影響調査専門調査会(第12回)議事要旨

  • 日時: 平成14年4月24日(水) 12:30~15:00
  • 場所: 内閣府第3特別会議室

(開催要領)

  1. 出席委員
    会長
    大澤 眞理 東京大学教授
    委員
    岡澤 憲夫 早稲田大学教授
    木村 陽子 地方財政審議会委員
    神野 直彦 東京大学教授
    橘木 俊詔 京都大学経済研究所教授
    高尾 まゆみ 専業主婦
    林 誠子 日本労働組合総連合会副事務局長
  2. 議題次第
  3. 概要

    ○前回に続き、中間報告のとりまとめにむけた議論を行った。

    木村委員
    社会保険が就労調整に全く関係がないわけではなく、先に103万円のところで就業調整をしているのかもしれないため、雇用システムのアンケート調査の結果も踏まえ家 族手当が支給されている制限を税制にあわせている企業は8割であり、130万円に設定している企業も約14%あると中間報告書に明記してはどうか。
    また、遺族年金については、所得の低い人に配慮しつつ時間をかけて序々に縮小・廃止していくということを明記してはどうか。男女の平均寿命の格差が開き、女性にとって の遺族年金のシェアが高まってきているからである。
    大澤会長
    遺族厚生年金の支給要件に関する制度上の男女差について、女性の生活や就労の実態等を踏まえつつ改善に向け検討を進めていくべきということと、若年の遺族配偶 者に対する遺族厚生年金について、必要な見直しについて検討すべきであるという記述には、遺族年金の必要、不必要を選択できるようなオプションもあり得るべきではないかという 意味を込めている。
    坂東局長
    遺族年金を非常に必要としている層もいる。
    木村委員
    遺族年金は所得の低い人に配慮しつつ時間をかけて序々に減少、廃止してくというのが自分としての意見である。
    橘木委員
    配偶者控除、配偶者特別控除をなくすることは、課税最低限を下げる ため、税率を下げるということにまで言及した方がいいのではないか。
    事務局
    配偶者控除、配偶者特別控除の見直しについては、その変更による国民の負担に与える影響を調整するように配慮しなければいけないが、当調査会で、税率を下げるの か、または他の控除を拡大するのか、まだ議論が詰まっていないことに加え、具体的な税率までは男女共同参画の観点からは言及しづらいということもある。
    林委員
    良好で多様な労働形態の実現にむけて、現在の正社員・非正社員という区分をなくし、同じ仕事には同じ賃金が支払われる「同一労働同一賃金の原則」そのものに我が国 の実態を加味して働きに見合った処遇となるような環境を整備し、パートタイム労働者についてのいわゆる日本型ではない均衡処遇ルールを確立するための法制を検討していくこと が必要なのではないか。私としては、「日本型均衡処遇ルール」という表現から「日本型」をとるべきだと思う。
    また、「良好」でなくて「良質」な労働形態を目指すのではないか。
    大澤会長
    労働基準法は、男女同一労働同一賃金は明記しているが、雇用形態の同一労働同一賃金原則ではない。従って、働きに見合った処遇となるような環境整備をすることに 重点を置いた書きぶりにしてはどうか。
    また、労使関係論や労働経済学では、良好な処遇の雇用機会という言葉の使い方をすることも多いので、「良好」という言葉を使いたい。
    高尾委員
    家事労働はどんなに省力化、外注化されても必ず残る部分があり、その部分を男女が協力しあって負担し、人間として生きていくときに価値もでてくる。帰属所得に課税す ることは誰に対する課税かあいまいであり、今後も絶対にしていくべきではないと考える。
    大澤会長
    配偶者控除、配偶者特別控除を見直すべきであるという議論に対し、最低生活費を保障する部分に手をつけるのか、担税力がないのではないかとという擁護論が出るた め、あらかじめ反論する必要がある。配偶者が専業で家事に従事すれば分業の利益も大きいというご意見もあるので紹介した。
    岡沢会長代理
    日本的雇用慣行の変化の兆しについて、労働観が大幅に変容し、仕事が人生ではないという価値観がかなり定着して、社会全体としてのワークシェアリングの前提 ができつつあるのではないか。
    大澤会長
    年休消化率は上がっていない。景気が低迷し、競争が激化する中で、今までの勤務先中心のライフスタイルを変更することは容易でなく、職場でのストレスにもなっている という現状を、報告書(案)にも記してある。仕事が人生ではないという価値観が定着したまでとは、いえないように思う。
    林委員
    バブルが崩壊してからは、不払い残業でも率先してやらざるを得ない状況が生まれている。
    高尾委員
    第3号被保険者の見直しにあたって、厚生年金の分割という選択肢を認める、この場合、雇用関係のない妻に係る事業主負担が求められない場合、これに代わる財源を どこに求めるかなどの課題があるというが、夫婦が私的に分けるのなら、事業主は関係ないのではないか。
    大澤会長
    ご指摘の部分は、年金分割の議論に対して指摘されることである。片働き世帯の夫の会社は、妻の内助の功の利益を得ているので妻の分の保険料を負担するのは当然 という議論もありうるだろう。
    今回の議論をもって影響調査専門調査会の中間報告とさせていただきたい。

(以上)