影響調査専門調査会(第17回)議事要旨

  • 日時: 平成14年10月23日(火) 13:30~16:00
  • 場所: 内閣府第3特別会議室

(開催要領)

  1. 出席委員
    会長
    大澤 眞理 東京大学教授
    委員
    木村 陽子 地方財政審議会委員
    小島 明 日本経済新聞社常務取締役・論説主幹
    福原 義春 (株)資生堂名誉会長
    橘木 俊昭 京都大学研究所教授
    高尾 まゆみ 専業主婦
    林 誠子 日本労働組合総連合会副事務局長
  2. 議題次第
  3. 概要

    ○前回に引き続き年末の報告とりまとめに向けた議論が行われた。

    福原委員
    年末の報告とりまとめは、どのように問題提起をするのか。
    大澤会長
    当調査会では、各国のどの制度が一番望ましいという勧告ではなく、中立性の観点から、最も中立性の高いものはどれであるか、しかし、それ以外にもメリットやデメ リットがあるという評価をしてはどうか。ここでは、スウェーデン型を、所得比例のみで、遺族年金がないことで考えてもらいたい。保険料を将来にわたって据え置いた上で、給付額 を自動調整することのイメージが強ければ、名称は再度検討してもいいのではないか。
    福原委員
    将来の人口構成等を考えるとスウェーデンタイプが一番適用しやすいのではないか。日本で適用する際に直すべき点を検討してはどうか。
    橘木委員
    年金財政全体は考慮せず、中立性の観点のみでどれがより望ましいかという比較をするとすれば、スウェーデン型と基礎年金税限定型とは比較ができないのではな いか。
    大澤会長
    基礎年金税限定型の場合、現行の高齢配偶者への遺族年金を含めて考えると依然として世帯類型によって差が生じる。
    橘木委員
    公的年金を基礎年金のみにし、それを全額税方式に代えれば、遺族年金は必要ないのではないか。基礎年金額にもよるが、最低限生きていくための金額を支給する ことが公的部門が果たす役割ではないか。
    福原委員
    公的部門が果たす役割は、中立性の問題ではなく、年金制度全体の問題になってしまうのではないか。
    大澤会長
    基礎年金を全額税方式にした場合でも、所得比例部分について夫婦間の所得分割を取り入れれば、税財源の確保の問題は残るが、スウェーデン型と中立性の観点 から同等になるのではないか。
    同様に、第3号被保険者制度を廃止して、第1号に統合する場合にも厚生年金の夫婦間分割を考えることはできるのではないか。
    高尾委員
    第3号被保険者制度を廃止して第1号に統合する場合、保険料を徴収できるのか。1号そのものが不十分な制度であれば、あまり取り上げる必要はないのではない か。
    大澤会長
    自主納付であっても給付率を高くできるように検討されているが、コストに見合う保険料収入は期待できないのではないかという議論はある。所得によらず一律一定額 の負担により、逆進的であるという意味での反対論は必ずある。
    福原委員
    所得分割について、夫婦間で合意に達すれば届け出を受け付ける恒久的な選択制にする場合、分割の比率の変更を受け付けるとすれば、事務手続きが煩雑になる のではないか。
    大澤会長
    原則は1/2に分割するとして、適用除外も認めて工夫することができるのではないか。また、事業主は、現在既に第3号被保険者の分の負担をしているので、所得分 割の際に事業主負担は問題にはならないのではないか。
    遺族年金の問題点と対応方策例について、生計維持関係認定の回数やタイミングという問題の他に意見はないか。
    橘木委員
    所得分割が定着すれば、遺族年金の問題はそんなに大きくならないのではないか。
    大澤会長
    老齢時のものの問題はなくなるが、若年時のものには問題になる。遺族年金の支給要件は、明文上、夫は55歳以上にならないと受給権がなく、妻には年齢制限がな い。毎年1歳ずつでも年齢を上げていくなどして、受給権の男女の別扱いを、無くすことが重要ではないか。
    橘木委員
    働き盛りの配偶者が亡くなった若年時のものは、生活保護でカバーする方がいいのではないか。
    大澤会長
    遺族年金の給付期間は、終身でなく、生活を立て直して基盤をつくる間にする、または、一度は制度から除外し、超過保険料を払えば遺族年金を給付するというオプ ションにするということもあり得るのではないか。
    税制、医療保険についてはどうか。税制調査会の基本方針の中で、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除を廃止する場合、基礎控除を拡充することを考慮するとあるが、新た な就業調整の壁の問題が生じる可能性があるのではないか。
    また、地方税の規程において、男女の扱いが明文上異なるということは問題ではないか。
    高尾委員
    配偶者控除、配偶者特別控除を廃止し、増税になった部分を子供の部分で支出面として手当して欲しい。
    大澤会長
    子供の扶養の負担について、直接の支援が必要ということは中間報告で書いており、現金給付は直接の支援に含まれている。
    橘木委員
    税額控除よりも児童手当の方が効果が大きいのではないか。
    大澤会長
    最近のある実証研究によると、税の控除と児童手当が子供の貧困や不平等について及ぼす影響は、現行の児童手当の額が低いので、税控除の方が大きいというこ とだ。児童手当を拡充した時については今後の研究予定だそうだが、興味深い。
    医療保険制度改革案について、一元化の細部が分からないと中立性の観点から見極めるのは難しい。パートタイム労働者への健康保険の適用を中立性の観点からどう見るかと いうこともある。雇用システムについては、来年以降も引き続き検討したいというで合意しているが、年内のとりまとめで言及できるところはどういうところか。
    福原委員
    カフェテリアプランのメニューを見ても、税制や社会保険料、あるいは退職手当の算定そのほか含めて、これをそろえるというのは容易ではないのではないので、現状 をどのように整理するかということではないか。また、昇進が遅れる、教育の機会が足りないということは、男女共同参画以前の問題であり、機会均等に遡って判例がでている今の 傾向をもっと促進するようにするべきではないか。
    林委員
    処遇の合理性、非合理性というところにある働きの評価システムの問題について、働きを客観的に評価するシステムがないということ、その前提となる働きの内容が合理 的な区分理由とともに明記されていないことが重要ではないか。
    大澤会長
    働きに見合った処遇とは、成果主義、業績主義とは違い、成果に反映されない部分も評価するということか。
    林委員
    経験年数が賃金に反映されてきているということにも関連するかもしれないが、必ずしも、成果物としてみられない種類の仕事もあるということだ。
    また、有期契約労働者の有期雇用は、季節的な業務の変動に対応するということは極めて少なく、合理性がないのではないか。通年的にある業務にあえて有期雇用者に担わせ、 調整されてもすぐには生活に困らないだろうと推測されるところに、パート労働者の処遇の改善が進まない大きな理由なのではないか。
    大澤会長
    フリンジベネフィットについて、企業はメニューを提示して、そこから選べるとした時に、社宅に入ることは課税面から見て有利であり、雇用システムアンケート調査で世 帯主要件が27.7%ということから、要件によって非中立的になるのではないか。
    橘木委員
    夫か妻かどちらかが社宅に入る資格があれば、どちらでも選択できる余地があってもいいのではないか。
    大澤会長
    子育て支援についてはどうか。
    林委員
    雇用システムについて、非中立性をもたらしている要因として労働時間の問題が一番大きいのではないか。子育てに一番関わる必要のある年代に超過勤務が多い。男性の労働時間が短ければ、男性と同じように女性が働いて職場で能力発揮をしても、子育てや子供を産むということに影響を与えないのではないか。
    大澤会長
    保育所に子供を迎えにいくことと関わるので、通勤時間の問題もあるのかもしれない。
    また、教育費用と住宅費用を考慮すると、日本は児童支援パッケージがマイナスになるという研究があるが、子供を持ちたい人が持ちたい時に持ちたい人数だけもてる社会は、男 女共同参画社会以前の問題も思える。子供を持つ、持たないということが男女共同参画社会の形成にどういう形で関わっているのか見極めが難しいのではないか。
    林委員
    働きながら子供を持つという選択をした場合にどういう中立でないものがあるかという意味のことではないか。例えば育児休業法の男女適用について、日本の場合は、 スウェーデンに比べて男性が取得していない。理由は、いろいろあるが、1つに男女の賃金格差が大きいということも影響しているのではないか。
    高尾委員
    女性のみでなく男性にもあてはまるのではないか。
    大澤会長
    雇用システムや、育児支援等への言及の仕方にはまだ課題があるのではないか。

(以上)