- 日時: 平成14年6月26日(水) 13:00~15:00
- 場所: 内閣府第3特別会議室
(開催要領)
- 出席委員
- 会長
- 大澤 眞理 東京大学教授
- 委員
- 岡澤 憲夫 早稲田大学教授
- 同
- 大沢 真知子 日本女子大学教授
- 同
- 木村 陽子 地方財政審議会委員
- 同
- 橘木 俊詔 京都大学経済研究所教授
- 同
- 高尾 まゆみ 専業主婦
- 同
- 永瀬 伸子 お茶の水女子大学助教授
- 同
- 福原 義春 (株)資生堂名誉会長
- 議題次第
- 1 雇用保険に関する厚生労働省ヒアリング
<報告者> 厚生労働省職業安定局雇用保険課 - 2 今後の検討について
- 3 医療保険改革等に関するヒアリング
<報告者> 内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官 喜多村 悦史氏 - 4 その他
- (配布資料)
- 1 雇用保険に関する厚生労働省ヒアリング
- 概要
○中間報告書のとりまとめの際に、今後議論すべきとして委員から意見があったもののうち、雇用保険と医療保険改革等についてヒアリングを行った。
○厚生労働省から、雇用保険に関する説明があり、次のような議論が行われた。
- 橘木委員
- 教育訓練給付の創設時は、財源が豊かであったが、今後、失業した人に所得を保障する目的から離れたものは縮小していくべきではないか。育児、介護休業について 雇用保険から給付するのは趣旨が違い、全国民的な少子高齢化対策という観点から、他の財源等は考えられないか。
- 厚生労働省
- 被用者のための育児休業給付、介護休業給付の恩恵を受けるのは、被用者であり、雇用保険の負担者集団以外に財源を求めることには限界があるのではない か。
- 永瀬委員
-
出産者に占める育児休業給付受給者の割合は、非常に少ない。
育児休業給付の問題点は、事業主からの書類の提出、一種の合意がなければ給付されないという点にあるのではないか。 - 厚生労働省
-
雇用保険の育児休業給付は育児・介護休業法に基づく育児休業とリンクしている。育児休業は権利として取得でき、事業主の同意は必要ない。ただし、書類は、基 本的に事業主経由になっており、トラブルがあるとすれば育児・介護休業法の趣旨が徹底されているかどうかの問題である。
失業者に対する給付とそうでない者に対する給付のバランスをどうするかについては、今後の検討対象である。 - 岡沢会長代理
- 離職期間が長いほど技術革新が進み、自分の技術とのギャップで悩むため、教育訓練給付を充実させることは重要だと考える。教育訓練給付について、給付の 上限や対象講座数、運営主体や、男性女性等属性による違いなどの分析はあるか。
- 厚生労働省
-
教育訓練給付の根本思想である、自衛手段としての自己の能力の向上が重要である一方、失業者への給付と同一財源であるため、失業者への給付とのバランス 上、5年間以上の被保険者期間という要件があり、今後失業者への給付とのバランス論が創設時以上に厳しく問われていくため、緩和していくのは難しいのではないか。
また、属性については、20代、30代前半が一番多い。厚生労働大臣が、就職、雇用に結びつくようなホワイトカラー系の専修学校や民間が運営している講座を指定する。講座の指 定の在り方の見直しを行っている。 - 永瀬委員
- 就職状況の報告の義務付け等は行っているのか。
- 厚生労働省
- 講座終了後すぐに就職せず、数ヶ月の就職活動を経て就職した場合等を考えれば報告義務を課すことは難しい。ただし、教育訓練講座の受講者が1年間に就職し たかどうかのサンプル調査によれば、教育訓練講座の受講者の就職率は、公共職業訓練受講者より低いが、教育訓練を受けていない人より高い。効果を上げるためにも、講座 の見直しをしている。
- 大沢委員
- 年金同様、有期契約、派遣労働者など雇用の多様化の中で、今後、雇用保険の支え手を増やす観点から要件をそろえていく必要があるのではないか。
- 厚生労働省
- 平成12年に、改正の際のテーマの一つとして、パートタイマーの加入要件を緩和した。他の社会保険よりは先駆けて加入要件を拡大していることから、今後の動向 を見ていきたい。
○次に、内閣府経済社会総合研究所総括政策研究官 喜多村 悦史氏から、内閣府や経済社会総合研究所の見解でなく、総括政策研究官としての研究に基づく個人的見解と して、医療保険改革等の説明があり、これに基づき、次のような議論があった。
- 大澤会長
- 喜多村氏の提案には、自営業者の所得が捕捉できないという反論がでると思われるがどうか。
- 喜多村総括政策研究官
- 技術的には、自営業者の所得を捕捉は可能ではないか。また、雇用者か否かの区分自体が非常に難しくなっており、皆保険皆年金であれば同じ仕組み で考えるべきではないか。
- 橘木委員
- 収入面での統合を考えるなら、保険料でなく、消費税ではどうか。消費税に累進性を持たせることもできる。
- 喜多村総括政策研究官
- 所得に着目してきたものを、消費に着目点を変える積極的な理由がないのではないか。社会保険料は、所得税のように収入から経費を落とし、合計した 合計所得に対して控除等を行って累進課税をするという複雑な仕組みと違い、原則、本業収入にのみ賦課し、控除がなく、累進制でなく定率で徴収するという簡素な仕組みであ る。このため、自営業者にも同様に賦課をできるのではないかと提案している。
- 永瀬委員
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失業者や生活保護受給者は、その給付からみなし保険料を源泉徴収するという提案について、女性は半数が無業であり、更に失業保険に加入していないが、そういう 人についてはどう考えるのか。
また、65歳の一定年齢以下の現役がすべて保険料を負担するという提案について、子供がいる世帯は、出産直後に働く余地が下がる一方、65歳でも働く余地がある人もいる。全 体的な所得ではなく真の所得を考えないと難しいのではないか。 - 喜多村総括政策研究官
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無業の妻等は最低負担区分で割り切り、最後の納付義務は世帯の連帯と考える。
現在の国民健康保険は均等割により、子供が多いと保険料が多くなるが、私の提案する国民保険では、子供は保険料の対象にならない。また、子育て期間に働けないことについ ては、児童手当を組み込むことや育児休業を拡充することにより考慮している。 - 大澤会長
- 児童手当が国民保険に入るということはどういうことか。
- 喜多村総括政策研究官
- 児童手当は、所得制限なしに給付できる方がいいが、一般会計ではきつい。子供に対する給付の遺族年金や、雇用保険の中の育児休業同様、子育て も保険事故として新たに捉え直す考えもできるのではないか。
- 橘木委員
- 医療保険、年金、介護等はそれぞれリスクが違うため、一度にすべて統一することは難しいのではないか。いつごろ導入可能と考えるか。
- 喜多村総括政策研究官
- 各制度の財政問題は、すべて少子高齢化が要因であり、ライフスタイルの観点から、国民が共有したビジョンとして持つことが必要であることからの提 案である。国民に合意があれば、制度化は早く、どういう経過措置を設けていくかということになるのではないか。
- 大澤会長
- 被用者の事業主負担はどう考えるか。また、医療保険を今の出来高方式で行う場合、医療費の高騰を抑える仕組みとして、健康作りの支援以外に、第3者機関によ るレセプト審査等はどう組み込んでいくのか。自己負担比率はどのくらいか。
- 喜多村総括政策研究官
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被用者の事業主負担について、皆保険であるから基本は個人で納めることであるが、事業主がどうしても納めたいということを阻止するものではない。
また、医療について、保険者努力は当然。また、保険者は統一の方向にあるので、保険者間の競争ではなく、レセプト審査等の監視をすることが重要ではないか。
水準について特段定見はないが、高額療養の仕組みをどう組みこむことが重要。また、自己負担比率は、年齢を問わず同一であるのがいいと考える。 - 岡沢会長代理
- 保険証の個人化、カード化がまだ実現できていないことを考えれば、今回の提案の実現までかなりの時間がかかるのではないか。
- 喜多村総括政策研究官
- 政管健保での保険証個人カードの実証実験もされており、同時に進めることは可能と思う。
- 福原委員
- 情報公開などの関連もあるのではないか。
- 喜多村総括政策研究官
- そうである。
○今後の進め方について
今後の進め方について、本報告12月のまとめに向けて、社会保障(主に年金)に重きを置いて、来年以降、雇用システムについて議論してはどうかなどの意見も踏まえて会長が検 討することになった。
また、自己評価システムについては、会長からの提案どおり事例研究等を行うため、ワーキングチームを設けることになった。
なお、7月に行われる男女共同参画会議では、会長が、4月にまとめた影響調査専門調査会の中間報告を正式に報告する。
(以上)