違っていると思います。特に男女共同参画社会実現に向けた施策を推進するという、ここで基本計画はまさにそのことのためにつくるわけですから、こちらで必要であると判断をしているわけです。この時代においてはこれができていないから必要だ、重要であるというような判断をしているわけで、国民にお任せなどと言うんだったら基本計画は必要なくなってしまいますから。
古橋会長代理
「一人一人が考えて」というこの文章を生かすとすれば、時代によって異なるものであり、国民一人一人が考え、もし必要があるならば社会としてそれを見直しをしていくべきものであるということなのではないかと思うけれども、なくてもいいんじゃないですか。
岩男会長
要らないと思いますね。それから、「社会が」というのも問題でありまして、むしろ国が率先して判断をして。
名取局長
基本法を国会で審議していたときに、制度・慣行については、基本法というものが国民の常識に沿ったものなので、いろいろな事例につきましては、すべては政府が判断するわけではなくて、国民の間で十分議論していけばいいのではないかという議論をさせていただいたと記憶しております。
古橋会長代理
これは苦情処理というシステムがあるんだから、苦情処理でやればいいんです。
名取局長
ですから、国民一人一人が考えて十分議論をしていただくべきものであるとか、そういうふうな話はいかがでしょうか。
古橋会長代理
国民一人一人にこの問題をよく考えてもらう。それを考えるまではいいと思うけれども、その結果、必要ならば社会としてというのか、国家として、あるいは制度などを見直すことが必要である。「一人一人が考えて判断すべきものである」ということは、ちょっときつ過ぎるんじゃないかという気がします。
定塚推進課長
これは、問題意識として見直していくことが適当というものとそうではないものがあるということにまず立ちますと、それでは何を見直していき、何を見直さないでいいかということをだれが判断するかということになると思うんです。
 その場合、制度については国が判断していく。あとは、慣行の中のかなりの部分も国が判断していくんでしょうということになるんですけれども、制度・慣行以前の部分の個人の行動ですね。子どもに赤いランドセルを買うかとか、女の子は女らしく育てるかとか、そういった部分は国が関与するようなものではないので、そこはジェンダーに気づいてもらって、あとは国民一人一人が考えればいいということだと思っています。
岩男会長
それはおっしゃるとおりだと思います。そういうプライベートな生活で問題になっている、つまり好みの世界の話というのは行政が立ち入るような話ではないですね。
定塚推進課長
啓発の場面では、そこは行政が押しつけるのではなくて、国民一人一人が考えて判断するものだという話をお聞きしたものですから。
岩男会長
ただ、こういうことをするとこういう問題もありますよというようなことを国が言うのはいいんじゃないんですか。全部国民に一人一人にお任せしますということではなくて。
古橋会長代理
個人の事例についてというようなことならばいいけれども、個々の事例についてというのは、制度のものもあるし、それも個人の判断ですべきものではないんですよね。
 個々人の行動については個々人が考えるということであるならば、よく考えてほしい。国民の責務というのが書いてあるんだから、そういうふうに書くんだったらそれはいいけれども、時代や国によって異なるものであると言いながら国民の一人一人が決めてしまうというのはおかしいと思います。
原委員
「個々の事例について具体的にどこまでを」となっている、ここの日本語がわかりにくいのではないでしょうか。だから、全体で文章が具体的にどうなるかわからないんだけれども……。
原田審議官
文脈として、見直していくべきものと見直さなくてもいいものがあるという要素が出てくるとすれば、それを出していきたいんですけれども、それをだれが判断するのかというのは論理的に……。
古橋会長代理
それは、個々の行動については個人が考えるべきだし、制度とか内容については苦情処理によって地方公共団体なり国なりに出し、そういうものが多ければ国としても考えるということなんじゃないですか。それだけの話だと思います。
原田審議官
その前に、国あるいは政府がというところを言い切れるのか。要は、もちろん制度・慣行を直す最終的な責任は政府なり自治体にあるんでしょうが、何によって直すかというのはやはり社会通念とか、それから岩男会長が言われた男女共同参画を進める視点、観点からとか、政府が白黒を付けるのかというふうに問われたら、それは……。
古橋会長代理
それは、基本法に国民の責務と書いてあるんですから。男女共同参画の推進に努めなければいけない。
原田審議官
それはいいんですけれども、やはり白黒の判断は分かれ得るわけですね。そのときに、あなたは黒だと言うけれども白だというふうに対応するのではなくて、社会通念に照らすとそれは白ではないでしょうか、だから政府としてもそれは変えていくんですよというトーンではないかと思うんです。
古橋会長代理
だから、必要ならば社会においてと私はさっきから何度も言っているんだけれども、社会として見直す必要があると言ったんですが、それは岩男先生がおっしゃったから私は黙っているんだけれども。
原田審議官
そこをやはりちょっと出したいんです。国民一人一人というのは、さすがに個別のプライベートなケースはそうだとしても、もうちょっと社会的な制度・慣行の場面では国民一人一人に投げるというわけにはいかないでしょうが、何か社会通念とか、そういう……。
古橋会長代理
見直す必要がある場合においては、社会として見直しをしようとすべきであるということで、社会としてというときには地域社会でもあるし、地方公共団体でもあるし、国でもあるという意味で、社会としてということで、あくまでも個人の行動については一人一人が男女共同参画の視点によって見直すべきだということです。
鹿嶋委員
それは確かに難しいと思うんです。要するに、個人のことは個人がもちろん認めるんですが、一方で「ジェンダーに敏感な視点」というものを入れているでしょう。そういう矛盾に気づきましょうとも言っているんだから、その辺の表現をどういうふうにするかですね。
古橋会長代理
個人のものについては男女共同参画の理念に立って個人が見直してもらうようにしたい。そのためには男女共同参画の学習とか、そういうものが必要でございましょう。それで、いろいろな制度などについて個人でおかしいというものであれば苦情処理に出してください。地方公共団体もあるし、各省もありますし、男女共同参画局に出していただいても結構ですし、そういうものが多いのならば皆で議論をして制度を見直していきましょうと、それだけの話だと思います。だれが判断するかといったら、そういうことなんじゃないですか。
鹿嶋委員
共同参画は、いろいろな生き方があって専業主婦もきちんと認めているわけでしょう。一方で、固定的性別役割に基づく矛盾というものがあるわけで、それはジェンダー・センシティブの方の領域に入ってくるわけでしょう。そこの矛盾にも気づきましょうというのも投げ掛けるものです。
古橋会長代理
個々の事例というのは個人段階の話なのか、何の事例なのかがよくわからないから。
岩男会長
ちょっとここの言葉はコンテキストから抜き出すととてもわかりにくいので、もう少し丁寧な説明が必要になりますが、私もこれだけ読んだときには全く違うことを考えていました。
 個人の問題でも阻害要因として深刻な問題になるインパクトの大きいようなものは当然取り上げられることではないか。直にどうなるかは別としても、そういうものだと思うんですけれども。
鹿嶋委員
実際に文章を書いてみて、それから具体的なことを議論した方がいいのではないですか。個人の問題は、ここで議論してもなかなか難しいイメージにばかりにつながるでしょうから。
岩男会長
「「社会的・文化的に形成された性別」(ジェンダー)の考え方の必要性」をまだ議論をしていないので、こういう考え方の必要性というところについて御議論をお願いしたいと思います。これは、こういうジェンダーの考えを使わなくてもいいじゃないかという議論をされているわけですね。
古橋会長代理
基本法3条とかを書いていただいているけれども、考え方の必要性ということは、現在ある男性の役割とか女性の役割、男らしさ、女らしさというのは固定的なものではないということを理解するために必要なんじゃないですか。
原委員
そのことについて、3ページの下から2つ目の丸のジェンダーという考え方を取り入れたからこそできたというようなことについてはここに5つポツがありますけれども、「男が育児休業、介護休業を取りにくい状況の改善の動き」という案についても、「男が育児休業を取るなんて全く男は腐ってきたんだ」という方がいらっしゃるわけですから、「男性が育児休業を取ったり、介護休業を取ることでどういうふうに男の方の人生経験が豊かになって、ご自分のお仕事に反映する度合いがあるのかを示す。個人で差はあるだろうけれども、人生が豊かになっていくかということについて、もう少しこの表現をわかりやすいようにできないかと思います。
古橋会長代理
その前に、家庭生活における男女の協力と、家庭生活と他の活動との両立ということを訴えることによりとか、そういうことを前に入れることによって前のことをもう少し説明したほうがよいと思います。
原委員
さらに、若い人たちは育児休業を取りたいけれども、職場の働き方が今、取りたくても取れないと言っている方たちがあると世論調査に示されているんでしたかしら。
岩男会長
世論調査もありますし、私の調査もあるし、調査は幾つもあります。
鹿嶋委員
そこはむしろ少子化の改善につながるとか、そういうような言葉で文章を構成していった方が説得力があると思います。今、企業社会と議員さんを説得する材料の1つは少子化ですから。
 考え方の必要性と少子化というものをもう少しリンクさせるような議論があれば。
古橋会長代理
さっき言った基本法4条とか6条の関係の社会的な背景を書いてというふうにしたら私はいいと思います。
山口委員
私は今日、男性の方が大勢いらっしゃるから御意見を伺いたいんですが、「男性は家族を養う責任を負うべきであるという心理的重圧についての考え方の見直し」というのは本心ですか。
古橋会長代理
そういうことがあるから皆、自殺しちゃうんじゃないですか。
山口委員
そういう想定でいいですか。私はわかるんです。わかっているけれども、男性側では一体どうなのかということです。
岩男会長
特に若い人、学生などと話しますと、これがあるから怖くて結婚できないというわけです。それが少子化に当然つながっていくわけですね。
山口委員
もちろんそういうケースを私もたくさん聞いているんですけれども、この心理的重圧ということをことさらに挙げてしまった方がいいですか。
原委員
それは、説明の仕方によりますよね。
山口委員
ただ、これまで男が背負ってきたものに関して考え方を改める風潮ができたとか、そういうことだったならば改善策だと思うんだけれども、心理的重圧についての考え方の……。
古橋会長代理
やはり具体的な文章を見てみないとわからないですね。
鹿嶋委員
WHOの統計だと、2000年以降欧米先進国の中では日本の自殺率というのは飛び抜けているでしょう。だから、2000年に入って急激に出てきている年間3万人を超している自殺者がある背景にはこれがあると思うんです。その家庭責任という重い男への負担があるわけだから、そういうものも何か入れていくような表現にした方が皆さん方を説得する場合はいいと思います。
山口委員
こういうことをしっかりとここで言い切れると言うのであったら、もちろん私は反対ではないですけれども。
古橋会長代理
その背景には、国際の中において市場化がどんどん進んで、企業が終身雇用とか、そういうことができなくなっていつでもリストラ対象になる。そしてリストラをされたときにこういう重圧があって自殺をするとか、いろいろな社会的背景をもう少し書いていった方が男の人たちにはわかりいいと思います。
山口委員
私が人の前で話をするときには、この男女共同参画で男性も解放されるんですよという言い方をしますから、心理的重圧だとか、そういう言い方ではなくて言いますから。
古橋会長代理
ストレスからの解放でいいんじゃないですか。
 そして、もう少しその背景を言わなくちゃだめですね。従来は、女性は専業主婦でも男性が家族を養うことができた。しかし、企業にそういう余裕がなくなったから、今や解雇をされる可能性が出てきたというようなことを含めて、社会経済情勢の背景を全部書いていかないと、説得するのにはだめだと私は思います。
原委員
自殺の話と同時に、岩男さんがおっしゃった結婚がおっくうになるということなど。
岩男会長
晩婚化と非婚化の両方ですね。
古橋会長代理
男性の側からの晩婚化も多い。
岩男会長
それは、男性はすごく多いです。
原委員
厚生省の社会保障人口問題研究所の統計で見て、また別の統計もあるのかもしれないんですけれども、対比されているものが女性の26歳から30歳だか、25歳から29歳までの未婚率の増加の傾向に対比して出てきている表が、男性の31から35歳くらいまでなんです。どうしてあんなことをするんだろうと思って、対比するんだったら2つのコーホートの男女をそれぞれ並べてどういうふうに変わっていくか国民に見えるようにして頂きたい。
岩男会長
それはありますよ。同じ5年刻みで男女で。
原委員
だけど、公表をするときに単純化すると先に申したようにして出したりするんです。だから、それは変えていただきたいと思ったんだけれども。
岩男会長
未婚率の統計は平行して両方出していますよ。
原委員
それが存在することはわかっているんだけれども、簡単に単純に公表するときには女性に関するコーホートと男性に関するコーホートをずらしてあるんです。だから、やはり私はもう一回社会保障・人口問題研究所が簡単に単純に国民に知らせようとするときに、そのずれですね。
 統計として存在することはわかっているんですけれども、そういうこともあって、やはり結婚がおっくうだし、子どもを持つのも経済的に不安だという、その辺の若い人のデータを、資料として出すときに付けて出していただけるといいかと思うんです。この前は出していないでしょう。
山口委員
事例がちょっとプアーですね。
古橋会長代理
もっと説得力のある社会経済情勢の変化のところも入れて書いていただいた方がいいような気がするけれども。
鹿嶋委員
非正規雇用の若者たちが結婚するとすれば、やはり男の方もジェンダーの視点を持つとか、そういうふうな社会的な視点を入れていった方が説得力は増すかもしれないし、自殺率はワーストテンにとにかく入ってしまっていて、欧米先進国に入っているのはフィンランドと日本くらいだと思うんです。
岩男会長
ただ、自殺が一番多いのは高齢者の男女です。
鹿嶋委員
50代、60代で、50代は結構多いでしょう。7割が50代、60代の男性でしょう。
原委員
その辺は細かく検討をして、どういうふうになさるか検討していただいたらどうでしょうか。
岩男会長
そうですね。ですから、自殺もあるし、あるいはホームレスも圧倒的に男性です。女性もたまにいるけれども。
 それでは、3の「基本法・基本計画との関係」はいかがでしょうか。
古橋会長代理
最初の丸のところで、基本法の国会審議に多くの人たちからジェンダーという概念をちゃんと明確にしろという主張が多くなされたということをメンションしておいた方がいいんじゃないでしょうか。基本法においては「社会的・文化的に形成された役割」あるいは「ジェンダー」という言葉を用いられていないけれども、基本法案についての国会審議の際、男女平等の概念の中にジェンダー・イクオリティの概念を入れることを法文上、明確にすべきだという強い主張がなされたところです。しかし、基本法の目的や基本理念にその考え方が含まれているというのは、この3条、4条、6条、7条あるいは15条というようなところからこういうことが推測されますよということで答弁しているわけですから、基本法の目的や基本理念にはその考え方が盛り込まれており、法案審議の際、答弁したという趣旨を説明し、国会議員の側からもジェンダー概念導入についてはすごい要望があったんです。
 国会においてもそういうことがあったよということはひとつメンションしておいた方がいいのかなと。我々は行政府としては国会の審議は重視するわけだから、その基本法の中にはジェンダーという言葉を使っていないけれども、その趣旨が随分入っているんだよということを答弁している。だから、3条であるとか、4条であるとか、6条とか7条あるいは15条のメインストリーミング化の影響、ああいうところは皆ジェンダーの考え方が入っているんです。そういうことをちゃんと入れておいた方がいいんじゃないかという気がします。基本法にそういう趣旨が入っているんだから、基本計画の中に具体的に入れましたということなんじゃないかと思うんです。
岩男会長
ほかに、今の点も含めまして全体について何か御意見があればどうぞ。
原委員
先ほど出ていたWHOのジェンダーの定義のところで、翻訳は社会的に構築された役割・態度・行動・属性となっているものの元の英語は何なんだろうということを教えていただいたんですけれども、役割はroles、態度はbehaviors、行動がactivities、属性がattributesですね。態度はattitudeじゃないんですね。
古橋会長代理
これは事務局で文章を書けますか。一回文章で議論をしないと。
原田審議官
1点、1ページの2.の「「ジェンダーに敏感な視点」を言い換える方法」で、有力案は先ほどお示しいただいたとおり「ジェンダーの存在を意識した視点」と、私も大変魅力的だと思っているんですが、あえて複数案残すとすれば3つ目の「ジェンダーに基づく差別や固定的役割分担、偏見に敏感な視点」というのはいかがですか。
古橋会長代理
何に敏感かというと、差別とか偏見というのは結果としてそうなるんだけれども。
鹿嶋委員
私はここは残してもいいと思っているんです。要するに、ここでは悪いジェンダーを言っているんです。
原田審議官
悪いものに敏感と。
古橋会長代理
論理的にはそれでいいですよ。私は最後の「不適切なジェンダーに気づいて」というものでもいいと思うけれども、ジェンダーの中で不適切なものというふうに考えてですね。だから、「ジェンダーに基づく差別や固定的役割分担、偏見に敏感な視点」だっていいですよ。
岩男会長
最後のものも、私は個人的には「不適切な」を取り除けばいいと思います。少し多い方がよろしいのでしょうから。
原委員
最後のものは、「ジェンダーの存在に気づいて、性差別をなくし」で、「男女の個性と」としないで「一人一人の個性と能力」と、入れるとしたらそうしていただければと思います。
岩男会長
それはその方がいいですね。
 ほかに何かございますか。
鹿嶋委員
最後は、不適切なジェンダーに気づくからこそ性差別をなくそうという気になるんだから。
古橋会長代理
これは、ジェンダーの中で不適切なものについてという意味で我々はとっているわけです。
鹿嶋委員
普通のものは別に気づいて問題にしなくてもいいんですけれども、ここで問題にするのはなぜかというと、不適切なジェンダーがあるということに気づいて問題にするわけだから。
原委員
ただ、不適切なジェンダーとか適切なジェンダーというふうに使えるかどうかです。
古橋会長代理
性差別が悪いということにするために、ジェンダーの存在に気づいて、その中で悪い性差別をなくしというふうにした方が入りやすいんじゃないですか。
岩男会長
では、いい性差別はあるんですか。
古橋会長代理
いい性差別というのはないでしょうね。
岩男会長
今、悪い性差別をなくしてとおっしゃったから。
古橋会長代理
悪いジェンダーということです。
岩男会長
それでは、大体時間もまいりましたけれども、何か御意見があれば。竹信さんはいかがですか。
竹信委員
今日は議論についていけないので、すみません。
岩男会長
では、次回よろしくお願いいたします。
 それでは、これで本日の検討をおしまいにしたいと思いますが、事務局の方から何か御連絡がありましたらどうぞ。
定塚推進課長
次回以降の日程でございますが、次回は9月29日4時から6時で内閣府の中の会議室で開催する予定でございます。
 それで、次々回でございますが、10月11日以降ということで現在日程調整中でございます。おおむね次々回で終了したいと考えております。
岩男会長
それでは、どうもお忙しい中ありがとうございました。

(以上)