第22回男女共同参画会議影響調査専門調査会

  • 日時: 平成15年10月15日(水) 15:00~17:00
  • 場所: 内閣府3階特別会議室
  1. 出席者
    • 大澤 会長
      浅地 委員
      大沢 委員
      木村 委員
      佐藤 委員
      永瀬 委員
      林  委員
  2. 議事
    • (1) 影響調査事例研究ワーキングチーム中間報告(案)について
    • (2) 男女間の賃金格差問題
        (報告者)明治学院大学経済学部教授 笹島 芳雄 氏
    • (3) その他
  3. 議事内容
    大澤会長
    それでは、時間もまいりましたので、ただいまから男女共同参画会議影響調査専門調査会、第22回会合を開催いたします。
     委員の皆様にはお忙しい中御参加いただきまして、どうもありがとうございます。
     議事に先立って、多少の異動がございますので御紹介します。まず、神野委員におかれましては、10月1日付で東京大学の経済学部長に就任され、兼職の制限が大変厳しいとのことで委員を辞職されたことを御報告します。
     また、事務局において人事異動がございましたので、それぞれごあいさつをお願いいたします。
     まず、局長お願いいたします。
    名取局長
    8月5日付で男女共同参画局長になりました名取でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
    土肥原審議官
    男女共同参画局担当の大臣官房審議官の土肥原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
    定塚参事官
    こちらの調査会を担当しております参事官の定塚でございます。よろしくお願いいたします。
    松原調査官
    調査官の松原と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
    大澤会長
    どうもありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします。
     では、お手元の議事次第に従って本日の審議を進めてまいります。まず、影響調査事例研究ワーキングチームについて、中間報告案がまとまっておりますので、事務局から簡単に説明をしていただき、質疑応答と意見交換をしていただきます。
     では、よろしくお願いいたします。
    定塚参事官
    それでは、資料1でございますけれども「影響調査事例研究ワーキングチーム中間報告書」をごらんいただきたいと思います。サブタイトルとして「男女共同参画の視点に立った施策の策定・実施のための調査手法の試み」という副題をつけてございます。こちらのワーキングチームにつきましては、以前こちらの調査会で御説明があったと伺っておりますけれども、平成14年7月に影響調査事例研究ワーキングチームという形で設置をされまして、今年7月まで合計で8回の会合を開いてきているものでございます。
     ワーキングチームのメンバーについては、この報告書の最後の33ページをごらんいただきますと、大澤会長以下4名のメンバーの方々でございます。
     こちらのワーキングチームでのこれまでの検討内容を取りまとめて中間報告という形で公表しようとするものでございまして、こちらの案はワーキングチームで取りまとめていただいた後に、念のため各省庁にも配付をいたしまして、意見をいただき、その意見に基づき若干の修正を加えたものでございます。
     内容の説明に入らせていただきます。まず、1ページ目ですけれども「はじめに」ということで、男女共同参画影響調査というものを取り巻く環境、経緯等を書いております。
     1ページ目の一番下の行でございますが、ワーキングチームの目的ということで、我が国では影響調査の調査内容や手法等がいまだ明確に確立されていない。このため、なぜ影響調査が必要なのか、具体的にどのような調査を行うのかなど、施策の立案・実施に当たる担当者が効率的かつ効果的に男女共同参画社会の形成に配慮できるよう、事例研究を行い効果的な調査手法を開発するということが任務・課題となっておりました。このことを目的として、平成14年7月にワーキングチームを設置したというものでございます。
     その4行下でございますが、ワーキングチームにおける検討内容を本中間報告書として公表することにより、影響調査の考え方、重要性、必要性についての理解が深まり、施策の企画・立案、実施が可能な限り、男女共同参画社会の形成に配慮しつつ行われることが期待される。また、国及び地方公共団体による影響調査の実施等に関する情報の共有を図るとともに、今後においてもよりわかりやすく効果的な調査手法の開発に努めるものであるということが目的と期待するべき点ということでございます。
     次に、2「影響調査とは何か」、こちらの専門調査会のテーマでもございますが、このことについて触れております。現状では、社会や家庭における男女の役割や責任が異なり、置かれている状況により男女の実際的なニーズが異なる。このため、施策を実施した結果、女性と男性が受ける影響が異なり得ることもあり、男女共同参画の視点から無視し得ない効果が生じる可能性がある。影響調査は、男女共同参画社会の形成に及ぼす施策の効果、アウトカム及び波及効果、副次的効果あるいは意図しない効果を調査し、男女共同参画の視点から施策の改善すべき点を明らかにすることを趣旨とするというものでございます。
     次の3ページの下の(2)「影響調査の意義」でございますが、影響調査を実施することによって、必要性、効率性、有効性、公平性などの観点から、施策の質の向上を促す手がかりを得ることができるということが意義でございます。すなわち、具体的な多くの情報に基づいて、可能な限り女性にも男性にも等しく便益が的確に及ぶように努めることは、施策の公平性を高めるとともに、一定の予算や人員の下では施策の効率性も高めることに寄与するであろうということです。
     また、次のページの6行目ですが、男女共同参画の視点に立って男女が等しく便益を享受し得るように施策の見直しや改善をしていくことは、施策の本来期待される効果が損なわれることを防ぎ、より確実に発現することを促進し、施策の有効性の向上に寄与する。最後に、基本計画第3部にあるように、影響調査による調査結果は広く国民に公表されることから、広く公開することにより施策の透明性を促進することに寄与するというものでございます。
     次に、(3)「政策評価との関連」ということで、政策評価というものとこの影響調査との違い、あるいは同じ点について書いてございます。詳しい説明は省略いたしますが、5ページの3行目ですけれども、影響調査は男女共同参画社会の形成に及ぼす効果及び波及効果、副次的効果をも調査分析するというものでございます。
     次に、このページの下、3「調査の主体、対象とする施策、時期」という点でございます。実施する主体ですけれども、男女共同参画社会基本法第15条では、国と地方公共団体は施策の策定・実施に当たって、男女共同参画社会の形成に配慮しなければならないということが書いてございます。
     次の6ページ目の四角い枠の下のところでございますが、男女共同参画基本計画第2部には、政府の施策が男女共同参画社会の形成に及ぼす影響についての調査を実施することが明記されているということで、主体としてはまず政府というものがございます。男女共同参画社会基本法第22条第4項の規定によりまして、男女共同参画会議の所掌事務として行うということ。それから、加えて第15条の規定から、配慮の一環という形で関係府省が影響調査を行うということも併せて期待されているということ。つまり、男女共同参画会議が直接影響調査を行うというだけではなくて、関係府省も自ら行うということが期待されているということでございます。
     次の7ページの、これも四角の次の行でございますが、地方公共団体についても同じように影響調査を行うことが期待されております。これは直接、法律や計画で義務付けたりしているものではありませんけれども、国に並んで同じように期待されるということになっております。
     次に、(2)「対象とする施策」でございます。こちらの方は、影響調査が対象とする施策としてはということで、国及び地方公共団体の施策が該当する。国と地方公共団体の施策すべてが対象となるということでございます。
     次の8ページでございます。随分早足で申し訳ないんですが、時間の関係で省略をさせていただいております。
     (3)「実施時期」ですけれども、実施の時期はいろいろな時期が考えられるんですが、特に効果的かつ効率的ということを考えると、施策を企画・立案の段階に実施するということがいいだろうということでございます。
     次に、4「影響調査の手法例」でございます。実際に影響調査を行っていく場合には、いろいろな調査項目や手法があるということが考えられますので、ここではあくまでも代表的な例ということで調査項目と手法の例ということを書いております。
     まず、影響調査においてはデータ等を活用して、以下の調査から現状を把握し、その調査結果を踏まえて改善点を明らかにする分析・評価を行うということで、調査として調査項目を2つ掲げております。1つ目が、女性と男性のそれぞれの役割や状況、女性と男性が実際的に必要としている事柄等を調査・把握するということ。
     2つ目が、女性と男性に対する施策の効果及び波及効果あるいは意図しない効果を検討するというものです。
     分析・評価は、この調査結果を踏まえて行うわけですが、施策によって男女が享受できる便益に格差があるということがわかった場合に、等しく便益を享受できるように施策をどう改善するかということを分析して評価するというものでございます。
     以下、この内容について詳しく記述がなされております。まず、調査項目1ということですが、女性と男性のそれぞれの役割や状況、実際的に必要としている事柄等を調査・把握するということでございます。この趣旨は、ここの下から3行目に書いてありますが、男女いずれか一方に偏った捉え方をしたり、画一的・固定的に調査対象を取り扱うのではなく、女性、男性のそれぞれの役割や状況の異同、さらには実際に必要としている事柄等を明示的に把握するということです。例えば、保育サービスの充実は子育て中の女性が実際に必要としている。あるいは、バスの停留所や駐車場などに照明を確保するということが性犯罪防止の観点から、実際に女性が必要としているというものであるというような調査が考えられます。
     下の③「調査の具体的方法」というところですが、これは言うまでもなく、定量的に把握するためには性別のデータを整備すると。具体的には、データ収集の調査票・報告様式の段階から集計表に至るまで、性別に区分して男女を対比して分かりやすくデータを整備するということが具体的に必要となります。
     次のページでございますけれども、真ん中に書いてありますが、それをした上で、性別とその他重要な属性とのクロス集計をすること、並びに簡易統計集やウェブサイトなどでのデータの提供など、入手が容易で幅広く公開されているということも重要であると言えます。
     このような性別データからわかることの事例ということで、幾つかの事例が掲げてございます。1つだけ紹介すると、事例1「健康ちば21」、これは千葉県の実際に調査した事例ですけれども、男女合計の総数で見る死因の順位を男女別に見ますと、男性の方はガン、女性の方は動脈硬化症が死因の中で最も多いということがわかりまして、女性と男性では死因の順位が異なるということがわかったという調査結果でございます。この調査結果に基づいて何を分析して、どう施策を変えるかということは、また後の方に出てまいります。
     次に、11ページですけれども、真ん中辺のイでございます。先ほどデータをとるという話をしたんですが、データをとっても女性と男性のそれぞれの状況が適切に表れていない場合には、有識者や女性団体からヒアリングを実施するという調査方法がございます。具体的な事例は省略させていただきます。
     次の12ページですけれども、ウ「女性の意見等を集約するための手法」ということで、もう一つの方法としては、女性の意見・提言が十分に取り上げられない場合があることを考慮して、地方公共団体において女性の視点を重視するような事業、あるいは施策の決定過程へ女性の参加を促すといったような事業もありますので、こうした活動は女性の意見を集約的に吸い上げていくという調査方法として参考になるものと思われます。
     次の13ページでございます。調査項目2です。女性と男性に対する施策の効果及び波及効果あるいは意図しない効果を検討するというものでございます。これは、施策の直接意図された効果だけではなくて、波及的な効果あるいは施策が本来予定していなかった効果が男女共同参画に影響を与えているという場合がありますので、これを見て調査分析をするという手法でございます。このページの下3分の1辺りに書いてありますけれども、一見、男女共同参画とのかかわりの見えにくい施策あるいは男女の区別なく適用されるような施策においても、現実には女性と男性で状況やニーズが異なっているという場合があります。そうした場合には、結果として便益が男女双方に等しく行き渡っていないということがあり得るということになります。
     また、検討対象の施策が事実上、複数の選択肢を持っている場合、その選択肢のあり方が個人のライフスタイルの選択に影響を与えているというようなこともあります。このような場合に、男女の格差の固定化や拡大する恐れが副次的効果として現れるということもあることから、こうした影響を把握して検討するということが必要になります。波及効果というのは、例えば、この調査会で扱いました配偶者に係る税控除の導入の結果として、子育て後の再就業によってパートタイム労働を選択する割合が高い、パートタイム労働者が就業行動を調整するということ、あるいは企業の方にパートタイム労働者の賃金を税制面を考えて抑制するというようなことが生じるということが例として該当します。
     ③「調査の具体的方法」というところでは、やはり同じ配偶者の税控除を事例として解説しております。具体的な内容は省略させていただきます。
     次の15ページでございますけれども、(2)「分析・評価について」ということで、調査結果から明らかになったことを踏まえて、分析・評価をして施策の改善されるべき点を明らかにするという段階がございます。先ほど申し上げた「健康ちば21」の事例から解説をいたしますと、先ほど申し上げたように、男女別にデータが違っている、死因が違っているということがわかりました。これまで医学研究では、男女を区別せずにデータをとって、その結果を女性にも適用するということをしていましたが、これからは男女別のデータの取得を推進するということが施策の見直しとして1つ行われました。また、千葉県においては、女性専用外来を県立病院に設置するという施策もとられました。
     もう一つの例としては、阪神・淡路大震災の被災・復興状況の場合なんですけれども、有識者のヒアリングを通して災害弱者としての女性の姿、あるいは男女のニーズの違いを考慮しない予防、応急、復旧・復興などの面があるということが指摘されました。これらを踏まえて検討したところ、女性にストレスやptsd症状などが生じたということを踏まえて、女性の専門相談員というものを配置したり、女性消防団員を採用したり、火災予防、救急講習などに女性の能力を積極的に活用するということを追記するなどの措置をとっております。
     以上が例でございました。
     次に、16ページでございます。(3)「影響調査の調査分析評価過程の例」ということで、今まで申し上げてきた調査項目の1、2、それから、分析・評価というものを組み合わせて例として示したものでございます。
     調査手法1というものは、まず、調査項目1の調査結果から施策の改善されるべき点が明らかになる分析・評価過程ということで、その下の箱の中に書いてありますが、まず、調査項目1で指標データを男女別に収集する。データから見ていって、女性と男性について違いがあるかどうかということを検討して、必要な施策を見直すという方法でございます。
     具体的な事例も書いてありますが、ここは省略させていただきます。
     20ページでございますけれども、調査手法2でございます。調査手法2は、調査項目2からアプローチしていった手法でございまして、まずは検討対象となる制度・慣行がどのような選択肢に関わっているかということを見て、その選択肢が実際に選択されているか、実際の選択と本当に選択をしたかった選好度というものとの乖離を見ると。各選択肢が選ばれた理由や所得等の面でどのような違いをもたらすかということを明らかにして、自由な選択を可能とする上で改善が必要と見られる場合には、中立性確保のため制度・慣行を見直すという流れになります。この調査手法2というのは、本調査会の税制等の検討をした際にとった調査手法がこれに当たるということで、その後に例示をさせていただいております。こちらの方も説明は省略させていただきます。
     次に、23ページですけれども、5「影響調査の効果的な実施のために」ということで、ほかに留意すべき点を幾つか掲げております。
     まず、第1が性別のデータの収集・整備ということでございます。
     第2が、女性と男性の意見等の収集方法の活用ということでございます。
     第3が、外部の専門家、男女共同参画分野などの専門家との連携を図って影響調査を実施するということでございます。
     4番が、関係府省間の連携ということでございます。これは、担当府省だけでは改善を図ることが難しい場合もありますので、関係府省・部局との連携を行って、影響調査を進めていこうというものでございます。
     5番目に、影響調査についての研修の実施ということで、影響調査について基本的な考え方やどのように調査していったらいいかということを、まだ全く広まっていないという状況にありますので、研修を実施していくことが必要であるということを掲げております。
     それから、最後25ページの(6)でございますけれども、この中間報告で事例を幾つか掲げているわけですが、まだまだ不足の部分はありますので、今後とも事例の収集と事例から可能なわかりやすい手法の確立ということに努めていくべきだということを書かせていただいております。
     26ページ以降は参考資料ということで、諸外国の参考事例あるいは女性の意見を集約する手法事例というものを掲げております。これらも大変参考になるものなので、お時間があったら説明したいのですが、今日のところは省略させていただきます。また、御覧になっていただければと思います。
     以上です。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。
     ただいまの説明に対して、御意見・御質問等ございましたら、お願いいたします。
    佐藤委員
    この影響調査を誰がやるかということで、国や自治体という施策の担い手がそれぞれの施策について、そのアウトカムと副次的効果を含めて男女共同参画社会の実現という観点から見てマイナスの影響がないかを見て、マイナスの点があるとすれば施策を改善するという仕組みですよね。1つは、施策の担い手である国なり自治体にやってもらわなければいけないわけですけれども、やはり自己評価というのはなかなか難しいですね。ですから、やっていただくのはいいんですが、特に副次的効果というと、もともと意図していないわけですから政策担当者はわかっていないわけですよ。特に、副次的効果、つまり施策の担い手に積極的に、かつ、副次的効果も含めて評価してもらうためには、そういう行政が積極的にやったものを後押しするような別の仕組みも必要ではないかと。それはどういう点かというと、24ページのところに専門家との連携ということや、一番下の方に分析能力の向上ということがあるわけですけれども、1つは、行政の中で政策担当者が分析力を高めてもらわなければいけないわけですが、最後の方に分析手法をまだ確立していないと言っているわけですね。そうすると、基本的には分析能力を高めたくても手法がないわけですから、何を勉強していいかもわからない状況ということです。そうしますと、専門家との連携にもかかわるわけですけれども、行政が勿論やるということはメーンだと思いますが、行政が分析手法を勉強したり、能力を学んだり、例えば、副次的効果というと、見落としたものがないかどうかということに気付くためには、私はやはり研究者が同じように施策についての影響評価をやるという研究がたくさん出てこないと、そしてそういうものを見ながら、こういう副次的効果があるんだということを政策担当者が気付いて自分たちもやるというようなことがないと、なかなか難しいのではないか。そうしますと、専門家との連携といったときに、専門家自身が影響評価をやり、かつ分析手法を開発するということをやらなければいけないわけですよ。そのためには、基本的にはデータへのアクセスなんですね。データがなければ影響評価もできないです。
     ということで、例えば千葉の例がありますよね。この例を挙げるのがいいかどうかは別ですけれども、例えばこれは、政策担当者は自分たちでデータを集め分析する、それはいいことなんですが、このデータに専門家がアクセスして分析すると、もっと議論すべき点が出てくるかもしれない。これがいいのかわかりませんが、実は男女で見えていたのがライフスタイルで喫煙行動とかそういうもので男女共通してあるもの、逆に女性だけというものも問題かもしれないですね。女性だけにやらなければいけない施策もあるし、男女共通にやらなければいけない施策があるかもしれない。そういうものが行政担当者だけでは忙しいですから、1回の評価で終わってしまいがちであるので、例えばこういうデータに研究者がアクセスできれば、別の政策評価の研究が出てくる。そういうものを行政の担当者が勉強して、もしそれが自分たちに必要だと思えば、そういうものを生かしていくというような専門研究者との連携が必要。そうすると、やはりデータのところなんですね。
     それで、これは別の男女共同参画会議の研究会でも一応データの研究者のアクセスについての議論をしていますので、その辺をもう少し踏まえて書いていただくとありがたい。1つは、統計法の兼ね合いがあるので、なかなか研究者が官庁統計にアクセスできないわけですけれども、統計法にカバーされていない調査データはたくさんあるわけです。例えばこの部会で実施した、ちょっと長くなりますけれども、大澤部会長がやられた企業アンケートがあります。これは別に統計法でカバーされていません。あの調査データは1回やって終わりなんですね。しかし、あれも回答企業が特定できないようなマスキングをして研究者に公開すれば、新しい研究がたくさん出てくる。そうすると、あれはこの部会で使ったわけでありますけれども、もっと新しい別の知見も出てきて、この部会としても使えるような成果が出てくるかもしれない。そういうことを是非、この男女共同参画会議なりこの部会にかかわるところについて、研究者が利用できる、有益な結果が出そうなデータについて公開する。そうすることによって、地方自治体が例えば、いろいろ集めたデータも公開し、そこの研究者がそのデータを使って政策研究をやれるという方向に持っていくためにも、やはりどこかが公開するのは研究者に限ってはいいと思うんです。そういうものを是非入れていただければというのがお願いです。
    大澤会長
    そういうデータの公開主体が誰になるかという問題もありますけれども、今の御意見に関して何か事務局の方からございますか。
    定塚参事官
    大変貴重な御意見で、データをなるべく公開していくべきだというのはおっしゃるとおりだと思いますので、何か入れられるかどうかというのは検討させていただきます。この調査会でのアンケート調査というのは回収率が高くなかったということはあるんですが、その点も改めて検討させていただきます。
     あと、先ほど説明を忘れてしまったんですけれども、地方公共団体ではこの影響調査というものに興味を持っていながら、やはりノウハウがないということも多いと聞いておりますので、この中間報告ができましたらこれをお配りして、興味あるところには是非、直接御説明するなり、いろいろな形でワーキングチームなりにかかわっていただくなど関係を持って、地方公共団体の支援をしていきたいと思っております。
    佐藤委員
    そのデータ公開というのは、誰でもアクセスできるようにしようという趣旨ではなくて、やはり基本的には、ここの会議でやる調査であれば、男女共同参画社会に資するような調査研究の影響評価に限って、研究目的に使ってもらうという形で、誰でも使えるようにしようということではないです。
     もう一つは、企業データの場合のプライバシーというのはわかりませんけれども、基本的には調査回答者が特定できないようなファイルにしてということが条件です。
     あともう一つは、回収率の問題がありますが、初めからこれは利用できないと考えるのはやめた方がいいと思います。それは基本的に公開したくないから言うだけではないかという気がしないでもないので、限界があるデータは、研究者がその限界を考えながら利用すればいいので、今は使えないと思っても使えるような分析指標が出てくるんですね。ですから、余りその辺は公開の前提として考えなくていいのではないかと思います。
    大澤会長
    あの企業アンケート調査結果の報告などを専門調査会でしたときにも、私が発言したんですけれども、一般に企業に対するアンケート調査の回収率はそう高くはなくて、いろいろなシンクタンクがおやりになって官庁の報告書などに載っている例で3割程度というのは多いので、それに比べてひどく遜色のある回収率だったとは思っていません。
     どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
    木村委員
    22ページと23ページの年金の所得分割のところですけれども、例えば、23ページの③「所得分割が導入され、それが広まり、遺族年金が自ら年金に置き換わるケースが増えれば、そうした事態の発生は少なくなるのではないかと考えられる」ということの含意は、所得分割が導入されれば遺族年金制度はおのずとなくなるということを含んでいるんですか。
    大澤会長
    制度がおのずとなくなるというよりも、受給者は減るのではないかということですね。つまり、自分の年金になりますので。移行期間という面倒な問題はありますが。
    木村委員
    よくわからないんですけれども。
    大澤会長
    あらかじめ分割されてしまうので、遺族年金と称するものが半分以下になってしまえば、それは自分の年金の方になるわけですよね。
    木村委員
    所得分割があっても遺族年金があるということなんですね。
    大澤会長
    特に移行期間のことを考えると、それはあると思います。
    木村委員
    そこら辺がわからないんですよ。老齢年金の所得分割をすると遺族年金が将来的にはなくなるということを考えているのか、あるいは所得分割しても遺族年金をやっている国もあるわけで、その兼ね合いはどういうふうに考えておられるのかということが1つ。
    大澤会長
    これは、いろいろな前提条件というのをひどく単純化していますので、制度そのものが直ちになくなるとはしていなくて、むしろ移行期間で1年分ずつ自分名義になった年金と遺族年金の部分というようなことを考えた場合も、次第に自分の年金を受け取るケースの方が、今は8割方が遺族年金になっていますけれども、もう少し平準化するのではないかというようなことを考えて、こういう表になっています。
    定塚参事官
    念のため補足させていただきます。この表は、昨年末の報告書からそっくりそのままとったものでございまして、あくまで一連の手法の流れという形で書かせていただいております。内容自体は、既に昨年12月の最終報告書に載せた内容でございます。
    浅地委員
    今、御報告をいただいたわけですが、私は途中からの参加なので、去年7月にワーキングチームが設置されて、こういうお答えをちょうだいして、調査手法ということで中に挙げている項目というのは政策の優先順位につながるとかそういうことではないんですね。
    定塚参事官
    そういう意味ではありません。
    浅地委員
    こういう方法が望ましいというビジネスメソッドというか、モデルを確認した……。
    大澤会長
    望ましいというよりも、一応今まで幾つか行ったことや地方公共団体の取り組みの中から抽出できる方法というのは、こうではないでしょうかという話です。
    浅地委員
    なるほど、こういうやり方がありますよと。
    定塚参事官
    今のところの事例7であるとか、その前の事例6、その前の事例5は、いずれも最終報告書に載った内容そのものでございます。
    永瀬委員
    こういうことは比較的知られていないものなので、こういう形でまとまったというのは大変私はいいのではないかと思いますけれども、調査項目1、調査項目2と目次に載っていますが、大変わかりにくいので、少し内容が出た方がいいかなという気がいたします。
    大澤会長
    記号ではなくて、もう少し内容を表すネーミングを考えるようにと。
    永瀬委員
    はい。目次にもそうですけれども、文の中でも「調査項目1」というのが1つの日本語になって出ていますが、もともと非常にこれはわかりにくいのが、こういうことなのかと理解が進むという意義も大きいのではないかと思いますので、もう少しわかりやすいネーミングがつくといいかなと思います。
    大澤会長
    そうですね。8ページの四角の中に入っているのをそのまま目次に抜き出してしまってもいいかもしれません。体言止めになっていなくて「する」というふうに書いてありますが、あるいは体言止めという形で抜き出すというのは、方法として在り得ると思います。
     どうもありがとうございました。既に笹島先生もお見えになっておりますので、いろいろと御意見をちょうだいいたしましたけれども、また更に必要であれば御意見を伺うということで、それを踏まえてワーキングチームの中間報告とさせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
     では、前回に引き続き、雇用システムについての有識者からの説明を伺いたいと思います。本日は「男女間の賃金格差問題について」という題目で、明治学院大学教授、笹島芳雄さんから御説明をいただき、質疑応答、意見交換をしてまいります。なお先日、委員の皆様に資料をお送りしたように、今日は御欠席でありますけれども、高尾委員からあらかじめ質問等を紙でいただいておりますので、お配りしております。
     では、笹島さんから御説明をよろしくお願いいたします。
    笹島教授
    ただいま御紹介いただきました、明治学院大学の笹島です。本日はよろしくお願いいたします。それでは、座りながら御報告させていただきます。
     お手元にいろいろな配付資料があるようですが、使いますのは私が用意しました、この薄い『「男女間の賃金格差問題に関する研究会」報告』を使ってお話しします。
    大澤会長
    資料2-1ですね。
    笹島教授
    それから若干、配付されている資料について述べておきたいと思います。ガイドラインというのがございますけれども、これは我々の研究会報告を基に厚生労働省が作成したものでありまして、研究会で特に内容の書き方、その他、全く言及しておりません。
     それから、分厚い研究会報告がございます。
     あとは、新聞発表に使った資料だと思いますが、報告書のあらまし。これについては特段我々は議論しておりません。
     それでは早速、用意いたしましたレジュメに沿いながら、研究報告の内容を御説明し、その後、御質問を受けたいと思います。
     研究会自体は一昨年の秋から始まりまして、昨年の秋に終了いたしました。男女間の賃金格差がかなり大きいということで、その存在理由といいますか、どういう理由でそういう大きな賃金格差が存在するのかということを分析し、格差縮小に向けての施策の在り方を考えるというのが研究会の目的でありますが、冒頭そこに用意しました1ページの一番上に、賃金格差研究の対象と書いてありますが、フルタイム労働者、単純に言えば正社員の男女間の賃金格差が対象であるということで、パートタイム労働者については全く考えておりません。
     それから、②所定内給与の格差ということです。月例給を区分しますとそこに書いたような構造になるんですが、そのうちの基本給と所定内手当を足したものが所定内給与ということで、この所定内給与に焦点を当てて分析しました。所定内給与はボーナス、退職金すべてに連動するわけですから、所定内給与の格差の分析で十分であると思います。
     次に、男女間賃金格差問題の背景でありますけれども、厚生労働省は従来から御存じのように、雇用管理の改善を通じて女性の職場における地位向上を目指し、それが究極的には賃金格差の縮小につながるという考え方で賃金格差問題を扱ってきたと思いますが、賃金制度といいますか、あるいは賃金問題にダイレクトに取り組むということは従来してこなかったわけであります。御存じのように、賃金は労使間の交渉によって決めるものだということで、労使問題に介入することに対するちゅうちょというものもあったかと思いますが、そういうちゅうちょはあったんですけれども、労働組合側が政府が何らかのレポートなりを出すとこの課題に取り組みやすいということで、研究会を開き、分析し、レポートを作成すれば、ですから、労働組合がそういう機運にある中で、格差の縮小には効果的であろうという問題意識が1つです。
     それから、むしろもう一つの問題が大きかったのではないかと私自身は理解しておりましたけれども、しかしそのようには直接は聞いておりませんが、真ん中に書きました「男女間賃金格差問題の背景」の①で、ilo第100号条約というのがあります。これは、1951年にできた条約で、同一価値労働男女同一報酬条約ということで、日本は1967年に批准しているわけですが、御存じのように批准しますと、政府は報告書をiloに提出しなければならないということで、日本の男女の賃金状況について報告する。それを受けまして、iloの方では報告を見ますと日本の男女間の賃金格差が非常に大きいと、これは男女間で差別が存在するのではないかとかいろいろなことを日本政府に問い掛ける。それを受けて日本政府の方は、かくかくしかじかで格差は発生しているんだというようなやりとりが長らく続いてきているわけでありますが、その間の経緯につきましては、この『男女間の賃金格差の解消に向けて』と題する報告書の中で、勿論、今日配付された資料の中に載っているわけですけれども、その中で、浅倉委員が整理した部分がありますので、その点を御覧いただきたいと思いますが、いずれにせよ、この条約に関しまして従来から、ややわかりやすく言えばiloの方から日本の賃金格差は大き過ぎると、何とかしろと。これに対して政府は従来型の説明もさることながら、更に研究をして何らかの適切な対応をしたいという気持ちがかなりあったのではないかと、これは私の推測であります。
     用意いたしました資料の6ページ目、これは労働基準法第4条をこちらに出したわけですけれども、これは同一労働同一賃金の原則と言われておりますが、もともとこれは同一価値労働同一賃金を盛り込もうとして、こういう条文になったと言われております。それから、左側に今述べました第100号条約の抜粋を載せてあります。
     元の資料に戻りまして、一番下の「男女間賃金格差の統計的実態」ということでありますが、一番後ろの資料、8ページ目を開けていただきたいと思います。左上第1図でありまして、1986年に雇用機会均等法が施行されて以降の推移がそこに載っておりますが、ほぼ一本調子で男女間の賃金格差は縮小しているということが見てとれます。それから、このページの図を全部ざっと見てしまいますと、右側に男女間賃金格差の国際比較ということで、主要国の中では日本が格差が一番大きいという結果になっております。
     下の一番左の第1表については後ほど説明したいと思います。
     それから、真ん中の図は、この場でも既に意見交換があったかと思いますが、勤続年数別の部・課長比率を示していますが、男性は課長・部長になり、女性はなかなかなりにくいということを示している図表であります。
     右側は男女間賃金格差の要因というもので、これは我々が行った調査に基づいた結果でありまして、男女間賃金格差について何が原因か、それを経営者あるいは労働組合の男性、それから、組合女性というのは労働組合の女性幹部に聞いた結果でありまして、一番大きな要因として管理職の女性が少ない、次いで平均勤続年数が短いという結果になっているわけであります。
     元に戻りまして2ページにまいりたいと思います。研究会では、かなり高度なテクニックを使った計量分析も実施したんですが、なかなか計量分析の結果はわかりにくく、その内容はこの報告に載っておりますけれども、分かりやすいのが③「男女間賃金格差の要因分析」ということでありまして、左側に労働時間以下、職階まで並んでいて、次に男女間賃金格差と書いてありますけれども、原数値という意味は、単純に男女間の先ほどの所定内給与の格差を計算すると65.3になると。これは先ほどのグラフにも載っている数字でありますけれども、要するに単純に男女間の平均賃金を割り算した結果であります。右側の調整値は、現実には女性の方が労働時間が短いということで、女性の労働時間がもし男性と同じになったとしたら、原数値は65.3だけれども66.1までなりますよと。ですから、女性の労働時間が長くなれば縮小幅0.8ポイント格差は縮小しますという意味であります。
     次いで、年齢もそうです。年齢は女性の方が低い。年功賃金の様相がありますから、年齢が低いことで相対的に賃金が低くなっている。ですから、逆に言うと、男性並みの年齢になれば67.4まで格差は縮小するということで、そういう目で見ていきますと、一番格差に影響しているのが職階でありまして、要するに役職に就いている割合が女性の場合には低い。その結果、大きな格差がついているという分析であります。
     では、職階をポジティブ・アクションその他でそろえればいいではないかという発想が出るわけですが、職階をそろえるためには女性の勤続年数も長くならなければならない。あるいは、大学で学ぶ分野も現在より社会科学系とか理工学系に広がっていかなければならないとか、いろいろな要素がこの背後にあるということを理解していただきたいと思います。
     それから、真ん中に「格差問題への労使の意識」ということで、これは先ほど述べましたアンケート調査を我々が実施して、そこに書いてありますような配付枚数、それから、回収枚数がそこに載っております。調査結果での特徴は、組合の女性幹部は、賃金格差存在意識は非常に強いと。それから、人事評価について余り公平でないと見ている。それから、男性の幹部は配偶者手当の維持を求めているということ。それから、格差解消に労働組合も経営者も積極的であるという結果が得られています。詳細は、この報告の中にその調査結果が載っておりますので、そちらの方を見ていただきたいと思います。
     そのような分析を基に、我々は賃金制度そのものが男女間格差に影響しているのではないか、これが1つです。それから、もう一つは、雇用管理の仕組みが男女間格差を発生させているのではないかということで、2つに分けて検討しております。
     まず、賃金制度についてです。賃金制度に何らかの要因があれとすれば、それは是正しなければならないということになるわけですが、基本給の決定システムとして広く利用されているものとして年功賃金型。それから、職能給型、その次の職務給、それから、成果主義賃金、この4つで大体ほとんどの企業の賃金が説明できると思いますが、それぞれについて男女間賃金格差との関係を考えてみたわけです。そうしますと、年功賃金では女性の勤続年数が短いということから、結果的に格差は発生するし、また拡大する。しかし、御存じのように制度の見直しが今進みつつありますから、その動きは縮小にはプラス効果だということです。それから、職能給というのは職業能力あるいは職務遂行能力、すなわち何ができるかという能力に着目して賃金を決めようという考え方でありますから、別にこれは男だからどうだ、女だからどうだと言っているわけではありませんので、性に中立的だと言っているわけであります。ただ問題は、能力が高ければ高い賃金を払うということになるわけですから、その能力判定が公正に行われているかどうかが大変重要になるということを一番下に書いた次第であります。
     それから、次のページで職務給でありまして、女性運動家、女性差別問題に取り組んでいる方々あるいは男女間の賃金格差解消に取り組んでおられる方々の多くが、この職務給を導入したらどうかということを提案しております。確かに、この職務給の考え方は同一価値労働同一賃金を目指している賃金であります。ただ問題となりますのは、同じ仕事をしている限りにおいて、原則同じ賃金ということになるわけですが、そこに人事評価を絡めて職務給を変動させるということがあります。それから、いつまでも同じ仕事をしているわけではなくて、より上位の仕事に就く場合には、人事評価によって決まります。そこの4行目ですか、昇進は職務遂行能力や職務実績の評価結果に依存するという仕組みなんですね。ですから、賃金の高い仕事に就くためには、やはり公正な人事評価が必要だということになります。
     それから、成果主義賃金も性に中立的な賃金制度でありますが、勿論その成果の評価の問題もありますし、同時に女性が持つ職務遂行能力を十分に発揮できる仕事に配置されるかどうかが大変重要であるということになろうかと思います。
     ということで、先ほどの労働基準法第4条からしましても、賃金制度に男女間で差別的な取扱いは許されていないわけですから、日本のほとんどの企業におきまして賃金制度は制度上は問題ない。むしろ、今の話からおわかりのように運用上何らかの問題が発生している可能性はあるということは言えるかと思います。
     それから、家族手当と住宅手当でありますけれども、家族手当、住宅手当は広く利用されているわけでありますが、これが男女間の賃金格差を発生させているのは明らかであります。どのくらいの割合を占めているかということで、家族手当が全労働者平均で見ますと2.1%、住宅手当が1.4%を占めているということであります。ただ、これはあくまでも平均でありまして、現実に支給されている例えば30代の労働者を取り出す、あるいは40代の労働者を取り出しますと、その労働者にとりましては、この家族手当、住宅手当を足しますと5%を占めるあるいは10%占めるという人は大勢現実に存在するということであります。手当を廃止したらどうかということで、そこに1.3と書きましたが1.4です。男女間格差1.4ポイント縮小するということであります。
     それから、男女同一価値労働同一賃金を求める声も大変強いものですから、その意義を述べておりますけれども、国際的には同一価値労働同一賃金原則の実現が男女間賃金格差の縮小に有効であると言われておりまして、その原則を実現する賃金は職務給だと。しかし、先ほど述べましたように、職務給も完璧な賃金ではないということであります。
     それから、大変重要な点は採用との問題でありまして、我が国では仕事を決めないで採用する慣行がありますが、アメリカの例等を見ておりますと、職務給という制度の場合には仕事を決めて採用するという状況がありますので、その点を指摘しております。
     性差別のない賃金は、職能給であっても運用さえ間違えなければ可能だということも述べております。
     人事評価制度の重要性ということに言及し、次の4ページにまいります。先ほど述べましたように、雇用管理が原因となって何らかの賃金格差が発生しているのではないかと。特に、先ほど職階格差との関連で、その背後には雇用管理の問題があろうかと思います。①は昇進・昇格における男女間格差で、先ほども見ましたように、最大の要因は職階格差あるいは社内資格格差であるということであります。そういうことからしますと、女性が男性と同様に高い職階、高い資格に進むことのできる体制づくりが大切だと。そのためには、職階だけ改善するわけにはいかないので、勤続年数も長くなってもらわないと企業も高い職階に引き上げられませんから、長期勤続が可能となる仕組みづくり、あるいは能力が発揮できて初めて評価されるわけですから、職務遂行能力を高める、あるいは発揮できるようなことをする。そのためには、当然のことながらポジティブ・アクションの更なる拡充ということも必要です。
     それから、配置転換における男女間格差が現実に見られるわけでありますけれども、この配置・配置転換の格差がありますと、それが結局次の仕事に影響する。要するに上位のポジションにつながるような配置が行われるかどうかが大変重要なわけでありまして、ということで、配置・配置転換の格差も縮小しなければならない。それに関連しましてポジティブ・アクションの必要性が出てきます。
     それから、コース別人事管理でありますが、コース別人事管理が男女間賃金格差を発生させているのは事実だろうと思います。この制度によって女性の能力発揮がかなり妨げられているのではないか。能力発揮促進の観点から見直すべきだと述べています。特に、企業によりましては女性を意図的に、または実質的に一般職コースへと誘導するような制度設計を行っておりますので、これは是正すべきであると言っているわけです。
     それから、ファミリー・フレンドリー企業への努力、その他。
     以上が分析部分でありますけれども、結論としまして取り組みと課題を述べているわけでありますが、そこに黒々と書いてあるのは、大変重要なことではあるかと思うんですけれども、男女間賃金格差は女性の能力発揮を示すバロメーターであるという点です。要するに、賃金格差が完全に縮小して100対100になれば、女性の能力が男性と同じ程度発揮されたということになるのです。ですから、現時点で大体3分の2ですから、女性の能力は3分の2しか使われていないと見たらどうかという意味であります。
     ただ、先ほど分析で見ましたように、原因は多面的・複合的でありますので、格差縮小には包括的なアプローチが必要だということです。
     労使が組織の中枢に女性を登用すれば、さまざまな問題が経営トップあるいは労組トップに伝わって問題解決に役立つという意味で、女性を登用すべきだと書いてあるわけであります。
     あと、結論の部分は以上述べた分析とかなり類似しますけれども、簡単に触れておきたいと思います。まず賃金管理につきましては、公正・透明な賃金制度の整備が必要だと。あいまいな制度ですと、男女賃金差別の温床になるということで、賃金制度の整備をしろと言っています。それから、人事評価制度は大企業でも非常に不十分なわけですけれども、これをきちんとしなさいということを述べております。
     それから、次のページにまいりまして、生活手当の見直しでありますが、あくまでも生活手当単独で見直すというのは、なかなか難しいと思うんです。生活手当の見直しを書きますと、それが誤解されるおそれが多分にある。ですから、報告書の書き方においても「男女間賃金格差縮小の観点からすると」ということで、要するに格差解消の観点に立つならば生活手当は見直すべきだと、むしろ廃止すべきだということになろうかと思います。
     男女間格差を発生させるような支給要件であれば廃止とも述べていますが、我々の研究会の立場は、あくまでも男女間の格差を縮小するという観点に立っているわけですから廃止が望ましいと言っているわけであります。あるいは、一気に廃止ができなければ、時間をかけてもいいから制度変更してほしいと。
     それから、生活手当には子どもに対する手当、それから、配偶者に対する手当、住宅手当と3つあるわけですが、特に、子どもへの手当につきましては、先ほどのアンケート調査によりましても組合の女性でも比較的支持しているんですね。それから、研究会の場でもそんなに廃止論というのが出なかったものですから、私自身は廃止論を思い切って書き込んでもいいのかなとは思っておりました。勿論、前提条件つきですけれども、強い意見が出ていない以上、研究会の総意に従ったということであります。ただ、配偶者手当につきましては、アンケート調査でも、組合男性は5割以上が維持を主張しておりますが、組合女性あるいは経営者はなくてもいいのではないかというような意見が強かったこと、あるいは研究会の席上でもそういう意見が強かったこと、あるいは、これは女性の職場進出を妨げているという批判が従来からあるということで廃止を述べております。
     ただ、先ほど来部分的に述べておりますが、生活手当はさまざまな制度と絡んで存在しているものですから、その影響を配慮してほしいということで、影響を最小限とするために福利厚生施策での対応など述べています。それから、平均賃金の引下げとならない措置という意味は、悪乗りする企業経営者が手当だけを廃止してしまうことが考えられるので、それはまずいと。ですから、廃止した原資を基本給に繰り込みなさいと、ですから、賃金総原資は変わらないよという意味であります。
     それから、雇用管理につきましては、ポジティブ・アクションの推進。それから、女性に対する業務付与や配置の改善あるいはコース別雇用管理の改善、ファミリー・フレンドリー企業の実践ということです。
     それから、最後に、行政の課題を出しておりまして、労使の取り組みの支援ということで、aが賃金管理及び雇用管理の改善のガイドラインの作成ということで、行政が後に作成したのがこのガイドラインです。ここに書き込まれたことを実践したということです。
     それから、企業のポジティブ・アクション推進への支援ということで、これは具体的にこの研究会報告の後にどうなったか私は存じ上げておりませんけれども、私自身は要するに、既にいろいろなところで主張されているんだろうと思いますが、国あるいは地方公共団体と取引している企業、その他には、ポジティブ・アクションを強制することを盛り込みたかった。例えば、5年後、10年後には女性管理職を何%にするとか、そういうことを書き込めたらなとは思いましたが、そういう施策についてその場で十分に議論しておりませんので、そこまでは書き込めなかったということであります。
     それから、コース別人事管理の適正な運用への指導に関しても、コース別人事管理には問題があるといろいろ指摘されることがありますが、その点に関連してもうちょっと強目に表現できないかということも考えました。例えば、コース別管理はできるだけやめてほしいとか、どういう表現になるかはともかくとしまして、現状を多少是正するようなことが書けないかと思いましたけれども、しかし、企業の人事配置の裁量とかいろいろなことを考えますと、なかなかそこまでは言い切れないと思いました。
     それから、ファミリー・フレンドリー環境の整備、さらには、男女間賃金格差レポートの作成ということで、レポートはこれから作成するのかあるいは数年おきに作成するのか、あるいは女性労働白書の中で取り上げるのか、それはよくわかりませんけれども、そういうことが盛り込まれております。
     それから、ポジティブ・アクションの強化。それから、間接差別問題への対応ということで、現在、研究会をつくって取り組んでおります。
     それから、社会システムの改善は私が勝手に書き込んだ部分で、これは報告書には載っておりませんけれども、先ほどの生活手当に関連して、やはり生活手当の廃止云々を論ずるんだったら、生活手当がなぜ存在するか、その背後の理由に関係した施策を併せて実施しなければ単純に廃止するということにはならないのではないかということで、行政の課題の中に、児童手当の拡充・強化ということを盛り込みたいと思いましたけれども、諸般の事情でそれは盛り込むことが難しかったということであります。
     とりあえず、報告についてはこの程度にさせていただいて、何か御質問あるいは既に質問も出ているようですけれども、それに応じて更に可能な範囲でお話ししたいと思います。
    大澤会長
    高尾委員から出ている質問のうち、冒頭の平均賃金を引き下げないようにしてというところには、既に今のお話の中でお答えをいただいていると思います。どうもありがとうございました。
     ただいまの御説明について、御質問や御意見を是非どしどしお願いいたします。
    木村委員
    どうも大変興味深い御報告をありがとうございました。そこで、何点か伺いたいんですが、まず、レジュメの2ページの表「男女間賃金格差の要因分析」のところで、いろいろな格差要因を同じにしていくと、77%強まで説明できるということですが、あとの23%をどう見るかということが重要ではないかと思います。その23%をよりクリアにするために、同一労働同一価値というのが守られているかというので、全く同じ職種で比べてみると、差があるのか、ないのかという点については、どのような見解を持っておられますでしょうかというのが第1点です。同じ仕事であっても、女だから賃金が低いという差別要因によるものというのが見出されるのかということが第1点です。
     第2点は、生活手当というので切り離しておられますけれども、生活給というもの全体をどう見るのか、生活給と能力給といったものの対比の中で、先生は生活給自体をどう考えておられるのかというのが第2番目の質問です。
     それから、3番目の質問ですけれども、一番格差要因として説明が大きい、職階が一番大きいと言われた後の御説明の中で、この職階の格差を縮めるには、女性が社会科学的な方向に進む必要があるのではないかというようなお答えでしたが、現在の企業の管理職の中で、大学の出た学部と管理職に就いている女性との間の相関関係がどれほどあるのかというのは、私は個人的には疑問に思っておりますので、その点のはっきりした実証的な因果関係がどの程度あるのかを伺いたいというのが3点目です。
     以上です。
    笹島教授
    よろしいですか。まず、職階だけが縮小すると77%までなるということですが、これはあくまでも職階でありまして、同時に勤続年数が縮小すれば更に6ポイントそれに上乗せになる。更に、学歴が縮小すれば2ポイントになるという意味ですから、格差はかなり縮小していくと。ですから、職階だけが縮まると同時に、それに併せて勤続年数、その他ももし縮小していくとすれば、格差はここに書いた77.2以上に接近するという意味です。
    大沢委員
    先生、これは平均値が同じになったらということですか。
    笹島教授
    そうです。
    大沢委員
    賃金の上昇率の違いは、ここでは調整されていないわけですか。それも含めて調整されているんですか。
    笹島教授
    単純に平均賃金でやっておりますけれども、要するに、本当に全く等しく処遇されれば賃金の上昇率も一致しますよね。
    大沢委員
    そうですね、はい。
    笹島教授
    それから、生活給の方を先に。追加的にまた御質問をいただければと思います。生活給については、私自身は労働対価に見合わない賃金だから、本来はなくなるべき賃金であろうと個人的には思っております。ただ、日本の社会システムから今直ちになくなっていいのかどうかということになると、疑問がつくという意味でありまして、私自身は本来なくすべき賃金項目であると思っております。
     それから、学部と昇進との関係といいますか、大学における専攻との関係ですが、先ほど要するに、職階だけを縮めることはできませんよという例として、ちょっと思いついたものですからそれを述べたにすぎなくて、要するに職階だけを縮めるということは現実には不可能ですよと。要するに、さまざまなことが変化して初めて職階も合わせ技で縮まるんだという意味であります。ですから、社会科学分野にもっと進学したら縮まるかどうか、そこまでは我々も分析しておりませんし、要するに、そういう意味で言ったにすぎないということで、別の例に置き換えたいと思います。
    木村委員
    それから、あとの……。
    笹島教授
    同じ仕事のということですか。
    木村委員
    そうですね。先生が後で御説明されたので、少しそこの表の意味がわかったんですけれども、職階で77をそろえて、後でまた年齢とか企業規模をそろえたとしても、85ぐらいですよね。そうしたら、あと15は残るわけですね。それをどう見るかということなんですけれども、その中には恐らく職種の差などが含まれていると思うんですが、一番の本質的な部分である同一労働同一価値が守られているかどうかということについての、何かこれだから守られている、これだから守られていないというところのはっきりしたものは出ているんでしょうか。
    笹島教授
    同一労働同一賃金につきましては、一応労働基準法が存在するわけですから、もしそれに反していれば法律違反ということになるわけですね。ただ、実態的にそうかというと、現実には男女差別が存在するかと思います。ただ、法律上はきちんとなっている。では、同一価値労働同一賃金についてはどうかということになりますと、これは法律上の判断で同一価値の仕事をしつつ余りにも格差が存在すれば、むしろ民法90条か何かを根拠に、差別だという判定が出るのかもしれませんけれども、現在の法律では同一価値労働同一賃金を実施しろというのは恐らくないのではないでしょうか。実態的には、例えば、看護師さんの賃金が大変な仕事に比べて相対的に低いよという現実がありますから、社会全体で何らかの基準で価値を測定したときに、かなりのアンバランスは出るだろうと思っております。
    木村委員
    あと1つ確認ですけれども、例えば、男女の差別のようなことが要因として働きやすいところは職階が1つであるという理解でよろしいでしょうか。
    笹島教授
    職階を縮めていけばおのずと、ですから、一番戦略的にはそこが大変重要な……。
    木村委員
    そうなんですけれども、先生のおっしゃる意味は非常によくわかるんですが、ただ、男女ということで同じ能力であっても職階に偏りが見られると。男だから昇進しやすい、女だから昇進しやすいということがある場合には、それを差別と言うと、賃金格差には職階ということが一番大きく働いていると見てよろしいんでしょうか。
    笹島教授
    現実には、要するに統計上職階というものがとれるものですから、こういう分析になっているわけですね。多くの企業で職能資格制度という仕組みをとっていて、その資格で分析した方が、この格差縮小効果がもっとあるかもしれない。それはあくまでも統計技術上こういう統計しかないものですからこういう分析になったにすぎないのであって、そういう意味では、先ほど雇用管理で配置だとか、あるいは能力開発とかそういう問題を地道に解決することが結局は最適な戦略だと思いますけれども。ただ、こういうふうにこれを出した方が非常にわかりやすいものですから、この統計を利用したということですね。
    大澤会長
    よろしいでしょうか。ほかに。
    浅地委員
    先生の調査の中で、例えば、日本の中の地域差とか都市と人口が少ないところとか、何かそういうところでございましたか。
    笹島教授
    我々の研究会では、地域別には一度も分析しておりません。ですから、あくまでも日本全体の合計値で判断しております。
    大澤会長
    ほかにいかがでしょうか。
    大沢委員
    ありがとうございました。精ちな研究をなさって、いろいろと勉強させていただいたんですが、1点ここではやはり雇用管理制度に非常に重点が置かれていると思うんですが、現実問題として最近ちょっとヒアリングをして、仕事を辞めた女性にいろいろとインタビューをしてみると、やはり一番は子どもを持ったときに辞めているんですね。または、結婚退職で辞めている女性にも会いました。それは、例えば結婚して辞めなくてもいいんだけれども、子どもをいつか持つだろうと。子どもをいつか持つと、1年間の業務なので途中で中断されては困るから、不文律で辞めてもらうようにしていて、結果として誰も子どもを持って働いている職員がいないとか、確かに雇用管理制度上ではそういった問題がないとしても、実態として子どもを持った女性たちの離職というのが世界的に見ても頻繁で、そこが例えば結婚している人だけの男女の賃金格差とかそういうものをとれば大きいかもしれないし、例えばそこに出ていないとしても、離職してしまっていて、この男女間賃金格差が1990年代にずっと正社員の間で縮小しているというのは、実はそういう人たちからドロップアウトしていて、非常にこのサンプルが二極分化して長期勤続化しているということが背後にあるのではないかということが推測されるんですね。そうしますと、やはり雇用管理制度に差別があることはいけないけれども、子どもを産んでも絶対差別されないんだと、それから、継続のためのあらゆる方策を政府が率先してやっていくと。待機児童は絶対増やさないとか、そういうふうに実際に働いているお母さんの声を聞くと、1人目は何とか頑張ったけれども、2人目で会社にも言えなかったと。恥ずかしくて皆さんに迷惑を掛けるのでという実態とか声をずっと聞いていますと、やはり子どもを育てながら仕事が続けられる環境というのが日本にないという、ここが職階の数字にも出てくるような気がいたしますし、勤続年数の差になって結局は出てきて大きな賃金格差を生んでいるのではないかと思うんですね。先生の御研究では、例えば既婚女性の間での男女間賃金格差ですとか、女性の就業形態の変化とか、そこら辺について研究会で御議論されたんでしょうか。
    笹島教授
    今、先生が言われたとおりだろうと私も思います。非常に女性の働きにくい職場環境が現実に存在しますから、もし、女性が働きやすい環境整備が進めば、この格差もおのずと縮小していくと思いますし、この研究会を主催したのが雇用均等・児童家庭局で、御存じのようにパートタイマーの研究会を別途やっておりましたので、ですから、我々の研究会でパートの話まで触れますと、佐藤先生がいらっしゃいますが、そちらとの重複もありますし、やはり話が混乱してしまうんですね。ですから、正社員だけに絞って分析した方がずっとシャープな結果が得られるということで、こういうことになったということです。ですから、そのような問題意識は各委員持っていたと思いますけれども、正社員の全体について考えたということであります。
    大澤会長
    今ので、同時に高尾委員の御質問の4番目に対する御回答もいただいたと思いますが、ほかにいかがでしょうか。
    大沢委員
    この中で二極分化が進んでいるというような結果は、先生の研究会の中では出てきませんでしたか。
    笹島教授
    我々の研究会では、それは出しておりませんけれども、私が知っているあるペーパーで、男女間の賃金格差の縮小の背後に、今、先生が言われたようなことが多少影響しているのではないかというペーパーがあることは知っております。
    大沢委員
    そうですか。
    浅地委員
    多少意見みたいになると思うんですが、労働基準法の中で1年以上の契約というのは今認められていないわけですね。したがって、そこからずっといくということになると定年までと1つイメージしますと、高校でも大学でも出て、そのまま定年までいるというイメージはなかなか沸きにくい。世の中も競争とか生産性という問題がこれから出てきますから、そうすると、むしろ私がこれだけ働きたいというようなところからチャンスをつくってあげる、差別ではなくてね。そんなようなことも1つ考えてもいいのではないかと。それで、1つのキャリアを積んで、また次のジョブに移っていくというポータブルに能力をつけて、それで出世をしていくというのはいかがなんでしょうか。
    笹島教授
    今のお話の関連では、労働市場がもう少し流動化すると、要するに、転職しやすい労働市場になれば、ある人は長期勤続するでしょうし、ある人は転々とするでしょうし、ある人は結婚退職してしばらく子育てに専従して、また再び職場復帰するとかいろいろなことが可能になると思うんですね。そういう意味では、転職しやすい労働市場の形成というのは、そこまで我々の研究会では議論しておりませんけれども、恐らく女性にとっても働きやすい職場といいますか、あるいは能力発揮につながる労働市場になるのではないか、それが男女間の賃金格差にもプラス効果があるのではないかと私も思いますけれども。
    浅地委員
    ありがとうございます。
    永瀬委員
    大変興味深いお話をありがとうございました。先ほどの先生のお話ですと、男女の勤続が延びると格差が縮小するので、それができるような環境をというようなお話だったと思うんですが、そこだけを非常に重視しますと、正社員に入りにくくなるという可能性も高くなると思うんですね。というのは、正社員と非正社員と非常に待遇が違う2つの部門がある中で、確かに1990年代に正社員の中での賃金格差は男女間でずっと縮まっていますけれども、その代わり、正社員の中に入れない非正社員が特に女性で拡大している。更に、男性に関しても正社員に入れない男性というのが徐々に若年層で増えているということを見ますと、正社員の中での賃金の格差縮小だけではうまくいかない部分がある。むしろ、そこに入れる一部の人はとてもいいことになりますが、入れない人が拡大していく可能性もあるだろうと思われるわけです。そうしますと、どうするのかというところで、高尾委員の方でも法制度が果たし得る役割というようなことについての質問が3番目に上がっていると思うのですが、先生の御見解の中では、法制度の中で労使に委ねるという部分もあるでしょうけれども、委ねていてばかりではどうなのだろうというぐらいに格差が拡大している部分というのがあるようにも思うのですが、ある意味では競争が非常に激しいので、規制等を課さない方がよいという部分と、しかし、ある一部だけに保護を与えて、後の部分に保護がないとそこがどんどん拡大していくという問題性と微妙なバランスの中での話だろうとは思うんですが、先生の御見解では法律面ではどのようなことをお考えなのか教えていただければと思います。
    笹島教授
    それは、先ほどの大沢先生のお話とも関連するかと思うんですが、これは佐藤先生にむしろお答えいただいた方がいいのかもしれないような御質問だったかと思いますけれども、結局、正規社員と非正規社員の均等待遇問題ですよね、今の御質問は。
    永瀬委員
    それも含まれます。
    笹島教授
    要するに、どのような就業形態をとるにせよ、同じような仕事であれば同じ賃金を支払ったらどうか、同じような能力だったら同じような賃金を支払ったらどうかということでしょうから。
    永瀬委員
    正社員の中での男女格差の縮小だけを考えても、非正社員の部分に不均衡に女性が出ていくことになると、ここは問題性があると。その場合、それをどういうふうに考えるのか。均衡というのはなかなか難しいということはあると思うんですが、法律という大きな枠組みの中ではどのように考えたらよろしいのか。
    笹島教授
    今のお話は我々の研究会の範囲の外に出てしまうんですよね。ですから、私の個人的な考えということになりますけれども、今の経済情勢からしますと、おのずと均等待遇化に向かっているという気はするんですね。
    大澤会長
    ちょっと関連して質問させていただきますと、研究会報告のスタンスというのは国内法の中に男女同一労働同一賃金だけでなく、価値も含めたものが入っていると言っても間違いではないというぐらいの、ちょっともって回った言い方なんですが、とにかく第100号条約は批准していると。それから、労働基準法第4条の立法趣旨のときに価値の考え方が入っていたことからすれば、価値が排除されているとまでは言えないのではないかということになると思いますので、このレジュメで言うと3ページ目のところに職能給でも可能であると。つまり新たな立法をしないとしても、価値を含んだ同一賃金というのが規範であると。規範でないとまでは言えないというようなスタンスをおとりになったのではないかというのが私の推測するところなんですけれども。
    笹島教授
    率直なところを申しますと、先ほどの第100号条約をちょっと見ていただきたいと思うんですが、7ページの右側から2行目に(b)がありまして、ここをちょっと読み上げますと『「同一価値の労働についての男女労働者に対する同一報酬」とは、性別による差別なしに定められる報酬率をいう』と書いてありまして、私はこの研究会に参加するときに、最終的には同一価値労働同一賃金を主張する研究会になるのかなと思ったんです。現実に批准しているわけですしね。だけれども、よくよくこの第100号条約を読んでいくと、要するに差別がなければいいんだと。男女間の差別が賃金制度上なければ、この第100号条約は問題ありませんよというスタンスなんですね。ですから、同一価値労働同一賃金に関する法律があってもいいかとは思いますが、研究会の目的自体は、むしろ男女間での差別のない賃金が達成されればということでしたので、要するに同一価値労働同一賃金をどんどん普及すべきだということについて、そこまでは結論では言及していないのです。現状の制度の下でも運用をきちんとやればいいですよということなんですね。
    永瀬委員
    間接差別のことは扱わないということですか。
    笹島教授
    間接差別も法律の先生から主張したらどうかということで、間接差別を結論部分に書き込みたいという先生も何人かいらっしゃいましたけれども、御存じのように間接差別の概念、その他まだはっきりしていない中で、書き込むことが果たして妥当かどうかという議論がありまして、1か所触れていたかと思うんですが、間接差別については今後の研究課題とするのような、ですから、我々の研究会の場ではそこまでは言えなくて次の宿題、どこですかね。
    大澤会長
    私たちの手元にあるものでは21ページです。
    笹島教授
    そうですね。「中期的な課題への対応」というところの下から3行目辺りに、今後の課題にしたわけですね。
     先ほどの正規・非正規の違いへの対応は、私自身はおのずと外国の事例にかなり接近していかざるを得ないのではないかと、日本の政府の対応としましては。
    永瀬委員
    政府が対応として何らかのアクションをとるということですか。
    笹島教授
    アクションをとらなくても、おのずとそっちの方向に向かっているとは思います。例えば、やや極端に言いますと、正規社員の定型的労働の部分の賃金が相対的にどんどん下がっていくと。あるいはそういう労働がアウトソーシングされて、実質的には賃金の低い労働者がそういう仕事に従事する傾向がみられるということで、おのずとそういう傾向が現在見られるのではないかというのが私の認識ですが、ただ、法制度上、もしとるとすれば、ヨーロッパ型のような考えを実施していくのが1つの方向かなと思いますけれども。
     
    永瀬委員
    ヨーロッパ型というと均等と。
    笹島教授
    ええ。
    大澤会長
    佐藤委員、いかがですか。
    佐藤委員
    質問というか、最初のところで正社員に限定されたということがありますね。これは「フルタイム労働者(正社員)」で、フルとパートの均等なり均衡は我々も研究していたわけですが、フルタイム間というのではなく、なぜ正社員だけに限定したのか。つまり、フルタイムの年契約の人もいるわけですよね。フルタイムの中でというのではなくて、あくまでも正社員としたのは議論しやすいということなのか、実際上、大沢さんや長瀬さんの話で、つまり従来の正社員・一般職のところが、パートというだけではなくてフルタイムの年契約のようなところに相当シフトしているわけですよね。ですから、ここは同じ雇用形態の中での男女格差に絞ったと。
    笹島教授
    そういう意味ですね。ここは特に、報告書でも正社員とかフルタイムという言葉は何も出てきていないんですよ。正確には、冒頭の「はじめに」の(2)「研究会の検討対象と研究会報告の構成」というところで「本研究会で取り上げた男女間賃金格差とは、基本的に一般労働者の所定内給与に関する男女間の賃金格差のことである。ここで一般労働者とは、一般的な所定労働時間が適用されている労働者であって、パートタイム労働者を含まない労働者のことであり、フルタイム労働者であっても臨時・日雇い労働者は除かれている」と。
    佐藤委員
    これだけ読むと、年契約で繰り返していると入るという話ですよね。
    笹島教授
    これは、1つには、ベースとした統計が賃金構造基本統計調査なものですから、それを頼りに分析していく関係上、こういうような書き方になったと。
    佐藤委員
    そうすると、同じ雇用形態の中での賃金格差という議論はあり得るけれども、コース別と同じように、同じ雇用形態の中のコース別は問題にされていますが、雇用形態を超えてしまえば、フルタイム同士というのは議論の対象にはなっていないということですね。私は、そこはこれから議論すべき課題かなと思っていて、パートの方はフルとパートなんですね。フル・フルの間というのが雇用形態を超えてしまうと、どこもカバーしてくれないということがあって、そこが最大の問題かなと思っています。
    名取局長
    すみません、2ページの男女間の賃金格差の要因分析なんですけれども、先ほど職階が一番縮小幅が大きいというお話がありましたが、一方では、この職階だけ縮めるということはなかなか難しいというお話も伺いました。例えば、学歴の点でございますけれども、日本の場合は4年生大学では卒業時に男女の差があります。その縮小幅が2.2と少ないように見えますが、それからまた、勤続年数がかなりきいていますけれども、この学歴と勤続年数というのは職階とかなり関係があると思うんですが、この職階の11.2というのは、学歴とか勤続年数の影響を抜きにした職階だけの縮小幅と考えるべきなんでしょうか。
    笹島教授
    そのように考えていただいて結構かと思います。
    木村委員
    8ページの第1図で、均等法以後、男女の所定内給与格差の推移で、15年掛かって5%縮まったということですが、この格差縮小の要因としては何が一番大きく働いているのでしょうか。
    笹島教授
    それはどこかに囲んでいたと思いますが……。
    大澤会長
    7ページですね。これは実数というよりも賃金関数のようですけれども。僣越でございましたが。
    木村委員
    職務遂行能力。
    笹島教授
    7ページの上の②だと、長期的な縮小傾向の要因として年齢、勤続年数、学歴、小さいと書いてあるんですね。
    大澤会長
    職階も含め小さいと書いてありまして、何か不思議だなと思いながら読んだんですけれども。
    笹島教授
    これは計量分析ですので、ある最小二乗法を使って出た結果をどのように解釈するかということです。
    木村委員
    これは寄与度でやっているわけですか。
    笹島教授
    寄与度と言えば寄与度でしょうけれども、かなり計量的な計算ですので、その解釈をこのように我々はしたということなんですね。だから、8ページ左下の第1表を例えば1986年について同じことをやってそれを比較すれば、ある程度のことがまた言えるのかもしれませんね。二時点でやる。ただ、長期的な縮小は、実は先ほど大沢先生も言われたこととも関係するんですけれども、要するに、女性の一部が外に出てしまって……。
    木村委員
    それはわかりますけれども、それにしても、残った男性と女性との格差の長的な縮小要因は。
    永瀬委員
    これは私は実は読んでいないんですけれども、堀さんのほかの論文は読んでおりますので、そこからの理解だとしますと、男性と女性で全く属性が同じだった場合にどのくらい賃金差が縮小するかという話と、男性と女性で学歴の評価、年齢の評価、勤続の評価が違うことがどのくらい賃金格差を生んでいるかというのがあって、それが通常の分解で、通常の分解では日本の場合、私もちょっと類似のようなことをしたんですけれども、年齢の効果が男女で非常に違うと。つまり、男性は年齢が上がると賃金がぐっと上がるけれども、女性は同じ年齢でも余り賃金が上がらない。そのことが非常に大きな賃金格差の原因になっているのであって、属性そのものが、つまり勤続年数の格差はありますし、学歴の格差がありますけれども、その属性の格差が大きな賃金格差を生んでいる部分によって縮小できる部分もあるけれども、どちらかというと男女で年齢に対して賃金が上がる度合いの格差の大きさが非常に大きいので、それが賃金格差を生んでいるというのが一時点での分解の主なほとんどのこれまでの結果だと思うんですが、堀さんが更にやられているのは、それを二時点に拡張していらっしゃって、ここではさっきぱっと見ただけですけれども、1990年と2000年の二時点で分解していて、その二時点に関して縮小があったのはどこの部分であったのかというのを見ると、属性の格差が縮小したということは余りないというのが多分②だということだと思います。そして、③で言っているのは、説明できない要因によってなぜか賃金差が縮小したと。その説明できない要因で縮小したのはどこかというのを解釈すれば、業務内容や職務遂行能力などの面で格差が縮小したんだろうと、そういうふうに読むんだというふうに、私は1つ前の別データの論文は読ませていただいているので、それから推測するとそういうことかなと思います。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。
     私は、初めのところにも書いてありますけれども、この研究会が設置されたこと自体が大変意義深いというのはそのとおりだと思います。中でも私読ませていただいて面白いと思ったのは、7ページのところに統計的差別だけではなく、女性に対する差別意識も影響していると言い切っておられますし、とりわけ面白かったのは、レジュメの方でも太字になさっている男女間賃金格差が女性の能力発揮を示すバロメーターだというのは、感動して読んだので、思わず財務省の研究会報告の方にそのまま引用したりしました。つまり、私の理解ですと、従来は機会が均等になっていれば、結果として出ている格差というのは問題がないというスタンスで、とりわけ均等法は機会の均等に関する法律だから、結果として出ている賃金格差については労基法の問題としてきて、均等法行政の中で賃金格差を扱ってきたことはなかったと思うんですけれども、このたびそれを扱って、しかも、男女間賃金格差が能力発揮を示すバロメーターなんだとお書きになったことは非常に大きな意義があると思っています。こういうふうに書くについては随分と研究会の中でもバトルがあったのかというようなことを思いながら、引用させていただいたので、質問というよりはコメントなんですけれども、何かございましたら教えていただければと思います。
    浅地委員
    私は日商の労働委員長を3月までやっていましたが、1つ問題が、労働省と厚生省が一緒になりましたときに、地方事務官制度というのが廃止されて、私は雇用の問題というのは視点を変えますと地域の問題だと思っておりました。ところが、このパンフレットにありますように、都道府県労働局で行政をやっていくということで、労働基準局もハローワークもみんな国の一元行政になったんですね。ですから、そこら辺で結局、基準行政でこの男女間賃金格差解消という形でやっていって、ペナルティーみたいなことではほとんどいけないと思うんですね、裁判でも起きない限り。ですから、結局は地域の雇用者にそういう意識をどう植えるかという一点に絞っていくと、この周知徹底がイメージとしては新聞等で報道されているけれども、現実の企業にひたひたとこういうものが及んでいくような努力が必要なのではなかと思っておりますが、その地域産業ごとで例えば自動車がこうだとか、船がこうだというような問題と、各町の規模あるいは企業規模とあらゆる面からアプローチしていくということが必要だと思います。結論から言えば、トップにどうやって行政がアプローチできるかと。意見になってしまうんですが。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。
     よろしいでしょうか。何かお答えが。
    笹島教授
    先ほど座長の方からバロメーターのお話が出ましたけれども、ですから、いろいろな企業で男女間賃金格差を計算してもらって、また、その年次推移を見てもらって、それが縮小しているようであれば、それだけ女性の活用が進んだとそれぞれの企業が判断するということを、これは簡単にできることですので、いろいろなところで計算したらいいと思うんです。この内閣府でもやったらいいかと思いますが。
    浅地委員
    一義的には、同一個別企業の中なんでよすね。社会的にどうだとかいうよりも、同じ会社の中でと。その企業ごとにどうアプローチするか、あるいは会社の規模が小さくなれば小さくなるほど人事部なんてありませんから、次が総務部扱いぐらいで、その後は親父扱いというところですから、是非そこのところを我々が頑張らなければいけないと思っていますが、個別企業の中というのは非常に悩ましい問題がこれからも残るので、場合によっては中小企業の方がこういうことを登用しやすい場面も出てくるかと思いますので、私も頑張りますので、先生も頑張ってください。
    大沢委員
    先ほどの座長の意見とかかわるかもしれないんですが、男女の賃金格差を縮小することの最終的な目標というのは、この研究会ではどこに置かれたんでしょうか。
    笹島教授
    縮小する目標というのは、どういう意味で。
    大沢委員
    つまり、ここでも女性の能力発揮を示すバロメーターだということで、それを考えると、つまり6割しか女性の能力が発揮できていないよと、つまり潜在的な能力を100とすると、そのうちの6割しか活用されていないということですよね。それは、結局は経済合理性から見て、非効率的なシステムであるからこれを上げた方がいいという議論なんでしょうか。
    笹島教授
    それは、恐らく今の日本の置かれた諸制度の下で、それぞれの企業は恐らく経済合理的に行動していると思うんですよ。例えば、夜遅くまで仕事をせざるを得ない。そうすると、そのときに女性を採用した方がいいか、男性を採用した方がいいか。そうしたら、男性の方が午前1時、2時まで仕事をするんじゃないかという、それが差別と言えば差別かもしれませんけれども、ですから、そういう社会的な置かれた条件の下でそれぞれの企業が合理的に行動している結果として、女性の進出が抑えられている面もあるのではないかと。だから、社会のシステム全体を要するに男女双方が同等に進出できるような仕掛け、仕組みづくりが必要だということなんですね。我々の研究会自体は単純に男女間の賃金格差が大きすぎると。この大きい格差を縮小するにはどうしたらいいかということだけですけれども、その先は結局、男女双方にとって働きやすい社会の形成ということになろうかと思うんですね。ですから、目指しているところは皆様方の会議の目的と一致すると思うんですけれども。
    大沢委員
    逆に、労働時間が長くて、かつ、生産性が低い日本の企業を考えたり、私たちの経済産業省の研究会でも、女性の活用が進んでいる企業の業績が高いといったことと、私自身が実際に今、企業から女性の活用で受け入れている学生もいるんですが、そういうところでの企業の意識の変化を見ていくと、そういうふうに昔は思っていたけれども、やはりその結果として自分たちが遅れていったんじゃないか。つまり、今はサービス産業化が進んできまして、女性の家庭内での力が非常に強くなってきて、大きなもの、例えば車を買うとか音響製品を買うとか家を買うということのような、昔は夫の力が強かった部分にまで、妻の購買決定権が高まるという、つまり夫婦間の力関係の変化とか、市場の変化というものが女性の能力活用というものを必要としていて、そういうものに労働力不足に悩んできた外資は結構早く気付いて、いい女性を使っているんだけれども、日本の企業はやはりそこに出遅れたんじゃないかと思うんです。そこで今、業績を上げるためにどうしたらいいかと発想したときに、男女間の賃金格差を何とかして、女性と男性の賃金格差や能力開発の機会をもっと増やすことによって女性の力を能力を活用しないと日本はこれからもうだめになるという、そういうような機運というのは、今少し日本の企業の中で生まれてきたのではないかと思いますが、そういう点で……。
    笹島教授
    今のお話は私も賛同するところが大変多いんですけれども、要するに、女性を活用できるような働き方を目指せば、おのずと効率的な働きにつながっていく可能性が結構あると思うんですよ。日本の企業は結局、長時間労働をやって効率的になっているかというと、かえって効率が下がっている側面が結構あると私は見ております。ですから、今、先生が言われたように女性が働きやすい職場、システムをどの企業でも追求していけば、生産性が高い職場になるのではないでしょうか。それは私の意見でありまして、反論する人も大勢いるかと思いますけれども。
    大澤会長
    どうもありがとうございました。
     大変議論がいいところにいったところで時間が既に超過してしまいましたので、笹島先生には今日本当にお忙しい中ありがとうございました。大変勉強させていただきました。
    笹島教授
    どうもありがとうございました。
    大澤会長
    それから、9月12日に社会保障審議会の年金部会で年金制度改正に関する意見というものが取りまとめられておりまして、皆様のお手元にこういう白表紙の冊子が配付されていると思います。事務局から簡単に説明をお願いいたします。
    定塚参事官
    もう時間もないので、2点だけ紹介させていただきます。
     この意見の20ページのところに「短時間労働者に対する厚生年金の適用」ということで、基本的には短時間労働者への厚生年金の適用拡大を行うべきであるという記載がなされております。その際には、諸般の事情に十分配慮して慎重に検討することが必要である等書かれております。
     それから、24ページ以降でございますけれども「女性と年金」ということで、第3号被保険者制度、遺族年金、離婚時の年金分割ということについて考え方、論点が整理されております。第3号被保険者制度については、幾つかの考え方を併記しております。遺族年金については一定の考え方、離婚時の年金分割については、これを進める方向でということが書かれておりますので、ごらんいただきたいと思います。
     以上です。
    大澤会長
    私は、年金部会の委員でございますので一言だけ補足をいたしますと、各論というのも今回の意見書で大事なんですが、全体ですね、「年金改革の基本的な視点」というところで4点ぐらい挙げられているんですけれども、そのうちの少なくとも2つ「多様な働き方に対応し、より多くの者が能力を発揮できる社会につながる制度とする」、これは3番目に挙げられているんですが、4番目に「個人のライフコース(生涯にわたる生き方、働き方の選択)に対して中立的な制度とするという」、この2点がほかの持続可能性や信頼と並んで基本的な視点として挙げられております。これらは従来、女性と年金の問題として付随的に扱われてきたことが改革全体の基本的な視点とされたということで、こちらの専門調査会が従来言ってきたこと、あるいは男女共同参画会議が主張してきたことが、今回の年金改革の基本的な視点の中にも取り入れられているという点には留意していいのではないかと思っております。時間がない中で恐縮でしたけれども、補足させていただきました。
     次回は、11月19日水曜日の14時から第23回会合として開催する予定です。事務局からの連絡事項をお願いいたします。
    定塚参事官
    資料の一番下に今後の専門調査会の予定についてメモということで入れさせていただいております。次回は11月19日、自営業関係の論点ということで、特に女性の起業家の方の実態と問題点についてヒアリングと議論をお願いしたいと思っております。予定等に御変更がありましたら、11月、12月の分御連絡をいただきたいと思います。
     それから、20回と21回の議事録の案をお手元に配付しておりますので、出席された方は御覧になっていただいて、変更等あれば10月24日までに事務局の方にお知らせいただきたいと思います。
     以上でございます。
    大澤会長
    それでは、これで影響調査専門調査会の第22回会合を終わります。本日はどうもありがとうございました。

(以上)