影響調査専門調査会(第2回)議事要旨

  • 日時: 平成13年6月8日(金)15:00~17:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室

(開催要領)

  1. 出席委員
    会長
    大澤 眞理 東京大学教授
    委員
    岡沢 憲芙 早稲田大学教授
    木村 陽子 地方財政審議会委員
    神野 直彦 東京大学教授
    高尾 まゆみ 専業主婦
    橘木 俊詔 京都大学経済研究所教授
    高山 憲之 一橋大学経済研究所教授
    永瀬 伸子 お茶の水女子大学助教授
    師岡 愛美 日本労働組合総連合会副会長
  2. 議題次第
  3. 概要

    ○大澤会長から「ジェンダー影響調査について」報告が行われ、質疑応答が行われた。

    ○永瀬委員から「社会制度・雇用システムと女性労働について」報告が行われ、質疑応答が行われた。

    ○大澤会長の報告に対する質疑応答

    橘木委員
    従来指摘されていた影響はもちろんだが、どこまで影響調査をやるのか。
    大澤会長
    意外なところに影響が潜んでいたといったものを洗い出していくことも任務だと考える。
    坂東局長
    男女における賃金格差の一番の要因は勤続年数である。いろいろな要因で勤続年数が短いが、こういう問題が戦略目標になると思う。そういったような分野がほかにもいろいろ見えてくると良いが。
    岡澤委員
    男女共同参画の論点としては、エフィシェンシーの論理の追求からエフェクティブネスの論理に重点を置きながら見直すと違うパラダイムが見えてくるのではないか。
    橘木委員
    エフィシェンシーというのは、何か政策をやったときにコストミニマイズでやったのがエフィシェンシーだという考え方だが、経済成長にマイナスの効果といったような、何かネガティブな効果が出てくるということもあるのではないか。
    大澤会長
    マイナスの副アウトプット(意図されざる結果)が余り大きいとアウトプット(本来意図された結果)と相殺し、成果が乏しいということになりかねない。
    大沢委員
    アファーマティブ・アクションで機会が開かれ、女性の能力が向上する。短期的なインパクトだけで判断するべきではない。
    大澤会長
    より長期のプラスのインパクトによって正当化できるというようなことも言えるだろう。
    師岡委員
    採用から定年退職までというスパンの中で女性の出産と育児期はマイナス側面が出るが、それをクリアすれば仕事にエネルギーを燃やせる。企業や会社に退職までどれだけ貢献するか、力の発揮の時期は人によって違うので、そういうことをどう洗い出していくのか難しい。例えば、育児休暇を取れば昇給延伸の対象になったりすることを社会的な資源という観点からどのように見ていくのか。
    大澤会長
    出産・育児期の両立支援政策的なものが、短期的には企業経営や組織の負担になることがあるかもしれないが、長期的にはサステナブルな組織や社会づくりに役立ってはいないかという観点からの影響調査もあると考える。
    また、一見して男女共同参画と無関係な政策が女性の職場進出を妨げたり、男性が家庭にかかわることを妨げていたりといった影響調査もある。
    永瀬委員
    主婦の場合など、能力開発へのアクセスビリティで格差がある。官庁統計等にもそれに関するデータはない。そういうことをもう少し考えるべきだ。
    大澤会長
    職業能力開発について、学生・専業主婦・自営業であった人は雇用保険の政策手段にアクセスできない。こうした政策手段が有効かつ効率的なのかといった問題提起がある。
    木村委員
    労働基準局にヒアリングしたとき、育児施設・サービスはない、就職追跡調査はやっていないとのことだった。こうした施策評価もやるべきだ。
    岡澤委員
    人事問題に関して言えば能力開発チャンスを平等に与えていない。能力開発というのは、組織の中に入る前・入ってから・中でプロモートするときと三層構造である。
    橘木委員
    男女で進学する学部の傾向が異なることについてはどうか。
    岡澤委員
    これは1970年代の北欧のテーマだった。男の仕事・女の仕事があるように、男の学問・女の学問もしくは男の学部・女の学部がある。進路指導のアドバイザーが、そういう問題を累積していくのではないかということを議論していたのが北欧でいうと70年代であった。
    日本の場合には、進学指導というレベルでは余り就職指導とコンバインしてやっていないような気がする。

    ○永瀬委員の報告に対する質疑応答

    岡澤委員
    今の話の中での突破口はどこか。
    永瀬委員
    正規と非正規の格差縮小や良好な雇用機会の創出や社会保険・税制を変えるなどを一緒に動かしていく必要がある。
    岡澤委員
    トータルな社会改革案ではなく、一番重要な突破口はどれか。
    永瀬委員
    短時間で良好な雇用機会をつくることだ。
    岡澤委員
    これは重要な柱のひとつだ。
    高尾委員
    一度正規就労を止めた場合、こんなにも多くの不利益があることがなぜ知らされてこなかったのか。
    大澤会長
    3号被保険者が増えてきたのはなぜか。
    永瀬委員
    例えば、再就職して長時間働いたとしても、社会保険料・税など取られる部分が多くて増える給付が少ないので自ら2号にならないことを選ぶ人が比較的多い。昔の厚生年金は定額部分があり、これで賃金の低い人はそれなりに優遇されたが、今はその定額部分は主婦に既得権としてある基礎年金部分になり、3号から2号になることの追加的なメリットが低い。
    坂東局長
    極論だが基礎年金だけ強制加入にして報酬比例部分は私的にカバーする方が女性にとって中立的ではないか。
    大澤会長
    サッチャーの年金改革で、公的年金の適用除外条件を緩和したところ、20%くらい加入者が抜けた。この間、有利な私的年金に加入した人の75%は男だった。条件が悪くなった公的年金に取り残されたのはブルーカラーと女性だった。それこそジェンダーバイアスがある。
    橘木委員
    基礎年金をもう少し増やしたらどうか。
    永瀬委員
    国際的には日本の今の満額の基礎年金は高い。問題は今の制度でいくと優遇されるのは安定した正規労働を続けてきた人の妻ということになる。彼女たちは満額の基礎年金を得られるが(これは十分高い金額だが)、一方で受給権を得るための期間が25年と国際的にも長い上に、1号の保険料も高いので、安定した職につかない者、およびその妻は到底満額の年金をもらえない、場合によっては無年金となるゆがみがある。とくに若い人たちが全般に非正規社員が増え加入していない人も多く、基礎年金が少なくなる。

(以上)